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“会社法入門”を読んで

ようやく、“会社法”の入門的解説本(神田秀樹著“会社法入門”)を読了しました。
膨大な量の法律で法務省のホームページからダウンロードした法文は855ページあり、これをプリントアウトしたのですが、異様に時間がかかりました。こういう法律を岩波新書1冊にした権威有る著者の入門書なので、その手軽さと信頼性で読んでみました。

この会社法、株式会社化を推進するのが目的のようで、記述は株式会社中心です。
実は 私は LLP(Limited Liability Partnership:有限責任事業組合)やLLC(Limited Liability Company:合同会社)の 会社法内での位置づけというか、その特徴・性格も含めて知りたかったのですが、読み終わってみて始めて、本書では そのことに ほとんど触れていないことに気付く始末でした。

“会社法入門”は 改訂の特徴となるような法文の説明以外に、次のようなことが書かれていました。
(1)会社法とは何か (2)株式会社の特質 (3)なぜ今、会社法の改訂なのか
このように 入門書ならば至極当然のメニューで書かれていまして、紙幅の関係上、私の期待は 当然 他書に譲るべきものだったのでしょう。

(1)会社法とは何か
これが 私のような 無知人間には非常に重要です。以下にキィワードを抜書きします。
“会社法には従業員はほとんど登場しない。” “働くことに関する法律は、・・・労働法という法律である。” “会社法は、株主がおカネを出し、それに基づいて、会社の運営を決め、会社が活動するという面についてルールを定めているということである。”

(2)株式会社の特質
その特質として、
“①出資者による所有 ②法人格の具備 ③出資者の有限責任 ④出資者と業務執行者との分離 ⑤出資分の譲渡性”
を 挙げています。
“株式会社”は人類の発明の 最も輝かしい成果の一つであるらしいですが、確かに そうなのでしょう。
そして ほんの僅かなスペースでの説明ではありますが、会社形態としては 株式会社と非株式会社の持分法会社に分かれているとのこと。その持分法会社に上記 LLC(合同会社)が 分類されています。LLC(合同会社)以外に合名会社、合資会社があります。これら、LLP(有限責任事業組合)やLLC(合同会社)は、小さな会社に向いているということですので、私のように “21世紀は 中小企業の時代” と認識している者には 看過できない課題だと直感します。そういう意味で この著者が指摘するように“制度間競争”の時代でもあるのでしょう。

(3)なぜ今、会社法の改訂なのか
この点については 二つあり、“現代語化”と“現代化”だという説明です。何だか はぐらかされた気がしますが、“現代化”については、この本の第5章で 説明されていて この本の特に重要な部分だと思います。

コーポレートガバナンスは 結局は経営者を監視するための内部統制であり、その“内部統制システムの重視や情報開示制度の充実は、公正さと透明性とを確保するための規制である。”
そして、“会社法は、国の経済政策のひとつの重要なインフラとして、議論されている。” 従って、会社法の目指す方向は“競争力を高める、IT革命に対応する、資本市場に対応する”ことである。
今や、インターネットを前提としない会社業務は考えられず、ITや金融工学を前提としない資本市場はありえない。
90年代の初め、日本の資本市場をニューヨーク、ロンドン並に復帰させる目標があり、日本版金融ビッグ・バンが実施された。ここで、顕著な規制として上がったのが、銀行規制のパラダイム変更であった。これにより個々の活動を事前に直接規制するアプローチから 自己資本比率規制を中心にその他リスク管理を厳しく求め、利益相反行為などの弊害対処する行為規制を充実させたのであるが、これを参考に 規制のありかたを考え直す時代となっている。
コーポレートガバナンスは結局のところ株主(ITや金融工学を前提した資本市場の投資家)の信頼を確保する仕組の構築という課題であり、またそういう目的に沿った機関・組織設計を行える自由度を確保する必要があった。
そういった 時代を背景に 会社法の改正が実施された、ということです。

さらに、著者は “あとがき” で 興味深い一節を書いています。
“会社法の条文を読み始めてしばらくして、私には数学の歴史が思い浮かんだ。ゼロの発見にせよ、あるいは17世紀の微積分革命にせよ、それは言語(数学言語)の革命でもあった。新しい会社法の条文は、21世紀にふさわしいルールを書きおろそうとした時の日本語という言語自体の限界を示しているように思う。数学と同様の言語革命を伴わない限り、条文の言葉としてのわかりにくさは改善できないだろう。こうした点が人類の歴史の中で将来どのようになっていくのか、私には非常に興味深い。”

また、ビジネスの現代化、国際化の進展に従い、起業化の容易化なども 念頭にあったと思われます。つまり、繰返しになりますが、起業直後の小さな会社には、LLP(有限責任事業組合)やLLC(合同会社)の組織形態に 大きく期待されているようで、この方面の調査・理解は 必要のようです。
但し、LLC(合同会社)は 会社法に基づいていますが、LLP(有限責任事業組合)は“有限責任事業組合契約に関する法律”に基づいているとのことで、会社法は 法務省、“有限責任事業組合契約法”は経済産業省の所管だそうです。
お役人の縄張りがあるようで、なかなか 面倒な世界のようです。

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