それは先週のこと、梅雨の晴れ間の午後母屋の門前に突如 カモが二羽やってきた。
ちょうど、服屋さんが移動販売に来ていておばあちゃんと三人で話をしていたんだけど、
何やら動くものに私が気づきおばあちゃんに「声を出したらあかんで」と前もって言い、
カモの見える場所に顔を向けてあげると、おばあちゃんもビックリ!服屋さんも「ええ?」
と見入ってしまった。ここで移動販売の服屋さん・・・というのに驚いてはいけない。
(古座川町は山深いので お年寄りのおばあちゃんたちは車に乗せてもらわないと串本や新
宮には買い物に行けない。だから、仕事着やおしゃれ着を車に積んで売りにくるのだ。
私の家は 車で買い物に行けるけど縁あって時々売りに来てくれる。前は新宮の三輪崎の
おばちゃんの服屋さんが 三尾川のおばあちゃんの里から紹介で我が家に夫婦で来てくれて
いたけど、旦那さんが亡くなっておばちゃんが運転免許を取ってあちこち回っていました。
そのおばちゃんも亡くなり、今度は串本にお店のあるおじさんの服屋さんが回ってくるよう
になったのだ。)
で、この二羽のカモはごく普通に、当然のような顔をしてだんだん近寄って来る。人間がい
たら逃げるか、遠ざかるはずなんだけど・・・と三人でああでもない、こうでもない。。と
話していたら、とうとう家の門まで来てしまった。こっちが足音をたてるとさすがに、プイ
っと下がっていくのだけど、こちらが動かずにいると鳴きながら寄って来るので私はカメラ
を取りにいったのだ。
どう見ても田んぼにいるカモだ。よく見ると手前のカモのくちばしは黄色くないが、後ろの
カモのくちばしは黄色い。俗に言う「くちばしの黄色いヤツ」というのは若造、未熟なこと
をいうのだが、見たかぎり手前のくちばしが黄色くないほうが落ち着きなく、というか行動
的というのか無謀にも人間に近寄って、黄色いほうが警戒しながら近寄ってはこない。体も
黄色いほうが大きいのだけど、どちらがオスかメスかはわからない。手前が羽をバサバサ動
かすけど拡げはしない・・・いったい何をどうして欲しいのだ?
とうとうここまで来てしまった。駐車場の花をつついたり クロタネソウの丸くなった種を
つついたりするのでおばあちゃんが「おなかすいてるのかも。パンはないし、こげのフード
食べるかな?」と言うと服屋さんが「そりゃいいの」というのでおばあちゃんがフードを
取りに家に。私は傍でしゃがんで見ていたら、地面を羽アリが一匹歩いていた。すると手前
のカモがくちばしでツイっとつまむか、吸いとるかのように食べてしまった。虫も食べるの
ね(そりゃ、田植えのあとに水田に入って虫を取ってるもんね)。おばあちゃんが持ってき
たのは、こげのおやつの犬用ビスケット。なかなか乾燥しきって固いのをくずして投げてみ
た。が、くわえてペッと吐きだしてきた、口に合わないらしい。「食べんなぁ。やっぱり
魚かな?」とおばあちゃん、「そりゃええの」と服屋さん。「魚かぁ・・・ゆうべの造りの
残り、ビンヨコ食べるかな」「そりゃ食べるの」(適当なアイヅチやな、と思った)。おば
あちゃんはまた家に戻って、今度はなかなか来ない。やっと来たと思ったら小皿にビンヨコ
を薄く一センチくらいに切っている。私に小皿を差し出し「やってみ」というので、近寄っ
てきたところに投げたら、すぐさま寄っては来たけど口に入れて素早くペッとした。海の
魚は嫌いらしい。
私の手のすぐむこうにいるので、手を出したらペタペタ寄ってきて指をつついてきた!
私はそんなこと初めてなのでビビったのだけど、なんか靴べら二枚に挟まれたような感触。
私の手も美味しくないらしい。このあと 物音で畑の向こうに飛んだのだが・・・・。
あとで、このカモたちは川向うの 前にこげとよく遊んでくれたHちゃん、Kちゃんの家の
庭先でパンをもらっているカモだと判明。どうりで、人懐っこいはずだ。そこでは庭先で
家の人が出て来るまで待ってるとか。そうか、家を間違えたのね・・と笑ったのだが、翌日
また来ていたらしい。というのは ただのバカなのかも・・カモしれない。
白い粒々はこげのビスケット
それからはというと、いちおうパンを用意して待ってるけど来ません。