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吉田修一
『東京湾景』★★★★
実家の本棚から持ち帰り。
2003年発売ということは、16年ぶりに再読!?
そんなに経過しているとは思えないから再々読かも。
舞台の湾岸に住んでいた時に読んだ気がする。
しかし記憶は定かではなく、こんな内容だったのかと。
現状うなずける箇所や沁みる言葉が多々ある。
再読のおもしろさは、その当時と感じ方そして気づきが違うこと。
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「‥‥‥人ってさ、そうそう誰かのこと、好きになれないだろ?俺、あの人と別れてからそう思った。誰かのことを好きになるって、俺に言わせりゃ、自分の思い通りに夢をみるくらい大変で、なんていうか、俺の気持ちのはずなのに、誰かがスイッチ入れないとONにならないし、逆に誰かがスイッチ切らないとOFFになってくれない。好きになろうと思って、好きになれるもんじゃないし、嫌いになろうと思ったって、嫌いになれるもんじゃない‥‥‥」
「どうしてだろう‥‥‥。私って、いつもは思ってることの半分も言葉にできないのにどうして男にフラれるときだけ、こんなに正直にいろんなこと言えるんだろう」
そんなふたりが、何も知らぬふりをして今さら会って、何が始まるというのか。
そのときを愉しめばいいと言う人もいる。先のことを考えず、ただそのときを愉しめ、と。
でも、ふたりはもう十分にそのときを愉しんだ。もう、先のことしか、先にはないのだ。
もう、待ち合わせ場所に現れなかったからと言って、心配してくれるわけではないのだ。そして、もう、待ち合わせ場所に来たからと言って、喜んでもらえるわけでもないのだ。人を好きになった気持ちなんて、必ずいつかは薄れてしまう。
先に男のほうが薄れる場合もあれば、先に女のほうが薄れてしまうこともある。
先に気持ちのなくなったほうが相手に追われ、気持ちの残っているほうが、なんだかんだと愛を語る。
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気持ちが破綻した夜にドライブした時の夜景
たまにSWが入って止められなくなるわたし・・
時代が違うけどこの小説にぴったり。