'08/08/10の朝刊記事から
影落とすNATO拡大
グルジア・南オセチア紛争
ロシアの軍事介入で戦闘が激化したグルジア・南オセチア紛争の背景にあるのが北大西洋条約機構(NATO)拡大だ。
帝政ロシアやソ連政権に支配された怨念を背景にNATO加盟を急ぐグルジアと、NATO拡大に反発するロシア。
米国などNATO諸国の兵器で軍拡を進めたグルジアとロシアの戦闘は、米ロの覇権争いでもある。
グルジア 加盟急ぎ親米路線
南オセチア ロシアが独立助長
「ロシアは歴史的にカフカス住民の安全の保証人だったし、そうあり続けている」。
分離・独立を主張する親ロシアの南オセチア自治州にグルジア軍が進攻したことを受け、リベラル派と目されるメドベージェフ・ロシア大統領が緊急招集した安全保障会議で吐露したロシアの歴史観だ。
しかしグルジアの歴史観は逆だ。
カフカスの有力民族でありながら19世紀にロシア帝国に併合され、ロシア革命後に独立宣言したものの、赤軍の侵攻でソ連加盟。
ロシアを「侵略者」と見なしてきた。
ソ連崩壊後は元ソ連外相のシェワルナゼ氏が指導者としてロシアと距離を置く外交を進め、政変「バラ革命」を経て2004年に就任した親欧米のサーカシビリ大統領はNATO加盟路線を強力に推進した。
サーカシビリ大統領は米軍主体のイラク駐留多国籍軍にグルジア軍を派遣し、米国にNATO加盟の意欲を強烈にアピール。
今年1月の2期目の就任式で行われた軍事パレードでは、ロシアの自動小銃カラシニコフから米国製の銃に装備を替えた兵士が参加した。
「グルジアには、この地域で最も小規模だがよく訓練された装備された軍隊がある」。
サーカシビリ氏は7月、国内で行われた米国などとの合同軍事演習を視察してこう語った。
8日のイズベスチヤ紙によるとグルジアは過去4年間で軍事予算を約30倍に拡大。
無償も含めたグルジアへの兵器供給国には米国のほかトルコやイスラエル、ウクライナなども挙がっている。
グルジアは、石油など豊富な天然資源の開発が進むカスピ海沿岸から国際市場向けのパイプラインが通る戦略的要衝。
東欧でのミサイル防衛(MD)施設建設計画を巡っても米国と対立するロシアは、グルジアへの影響力確保に必死だ。
ロシアは南オセチアの多くの住民にロシア国籍を与え分離・独立の動きを助長してきただけに、グルジアの進攻を受けて危機にさらされた「同胞」を見捨てれば、国内で政権が批判を浴びることにもなりかねない。
ロシアの軍事評論家フェリゲンガウエル氏は、「ロシアとグルジア館の流血を伴う本格的な戦争になりそうだ」と話している。
撮影機材
Kodak DC4800