金曜日、雨が降りそうな気配を感じながら美容室に行った。私は雨の日に美容室に行く
のが好きだ。普通 カットやセットをしてもらうと雨に打たれたり湿気でくた~となる
のを嫌がって雨の日は行かないと思う(と勝手に思っているわけで)。ほかにも
雨だと案外お客さんが少ない・・という理由もある。いままでなら カットだけだった
のがここ何年かヘアマニキュアという 白髪隠しを始めたので時間と費用が二倍になっ
た。髪の毛の中まで染めないのでひと月くらいから色落ちするけど 頭皮と髪の毛を
痛めないのでやっている。
美容室のマスターは私より一つ上で 同じ串本高校の出身です。当時は串本高校でも
意外と生徒数があったので私はマスターを知らない。知らないけど 今の風貌に学生服
を着せたら 三階の窓から二階の廊下を歩いている姿を見たような。この日は 他に
お客さんも来なくて会話の途中で 懐かしい歌の話題になった。出だしがマスターが
「望楼の芝で野外コンサートをしたらええけどなぁ」だった。「サザンとか呼んで」
というので「それは無理だと思うけど、その考えは私もそう思う。それが回数重ねたら
イベントで人を呼べるようになるわね」と賛同したら「でも サザンでも茅ヶ崎の地元
の人はなかなか賛成せんかったらしいで。人が多く来過ぎたら収集つかんやろ。でも
成功したからよかったけど、あれは地元の人というか市役所関係の職員はタイヘンやっ
たで」と実情を知ったかのように言うので「フンフン」と聞いていた。
「むか~し、≪ブルーライト・ヨコハマ≫のいしだあゆみが串本に来たの知ってる?」
と聞くのでわざわざ曲名を前に付けずとも 年も変わらんのに知ってるやろ・・と心
で思いながら「うそー、それは知らんわ。なんかワンマンショーみたいな?」そうやな
当時ならコンサートとかライブとか言わず歌謡ショーとかワンマンショーと呼んだであ
ろうな・・。「いしだあゆみが・・・」と感心していたら「観にいってきた!」とマス
タ―は少し 自慢っぽく笑っていた。「でも、それって昭和40年代やろ、どこで
やったん?」と聞くと「町立体育館・・・いや!串高の体育館。体育館に来たんや。
つい床にブルーシート敷いてそこに座って観たんや」体育館にブルーシート・・・
昭和の時代らしい。「それでも観に来た人はちゃんとすわって聞いたんや。それに
舞台だけで歌うんじゃなくその床に歩いてくる花道みたいなのができていて、そこを
歩いてくるわけ」「ほほー!向こうから手を差し出してきたらキンチョーやね、まさか
引きずりこんだりせんやろけど」というと笑う。「宮田輝って知ってる?」「知った
あるよ、NHKで≪ふるさとのなんとか≫って全国回ったりするのやってたし司会者して
たやん」私も古いことを知ってるもんだ。宮田輝は すごく人気あったんでしょ、お年
寄りに。番組の視聴率も高かったけど 参議院議員になったんでしょ。「それも番組で
来て、その時も高校の体育館で観に行ったんや」って自慢かよ~と思ったんで
「串本に舘ひろしが来たの知ってる?」と自慢していうと「知らんわ。こっちにおらん
かった頃やな」「そうやね78年から80年くらい。竹内まりやも新宮に来たんやで。
その時のチラシが出てきて、私もビックリしたんや!」と自慢してみた・・が、マスタ
ーは興味無さそう。いしだあゆみよりビッグネームだと思うんだが・・・・
マスターは「○○さん(凹のこと)、学生時代どんな歌手とか歌を聞いていたん?」と
「甲斐バンドと長渕剛。たまにさだまさしとか」「甲斐バンド、長渕・・懐かしな」
「長渕はまさかあ~なると(いまのマッチョな)思ってなかったしぃ。あの細いのが
良かったんやのに」「髪の毛ピンピンして」さすが美容師、そこに目を置くか!と驚き
「あれはロッド・スチュワートを真似てたんや」「へぇそうなんや。たしかに髪型は
ストレートで」「いまはな~、体もゴツイしギターの弾き方も全然違うし」そう、そう
なんよ。おぉ!少し話題が合致するようになってきた。「甲斐バンドはおれも好きでね
友達が飲みに行って誰もなかったら甲斐バンドの歌を歌うんや」と懐かしい曲名をツラ
ツラと並べていく。私も曲名を言おうとするけど 最近聞いてないので一押しの≪バス
通り≫しか出てこない。あの歌もこの歌も 若い乙女時代には(若いと乙女は同じやな
いか)毎日のように聴き、当時はFM大阪をエアジャックしたもんだ。流行りの深夜放送
を聞くこともなく、ヘッドホンでカセットテープを聞いたあの女子寮時代を思い出す。
マスターは「仕事が終わってたまに友達が来てここで音楽を聴くことがあるんや。ライ
トは赤やろ、でアルコール飲んで」「薄暗くしてたら外から見たら バーみたいやん」
「そうやろ、そう見えるやろ」と嬉しそうだ。で借りたのを焼いたのはいいけど、プリ
ントしてから返すつもりが忘れてしまったので、曲名がわからんのや」と言いながら
それまでつけていたテレビを消して CDに焼いた甲斐バンドを流した。「あ~懐かし!
車でカセットテープ(私の車はアナログでカセットデッキなのだ。CD/MDデッキはオプ
ションで割高だったのだ)で聞くと そっちに神経がいって集中できないんや最近」と
私は笑う。おまけにテープも伸びていきつつある(のでMPSとかいうのでCDにしたい
テープは山ほどあるけど、それを一つ一つ変換すんのがすっごくめんどくさい!と思っ
ている今の私。「コンサートとか行った?」「甲斐バンドの神戸に行く予定でいたけど
急用で行けず、友達にチケットを売ってもらった(会場近くでたしかチケットのない、
女の子に買ってもらった、もちろん定価で)」「残念やったね。おれは≪そばかすの
天使≫が好きやなぁ。≪裏切りの街角≫をラジオで聞いてすぐ調べたんや。あの出だし
が今までの音楽と違うもんなぁ」「甲斐バンドはヒット出して、知られてしまったから
あれがなかったらと思う」「≪安奈≫やろ、売れたもんなぁ」BGMは懐かしい甲斐バン
ドの歌が・・・。あぁ、歌えるのに題名が出てこない。甲斐のあの声がよかったし、
歌詞もよかったな・・・。「吉田拓郎の≪落陽≫の・・しぼったばかりの夕陽の赤が
水平線からもれてくる・・・あれってわかるやろ?」「うんわかる!」マスターは潮岬
生まれである、きっと小さいときから太平洋に沈む夕日とその赤色が山に囲まれて育っ
た私より、歌詞の鮮烈さが浮かぶんだと思う。「私、拓郎も行ったよ」拓郎が昔の歌を
歌わない頃の、コンサートだ。LP「ローリング30(サーティ)」だったか・・。
大阪の厚生年金会館だったな。「最近、昔の歌を歌うやろ、でも声が出んかったり、
それを隠すために・・・」「隠すために練ったり、タメテ歌ったりやろ?」「そうそう
あれはやめてくれよなぁ~やな」「そう思う」≪そばかすの天使≫が流れる・・・
「あ、でもこの歌私の録音した中にないわ」「そうか、今度○○さんに焼いといたる」
「え!嬉しいけどかまんの?」「よく 焼いてあげたりするんや」「お客さんで40歳
過ぎてアルフィーにハマった人がいて、全国ツアーに行ってる人おるで、子供と一緒
でファンやて。ほかにもチャゲ&飛鳥、もう二人で歌ってないけどそのファンやった人
とか」「解散せんと残ってるバンドがある人はいいね~」・・と二人で甲斐バンドを
聴いていた。「じゃ、今度から甲斐バンドをずっと流してもらおうか?」と冗談で言う
と「あぁ、流したるわ」それはまことにうれしいじゃないですか・・・帰り際「きょう
は懐かしい歌を聴けて、遠い昔 甲斐バンド好きの友達と部屋で聴いていたことを
思い出し、キュンキュンしたわぁ」と言ったら「キュンキュンしたのなら よかったわ
また聴いたらいいで」と言ってくれた。その夜 カセットを探したけどやはり≪そばか
すの天使≫の入ったテープはみつからず、少し凹み からのテープケースに『甲斐バン
ド』と書かれているのに中身がないものとか、ショックでまた凹む。そうだな、
今度マスターと潮岬・望楼の芝に甲斐よしひろを呼び野外コンサート!ってのを計画
する・・という架空企画をヘアカット・ヘア・マニキュアのあいだに持ちかけて遊ぶの
もおもしろいかも。甲斐バンドの話が合うってあまりであったことがなかったので、
新鮮で楽しいひとときだった
のが好きだ。普通 カットやセットをしてもらうと雨に打たれたり湿気でくた~となる
のを嫌がって雨の日は行かないと思う(と勝手に思っているわけで)。ほかにも
雨だと案外お客さんが少ない・・という理由もある。いままでなら カットだけだった
のがここ何年かヘアマニキュアという 白髪隠しを始めたので時間と費用が二倍になっ
た。髪の毛の中まで染めないのでひと月くらいから色落ちするけど 頭皮と髪の毛を
痛めないのでやっている。
美容室のマスターは私より一つ上で 同じ串本高校の出身です。当時は串本高校でも
意外と生徒数があったので私はマスターを知らない。知らないけど 今の風貌に学生服
を着せたら 三階の窓から二階の廊下を歩いている姿を見たような。この日は 他に
お客さんも来なくて会話の途中で 懐かしい歌の話題になった。出だしがマスターが
「望楼の芝で野外コンサートをしたらええけどなぁ」だった。「サザンとか呼んで」
というので「それは無理だと思うけど、その考えは私もそう思う。それが回数重ねたら
イベントで人を呼べるようになるわね」と賛同したら「でも サザンでも茅ヶ崎の地元
の人はなかなか賛成せんかったらしいで。人が多く来過ぎたら収集つかんやろ。でも
成功したからよかったけど、あれは地元の人というか市役所関係の職員はタイヘンやっ
たで」と実情を知ったかのように言うので「フンフン」と聞いていた。
「むか~し、≪ブルーライト・ヨコハマ≫のいしだあゆみが串本に来たの知ってる?」
と聞くのでわざわざ曲名を前に付けずとも 年も変わらんのに知ってるやろ・・と心
で思いながら「うそー、それは知らんわ。なんかワンマンショーみたいな?」そうやな
当時ならコンサートとかライブとか言わず歌謡ショーとかワンマンショーと呼んだであ
ろうな・・。「いしだあゆみが・・・」と感心していたら「観にいってきた!」とマス
タ―は少し 自慢っぽく笑っていた。「でも、それって昭和40年代やろ、どこで
やったん?」と聞くと「町立体育館・・・いや!串高の体育館。体育館に来たんや。
つい床にブルーシート敷いてそこに座って観たんや」体育館にブルーシート・・・
昭和の時代らしい。「それでも観に来た人はちゃんとすわって聞いたんや。それに
舞台だけで歌うんじゃなくその床に歩いてくる花道みたいなのができていて、そこを
歩いてくるわけ」「ほほー!向こうから手を差し出してきたらキンチョーやね、まさか
引きずりこんだりせんやろけど」というと笑う。「宮田輝って知ってる?」「知った
あるよ、NHKで≪ふるさとのなんとか≫って全国回ったりするのやってたし司会者して
たやん」私も古いことを知ってるもんだ。宮田輝は すごく人気あったんでしょ、お年
寄りに。番組の視聴率も高かったけど 参議院議員になったんでしょ。「それも番組で
来て、その時も高校の体育館で観に行ったんや」って自慢かよ~と思ったんで
「串本に舘ひろしが来たの知ってる?」と自慢していうと「知らんわ。こっちにおらん
かった頃やな」「そうやね78年から80年くらい。竹内まりやも新宮に来たんやで。
その時のチラシが出てきて、私もビックリしたんや!」と自慢してみた・・が、マスタ
ーは興味無さそう。いしだあゆみよりビッグネームだと思うんだが・・・・
マスターは「○○さん(凹のこと)、学生時代どんな歌手とか歌を聞いていたん?」と
「甲斐バンドと長渕剛。たまにさだまさしとか」「甲斐バンド、長渕・・懐かしな」
「長渕はまさかあ~なると(いまのマッチョな)思ってなかったしぃ。あの細いのが
良かったんやのに」「髪の毛ピンピンして」さすが美容師、そこに目を置くか!と驚き
「あれはロッド・スチュワートを真似てたんや」「へぇそうなんや。たしかに髪型は
ストレートで」「いまはな~、体もゴツイしギターの弾き方も全然違うし」そう、そう
なんよ。おぉ!少し話題が合致するようになってきた。「甲斐バンドはおれも好きでね
友達が飲みに行って誰もなかったら甲斐バンドの歌を歌うんや」と懐かしい曲名をツラ
ツラと並べていく。私も曲名を言おうとするけど 最近聞いてないので一押しの≪バス
通り≫しか出てこない。あの歌もこの歌も 若い乙女時代には(若いと乙女は同じやな
いか)毎日のように聴き、当時はFM大阪をエアジャックしたもんだ。流行りの深夜放送
を聞くこともなく、ヘッドホンでカセットテープを聞いたあの女子寮時代を思い出す。
マスターは「仕事が終わってたまに友達が来てここで音楽を聴くことがあるんや。ライ
トは赤やろ、でアルコール飲んで」「薄暗くしてたら外から見たら バーみたいやん」
「そうやろ、そう見えるやろ」と嬉しそうだ。で借りたのを焼いたのはいいけど、プリ
ントしてから返すつもりが忘れてしまったので、曲名がわからんのや」と言いながら
それまでつけていたテレビを消して CDに焼いた甲斐バンドを流した。「あ~懐かし!
車でカセットテープ(私の車はアナログでカセットデッキなのだ。CD/MDデッキはオプ
ションで割高だったのだ)で聞くと そっちに神経がいって集中できないんや最近」と
私は笑う。おまけにテープも伸びていきつつある(のでMPSとかいうのでCDにしたい
テープは山ほどあるけど、それを一つ一つ変換すんのがすっごくめんどくさい!と思っ
ている今の私。「コンサートとか行った?」「甲斐バンドの神戸に行く予定でいたけど
急用で行けず、友達にチケットを売ってもらった(会場近くでたしかチケットのない、
女の子に買ってもらった、もちろん定価で)」「残念やったね。おれは≪そばかすの
天使≫が好きやなぁ。≪裏切りの街角≫をラジオで聞いてすぐ調べたんや。あの出だし
が今までの音楽と違うもんなぁ」「甲斐バンドはヒット出して、知られてしまったから
あれがなかったらと思う」「≪安奈≫やろ、売れたもんなぁ」BGMは懐かしい甲斐バン
ドの歌が・・・。あぁ、歌えるのに題名が出てこない。甲斐のあの声がよかったし、
歌詞もよかったな・・・。「吉田拓郎の≪落陽≫の・・しぼったばかりの夕陽の赤が
水平線からもれてくる・・・あれってわかるやろ?」「うんわかる!」マスターは潮岬
生まれである、きっと小さいときから太平洋に沈む夕日とその赤色が山に囲まれて育っ
た私より、歌詞の鮮烈さが浮かぶんだと思う。「私、拓郎も行ったよ」拓郎が昔の歌を
歌わない頃の、コンサートだ。LP「ローリング30(サーティ)」だったか・・。
大阪の厚生年金会館だったな。「最近、昔の歌を歌うやろ、でも声が出んかったり、
それを隠すために・・・」「隠すために練ったり、タメテ歌ったりやろ?」「そうそう
あれはやめてくれよなぁ~やな」「そう思う」≪そばかすの天使≫が流れる・・・
「あ、でもこの歌私の録音した中にないわ」「そうか、今度○○さんに焼いといたる」
「え!嬉しいけどかまんの?」「よく 焼いてあげたりするんや」「お客さんで40歳
過ぎてアルフィーにハマった人がいて、全国ツアーに行ってる人おるで、子供と一緒
でファンやて。ほかにもチャゲ&飛鳥、もう二人で歌ってないけどそのファンやった人
とか」「解散せんと残ってるバンドがある人はいいね~」・・と二人で甲斐バンドを
聴いていた。「じゃ、今度から甲斐バンドをずっと流してもらおうか?」と冗談で言う
と「あぁ、流したるわ」それはまことにうれしいじゃないですか・・・帰り際「きょう
は懐かしい歌を聴けて、遠い昔 甲斐バンド好きの友達と部屋で聴いていたことを
思い出し、キュンキュンしたわぁ」と言ったら「キュンキュンしたのなら よかったわ
また聴いたらいいで」と言ってくれた。その夜 カセットを探したけどやはり≪そばか
すの天使≫の入ったテープはみつからず、少し凹み からのテープケースに『甲斐バン
ド』と書かれているのに中身がないものとか、ショックでまた凹む。そうだな、
今度マスターと潮岬・望楼の芝に甲斐よしひろを呼び野外コンサート!ってのを計画
する・・という架空企画をヘアカット・ヘア・マニキュアのあいだに持ちかけて遊ぶの
もおもしろいかも。甲斐バンドの話が合うってあまりであったことがなかったので、
新鮮で楽しいひとときだった