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村田晃嗣教授講演“トランプのアメリカと世界”を聴講

とうとう風邪をひいて先週前半は散々だった。単なる風邪かインフルエンザかは確かでないまま健康は回復しつつある。殆ど平熱で終わり、食欲は衰えなかった。これでヤマイか?ヤマイならば栄養を摂ろうとばかり、食いまくったので、かなり腹が出てしまった。変なの!

ヤマイ平癒の途上の先週末に京都市南部のとある会社の簡易版環境審査・KESの確認審査に赴いた。制御盤のシステム設計から機器の製造までを引き受けるメーカーだった。ついでに簡易版のQMS(品質マネジメント・システム)も受審し認証登録したと環境マニュアルに記述していた。私も興味があるのでその内容を多少聞いてみた。だが、そのメリットは何かが明確でない。低価格審査だが、認証機関の提示するサンプル・マニュアルを自社実情に合わせて書き直して提出すれば、登録してくれるという。その後の定期審査は、希望すれば、つまり金を出せばやってくれるが、放置することも可能という。“それで意味があるのか”、と聞くと社長自身も“さぁ、あまり頼りになりそうもない!”と自信なさそう。“どこか大手企業がその認証で参入インセンティブを与えてくれるのか?”、というと“そういう会社はない”と言う。ならば、何のメリットもないではないか。ただ、怪しい効力不明の“認証証”が貰えただけのようだった。KESならば、多くの自治体・行政や大手企業が有効な環境マネジメント・システムとして認めてくれている。*だが この簡易版のQMSのこんな安易な事業スキームで、持続可能性はあるとは思えない。又、こういった持続可能性のない認証システムは信用できないので、全く意味がない。何だかサギまがいの、QMS審査機関が神戸に誕生したようだが、さすがに活動は盛り上がりに欠け低調のようだ。
私は続けて“ISOでは自己宣言という方法も認められています。自分で責任を持って、ISO9001を実施していると宣言し、顧客の第二者監査を受け入れて、世の中に認めさせるという方法です。これなら全てただで費用は全くかかりません。”というと、社長は多少は知識はあったのか、慌てる様子もなく、黙り込んでいた。
その後1日、KES審査は社長の御兄弟の環責さんとで無事終了。クロージングでは残念ながら社長は納品で出席参加はされず、という次第だった。

テレビはピョンチャン五輪花盛りだ。テレ朝の報道ステーションが飛ばされたのには、呆れて閉口する。テレ朝は報道より、スポーツ優先が社是なのだろう。情けない事実だ。

さて、この間市場はニュ-ヨーク株式の暴落後、混乱が続いている。原因は金利上昇に多少の懸念を持った売り手が居て、それに引き続く売り手が出たことで、コンピュータの高速売買が拍車を掛けたというのが真相のようだ。現地ニュ-ヨークをはじめとする米国では、経済ファンダメンタルズに変調はなく資金移動に本質的な問題点も認められないことから、リーマンショックとは異なり大して問題になっていない、との報告もある。マーケットのあやとしての調整との見方が支配的のようだ。
しかし、この混乱は日本市場には少々大きく伝播した印象だ。24千円レベルでさらに先に行くかと思いきや、21千円レベルに低下して低迷?というのが現状だからだ。ニュ-ヨーク株式は既に下落の半値戻しとなっておりパフォーマンスはやっぱり違う。この原因は円高のようだ。円高になれば日本企業の儲けが少なくなるという論理が効いている。ドル円は日米の実質金利差によるという。つまり米金利が株価に影響するほど高くなったとは言え、米側の物価上昇が影響し実質金利差が無くなってきていると解釈するのが正しいのだろう。痛し痒しの微妙な変化だ。物価上昇は米側の景気の好調さを示しているのではないか。


この週末の土曜日の午後、神戸国際大学で、同志社大学前学長の村田晃嗣教授の“トランプのアメリカと世界”という演題での講演があり、聴講したので報告したい。
同氏のプロフィールは同志社大学法学部のHPによれば次の通り。
1964年神戸生まれ。(1983年兵庫県立須磨東高等学校卒業)1987年同志社大学法学部卒業。茶道部中退。 1995年神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。(同志社大学で麻田貞雄、神戸大学で木村修三に師事した)この間1991~95年米国ジョージ・ワシントン大学留学、ホワイトハウス近くに在住(ただし招待されたことはない)。1995年広島大学総合科学部専任講師(アメリカ研究)。 1996年読売論壇新人賞・優秀賞受賞。1998年神戸大学博士(政治学)。 1999年広島大学総合科学部助教授。アメリカ学会清水博賞・サントリー学芸賞受賞。(2000年吉田茂賞受賞)。2000年10月同志社大学助教授、2005年4月同教授。(括弧内はwikipediaによる。)
同じHPにあった“私の研究”については、次の通り。
第二次世界大戦後のアメリカの東アジア政策とその決定過程、日米安全保障関係の歴史と課題などを研究テーマにしています。歴史といっても、まさにliving historyなので、アメリカの情報公開法による資料の開示や日米双方の政策担当者へのインタビューを精力的におこなっています。また、単なる歴史研究にとどまらず、安全保障問題の現状分析や政策提言も意図しており、国際会議への出席や総合雑誌・新聞への寄稿も折にふれておこなっています。
最近は、映画をはじめとする文化と政治の関係に関心をもっています。
詳しくは、専門的なものとしては、私の博士論文を基にした『大統領の挫折──カーター政権の在韓米軍撤退政策』(有斐閣、1998年)、『現代アメリカ外交の変容──レーガン、ブッシュからオバマヘ』(有斐閣、2009年)を、啓蒙的なものとしては、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)、『日米関係史』(共著、有斐閣、2007年)、『アメリカ外交』(講談社現代新書、2005年)、『レーガン──いかにして「アメリカの偶像」となったか』(中公新書、2011年)、『国際政治学をつかむ』(有斐閣、2009年)などを参照して下さい。

さて、その講演会は午後1時半開始で、やはり高齢者が大半であり、私が会場に入ったのは1時過ぎだったが既に会場の8割がたは着席されていた。今や、何かの展覧会や講演会だというと、私も含めヒマな高齢者がわんさと押し寄せる。高齢者が居ると講演会の最中に何処かから、何やらうなり声のような音が必ず聞こえるのは、高齢者のどういう生理現象なのだろうか。気にすれば気になるが、講演に集中すればやがて気にならなくなるはずだが・・・今回は最後まで気になった。やはり“政治講談”駄法螺話に堕するのかと一瞬思ったが、政治家ではなく法学者がどの程度までレベルを落として政治を語るのかにも興味があった。

講演は日本の2018年をどう見るかからスタートした。今年は、明治維新から150年。その明治維新で同志社のある京都は千年の王城の地位を失った。そして36万人の人口が明治12年には24万人と30%の減少となった。この減少率は夕張と同じという危機に、教育の革新に小学校の設置、殖産興業に重点した。
これからは、日本全体が人口減に見舞われる。2050年に1億人を切る。約30年で2700万人:約20%減少。これは四国6個分。2100年には6000万人を切る。3500年には日本人が1人になる。合計特殊出生率は現在1.44。人口維持には2.07とする必要があるが、そこに持っていくには現在の日本の政策が全て当たった場合でも50年かかると言われている。3割当たったとすれば150年、これは明治維新から今年までの時間と同じ。

ところで50年前は1968年。この年明治100年であり、GDP世界第2位となった年に東京五輪を開催し、明治の夢だった富国の目標を達成した。そして司馬遼太郎が富国の前に強兵を達成した過程を示した“坂の上の雲”の執筆を開始した。
こうした日本の足跡を中国が着実に後から追いかけて来ている。そして、2030年には確実に世界一の経済大国となる。それに伴い、中国の国防費も増大する。2005年に日本の防衛費とほぼ同じだったが、その後は凌駕して来ている。この状態でしばらくは、日中関係は安定しているがやがてどうなるかは不明。しかし、友好状態を安定させることが賢明な策と言える。

21世紀の国際関係を俯瞰すれば、2008年にリーマン・ショックという経済クラッシュにより大きく変化した。というのは中国への悪影響は少なく被害が小さく、回復も早かった。そして北京五輪を開催し、先進国へ駆け上った。
米国では黒人大統領のオバマが登場し、リベラリズムが頂点に達した。その反動で今のトランプ政権がある。
今年、米国で最も重要な中間選挙がある。米国政治で議会は立法権はもとより予算成立権も握っているので、この議会選挙は重要。(上院は州毎に2名の議員を選出しているが、この1票の格差は日本よりはるかに大きい。カリフォルニアは3.5千万人だがワイオミングは52万人で格差67倍。) 現状の議会勢力はおおよそ次の通り。
上院:共和51人、民主49人
下院:共和239人、民主193人
与党が大敗すれば大統領弾劾が成立する可能性が出て来る。与党は普通でも30減が常。支持率が低ければ40議席減もあり得る。“弾劾”がぐずぐずすれば何の政策も実現できずに政権が終了することもあり得る。

そうなると差し当たり北朝鮮政策はどうなるのか。韓国の文政権は今や北にとってはカモ・ネギとなってしまった。また何をするのか予測不能のトランプと金正恩の組合せは最悪だ。
とは言え、米軍が計画しているという北の軍事施設限定攻撃ブラッディ・ノーズ作戦はあり得るのか。90年代に同じように北核武装化の危機があった。この時のシミュレーションで50万人の犠牲が出ると計算され、攻撃は断念し、カーター元大統領が金日成と調停した。
このように現在も在韓米人は軍人含め20万人、日本人は1.7万人の観光客含めて8万人。その他数万人のヨーロッパ人が居る。ちなみに中国人は100万人とされる。こうした在留民間人全体の避難計画、実際には存在しないし、実施も不可能。米軍の軍属・家族の避難は時々訓練はしているが、実際には完全実施は不可能。特に在留邦人の避難計画は自衛隊という日本軍の上陸は許容されないので今もない。又、こうした計画を想定する段階で、北に攻撃準備として悟られてしまう。
韓国5千万人にソウルには日本の東京以上に人口集中で1千万人が居住。郊外を含め周辺には2千万人いるとされる。それが軍事境界線から僅か50㎞の距離に居る。これは神戸と大阪、大阪と京都の距離。従い、今は100万人の犠牲が出ると考えられている。同時に北は日本も攻撃できる態勢にある。従って、軍事施設の限定攻撃はあり得ない。

それでは金正恩だけを狙う斬首作戦はあり得るのか。これも3つの理由であり得ない。
①そのための法的根拠がない。(この見解は驚きだ。人道に対する罪。兄や叔父に対する殺人の指示容疑等々多数、であり、米政権や米軍はそれこそを非難してきたではないか。)②北には1万を超えると言われる地下施設があるとされ、その存在を特定することは不可能。③金正恩さえ居なければ核開発は止まるとは考えられない。
しかし、こうした3つの根拠は中国にとっては薄弱なところがあるので、中国による介入はあり得るかもしれない。
北の活動を放置すれば、現在あるとされる核弾頭20個はさらに増加する。これは北朝鮮のイスラエル化であり、パキスタン化であると言える。
(ここまでの発言では、米国特に米軍の意思決定についての研究・学問的追及が甘いのではないか、と思える。トランプ政権下では米軍独自の判断が結構優先される可能性はないのか。この分野こそ村田氏のライフ・ワークであり、今回講演の主テーマではなかったのか。)

現代の政治は日程でほぼ予測がつくようになってきている。
今年の最大のイベントは9月の自民党総裁選挙。安倍政権の母体・細田と麻生、二階の派閥が支持する限り安定している。このため、中国側も習政権は長期政権化しており、この安定政権同士で両国に“喧嘩”つまり対立は意味がない。21年まで安倍政権は続くことになる。
年内に改憲発議をしたいと言っているが、これは来年、地方選挙の終わった4月に天皇の譲位があり、6月には参院選挙、それ以降にはサミットの開催予定があるためだ。大阪でサミットが考えられているのは改憲勢力の“維新”に花を持たせるためだ。(大阪は博覧会開催で、北九州にサミットを譲るとの報道があったのを村田氏は知らなかったのか?)
そして安倍氏は20年のオリンピックが終わった時点で、政権を岸田氏に禅譲し、キング・メーカーとなるつもりだろう。

現在、防衛費は補正含めて5.4兆円。GDPの1%枠を守りつつ、20年前の水準に戻って来た。しかし、中国の国防費はこれを上回って増加しつつある。米国に頼らずに全て自前で国防を考えれば、年に23兆円必要だという試算がある。これは現実的ではない。しかし、NATOが各国の分担金をGDPの2%を枠に課している。GDPの1.2~1.6%程度にはするべきではないか。
中国から尖閣を守れとの声はある。第一線は海上自衛隊ではなく海上保安庁だ。その予算は海保全体で2.4千億円で、これは東大の予算とほぼ同額。それで良いとは思えず、増額が必要ではないか。この海保は年間百名の中国漁民の海難救助をしている。このように東シナ海での助け合いが日中では必要ではないか。

日本を取り巻く各国の政治状況はどうか。ロシアは2030年までプーチンの可能性が考えられる。中国も政権は長期化すると考えられている。日本以外は大統領制か独裁政権。日本は議院内閣制で長期政権となり難いので安定した外交政策ができない状態にある。その中でさらにレベルの低い議論を国会で展開している。それは国民のレベルが低いためではないか。国民が客観的で賢くなれなければ、(国家意思が示されず)良い外交はできないと考えている。

聞き終わって、何か突飛で独創的な発想があった訳ではなかったので、少々失望した。気付けば講演冒頭での問題提起、日本の人口減少にどう対処するべきか、については何ら触れることはなかった。このまま日本は衰退しなければならない、ということなのだろうか。それでは研究者としての本来の役割を果たしているとは言えまい。少なくとも、解決の突破口の提示くらいはするべきではなかったか。講演はいささか、演題とは乖離した内容のような印象もあり、逆に演題にそった彼のライフ・ワークと思える部分の成果についての発言は避けたようにも見える。やはり素人の高齢者を相手にした駄法螺話、否それにも劣る内容ではなかったか。
それに村田氏は政治学はやっていても、軍事には疎いように見える。多少はネット・レベルの情報でも様々な兵器や軍事情報の入手は可能なのが現代だ。米軍は北を攻撃できない、とは偏った希望的見解のように私には思える。プロの学者ならば政治の延長としての軍事も知っておくべきだ。前回指摘したように、北に反撃の隙を与えないような攻撃は米軍には技術的に可能だと私は考えるし、マティス国防長官もそれを暗示しているからだ。
また日本の国民の政治レベルについて最後に言及しているが、この問題こそ重要な政治学課題だと考えるが、これにも解決策の手掛かりを明示しなかったのは、日本の法学・政治学者としては怠慢ではないか。
それに、少々報道等の細かい情報に無頓着のところがあるようにも見える。それは現代政治学者としての資質を問われる部分となるのではないか。
 
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