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“ISOを活かす―42. レンタルした設備も適切に管理することによって、品質を確保する”


忘れていたかのように、久しぶりにISOマネジメントへの投稿です。これが当ブログの根幹にもかかわらず、久しく誤魔化しています。申し訳ありません。
実は、“ISOを活かす”シリーズへの投稿結果を整理していて、なぜか脱落していた 第42節に気付きました。そこで 慌てて投稿です。最終第75節の投稿を前に モタモタしています。
今回は アウトソースの一種と言える レンタル設備の管理が テーマです。

【組織の問題点】
昨年ISO9001の認証を取得した建築会社A社では、インフラストラクチャーとして“本社ビル、電気、水道、ガス、机などの事務備品、工事現場事務所および計測機器などがある”と品質マニュアルに規定されています。定期審査においてこれらのインフラストラクチャーが適切に管理されていることが確認されましたが、工事現場で使用されている建設機械は、レンタルであるため管理対象となっていませんでした。
ところが、このA社では、レンタルの建設機械の不良によって品質不良や事故が時々発生しています。こういった問題をISO9001の活用で解消できるでしょうか、という課題です。

【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏は ISO9001の6.3項の “製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされるインフラストラクチャーを明確にし、維持すること。” と4.1項の “要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースする場合には、アウトソースしたプロセスに関して管理を確実にすること。” という要求事項を引用しつつ、“レンタルした設備(建設機械)に対しても、適切な管理をすることが必要です。” と指摘しています。
そして“自社所有の建設機械の場合は、法定点検、日常点検、修理などを行いますが、レンタルした設備の場合は、法定点検や修理はレンタル会社が行い、自社のおもな管理業務は日常点検となるでしょう。この場合A社は、レンタル会社が法定点検を適切に行っているかどうかを、書類などで確認することが必要です。” と言っています。
レンタルの目的は、まさに、この法定点検や修理のコスト負担軽減です。
最後に “なおこの例の、本社ビルの電気、水道、ガス、事務備品などは、製品の品質に直接影響するものではないため、管理対象のインフラストラクチャーに含めなくてもよいでしょう。” とコメントしています。

このA社に対する ISO9001の解釈と適用のアドバイスは 著者・岩波氏の 指摘通りだと思います。

しかし、ここでISO9001適用の“管理対象としなくてよい” とされている “本社ビル、電気、水道、ガス、机などの事務備品” はISO14001では管理対象となる可能性が 高いので注意を要します。それ以外でも 企業が コンプライアンスや社会的責任CSRを 果たす上で 管理対象とするべきものがあるはずなので よく見極めて、どこまで管理対象とするのが良いか 考慮する必要があります。
また ISO9001の管理対象と それ以外のもので 管理手法を変えると 逆に 手間が増えたり、余計なムダが生じたりすることがあるので、“管理手法を変える”かどうか、十分な内容吟味と バランス感覚が必要です。

次に レンタル設備のあり方について ISO9001の解説から 少々 外れるコメントをさせていただきます。

昔から大工や職人の名匠は 自分の道具を大事にしていたようです。つまり 自分の仕事のコアの部分を支える道具は大切に扱い きちんと手入れするのです。この道具が借り物で、手入れもしなくて きちんとした仕事ができるでしょうか。このような考え方は古いと一笑に付して良いでしょうか。
この事例では 財務上の負担軽減のため、自らを特長付ける成果・製品を作る道具・設備に レンタルの機械を使用していますが、これで良いのでしょうか。この建設会社A社が どのような仕事にレンタルの建設機械を 投入していたかは不明ですが、少なくとも 自らのコア技術を支える部分は “自分の道具”でやるべきではないかと思うのです。

以前の 生産工場には 保全の専門家集団が 居て 機械・設備を きちんと整備していたものです。最近は 固定費負担を軽くするためにこの保全部隊を 別会社にしていることが 多いようです。そして 設備までもレンタルするようになってきています。単に財務的な形式上のレンタル設備であるのなら 許せるような気がしますが、そのようにすることで、オペレータが機械・設備の内部構造や機構・仕掛を十分に理解するきっかけを失い、機械・設備そのものを使いこなしていくという姿勢を取れなくなると 微妙なノウハウは育たなくなるのではないかと思うのです。
つまり、“自前”であることで それを扱うオペレータの道具・設備への愛着や こだわりが生まれるものだと思いますし、それがコア・スキルや技術確立の原点だと思うのです。道具・設備への愛着や こだわりと それを使って良いものを作りたいという意志が 工夫や 改善・改良を生む重要な原動力になるはずです。これが 他人の道具・設備を 使っていて生まれるとは思わないのです。

財務上危機に陥った 鉄道会社が 電車をリース対象にしたことが 話題になったことがありました。これが 一時的な 財務負担軽減のための限定的措置であれば 良いのですが 長期化、常態化するのは 良くないように思います。
社員にとって、リース対象設備だから 改善・改良に 手が出せないという意識が 蔓延すると 顧客に提供するサービスや技術・技能の劣化が 始まることが懸念されるからです。

それに、レンタルは財務上の要求といえども、固定費を変動費に替えて、バランス・シート上の見かけを良くしているだけで、“費用の先送り”になっているだけでないのか。長い目で見て 財務上でも結局は 底の浅い資産構成となることが その会社にとって本当に良いことかどうか大いに疑問です。最近の金融危機でも、“持たざる経営”の脆弱性が取り沙汰されるようになったのは、本来の財務健全さへの回帰ではないか思うのです。やはり、メーカーは正々堂々たる経営を行うのが本来の姿ではないかと思うのです。

人材のレンタル、派遣社員化も 問題だと思うのです。何事も 行き過ぎは禁物です。

このあたりの 現場のこだわり感覚が 理解できるかどうかも 経営者のセンスの問題だと思うのです。
企業パフォーマンスに影響を与える因子の 比較重要性の認識、ひいては会社運営の原則の確立、企業カルチャーの重要性が こういった部分にも 図らずも にじみ出るものなのだと思います。財務ばかりに目が行っていると こういった感覚を見失うのではないかと思うのです。
このように 一見 瑣末な問題に見えることに、実は重要な課題を秘めていることが、ISO9001をどのように適用するか考えることで、見えてきます。これは ISO9001の非常に大きな効用であると 私は思っています。但し、これには 経営者の自分の事業はこうでなければならないという確固たる原則と主体性が 前提になりますが・・・。

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