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“ISOを活かす―75. コンサルタントに頼りすぎないことが、効果を上げるポイント?”


今回でこのシリーズは、本当に久しぶりですが、とうとう最終回です。これから ISO休戦としてはどういう企画を中心にやっていくか まだまだ定まっていません。次々と この本のようなISO運営上の問題点を提供してくれるものがあれば、それにいか様にも お答えできるとは 思っているのですが・・・・。
まぁ、とにかく今回は これまでとは趣を異にする内容となっていまして、ISO9001品質マネジメント・システム(QMS)構築の際のコンサルタントの起用の仕方についてです。

【組織の問題点】
A社は、複合経営で建設業、運送業、レストランなどいろいろな事業を行っています。建設部門は3年前にISO9001の認証取得したのですが、この時QMS構築に建設業出身のコンサルタントと契約し、品質マニュアルまで作成してもらったとのこと。
今度はレストラン部門がISO9001認証を取得することになったのですが、今度も品質マニュアルも作ってくれるコンサルタントを捜しているが、果たして いつまでもマニュアル作成までコンサルタントに依頼することが本当に効率的で良いことと言えるのかと A社社長は迷っているとのこと。どうするべきか、という課題です。

【磯野及泉のコメント】
私が A社の社長であれば、まず認証取得のコストというか、コンサルタントへの支払を軽減させることが 頭に浮かびます。そのためには これまでの経験を生かすことを重視します。経験の蓄積がないのは 企業としてはあまり好ましいことではありません。

そのためには、コンサルタントの心配をする前に、まず建設部門のQMS管理責任者を レストラン部門のQMS構築責任者に横滑りさせて1~2ヶ月程度 レストラン部門の事業状態を観察させます。その上で、建設部門の業務プロセスとレストラン部門のそれとの違いを報告させます。
その違いと、レストラン部門のISO9001マネジメントに不足するプロセスは何かを整理させ、その上で A社特有のやり方に合わせて どうするべきか報告させます。その際は レストラン部門責任者も同席させ、なすべきことを経営者である社長とともに3者協議します。社長以外は 複数の関係者であっても大いに結構です。
この場合、当然のことながらプロセス・アプローチの手法を使って、業務フロー図を活用することは言うまでもありません。

これらのことを、これまで建設部門のQMS管理責任者だった人が 全く対処できないようであれば、建設部門のISO9001のQMS構築が全く意味がなかったことになります。つまり 残念ながら、全く身に付いていないことになります。建設部門のQMSの運営方法を見直すべきかも知れません。場合によっては テコ入れのためのコンサルがここにも必要かも知れません。
しかし、自社がどういうレベルかは 日頃A社社長自身が 積極的・主体的に建設部門のQMSを運営しているかどうか監視(チェック、フォロー等)できていれば、よく分かっているはずでしょう。
そして、何らかの事情で レストラン部門のISO9001認証取得が急がれるのであれば、残念ながら“品質マニュアルも作ってくれるコンサルタントを捜す”ことを 優先せざるをえないでしょう。

もし、建設部門のQMS管理責任者だった人が 上手く報告してくるようであれば、次に建設部門の品質マニュアルのどの部分を どのように改訂すればよいかを考えさせ、同時にレストラン部門のISO9001マネジメントに不足するプロセスも どのように改善するべきか考えさせます。
そこで、どうしても妙案が浮かばないようであれば その時点でコンサルタントの起用を決めるべきでしょう。そうすれば 最初からコンサルタントを起用するより、かなりコンサル費用が節約できるはずです。つまり、調査や整理の工数が節約できているのです。

逆に、品質マニュアルの改定案まで 案出できるようであれば、これこそ レストラン部門のQMS構築の概要が出来上がった状態ですので、この段階で 確認の意味で コンサルタントを起用し、さらにそれを実施に移すため レストラン部門従業員によるプロジェクト・チームを結成し、細部の詰め、下位文書作成へと進めさせます。
後は 通常のQMS構築スケジュールと同様となります。

過去の建設部門の経験を生かせば、こんな風な構築スケジュールとなるのではないかと考えます。
また、経営者であれば これくらいの指導力は当然有ってしかるべきだと考えますが、いかがでしょうか。このことまでもコンサルタントに依頼するという、“依頼心”の強い経営者では 今後のA社は全く心配です。
ある内部統制の本に業務プロセスのフロー図が まともに描けるのは日本人では“10人に1人”と書いてあったのを見て驚いたことがあります。このように、業務プロセスのフロー図までは 描くことができない、という経営者が もし居られたとしても 自社の業務の流れくらいは 理解しておられるものと思います。その流れを箇条書きにしていただければ良いのですが、単なる箇条書きでは 業務の流れが 2,3本合流したり 枝分かれするような場合 表記が難しくなります。フロー図に描くということは 箇条書きができれば、その項目を矢印で結んでいけば出来上がるという 気楽な思いで作成すれば 誰にでも容易に描けるものと思っています。
コンピュータ・プログラミングの時のフロー図より 1個1個のプロセスは厳密でなくても構わないと思っています。
プロセス・アプローチと言っても 難しいことではなく、このようなことができればOKですし、このようにフロー図によって 可視化することで、新人の業務への理解が早まったり、ムダを見つけることが 誰にでも容易になるということなのです。

それに この辺りのことは 業務コア部分の話ですので、管理責任者と経営者が親しく相談するというのは、社内コミュニケーション上 極めて有用なことと思います。無闇に コンサルタントを起用しない効用は こういった面にもあります。

このように トコトン突き詰めた上で コンサルタントを起用すれば、自分達の理解の限界がどこにあったのか、明確になり その後の業務展開も やり易くなるという 大きなメリットがあるものと信じます。
このようにコンサルタントの起用をギリギリまで抑制するような やり方は 実は、成果を得易く、コンサルタント側としても気持ちよく対応できるものと思うのです。

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