山本周五郎
『松風の門』★★★★
や - 2 - 23
新潮文庫を順々に読み進める。
そろそろ30冊ぐらいになるかしら。
--------(抜粋)
幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの"の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの"の傑作「釣忍」、他に「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録
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めずらしく最初が表題作
・松風の門
武家物で初期の作品かなと思ったらビンゴ
武士という生き方にため息が出てしまう作品です。
命の重さの違い 生き方の違い ピリピリとその一瞬一瞬が尊い。
---(『月夜の眺め』)
「士はおのれを知る者のために死す、というくらいで、侍は一身一命をなげうって主君に仕えるものだ」
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・鼓くらべ
こういう老人は実は大物・・ってパターン
・狐
見えない不確定要素(SF的 又は神話妖怪的 心理的恐怖)
それをかたちあるものとし事実として提示
中々賢いし、分かりやすく誰もが信じて、スッキリ解決!
このあたりまでショートショート
・評釈堪忍記 ★★★★
(「新読物」昭和22年12月号)
出た!爽快滑稽物です!!
・湯治
デジャヴ・・と思ったら『おたふく』三部作でした。納得
(この時点で巻末の木村さんの解説も同様だった→お友達に写メ)
・ぼろと釵
居酒屋での一場面物(と言うらしい)
主としている張本人が実はその現場にいる「ビンゴ!」
これは伏線として気になる、少し引っかかる人がそうだったりする。
今回は一途な男性の想い溢れる物語
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「ばかばかしい、よさねえか、医者がなんでえ、医者が、医者なんてもなあなんにも知っちゃいやしねえ、酒はな、酒てえものは、人間の拵えた物の中で第一等だ、さればこそ神さまにもあげるし、酒がおめえ悪いもんなら、神さまにあげるわけあありゃしねえ」
「そうだよ、おめえの云うとおりだよ、父つぁん、ほんとうにそのとおりだと思うよ」
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ふむふむ 一理あり・・(苦笑)
・砦山の十七日 ★★★★
(「サンデー毎日」臨時増刊、昭和28年10月)
先日の『椿三十郎』(原作『日日平安』)を彷彿とさせる一作
極限状態の男女の結末はいかに!!??
もし自分だったら?なんて一息、余裕があると考えてしまう。
色々な要素から考えられる観察眼を信じるか?
・夜の蝶
こちらも『ぼろと釵』同様一場面物
たった一人の老人の言葉に救われる。
・釣忍 ★★★
(「キング」昭和30年8月号)
「つりしのぶ」とは?
竹などに苔を巻きつけ、シノブと呼ばれるシダ植物の根をエナメル線を用いて固定させ観賞用にしたものです。
軒先に吊るして涼を呼ぶつりしのぶは、江戸時代から庶民に親しまれた夏の風物詩です。
どこの世もお家問題は付いて回る。特に江戸時代は身分制度ガッチリ
自分の意思だけじゃどうにもならないことがある。
そこを上手く突破して幸せになってほしい。
・月夜の眺め
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「貧乏をすれあ侍も町人もありゃしねえ、おめえがそんなことを云うのは本当の貧乏を知らねえからだ」
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・薊
実験的小説らしい。
ちょっとした官能的世界?
・醜聞
なめらかという言葉に不思議と惹かれる。
「なめらかに話した」
・失恋第五番
現代物 黒林騎士のペンネームにて発表
中々読ませる一作でした。
「堪忍袋」また出た!
戦後 特攻隊がキーワード