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“ISOを活かす―67. 製品の監視・測定は顧客のため、プロセスの監視・測定は企業のため?”


今回は “予防処置が機能していない”ことに どのように対処するかがテーマです。

【組織の問題点】
ISO9001認証取している建設業のA社では、プロセスの監視・測定項目として、建設機械の点検や建設工事現場の安全パトロールをしています。社長は こういうISO9001に従ったやり方で、品質がよくなることを期待しているということです。
しかし、最近の定期審査で予防処置のプロセスが機能していないと指摘され、是正処置すら上手く機能していない状態で、予防処置など困難ではないか、と戸惑っているとのことです。

【磯野及泉のコメント】



著者・岩波氏は“製品の監視・測定で問題が発見された場合、それは不適合製品となり、それに対して是正処置をとります。” と指摘し、また、“プロセスの監視・測定の結果としてとる処置は、将来の不良の発生を予防する「予防処置」”につながるものであると 述べているだけで、現状のA社の機能不全の予防処置プロセスを どうするべきかについては、何故か 全く触れてくれていません。

さて“予防処置が困難”なA社の対応の何が問題なのでしょうか。
A社のプロセスの監視・測定項目が、“建設機械の点検”と“建設工事現場の安全パトロール” というのはいささか寂しいISO9001体制です。このような手段で、“品質がよくなる”と、A社社長は期待しているとのことですが、本気でしょうか。

ここで あらためて自らの事業の目的というか 何を基本機能として社会に役立とうとしたのか、自己再確認が必要な気がします。建設業のA社の業としての基本機能は何なのでしょう。この事例紹介では詳細は不明ですが、建設業であれば ①暗黙の要求事項を含む、明示された顧客要求事項を満足する建築物を作ることです。それは暗黙に求められる、或いは明示された耐久性のある建物であるべきでしょう。そのためには、少なくとも②建築基準法をはじめとする法規制や業界、または社内基準を満足しているべきです。また①に関連しますが、③建物完成の納期の順守も必要でしょう。(ISO9001 7.2.1)
そのための“プロセスの監視・測定”であれば、当然建設計画の履行状況の監視と、図面(当然検証されたもの)に対して適切に施工されているか、手抜き工事はないのかの監視が必要だと思われます。鉄筋・鉄骨は図面指示通りなのか、使用される生コンの状況は適切なのか、いわゆる設計監理が 必要でしょう。それが ISO9001でいう建築会社の“プロセスの監視・測定”でなければならないと 思うのです。
この手抜きについて 特に 近年話題騒然となったのも記憶に新しいことです。プロセスの監視が不十分な会社であったにもかかわらず 多くの問題企業はISO9001認証を取得していたことになります。
また、様々な要因で工期が遅れそうになった時、労働力の投入をどのように変更・強化するのか、それも予防処置になるのではないでしょうか。

特に、建設業では 不適合製品を うっかり作ってしまうことは許されません。いわば特殊工程のカタマリのような事業です。不具合が判明し、作り直しとなれば甚大な損害を被ることになります。従って、工程条件(プロセス)の監視と、それに引き続く妥当性の確認(ISO9001 7.5.2)、必要に応じて予防処置を注意深く積み重ねる必要があります。
また、結果としての予防処置は、既に、実際に やっているということであれば、それをどのように記録に残し、今後の業務改善に どのようにつなげる材料にするかという工夫をするべきだと思うのです。それが 建設業における “品質がよくなる”プロセスだと 信じます。

最後に、是正処置と予防処置の 言葉の意味を確認しておきましょう。以下にISO9000で述べられているそれらの定義を 関連する言葉の定義とともに示しておきます。少々 膨大になってしまいましたが、我慢して“是正処置”と“予防処置”を中心に読んでみてください。
ちなみに、是正処置プロセスを適切に運営できなければ、予防処置も上手く運営できるとは思えません。つまり、“不適合の除去”と“その原因の除去”を適切に実施できるのかがポイントです。“その原因の除去”すなわち抜本的対策が再発防止策となります。




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