The Rest Room of ISO Management
ISO休戦
“ISOを活かす―41. アウトソースの確実な管理によって、品質を確保する”
今回は 設計プロセスのアウトソースが テーマです。
【組織の問題点】
3年前にISO9001の認証を取得した建築施工会社A社には、設計部門はないため、設計・開発は適用除外としています。しかし 近年、設計込みでないと新規契約に支障が出てき始めたため、昨年から設計込みで受注し、設計業務は設計事務所に外注しています。ところが、最近 設計起因の顧客クレームが多くなり、困っています。これを低減させるためには、ISO9001のシステムをどのように改善するべきでしょうか。
【磯野及泉のコメント】
著者・岩波氏は まず “ISO9001では、「アウトソース(外部委託)したプロセスを品質マネジメントシステムで明確にし、その管理を確実にすること」(4.1項)と述べています。”と指摘し、“この例のように、自分の会社には設計部門がなく、設計業務はすべて設計事務所に委託しているような場合でも、顧客に対する設計の責任が自分の会社にある場合、すなわち設計込みで顧客と契約を結んだり注文を受けている場合は、設計・開発を適用除外することは問題です。” と断言しています。この見解は 多くの人々の支持する一般的な解釈です。
そして“設計業務をアウトソースした場合の管理方法は、自社で設計を行う場合とは異なります。詳しいデザインレビューを行うことはできないでしょう。アウトソースの管理として、必要な管理のレベルを決めることが必要です。” とは 述べていますが では具体的に どうするべきかについては 紙幅の関係からか開示してくれていません。
そこで “設計プロセスのアウトソース” について考えてみたいと思います。ここで 私なりに 設計・開発の業務を プロセス分析してみます。その上で、それこそ “必要な管理のレベル”や 管理ポイントを決めることができるでしょうし、そうするべきでしょう。
私なりの 設計・開発の業務イメージは下図のようです。この図で 四角い枠で囲んだのが いわゆる“プロセス”と考えています。それ以外は、整理された“情報”であり、“製品/サービス”です。この図が 厳密な意味でのプロセス・アプローチとは言い難いかも知れませんが、“設計プロセス”の 1つの概念整理の図として 見ていただきたいと思うのです。
そして A社が 外注している設計プロセスは 中央の太い枠線で囲んだ部分です。従って A社の管理するポイントはその前後にあり、“設計方針策定”、“検証”、“設計のレビュー”であると言えます。また 製品を見てから評価する“妥当性確認” も 設計事務所との契約項目に入れておくべきでしょう。
“設計のレビュー”は ISO9001では“設計・開発の適切な段階において、・・・計画されたとおり(7.3.1参照)に体系的なレビューを行うこと”となっていますので、設計事務所との外注契約で 具体的に設定するべきでしょう。
実際の業務に立脚していませんので、少々 ラフなプロセス・アプローチかも知れませんが このようにフロー図を描けば、概念整理が容易にできることは お分かりいただけるのではないでしょうか。ISOマネジメントの推奨するプロセス・アプローチの有効性を ご理解いただきたいのです。
(プロセス・アプローチと称するからには 実際にはプロセスのみで表記するべきでしょうが、上図は具体的事例をリアルには示していませんので、便宜上 プロセス以外のものも表現しました。検証とレビューの線引きをどうするかは具体的事例に基づいて解釈するべきでしょう。図示したこれらのプロセスも 場合によっては さらに細分化されることも考えられます。例えば、設計プロセスなどは 基本設計、詳細設計などに分解され、その都度 レビューが実施されることもあるものと考えられます。また、設計事務所の製品を設計図と考えて それを 一旦妥当性確認するということもあり得ると思います。これらのことは、7.3.1の要求事項に従ってあらかじめ 計画するべきです。)
さて、著者・岩波氏の指摘するように 最近のトレンドであるアウトソースにも いろいろなあり方があると思います。
ベンチャーは コア・コンピタンスのみで創業することが多いはずですから、コア・プロセス以外であるが 必要な業務プロセスを アウトソースすることが 効率的な経営につながるものと言えます。
特に 近年のように複雑な外部環境の中で コンプライアンスや 適切な法定手続を求められるビジネスにおいて、コア・プロセス以外の補助業務を 外部に専門家に、アウトソースするのは 起業家が コア業務に専念するために、大いに意味のあることだと思います。
さらに起業後 安定運営に入った段階で、マネジメントの基本に立ち返って社業を見直す段階で、ISOマネジメント体制を考慮しようと お考えの向きは ISOマネジメントの専門家に相談されることも お勧めです。
或いは まったく新規の製品やサービスを生み出すシステムにおいて、それぞれの得意のプロセス(コア・コンピタンス)を持つ企業が集まり、業務ネットワークを構成して コア・コンピタンスのみで、そのシステムに 参加するというような やり方も考えられます。これは 最早 アウトソースとは言えないような あり方でしょうが、これが 21世紀のビジネスの一形態であると 私は考えています。
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