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“ザ・ビジョン”を読んで

最近 中小企業経営者と話す機会が増えていますが、その時 経営理念について よく話題になりました。意外にも 経営者にとって この理念形成について 随分悩ましい課題であるらしいということが分かったのです。私は “経営者が 素直に事業に関わる信条を表現すれば良いだけだ。”と思い込んでいました。
ですが、じゃぁ 具体的にどうすれば良いのか、と言われると困ってしまうので、その前に 取り敢えず この本“ザ・ビジョン”を読んでみようと取り上げました。
著者のケン・ブランチャードは“1分間マネジャー”の著者でもあったとのこと。
こちらの本は私が中間管理職に 昇進した時に 発行されたので、その時 読んでいました。しかし、残念ながら 何か 印象のない本だったように思います。どうしてなのか 当時も不思議に思っていたのですが、そのまま今日に至ってしまっています。
ですが 今回のこの本は 良い印象でした。

英語の原題は “FULL STEAM AHEAD!”(全速前進)です。この意味は、この本の最初の見開きに出てきます。“蒸気船が走っていた時代の言葉で、大型船がエンジン全開で航行することを意味する。現代では、・・・・目的がはっきりしていて、そのことに確信があって迷いがなく、しかもそれを実現できる自信にあふれていて、どんな障害があっても断固として進んでいける状態のことだ。”とあります。

この本は 離婚した女性が その子供たちと生活のため保険会社に就職し、そこの経営者と接して行くうちに 著述家へと変身していく過程を書いています。“FULL STEAM AHEAD!” を実現して行くという人生物語仕立てになっていて 非常に読みやすい本です。遅読の私も さすがに2日で読んでしまいました。内容は 簡単に言うと以下の通りです。

“ビジョンとは何か” ビジョンとは、自分は何者(存在意義)で、何を目指し(未来のイメージ)、何を基準にして進んで行くのか(明確な価値観)を理解することである。ビジョンには永続性が必要で、一つの目標が達成されても、(自ずと)絶えず次の方向性が示されるのが良いビジョンである。

説得力あるビジョンかどうかを確かめるためのチェックリスト
□そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか。
□そのビジョンは、日々の決断を正しく行っていくための指針になりうるか。
□そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか。
□そのビジョンには、永続性はあるか。
□そのビジョンには、ライバルに勝つというだけではない、何か崇高なものがあるか。
□そのビジョンは、数字の力を借りずに、人々に活気を吹き込むことができるか。
□そのビジョンは、あらゆる人の心と精神に訴えかけるか。
□そのビジョンは、ひとりひとりに自分の役割を自覚させるか。

“未来に向けての明確なビジョンも、現状に対する率直な認識も ともに重要なのだ。・・・・現実を率直に見つめ、緊張感や不快感をじっと耐え、同時にビジョンも忘れないようにすれば、やがて流れは変わってくるのだ。”
今 話題のサッカーのゲームの流れにも言えることなのでしょうね。

当然、ビジョンは実践され、実現されるべきものですが、ビジョンを現実に移し替えて行くための “①創造 ②伝達 ③実践”の 3つのプロセスが重要だということです。ここに至れば “ISOマネジメントの人”ならば“PDCAプロセスに落し込む”ということだ、と直ぐ了解いただけるものと思います。

最後に 気になる一節を ご紹介します。
“自分が宇宙の中心だと思っていると、自分よりはるかに大きな、すべての人間を包み込むような存在に触れるチャンスを失ってしまう。それが大自然をとおしてだろうが、共同体をとおしてだろうが、特定の宗教をとおしてだろうが、個々の人間を超えた存在と繋がるという経験が大切なんだ。そうした絆があれば、自己中心的な考え方を脱却して、より大きな存在との一体感を得ることができる。”
理念経営は、人々の意識に 一つの方向性をあたえるという精神面の課題でもあるため、結局は こういう台詞に行き着くのは当然という印象です。
例えば、“真善美”と言った徳目も 経営理念で よく見かけますが、それは この辺りを意識してのことだと 思われます。
高い精神性を 強調することで、人間性の ポジティブな側面を 人々から引き出し、促し、人々を引き付け、その人々が行動に移すように期待するためなのでしょう。




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