goo

自分の林住期を どうする?

少々以前のことになりますが、あるビジネス雑誌を見ていて 日野原重明先生のインタビュー記事に出会いました。
日野原先生は ご高齢の現役医師として有名ですが、これまで私は そのインタビューや著作に触れたことはありませんでした。そこで、どういう方なのか、その記事を読んでみたのでした。
90過ぎの ご高齢で現役バリバリにご活躍。にもかかわらず、睡眠時間は4~5時間。食事は1日1,300kcal、特に、昼食は ビスケット2枚に牛乳だという。そして、ご本人の ご意見では、医学的に見ても人の寿命は100を超えるものであり、50,60は まだまだ頑張れるはずだとの内容の記事だったように記憶しています。

昼食の“ビスケット2枚に牛乳”にはいたく関心を引きました。というのも 私は、最近 自分なりのダイエットに行き詰まりを感じていたからです。
昨年夏には 私の体重は64kgになっており、これは自分の限界を超えていると感じ、減量を決意。そこで、まずは昼食の給食弁当のご飯を 極端に少なくしたのです。これだけのことで かなり効果があり、ほぼ58kgにはなったのですが 目標の54kgには とどかず、出張などで環境が変わって食べ過ぎると60kgに近づく始末。腹部の周囲の脂肪は実は 若いときから付いていたので これを除去するには相当な努力が要るとは覚悟はしていましたが、それに以上の次の一手の必要性を感じていたところでした。それが 昼食“ビスケット2枚に牛乳”で、何とかなるかも知れないと思ったのでした。
実行するには 多少の不安はあるが、何せ 高名なお医者さんのやっていることなので、間違いはないだろうとの安心感はあります。この ダイエット作戦の成否は まだ緒に就いたばかりで、これから先のことになります。

さらに、これをきっかけに 日野原先生の本も読んでみたのが “生きるのが楽しくなる15の習慣” でした。(この中でダイエットは“習慣8*腹八分目より少なく食べる”、です。)
この本では先生は“習慣”の重要性について指摘されている。それは、先生がオスラーというイギリスの内科医のことを知ってからとのこと。“オスラーは生涯、「人間が健やかに生きるために不可欠なものは健全な習慣の形成」であるという考えを貫いた人”だそうで、それは古代 例えばアリストテレス以来受け継がれてきたヨーロッパ伝統思想とのこと。特に“良い習慣”は“一度身につけてしまえば、その人にとってはそれが当たり前の生活のリズムになり、自動的にその行動が繰り返されます。必要なのは、最初にちょっと力を加えて物体を動かすように、新しい習慣に一歩踏み出すこと。これが適度な運動や、バランスのとれた食事などの習慣であれば、その後の健康は約束されたようなものです。” いわば人生の慣性といったようなもので、それが継続されれば 良い利息を生むとおっしゃっています。
そして それまで“成人病”と呼ばれていたのを“生活習慣病”という呼称に 変えさせたのは、この日野原先生ご当人ということ、知りませんでした。

さらに 特に“健康な体をつくるのは、何よりも良い習慣の積み重ね”であるとして1965年に米国のプレスロウ教授が提唱したという“7つの健康習慣”を紹介しています。
①喫煙をしない。②飲酒を適度にするか、まったくしない。③定期的に激しい運動をする。④適正体重を保つ。⑤1日に7~8時間の睡眠をとる。⑥毎日朝食をきちんととる。⑦不必要な間食をしない。
私は ④に若干の問題あり。それから 日野原先生のように⑤も不十分、⑦が完璧とは言い難い。⑤が不十分なのは ブログ作成のためでもあります。まぁ 仕方ないことでしょうか。

さて 日野原先生は この本で大西洋横断飛行のリンドバーグの奥さんのアン・リンドバーグを紹介しています。その彼女が50歳を迎えた時、“私はこれから中年になるから、今後の人生を考え直したい”と、海辺で1週間1人暮らしで書いた“海からの贈物”という本があるという。そこで、彼女はそれまでの人生をじっくりと見つめ、それからの生き方をデザインした、とのこと。“個人差はあるものの、人間は50~60代までは、人生の設計図なしに生きていくことができます。”しかし、アン・リンドバーグは「50歳になったからには、これから人生の午後が始まる・・・・・」と言った由。“「午後」という言葉が示すように、彼女は、50歳までの人生と、これから先の人生を比較して、今後の人生の方が、ずっと長く、そして(人生の義務・雑事から)解放されていることを知っていたのだと思います。” さらに “(人生の午後について)どう生きたいのか。自分の時間や人生をどうデザインするべきかを考えることは、とても重要です。”とのご高齢の医師の言葉は重いものがあります。そして それを考える上での 人生の師やモデル、20年後の自分の理想の姿を想定することの大切さを指摘されています。

さて、この内容に重ね合わさるような本が 文庫本で再登場。それは五木寛之氏の“林住期”。つくづく、身につまされるテーマなので これも読みました。
表題の“林住期”について、冒頭に説明があります。“古代インドでは、人生を四つの時期に分けて考えたという。「学生期」、「家住期」、そして、「林住期」と「遊行期」。「林住期」とは、社会人としての務めを終えたあと、すべての人が迎える、もっとも輝かしい「第三の人生」のことである。”これらの 各期は25年で考えられており、林住期は50歳から始まるとしています。
これは アン・リンドバーグの“人生の午後を考える時期”と一致するように思います。

ここで、この本のさびの部分を引用ご紹介しますが 文庫本解説で 立松和平氏も 引用しています。
“できれば生活のために働くのは、50歳で終わりにしたい。社会への義務も、家庭への責任も、ぜんぶはたし終えた自由の身として50歳を迎えたいのだ。
生まれてから25年間は、親や国に育ててもらう。それから50歳までの25年間を、妻や子供を養い、国や社会に恩を返す。
できることなら、後半生を支えるプランを確立し、早くから50で身軽になることを宣言しておく。
50歳を迎えたら、耐用期限を過ぎた心身をいたわりつつ、楽しんで暮らす。それが理想だ”

確かに 私自身も50歳前後にして 大きな転機を迎えて 現在があります。この転機は まさにその後の人生を大きく規定しました。その規定された路線を どのように膨らませ発展させるのか、それも“良い習慣”を確立し、“耐用期限を過ぎた心身をいたわりつつ、楽しんで暮らす”には どのような“戦略”が最適なのか。自らの全てをかけた“戦略的発想力”が 問われるのです。

しかし、ここで心の持ち様が重要です。
日野原先生は“プラスイメージを描く習慣”のなかで ベルグソンの言葉“自分の運命は自分でつくっていけるものだ”を引用し、ポジティブな心で精一杯生きることを勧められていますが、一方では、“夜と霧” の作者フランクルの“幸福とは望んで得られるものではない。望むべきものでもない。それは結果として与えられるものだ”という重い言葉を紹介しています。自分の能力をかえりみずに、高望みするのは貪欲であり、“しょせんむなしいだけ”、との先生の指摘です。
“林住期”でも、五木氏は “大事なことは、人は努力しても必ずそれが酬われるとは限らない、と覚悟すること”と 同様のことを言っている。“すべてに対して愛を惜しみなくそそいだ人が、なんともいえない不幸にみまわれることもある。悪が栄えて、正義が敗れることもある。それを「苦」というのであって、「苦」とは、生きることは辛いことだという歎きの悲鳴ではない。「苦」の世界の中で、「歓び」を求める。真の「生き甲斐」をさがす。それを「林住期」の意味だと考える。”
この点、見落とし勝ちな人生の要諦なのかも知れない。
まぁ、考え過ぎもよくないかも知れないが 要は “結果を求めるな、プロセスを楽しめ!人生は困難なプロセスなのだ!”なのでしょう。しかし、結果が無ければ何のために生きているのか分からなくなる。特に PDCAを思考原則にしている者にはベースが崩れるような思いです。ここが 難しいところです。だからと言って、“自ら 計らわず”で酷い状況に陥る訳にも行かない。“困難の中でも、結果を恐れず、正しいプロセスを嬉々として一人歩む”、と言ったところでしょうか。
とにかく、“結果を見れる人は いわば「幸福な人」” と言えるのかも知れない。多くの芸術家は結果を見れずに亡くなっているが “幸福”だったのだろうか。いや、納得の行く作品を仕上げた時、その時が至福の瞬間だったのでしょう。
ならば、それは“究極の自己満足”の世界なのかも知れない。しかし、それで 良いのだろうか・・・・・。

コメント ( 4 ) | Trackback ( )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “ISOを活かす―... バイオ燃料再考 »
 
コメント
 
 
 
臨終期の間違いでは? (通りすがり)
2008-12-02 07:48:52
臨終期の間違いでは?
タイトルそのまんまです・・・
 
 
 
間違い? (磯野及泉)
2008-12-03 10:35:03
ゴリンジュウ?
はっはっはっ、尾も白いノゥ
ナマンダブツ、ナマンダブツ・・・・・・・
 
 
 
健康第一 (ユーさん)
2008-12-15 08:44:39
健康管理の最善の努力をしていても必ずしも報われるとは限らない。しかし、努力をしなければもっと悪い結果になるかもしれないと思って、頑張るしかしようがないのでしょうね。最近、朝目が覚めて、吐き気がしない、熱がない、ただそれだけで、ああ今日は調子が良い、幸せだと、何もないごく普通の日が、もう、それだけで幸せなんだと思うようになりました。やはり、健康第一です。普通の状態が維持できておれば、それで大成功かと思います。

 
 
 
ユーさん コメント感謝 (磯野及泉)
2008-12-16 02:53:17
コメントありがとう ございます。
健康第一、一病息災。
結果を求めず、何事にもこだわらず、ただひたすら生きること、そんな ところでしょうか。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。