’08/03/28の朝刊記事から
北朝鮮が韓国当局者追放
「脱融和政策」けん制
総選挙への影響狙いか
【ソウル27日井田哲一】北朝鮮が27日、開城(ケソン)工業団地の南北交流協力事務所に常駐する韓国政府当局者を追放した問題について、韓国内では、4月9日の韓国総選挙を意識し、対北朝鮮融和政策からの転換を図った李明博(イミョンバク)政権に対する北朝鮮側のけん制との見方が広がっている。
北朝鮮は「核問題の解決なしに開城工業団地の拡大は難しい」との金夏中(キムハジュン)統一相の19日の発言を問題視し、27日未明に韓国政府当局者11人全員を追放した。
北朝鮮が李政権の対北朝鮮政策に対し、具体的な行動を示したのは初めてだ。
李大統領は同日、外交安保政策調整会議を緊急招集し対応を協議。
青瓦台(大統領府)の報道官は記者会見で「南北経済協力の発展に障害となる遺憾な出来事。(実利重視の)実用的な立場で対処する」と述べた。
2月末に発足した李政権は、盧武鉉(ノムヒョン)前政権の対北朝鮮融和政策を転換、核問題や拉致被害者の人権問題などの解決を最優先させる政策を取っている。
北朝鮮側が譲歩、協力すれば、韓国側も経済支援を行うとする「相互主義」だが、これに満足しない北朝鮮のメディアは李大統領の名前には直接言及せず、「保守執権勢力」などとして批判を強めていた。
今回の追放劇について聯合ニュースは「李政権下で南北関係が不安定になるとのメッセージを伝え、総選挙に影響を与えようとしている」と指摘。
「総選挙で融和政策への支持勢力に協力しようという意図がある」との北朝鮮専門家の見方を紹介した。
また夕刊紙、文化日報は「総選挙に相当な影響を与える」と分析。
融和政策への賛否をめぐって与党のハンナラ党と野党の統合民主党の間で論争が起き、総選挙の重要テーマのひとつに浮上する可能性を指摘した。
一方、民主党の報道官は27日、「李政権の間違った実用主義が南北協力事業を誤った方向に行かせた」と批判し、選挙戦で攻勢をかける考えを示した。