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大阪府立大学“植物工場”を見学

先週、大阪府立大学の“植物工場”を 仲間と見学した。昨年、11月“おおさかATCグリーンエコプラザ”で開催されたビジネスセミナー“植物工場最新動向”で、大阪府立大学植物工場研究センター・村瀬 治比古教授の講演を聞いて以来、是非見学したいと思いつつ、都合が付かず、先月初頭に府立大ホームページより申込み、ようやくこの日に至った。

南海電車・白鷺駅で仲間と落合って、駅前大通を南へ向かう。キャンパスの前を走る国道310号線を渡り、府大正門に至るとキャンパス内の満開の桜が目に入る。落ち着いた郊外に、ここちよくコンパクトにまとまった総合大学のイメージ。ほぼ3階建ての建物ばかりで、空間に余裕を感じる。12時前なので、学食へ向かう。鳥そぼろ丼を食べる。その後、池の周りの桜を眺めながら時間が来るまでベンチに腰掛けて、快適な時間と空間を過ごす。池には 鷺等の水鳥が 自由にのんびりと憩っていた。



見学会開始時刻に近づいたので、慌ててキャンパス内の南東部にある植物工場研究センターを目指す。ところが、案内書の地図を見て南面に入り口があると思い込んでいて、“西門筋”に出て南側からアプローチしたが、そこからは全く入口が無く、焦る。北側に回りこんでようやく建物玄関を見つける。時間が迫っていたので、急いで靴をスリッパに履き替え東側B棟の2階講義室に飛び込むと既に講師による説明が始まっていた。



この大阪府立大学植物工場研究センターのホームページには“経済産業省による「先進的植物工場施設整備事業」、農林水産省による「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」の両方の採択を受け、完全人工光型植物工場研究の拠点として、開発・実証・展示・研修などの事業を展開してまいります。”と その設立の趣旨が書かれている。
建物は鉄筋コンクリート造で、東西にそれぞれ延床面積1,000平米の2階建2連棟で、西側がA棟、東側がB棟となっている。建設コストは内部設備込で、A棟約5億、B棟約6億、計11億。全て国家予算により、昨年2011年3月完成している。
農業は、その始まりから第1世代:露地での天候等成り行き、第2世代:温室による温度制御、第3世代:液肥を使った水耕栽培、第4世代:光源を制御し、温度・肥料・空気もコントロールする植物工場の成立へと発展して来た。日本では 1985年千葉のララポートのスーパー・ダイエーを皮切りに、その後川鉄フーズ等々で本格化し次々開発されて来た、とのこと。
植物工場も①完全光制御型と②太陽光一部併用型があるが、完全光制御にすれば完全密閉化可能で多段棚での育成ができ、面積効率が飛躍的に改善される。この完全植物工場では、無農薬(有機)栽培が可能な上に、露地モノの半分の生育期間で出荷でき、場合によっては従来の20倍の生産性を得ているとのこと。
特に、葉物野菜は回転が速く生産性が良い。果物、根菜、稲など生育期間の長いものは、採算が悪く、植物工場での実用化は困難とのことで、この点は かつて“おおさかATCグリーンエコプラザ”で聞いたセミナーでの話と違っている。
育成プロセスは、播種(スポンジ状の床に発芽)→育苗(スポンジごとパネルに移して育苗)→栽培(栽培用パネルに移行)させるとしている。また通常は栽培時パネルを水平にして根を完全に液肥に浸らせるのだが、斜めに設置して根を空気に触れさせて、液肥はスプレイ散布して、根からの酸素吸収を容易にして生育を促進させる方式もあるとのこと。また、光源もLED等の表面温度の低いものを採用すれば、近接照射が可能となり、狭い空間での生育パネルの多段化を促進し、面積効率をさらに上げられる。

建物の構成は、A棟は、栽培環境シミュレーター室(完全人口光、気流・温度・湿度・CO2濃度の条件研究)、ユニバーサルデザイン室(障害者のオペレーション可能な装置設計研究)、クリーンルーム型実験室(超清浄空間での育成条件研究)、多元環境実験室(高温・多湿の環境制御実験)より成っている。B棟は、1・2階貫通吹き抜けの多層型植物生産室(これが1番大型の設備;2基あり、1基は休止中の模様)、機能性植物生産室(培養液制御、各種光源・高照度光源による実験)、育苗室等より成っている。

一旦講義説明が終わって、見学の開始。先ずは講義室に隣接した、多層型植物生産室のレタスの育成状況を窓から覗く。整然とした15段の棚より成っていて、1日に1段ずつ500株が生産されている。つまり、1日1段ずつ下に降ろして行って、最下段から取り出し出荷となるとのこと。実際には、土日があるので、1サイクル16~17日になるとのことである。光源は ほぼ蛍光灯であるが一部、LED等光源を変更して試験している様子が伺えた。また、生菌数が露地モノのほぼ1万分の1なので衛生的で、出荷後も店頭で3週間程度は持ち、その間ポリフェノールの増加も見られるとのこと。また生育時ストレスが無いので苦味が少ない由。
A棟のユニバーサルデザイン室等を見て、屋上に上がりソーラーパネルと苔を使ったハイブリッド・エコエネルギー・システムへ廻る。ここは、屋上の緑化のため、ソーラーパネルの裏に苔を使用し、その苔の生育のための噴霧水から得られる潜熱冷却を利用して、ヒートポンプシステムとソーラーシステムの効率を高めるということだった。



一通り見終わって質疑応答。植物工場の課題は①運営コスト②販路の確保 という回答で、専ら経営的な要素の印象だが、おそらく葉物野菜に限ってであり、他の品種は研究中であるということだろう。結球レタスは、光合成が困難なので、速成の植物工場には不向き。だが低カリウムのメロンの栽培は可能なので、腎臓病入院患者向けの果物として病院での設置も考えられる。さらに、薬草は施肥のやり方の工夫で適用可能だが、医薬品扱いとなるので、官庁などの許認可が検討課題のようであった。
一般に液肥のレタスでの実際の吸収量は300cc程度であり、露地モノでは殆どが土壌にムダに吸収されることを考えると、植物工場では効率的に施肥できる。この研究施設での液肥はリサイクルしているが、老廃物や菌混入の恐れもあり、2週間で3分の1程度を排出更新しているとのこと。排出は 現状では特に処理せず下水へ放流しているとのこと。

最後に 先ほどの多層型植物生産室のレタスを 生で試食した。味は通常の清浄野菜、シャキシャキ感は十分。試験販売をしているが近所の主婦にも評判良好の由。
その後、アンケートに回答記入して予定は終了。ほぼ2時間弱の見学会であった。
以上から、2週間前後で 生育可能な作物については、回転率を高くして十分の収益が確保できるものとの確信を得、露地モノよりはるかに衛生的であるため、出荷後の日持ちも良く、完璧な有機栽培も可能という品質面での優位性も確認できた。

府大キャンパスを出て、白鷺駅の西側の喫茶店“日々cafe”に赴く。ここは事前に“食べログ”で調べていたのだが、紅茶とケーキの専門店なので、まさに正真の喫茶店。素っ気ない外観で気が付かなければ通り過ぎてしまうような、奇をてらわないのか、逆に“てらっている”のか分らないが、内装も含めて以前喫茶店以外の店だったのを、そのまま使用しているといった感じ。
凝った薫り高い紅茶と 美味いケーキを味わう。府大の学生よりも、近所の主婦が常連客のようだ。ここで小1時間ほどムードと会話を楽しんで後、帰路に就く。

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