あるBOX(改)

ボクシング、70年代ロック、ヲタ系、日々の出来事などをウダウダと・・・

新文芸坐×アニメスタイル セレクション「東映長編の名作」を観た④

2018年06月30日 | アニメ・特撮
小黒氏「いや~、やっぱり叶さんはさすがですね」
叶氏「な、なんですか急に!?」
小黒氏「だって、ちゃんと本題しゃべってくれますもん。
    分かりやすいし」
叶氏「どうしたんですか、もう…」
小黒氏「雑談だけで終わったようなゲストもいましたから」
叶氏「ああ、噂は少し…」
小黒氏「ほとんど飲みながら・・・みたいな」
叶氏「それも楽しそうですけどね」
小黒氏「面白かったですよ(笑)」
…みたいな会話もあり。

私に「なんだそりゃ?私も見たいぞ」なんて気を起こさせて
くれたトークは続く。



話は『長靴をはいた猫』へ。

公開は『ホルス』の翌年。高畑さんは降ろされた。
『ホルス』は製作期間も費用もオーバーしたし、大ヒットにも
ならなかった事もあって…。

作り方も「クシ団子式」に戻り、娯楽作として大ヒットした。
「ペロ」は言うまでもなく、東映アニメのトレードマーク。

高畑さん以外のスタッフは『ホルス』とあまり変わらない。
私は『ホルス』だけが突出して「宮崎モノ」だと思っていたが
後の『カリオストロ』に繋がる宮崎アクションが数多く盛り込
まれているとの事。

小黒氏が「~というか『カリオストロの城』を観た時『長靴だ』
と思った方は多いのでは?」と語り掛けると「うんうん」と肯く
観客たち!

縦構造の舞台で上下のアクション。まさに宮崎アニメだそうで。
お姫様も宮崎さん好み(?)。

後に自ら「僕はずっとVSOPですから」と語ったが、当時で言う
「ベリー・スペシャル・ワン・パターン」との事。



次は『どうぶつ宝島』。

東映の経営も斜陽となり、TV中心に変更になった時期。
スタッフや予算が減少。
クシ団子式だが、動きもTVアニメっぽくなった。

それでも、宮崎絵は堪能できる作品。
モブシーンの多さが、まさに宮崎アニメ。

スチーブンソン原作には女の子キャラ出てこないのに
宮崎さんが作っちゃったとか…。
そのキャシーに関しては監督(=演出)の池田宏さんと
揉め、一週間口を利かなかったとの事。

これに関して叶+小黒氏それぞれ当事者から話を聞いた
そうだが、いずれもニュアンスが異なるらしい。



『どうぶつ宝島』(1971年)も明朗まんが映画。
通してみて楽しんで欲しい。贅沢な4作品。

オールナイトで見て途中ウトウトして作品がごっちゃに
なるかも知れないが、色んな方法でそれぞれ見れるので
配信でもメディアでもイイので見て欲しいとの事。

~さぁ、上映開始だ!

新文芸坐×アニメスタイル セレクション「東映長編の名作」を観た③

2018年06月30日 | アニメ・特撮
続いて
『太陽の王子ホルスの大冒険』

クシ団子式じゃなく、高畑勲さんが演出(今日でいう監督)を担当。
※『わんぱく王子…』では演出助手

大塚康生さんが「高畑を演出にしないなら降りる」と言って通した。
その頃はアニメーターの権限が強かった。



そういう意味では一貫している。
今のアニメに近い感覚で観られるのでは?
「動かないシーンがある」とも言われるが、製作期日もオーバーして
いたし、東映争議もあった頃で確かに止め絵も見受けられる。
※私も「止め絵が多いじゃん!」とか言ってました。

今こそ名作と言われるが、興行収入は芳しくなかったし、そもそも暗い。
子供向けじゃない。
公開当時の評価で「笑いが無い」というものがあった。
※「それ言ったらエヴァなんてどうなんの!?」とは小黒さん談。



当時、東映動画の動画マンは階級制で新人は5級だったが、宮崎駿さんは
5級の時から集まりの時に挙手して「なんで『わんぱく王子』みたいな
つまんないもの作ったんですか」と言っていたそうで。
※文部省推奨的なものが気に入らなかったのか?

『わんぱく王子』で良いものが作れたと確信してた関係者を驚かせたが、
生意気な新人を好んだ大塚さんは(愚連隊的なメンツを集めたがってた
とかいう話です)宮崎さんを気に入り、一気に登用。



宮崎さんは異例のスピードで場面設計・原画に昇格。
なお、日本アニメ史上屈指のヒロイン=ヒルダの影ある魅力は作画監督
森康二さんの画力によるものが大きい。
ほぼ全部のカットで森康二さんの修正が入っているとの事。

ヒルダのアップ絵や岩男の動きなど、やはり今見ても凄いと思った。
『ホルス』も、その後同系統の作品が現れていないタイプの作品との事。

新文芸坐×アニメスタイル セレクション「東映長編の名作」を観た②

2018年06月30日 | アニメ・特撮
トークは「今回の作品は全て35ミリフィルムによる上映」と説明。

そうそう、お二人が登場される前に新文芸坐館長からの説明で、
『わんぱく王子の大蛇退治』のフィルムは国立映画アーカイブの
提供によるもの…と伝えられた。
東映にも無いのだそうだ。



「東映に許可取って国立映画アーカイブと手続きして…大変手間が
掛かっております!」と強調され、思わず苦笑気味に拍手した観客
一同でしたが、それだけの作品である事は間違いありません。

叶+小黒コンビも「35mm上映は後10年くらいで無くなるんじゃ
ないですかねぇ」なんて語っておいででした。

『わんぱく…』のみならず今回の上映作は、みな状態がイイ…と。
昔、自分たち(司会者)が見ていたより色味がイイ。

ホルスなんて普通の画面さえ赤かった。赤アカしていた。

「時代だけに…なんて冗談は言いませんよ!」とは小黒氏(笑)。
※ここで「東映労働争議の時期だったもんなぁ」と笑うのは、
 ベテラン・ファン!



あとは、各作品に関して。
『わんぱく王子の大蛇退治』

東映長編の名作として必ず上位に挙がる。1位にランクする人も多い。
キャラクターに関しては、線を少なく、動かし易くしてある。

(日本神話を題材にしているだけに)平面的・日本画的な背景美術。
作り方としては「クシ団子式」。各アニメーターに任され、バトン
リレー式に繋がっていく。
それに従い構図も立体的に変化するなど、それぞれの個性が表れる。



~とはいえ、最も長いのが大蛇との戦い。

大塚康生さんと月岡貞夫さんが手掛けたが、天才と言われた月岡氏は
「真下からの絵を描きたい」など、これまで誰もやらなかった構図等
次々とアイディアを出してきた。

先輩の大塚康生さんは「よし!やってみろ」と、どんどんやらせた。
その結果いま見ても凄いシーンの連続になった。



急上昇するシーンを上から撮るようなカットなど、派手なシーンは
月岡貞夫さん。
岩が落ちたり、水しぶきが上がったりの地味だけど大変なカットは
大塚康生さん。
月岡さんは地味なのは描きたがらなかったという。

※これには驚いた!私がひたすら「さすが大塚さん!」と心で叫んで
 いたシーンだからだ。

 ただし、最初に「すげっ!!」と思ったのは大きな岩が動いて川に
 落ち、巨大な飛沫が上がるシーン。
 これだけで大蛇がどれほど強大で恐ろしいかが見事に表現されて
 いたもんなぁ。

 しかし地味シーン嫌がるなんて典型的な天才型じゃないか…。

大蛇のシーンが長くなり元のタイトル『虹のかけ橋』は変更になった。
『わんぱく王子の大蛇退治』オチ言っちゃってるじゃないか…と。

「終盤は怪獣映画ですよね」「…怪獣映画ですよ」。
東宝の特撮ものと並べて上映する映画館もあったとか。
「音楽も伊福部昭ですもんね」…と、ここでやっと巨匠登場です。



ちなみに監督の芹川有吾さん(当時は「演出」名義)は日本アニメ史上
最重要人物というのが小黒さん達の共通認識。

ただし、のちの作品(マジンガーZや魔法使いサリー等)とは、幾分か
作風が異なる。そもそも『わんぱく王子…』のような作品はその後出て
来ていない。

「ライブアクション」も随分アナログで、実際は騒がれるようなことは
やっていなかった…との事。

~記憶が前後したりしてるし、記憶違いもあると思いますが、『わんぱく
王子の大蛇退治』に関するトークは、こんなものだったと思います。

大変ためになりました!

新文芸坐×アニメスタイル セレクション「東映長編の名作」を観た①

2018年06月30日 | アニメ・特撮
新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol. 104「東映長編の名作」

2018年6月30日(土)
池袋新文芸坐オールナイト上映イベントです。
東映動画(現・東映アニメーション)の初期長編アニメーションから、
名作中の名作を4作品、いずれもアニメファンなら観ておきたい作品
…という事で、久々に池袋新文芸坐に行きましたよ。



以前の『片渕須直ナイト』でオールナイトの厳しさは思い知った筈
なのだが。

※後半ウトウトしてしまい、「やっぱ、もうトシじゃわい」…と



やはり、『わんぱく王子の大蛇退治』『太陽の王子 ホルスの大冒険』
『長靴をはいた猫』『どうぶつ宝島』の4作品上映は強力だ。

そして上映前に、映像研究家叶精二氏とアニメスタイル編集長の小黒
祐一郎氏のトークコーナーがあるという事で…行きたい衝動を抑えら
れなくなったのだ。



事前にチケット購入し整理番号を確認。集合時間は当日22:15。
当日は日が昇ってる時間も可能な限り寝た。夕方から夜も寝た。

時間ギリギリでマルハンビル3階の池袋新文芸坐に到着。
指定席制ではない同劇場、整理券順に入場し、それなりに前方の席に
座れた。



まず、上映前のトーク。
映像研究家で、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表の叶精二氏と、小黒氏が
登場、テーブルに着いて遣り取りが始まった。

~と言っても旧知の仲。
「さて、叶さん。東映長編って何でしょう?」などという質問して、
叶氏を「そこからですか!?」と驚かせる小黒さん。



そんな事は百も承知な客層でしょ…と言わんばかりの叶氏。
小黒氏の「そうそう、全作見てるよって人?」という質問にも結構な
人の手が上げる。
「全部初めて」という人もボチボチ。
※私は2作品見てます。



「いっぱい入りましたね」と喜ぶお二人。
「これも『片渕須直特集』が満員になってるおかげですね」なんて
コメントも小黒さんから飛び出しましたよ。