The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
佐藤優・著“見抜く力――びびらない、騙されない。”を読んで
エリザベス女王がお亡くなりになった。国際超VIPのお亡くなりに、あのプーチンが弔意を示したという。
我が方国葬の意義が失せるのがチョット気懸り。まぁ、どうでもエエけど!
ところで自民党は、外国勢力である旧統一教会との関係をめぐり、所属する国会議員全体の半数近くにあたる179人が何らかの接点があったことを明らかにした。ところがその親分との関係、接点を誤魔化したまま国葬に突っ走るつもりなのだ。それが正しい在り方だとは全く思えない。
中国では習近平がペロシ米下院議長の訪台で、何とか北戴河会議を乗り切って、秋の党大会で無事党総書記再任を目指す態勢に入ったようだ。
だが、中国の景気は良くないようだ。アリババ、テンセント等、中国有名企業の業績は軒並み芳しくないようで、学生らの就職状況も良くなく、「寝そべり族」という生き方が社会現象になっているのに一向に改善が見られないようだ。これに追い打ちをかけるように、前回取り上げた揚子江の旱魃もある。これで社会不安が起きない方が異様ではないのか。
否、内政不安を外交、特に台湾征討に向けてかわす可能性が高くなるのではないかと懸念される。
さて、先に竹内一郎・著“見抜く力”を紹介したが、今回は同名の本、佐藤優・著版の紹介としたい。先にも言ったが、 “人を”見抜く力を涵養したく引き続き読んでみた次第である。本書の概要並びに著者・佐藤優氏の紹介は版社のウェブサイトの案内書きに次のようにある。
先の見えない時代、相手の本心や本当のようなウソの情報を「見抜く力」が求められている――。
情報のプロとして外交の最前線で活躍し、特捜検察にも屈しない交渉のプロである著者が、どんな相手や情報にもビビらずに、冷静に対処するための極意を伝授する。攻撃的な相手、足を引っ張ろうと近づいてくる相手にどう接すればいいのか。人を見極め、情報や数字を正しく読み取りたい人、わが子を他人や情報、常識に振り回されない大人に育てたい人は必読だ。
[はじめに より]
生き残ることが重みを増す時代には、人や情報の真偽や意味を見抜き、必要以上にびびらないこと、騙されないことが重要です。
日常的に新聞を読んだりニュースを見れば、断片的に情報を得ることはできます。しかしデータを集積するだけでは、ノイズが増える一方です。
見抜く力とは、事実を拾い上げて選り分け、点と線を繋げ、物語を構成する力でもあります。人の本質を見抜くにも、相手の発言そのものだけではなく、相手の利害関心や、表情、服装、持ち物や口癖などから、その人物の本質や意図をあぶりだしていく必要があります。本書でも強調しましたが、常時マスクを着用するコロナ禍においては、特に「目」が重要になってくると思います。
[著者]佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。
2005年に発表した『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大矢壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
目次
第1章 他人・常識・情報に振り回されない7つの極意
極意1 攻撃的な人の本音を見抜く
「言い返す」「感情的になる」はNG
厄介な嫉妬から身を守る方法
相手の本音が見抜けない3つの理由
極意2 相手の情報が正しいか見抜く
この質問で他人の嘘は見抜ける
細部の綻びを見逃してはならない
正しい情報は「人」が持っている
ニコニコしながら近づいてくる「焼き畑型」人間
極意3 表情・服装・持ち物・口癖で人物を見分ける
本心は目に表れる
極意4 常識に騙されない
政府首脳ですら騙される
不可解なメッセージはこうしてできあがった
権威に対する信頼が目を曇らせる
深層心理を操作する「錬金術師」
極意5 自分に騙されない
合理的に判断したのに、大失敗する理由
限られた情報の中で正しい選択をするには
客観的でも公平でもないAIの判断に従ってしまう
極意6 数字に騙されない
「日本人の読解力が急落した」は本当か
極意7 騙されていい場合もある
「もったいない」根性が意欲に繋がる
第2章 リーダーになる人に知っておいてほしいこと
人の上に立つということ;部下をどう育て、評価すればいいのか;部下もまた、リーダーを育てる;ビジネスを見極める;学ぶべきこと;社会情勢を見極める
第3章 「考える力」が身につく育て方
家庭教育がカギになる;親から子へバトンを繋ぐ;大学で学ぶべきこと;新しい形の就職
ここで改めて佐藤優氏の経歴を確認してみる。Wikipedia によると同志社大学で神学を学び、チェコの神学者ヨセフ・ルクル・フロマートカに強い興味を持ち、チェコに留学する目的として外務省の専門職員採用試験を受験。2度目の受験でノンキャリアの専門職員として外務省に入省。しかし、外務省から指定された研修言語はロシア語であったので、その後ロシア外交に携わり、鈴木宗男氏との関係を築いたが、鈴木宗男事件に絡んで連座し司直の手に落ち、外務省職員として失職した。その後、論壇に作家デビューし今日に至っている。
したがって、幅広い知識と人脈に恵まれている人物と言え、その著作には厚みのある思索・思考があるものと思えるので、この本に飛びついた次第である。
各論で様々なことが語られている。そこで気になった点を挙げてみると以下の通りだ。
“第1章 他人・常識・情報に振り回されない7つの極意”での、“極意2:相手の情報が正しいか見抜く”では“ものごとは、事実、認識、評価を分けて考えることが大切”として、“これは法廷審理のやり方と同じ”であり、“どんな認識や評価をするのかは人によって異なってきますが、もし事実の部分が誤って居たり、意図的に捻じ曲げようとしてくるなら、その人の話自体が危ない”と言っている。それで“細部の綻びを見逃してはならない”となる。
“極意3:表情・服装・持ち物・口癖で人物を見分ける”では“見た目がアンバランスな人は、アンバランスな考え方の持ち主であることが多い”とは言うものの、“平気で嘘をつく人間もいる”ので、“私も騙される”ことがあるので“気づいたら、早く逃げる”ことだと言っている。
“極意5:自分に騙されない”では慶応義塾大学商学部の菊澤研宗教授の『組織の不条理―日本軍の失敗に学ぶ』は、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』と対極にある切り口の良書だと推奨している。『失敗の本質』では日本軍は不合理に行動して失敗したとの見解に対し、菊澤教授は“日本軍も合理的だった”のであり、“タイトルにある「不条理」とは、人間の合理性こそが人間を失敗に導く”ということだという。その不条理は“人間が限られた情報の中で判断するしかない”からであり、このような“限定合理性”の下での交渉・取引には、騙されないように駆け引きが起こり、多大な時間や労力が費やされ、“たとえ現状が非効率だったり不正な状態だったりしても変革するには多大な取引コストが発生するので、非効率で不正な現状を維持隠蔽したほうが合理的という不条理が生まれる”、というもの。
この“限定合理性”という補助線で、現代の日本のビジネスの失敗事例を挙げると、“イノベーションも、失敗したときに想定されるコストが高いので、挑戦しないほうが合理的”となるというのだ。
人物を能力と士気の高さで評価したとき、“一番危険なのは「能力が高くて、忠誠心の低い人」”となるので、“能力の高さこそ買うべき、という一見合理的な認識に囚われると、思いがけない不条理に陥ってしまう”と述べている。
第2章の“人の上に立つということ”では、旧日本陸軍の中堅将校に向けた「作戦要務令」を推奨し、“責任を負える範囲で独断専行せよ”と説く。“「長いものには巻かれろ」というのは、組織で生きるにあたって絶対的な真理”だといいつつも、“その仕組みを上手くすり抜ける方法の一つが、独断専行”だという。“組織の中で自分が授権されている範囲を明確に理解した上で、迅速な活動をする”のが大切で、“自分で責任を負える範囲で適宜独断専行するのは、どの国や組織においても成功の秘訣”だとしている。“リーダーシップには、深い孤独と強い責任が伴う”のだという。
第2章の“「客観的に評価をして最適な選択ができる」は幻想だ”では、“価値判断力”が大切だと言っている。“価値判断とは、得か損かではなく、好きか嫌いか、良いか悪いか、正しいか正しくないかを判断する能力”である。人間は“限られた情報の中では、非合理な選択をしてしまうことは避けられ”ない、“そのことに気づき、そのうえで空気に流されず正しいかどうか主体的に価値判断をし、最後はその責任をとることが、リーダーの務め”だという。
第2章の“見抜く力をつけるには、本と映画で感化力を高める”では、宇野弘蔵の次の言葉を引用。“社会科学としての経済学はインテリになる科学的方法。小説は直接われわれの心情を通じてインテリにするものだ”、“自分はいまこういう所にいるんだということを知ること、それがインテリになるということ”であり、“読んでいて同感するということは、自分を見ることになる”。それは“犯罪に巻き込まれずにすむ”ことにつながる、という。映画も同様なのだ。だから、私も今頃になって映画を見ている。
第2章の“ビジネスを見極める”では、五味川純平の『戦争と人間』を引用しつつ、“人でも思想でも、本当によくわかるまで信じてはいけない。ものわかりが遅いことよりも、鵜呑みにしてわかったふりをするほうが怖い。これはビジネスを見極める際にもいえる”だろうというが、これぞ“見抜く力”の根本ではないか。
また現在、全盛を誇っている“GAFAが滅ぶ日は遠からず来る”では、“資本主義というものは細く長く搾取することに意味があり、いま(GAFA)のように一気に搾取してしまうと人材が駄目になって、資本主義が終わってしまう”(括弧内筆者による追記)、という。“自己欲求や自己愛を心理学的にうまく操作されながら、消費者はずっとタダ働きをさせられて、わけのわからない消費をさせられてしまう。それはどう考えても、資本主義にとってメリットがあるとは思え”ない。“どこかでやめなければならない”のだ、という。
また“賃金が極端に下がり、・・・プロレタリアート(賃金労働者階級)が成り立たなく”なれば資本主義も成り立たなくなるはずだ。“家族や家や車を「持てないのではなく、持たない。これは主体的な選択なのだ」。そのように言えば、プライドを満足させることができる”が、それでは資本主義が崩壊する。だから、“マルクス経済学をもう1回見直さなければならない”と言っている。そして、そうした“「革命」を一番よく表しているのは(現代日本の)女性作家による文学作品”だという。
第3章の“「考える力」が身につく育て方”では、英国イートン・カレッジのパブリック・スクールでの推薦図書のリストを掲げている。“全体的に、国際的な視野に立って、古典から現代作品まで幅広く読ませようとするラインナップ”であり、“なおかつ人文系重視”である。“トップエリートの育成には文系教育はおろそかにできない”。“娯楽小説も多いイートン校のリストからは、大衆に支えられなければ民主主義社会のリーダーは務まらないという考えがよく伝わる”、と言っている。
まぁ以上のような各論であった。様々なことが語られていて、直ちには役立たないが大いに有益であった印象である。
我が方国葬の意義が失せるのがチョット気懸り。まぁ、どうでもエエけど!
ところで自民党は、外国勢力である旧統一教会との関係をめぐり、所属する国会議員全体の半数近くにあたる179人が何らかの接点があったことを明らかにした。ところがその親分との関係、接点を誤魔化したまま国葬に突っ走るつもりなのだ。それが正しい在り方だとは全く思えない。
中国では習近平がペロシ米下院議長の訪台で、何とか北戴河会議を乗り切って、秋の党大会で無事党総書記再任を目指す態勢に入ったようだ。
だが、中国の景気は良くないようだ。アリババ、テンセント等、中国有名企業の業績は軒並み芳しくないようで、学生らの就職状況も良くなく、「寝そべり族」という生き方が社会現象になっているのに一向に改善が見られないようだ。これに追い打ちをかけるように、前回取り上げた揚子江の旱魃もある。これで社会不安が起きない方が異様ではないのか。
否、内政不安を外交、特に台湾征討に向けてかわす可能性が高くなるのではないかと懸念される。
さて、先に竹内一郎・著“見抜く力”を紹介したが、今回は同名の本、佐藤優・著版の紹介としたい。先にも言ったが、 “人を”見抜く力を涵養したく引き続き読んでみた次第である。本書の概要並びに著者・佐藤優氏の紹介は版社のウェブサイトの案内書きに次のようにある。
先の見えない時代、相手の本心や本当のようなウソの情報を「見抜く力」が求められている――。
情報のプロとして外交の最前線で活躍し、特捜検察にも屈しない交渉のプロである著者が、どんな相手や情報にもビビらずに、冷静に対処するための極意を伝授する。攻撃的な相手、足を引っ張ろうと近づいてくる相手にどう接すればいいのか。人を見極め、情報や数字を正しく読み取りたい人、わが子を他人や情報、常識に振り回されない大人に育てたい人は必読だ。
[はじめに より]
生き残ることが重みを増す時代には、人や情報の真偽や意味を見抜き、必要以上にびびらないこと、騙されないことが重要です。
日常的に新聞を読んだりニュースを見れば、断片的に情報を得ることはできます。しかしデータを集積するだけでは、ノイズが増える一方です。
見抜く力とは、事実を拾い上げて選り分け、点と線を繋げ、物語を構成する力でもあります。人の本質を見抜くにも、相手の発言そのものだけではなく、相手の利害関心や、表情、服装、持ち物や口癖などから、その人物の本質や意図をあぶりだしていく必要があります。本書でも強調しましたが、常時マスクを着用するコロナ禍においては、特に「目」が重要になってくると思います。
[著者]佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。
2005年に発表した『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大矢壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
目次
第1章 他人・常識・情報に振り回されない7つの極意
極意1 攻撃的な人の本音を見抜く
「言い返す」「感情的になる」はNG
厄介な嫉妬から身を守る方法
相手の本音が見抜けない3つの理由
極意2 相手の情報が正しいか見抜く
この質問で他人の嘘は見抜ける
細部の綻びを見逃してはならない
正しい情報は「人」が持っている
ニコニコしながら近づいてくる「焼き畑型」人間
極意3 表情・服装・持ち物・口癖で人物を見分ける
本心は目に表れる
極意4 常識に騙されない
政府首脳ですら騙される
不可解なメッセージはこうしてできあがった
権威に対する信頼が目を曇らせる
深層心理を操作する「錬金術師」
極意5 自分に騙されない
合理的に判断したのに、大失敗する理由
限られた情報の中で正しい選択をするには
客観的でも公平でもないAIの判断に従ってしまう
極意6 数字に騙されない
「日本人の読解力が急落した」は本当か
極意7 騙されていい場合もある
「もったいない」根性が意欲に繋がる
第2章 リーダーになる人に知っておいてほしいこと
人の上に立つということ;部下をどう育て、評価すればいいのか;部下もまた、リーダーを育てる;ビジネスを見極める;学ぶべきこと;社会情勢を見極める
第3章 「考える力」が身につく育て方
家庭教育がカギになる;親から子へバトンを繋ぐ;大学で学ぶべきこと;新しい形の就職
ここで改めて佐藤優氏の経歴を確認してみる。Wikipedia によると同志社大学で神学を学び、チェコの神学者ヨセフ・ルクル・フロマートカに強い興味を持ち、チェコに留学する目的として外務省の専門職員採用試験を受験。2度目の受験でノンキャリアの専門職員として外務省に入省。しかし、外務省から指定された研修言語はロシア語であったので、その後ロシア外交に携わり、鈴木宗男氏との関係を築いたが、鈴木宗男事件に絡んで連座し司直の手に落ち、外務省職員として失職した。その後、論壇に作家デビューし今日に至っている。
したがって、幅広い知識と人脈に恵まれている人物と言え、その著作には厚みのある思索・思考があるものと思えるので、この本に飛びついた次第である。
各論で様々なことが語られている。そこで気になった点を挙げてみると以下の通りだ。
“第1章 他人・常識・情報に振り回されない7つの極意”での、“極意2:相手の情報が正しいか見抜く”では“ものごとは、事実、認識、評価を分けて考えることが大切”として、“これは法廷審理のやり方と同じ”であり、“どんな認識や評価をするのかは人によって異なってきますが、もし事実の部分が誤って居たり、意図的に捻じ曲げようとしてくるなら、その人の話自体が危ない”と言っている。それで“細部の綻びを見逃してはならない”となる。
“極意3:表情・服装・持ち物・口癖で人物を見分ける”では“見た目がアンバランスな人は、アンバランスな考え方の持ち主であることが多い”とは言うものの、“平気で嘘をつく人間もいる”ので、“私も騙される”ことがあるので“気づいたら、早く逃げる”ことだと言っている。
“極意5:自分に騙されない”では慶応義塾大学商学部の菊澤研宗教授の『組織の不条理―日本軍の失敗に学ぶ』は、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』と対極にある切り口の良書だと推奨している。『失敗の本質』では日本軍は不合理に行動して失敗したとの見解に対し、菊澤教授は“日本軍も合理的だった”のであり、“タイトルにある「不条理」とは、人間の合理性こそが人間を失敗に導く”ということだという。その不条理は“人間が限られた情報の中で判断するしかない”からであり、このような“限定合理性”の下での交渉・取引には、騙されないように駆け引きが起こり、多大な時間や労力が費やされ、“たとえ現状が非効率だったり不正な状態だったりしても変革するには多大な取引コストが発生するので、非効率で不正な現状を維持隠蔽したほうが合理的という不条理が生まれる”、というもの。
この“限定合理性”という補助線で、現代の日本のビジネスの失敗事例を挙げると、“イノベーションも、失敗したときに想定されるコストが高いので、挑戦しないほうが合理的”となるというのだ。
人物を能力と士気の高さで評価したとき、“一番危険なのは「能力が高くて、忠誠心の低い人」”となるので、“能力の高さこそ買うべき、という一見合理的な認識に囚われると、思いがけない不条理に陥ってしまう”と述べている。
第2章の“人の上に立つということ”では、旧日本陸軍の中堅将校に向けた「作戦要務令」を推奨し、“責任を負える範囲で独断専行せよ”と説く。“「長いものには巻かれろ」というのは、組織で生きるにあたって絶対的な真理”だといいつつも、“その仕組みを上手くすり抜ける方法の一つが、独断専行”だという。“組織の中で自分が授権されている範囲を明確に理解した上で、迅速な活動をする”のが大切で、“自分で責任を負える範囲で適宜独断専行するのは、どの国や組織においても成功の秘訣”だとしている。“リーダーシップには、深い孤独と強い責任が伴う”のだという。
第2章の“「客観的に評価をして最適な選択ができる」は幻想だ”では、“価値判断力”が大切だと言っている。“価値判断とは、得か損かではなく、好きか嫌いか、良いか悪いか、正しいか正しくないかを判断する能力”である。人間は“限られた情報の中では、非合理な選択をしてしまうことは避けられ”ない、“そのことに気づき、そのうえで空気に流されず正しいかどうか主体的に価値判断をし、最後はその責任をとることが、リーダーの務め”だという。
第2章の“見抜く力をつけるには、本と映画で感化力を高める”では、宇野弘蔵の次の言葉を引用。“社会科学としての経済学はインテリになる科学的方法。小説は直接われわれの心情を通じてインテリにするものだ”、“自分はいまこういう所にいるんだということを知ること、それがインテリになるということ”であり、“読んでいて同感するということは、自分を見ることになる”。それは“犯罪に巻き込まれずにすむ”ことにつながる、という。映画も同様なのだ。だから、私も今頃になって映画を見ている。
第2章の“ビジネスを見極める”では、五味川純平の『戦争と人間』を引用しつつ、“人でも思想でも、本当によくわかるまで信じてはいけない。ものわかりが遅いことよりも、鵜呑みにしてわかったふりをするほうが怖い。これはビジネスを見極める際にもいえる”だろうというが、これぞ“見抜く力”の根本ではないか。
また現在、全盛を誇っている“GAFAが滅ぶ日は遠からず来る”では、“資本主義というものは細く長く搾取することに意味があり、いま(GAFA)のように一気に搾取してしまうと人材が駄目になって、資本主義が終わってしまう”(括弧内筆者による追記)、という。“自己欲求や自己愛を心理学的にうまく操作されながら、消費者はずっとタダ働きをさせられて、わけのわからない消費をさせられてしまう。それはどう考えても、資本主義にとってメリットがあるとは思え”ない。“どこかでやめなければならない”のだ、という。
また“賃金が極端に下がり、・・・プロレタリアート(賃金労働者階級)が成り立たなく”なれば資本主義も成り立たなくなるはずだ。“家族や家や車を「持てないのではなく、持たない。これは主体的な選択なのだ」。そのように言えば、プライドを満足させることができる”が、それでは資本主義が崩壊する。だから、“マルクス経済学をもう1回見直さなければならない”と言っている。そして、そうした“「革命」を一番よく表しているのは(現代日本の)女性作家による文学作品”だという。
第3章の“「考える力」が身につく育て方”では、英国イートン・カレッジのパブリック・スクールでの推薦図書のリストを掲げている。“全体的に、国際的な視野に立って、古典から現代作品まで幅広く読ませようとするラインナップ”であり、“なおかつ人文系重視”である。“トップエリートの育成には文系教育はおろそかにできない”。“娯楽小説も多いイートン校のリストからは、大衆に支えられなければ民主主義社会のリーダーは務まらないという考えがよく伝わる”、と言っている。
まぁ以上のような各論であった。様々なことが語られていて、直ちには役立たないが大いに有益であった印象である。
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