もう10年以上前になるでしょうか、アレルギー関連学会で「小学1年生にアレルギー血液検査を行うとダニとスギ花粉陽性率は40%」と聞き衝撃を受けた記憶があります。
検査での陽性率は「感作率」とも呼ばれ、これは実際に症状が出る「有病率」とは異なりますので誤解なきよう。「検査陽性、でも症状はない」状態は「スギ花粉症予備軍」とでも申しましょうか・・・。
さて、近年の検討報告を見つけました。
小学1年生では感作率31.4%、それが6年生になると45.9%に上昇。有病率は15.8%。ダニにも感作されている子どもの方が発症率が高かった、という内容です;
■ 日本の小学6年生、2人に1人がスギ花粉に感作
(ケアネット:2014/03/19)
日本の小学1年生220例を6年間追跡し、スギ花粉感作の既往および新規発症について調べた結果、1年生時点で31.4%がスギ花粉への感作を有しており、卒業までに14.5%が発症、未感作であった児童は54.1%であったことが、大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室の金沢 敦子氏らにより報告された。スギ花粉症有病率は15.8%で、スギ花粉感作はハウスダスト感作と強く関連していることなども明らかになったという(Allergology International誌2014年3月号の掲載報告)。
日本では1980年代からスギ花粉症が増加している。これまで、小学生においてスギ花粉症IgEの陽性率が増えていること、1992~1994年において中学生の有病率が17.1%であったとの報告はあるが、小学生の有病率および発現率については明らかにされていなかった。
研究グループは、スギ花粉感作およびスギ花粉症発症の予防可能な因子を明らかにすることを目的に、小学生を対象とした6年間の追跡観察研究を行った。1994年~2007年にかけて、毎年5~6月に、血清スギ花粉IgEとハウスダストIgEを測定し、また鼻炎症状の有無について調べた・・・。
<原著論文> Kanazawa A, et al. Allergol Int. 2014; 63:95-101.
スギ花粉症関連で、もう一つ興味深い記事を;
■ 日本にスギ花粉症が出現した3つの原因
(2014年03月16日:ビーカイブ)
イギリスにおけるカモガヤ花粉症出現の経緯とほぼ同じことが、戦後の日本でも起こりました。それがスギ花粉症の出現です。第二次世界大戦前には見られなかったスギ花粉症が、戦後になって激増したおもな原因として、次の3つの原因が考えられます。
1.アレルゲンであるスギ花粉そのものの増加
2.動物性タンパク質や動物性脂肪の摂取量が増加して、栄養条件が改善されたため、人体内の抗体産生能力が強くなったこと
3.アレルゲンであるスギ花粉を人体まで運ぶ媒体である大気が、車社会の進行のために絶えず撹拌されて、落下した花粉が何回も空中へ巻き上がるようになったこと
◇1950年代に行なわれたスギの一斉植林が原因
ではアレルゲン量の増加についてみていきましょう。日本では、第二次世界大戦中に、各種戦争機材の原材料としてスギなどの樹木が日本国中で伐採されました。そのうえ、終戦の直後からは、復興のためにさらに山々の樹木が切り倒されたため、1947年のキャサリン台風などの大雨のときだけではなく、ちょっとした雨でも大洪水となりました。
このため、1950年代から、治山や治水の目的で森林を再建しようと、成長が早いスギを植樹しはじめたのです(※)。同様に成長が早いヒノキも、1960年代から1970年代にかけて植林量が増加しました。
しかし、その後の国内復興、経済発展に伴って、安い輸入材が国内に多く流入したため、せっかく植林したスギやヒノキが成長しても伐採されなくなりました。人々が山林の手入れを怠ると、スギやヒノキは樹木に花粉を多くつけ、これを飛散させるようになったのです。
日本では一般的に、スギは樹齢30年前後から大量に花粉を飛散させます。スギ花粉症が1976年に激増し、大飛散年である1979年には大きな社会問題になったのはこのためです。すなわち、アレルゲンの絶対量が増加したため、アレルギーの発症率も増えたのです。スギ、ヒノキの花粉量の2000年の測定値を見ると、35年前(1965年)の3倍ほどにまで増加しています。
◇交通量の増加そのものが真の原因
車両通行量の多い地域ほど、いったん地面に落下した花粉が巻き上げられて、二度三度と繰り返して人の鼻粘膜に触れるためであろうと考えられます。
※ 当時「杉」は戦後復興のキーワードの一つでした。「お山の杉の子」という童謡の歌詞にその雰囲気が残っていますね。
・・・その後、以下のようなニュースを見つけました。国民の70%がスギ抗体を保有する時代なんですねえ。
■ 日本国民の約70%がスギ花粉症? 日本人とスギ花粉症の関係性
(2014年03月29日:ビーカイブ)
日本国民の約70%がスギ花粉症の抗体を持っていることを知っていますか? 日本人とスギ花粉症の関係性について紹介します。
◇スギ花粉症の発見
スギ花粉症は、齋藤洋三先生が栃木県日光地方の耳鼻科に勤務していた1963年の3月から4月にかけて鼻、眼、咽頭のアレルギー症状を訴える21人の患者さんに出会ったのが発見のきっかけです。
齋藤先生は、患者さんに対する皮膚反応検査、誘発反応検査、血清抗体検査、病理組織検査や空中花粉検査などを実施し、患者さんの症状はアレルギー性のものであり、その原因アレルゲンは花粉であることを証明しました。
現在、スギの天然林は、本州最北端の青森県から九州の屋久島にかけて点々と存在するにすぎません。それ以外のスギ林はすべて植林されたものです。日本全体では、山林や平地林などを含めると約450万ヘクタールものスギが植栽されており、主に東北地方や九州地方に多く見られます。
1950年代に行なわれたスギの一斉植林から約30年経過した1979年以降、スギ花粉症は、北海道と沖縄を除く全国で社会問題となっています。第二次世界大戦以前にはほとんど見られなかったスギ花粉症でした。
しかし、ここ10~20年の間に非常に増加し、いまや日本人の約15パーセントがスギ花粉症を発症していると推定されており、国民病という不名誉な名前がついているほどです。ヨーロッパにおけるイネ科の花粉症、アメリカのブタクサ花粉症、日本のスギ花粉症をあわせて、世界の三大花粉症と呼ぶ人もいます。
◇日本国民の約70%がスギ花粉症?
現在、日本国民の約70%の人がスギ花粉の抗体を持っていると推定されています。スギ花粉症予備軍といえる人たちがこれほどまでに多いのですから、花粉症を発症していない人といえども安心することはできません。
2月から4月にかけて大量のスギ花粉が飛散した後、ヒノキなどヒノキ科の樹木の花粉が3月中旬から5月中旬頃まで飛散します。スギとヒノキ科樹木の花粉にはアレルギーを起こす成分に共通したものがあり、スギ花粉で花粉症症状を起こす人の約80パーセントは、ヒノキ科樹木の花粉でも花粉症の症状を起こします。このため、「スギ・ヒノキ科花粉症」と呼ぶ花粉症学者もいます。
首都圏にはスギもヒノキもありますから、2月から5月頃まで花粉症に苦しむ人が多いようです。関西より西ではスギよりもヒノキによる花粉症が多いところが増えています 。
検査での陽性率は「感作率」とも呼ばれ、これは実際に症状が出る「有病率」とは異なりますので誤解なきよう。「検査陽性、でも症状はない」状態は「スギ花粉症予備軍」とでも申しましょうか・・・。
さて、近年の検討報告を見つけました。
小学1年生では感作率31.4%、それが6年生になると45.9%に上昇。有病率は15.8%。ダニにも感作されている子どもの方が発症率が高かった、という内容です;
■ 日本の小学6年生、2人に1人がスギ花粉に感作
(ケアネット:2014/03/19)
日本の小学1年生220例を6年間追跡し、スギ花粉感作の既往および新規発症について調べた結果、1年生時点で31.4%がスギ花粉への感作を有しており、卒業までに14.5%が発症、未感作であった児童は54.1%であったことが、大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室の金沢 敦子氏らにより報告された。スギ花粉症有病率は15.8%で、スギ花粉感作はハウスダスト感作と強く関連していることなども明らかになったという(Allergology International誌2014年3月号の掲載報告)。
日本では1980年代からスギ花粉症が増加している。これまで、小学生においてスギ花粉症IgEの陽性率が増えていること、1992~1994年において中学生の有病率が17.1%であったとの報告はあるが、小学生の有病率および発現率については明らかにされていなかった。
研究グループは、スギ花粉感作およびスギ花粉症発症の予防可能な因子を明らかにすることを目的に、小学生を対象とした6年間の追跡観察研究を行った。1994年~2007年にかけて、毎年5~6月に、血清スギ花粉IgEとハウスダストIgEを測定し、また鼻炎症状の有無について調べた・・・。
<原著論文> Kanazawa A, et al. Allergol Int. 2014; 63:95-101.
スギ花粉症関連で、もう一つ興味深い記事を;
■ 日本にスギ花粉症が出現した3つの原因
(2014年03月16日:ビーカイブ)
イギリスにおけるカモガヤ花粉症出現の経緯とほぼ同じことが、戦後の日本でも起こりました。それがスギ花粉症の出現です。第二次世界大戦前には見られなかったスギ花粉症が、戦後になって激増したおもな原因として、次の3つの原因が考えられます。
1.アレルゲンであるスギ花粉そのものの増加
2.動物性タンパク質や動物性脂肪の摂取量が増加して、栄養条件が改善されたため、人体内の抗体産生能力が強くなったこと
3.アレルゲンであるスギ花粉を人体まで運ぶ媒体である大気が、車社会の進行のために絶えず撹拌されて、落下した花粉が何回も空中へ巻き上がるようになったこと
◇1950年代に行なわれたスギの一斉植林が原因
ではアレルゲン量の増加についてみていきましょう。日本では、第二次世界大戦中に、各種戦争機材の原材料としてスギなどの樹木が日本国中で伐採されました。そのうえ、終戦の直後からは、復興のためにさらに山々の樹木が切り倒されたため、1947年のキャサリン台風などの大雨のときだけではなく、ちょっとした雨でも大洪水となりました。
このため、1950年代から、治山や治水の目的で森林を再建しようと、成長が早いスギを植樹しはじめたのです(※)。同様に成長が早いヒノキも、1960年代から1970年代にかけて植林量が増加しました。
しかし、その後の国内復興、経済発展に伴って、安い輸入材が国内に多く流入したため、せっかく植林したスギやヒノキが成長しても伐採されなくなりました。人々が山林の手入れを怠ると、スギやヒノキは樹木に花粉を多くつけ、これを飛散させるようになったのです。
日本では一般的に、スギは樹齢30年前後から大量に花粉を飛散させます。スギ花粉症が1976年に激増し、大飛散年である1979年には大きな社会問題になったのはこのためです。すなわち、アレルゲンの絶対量が増加したため、アレルギーの発症率も増えたのです。スギ、ヒノキの花粉量の2000年の測定値を見ると、35年前(1965年)の3倍ほどにまで増加しています。
◇交通量の増加そのものが真の原因
車両通行量の多い地域ほど、いったん地面に落下した花粉が巻き上げられて、二度三度と繰り返して人の鼻粘膜に触れるためであろうと考えられます。
※ 当時「杉」は戦後復興のキーワードの一つでした。「お山の杉の子」という童謡の歌詞にその雰囲気が残っていますね。
・・・その後、以下のようなニュースを見つけました。国民の70%がスギ抗体を保有する時代なんですねえ。
■ 日本国民の約70%がスギ花粉症? 日本人とスギ花粉症の関係性
(2014年03月29日:ビーカイブ)
日本国民の約70%がスギ花粉症の抗体を持っていることを知っていますか? 日本人とスギ花粉症の関係性について紹介します。
◇スギ花粉症の発見
スギ花粉症は、齋藤洋三先生が栃木県日光地方の耳鼻科に勤務していた1963年の3月から4月にかけて鼻、眼、咽頭のアレルギー症状を訴える21人の患者さんに出会ったのが発見のきっかけです。
齋藤先生は、患者さんに対する皮膚反応検査、誘発反応検査、血清抗体検査、病理組織検査や空中花粉検査などを実施し、患者さんの症状はアレルギー性のものであり、その原因アレルゲンは花粉であることを証明しました。
現在、スギの天然林は、本州最北端の青森県から九州の屋久島にかけて点々と存在するにすぎません。それ以外のスギ林はすべて植林されたものです。日本全体では、山林や平地林などを含めると約450万ヘクタールものスギが植栽されており、主に東北地方や九州地方に多く見られます。
1950年代に行なわれたスギの一斉植林から約30年経過した1979年以降、スギ花粉症は、北海道と沖縄を除く全国で社会問題となっています。第二次世界大戦以前にはほとんど見られなかったスギ花粉症でした。
しかし、ここ10~20年の間に非常に増加し、いまや日本人の約15パーセントがスギ花粉症を発症していると推定されており、国民病という不名誉な名前がついているほどです。ヨーロッパにおけるイネ科の花粉症、アメリカのブタクサ花粉症、日本のスギ花粉症をあわせて、世界の三大花粉症と呼ぶ人もいます。
◇日本国民の約70%がスギ花粉症?
現在、日本国民の約70%の人がスギ花粉の抗体を持っていると推定されています。スギ花粉症予備軍といえる人たちがこれほどまでに多いのですから、花粉症を発症していない人といえども安心することはできません。
2月から4月にかけて大量のスギ花粉が飛散した後、ヒノキなどヒノキ科の樹木の花粉が3月中旬から5月中旬頃まで飛散します。スギとヒノキ科樹木の花粉にはアレルギーを起こす成分に共通したものがあり、スギ花粉で花粉症症状を起こす人の約80パーセントは、ヒノキ科樹木の花粉でも花粉症の症状を起こします。このため、「スギ・ヒノキ科花粉症」と呼ぶ花粉症学者もいます。
首都圏にはスギもヒノキもありますから、2月から5月頃まで花粉症に苦しむ人が多いようです。関西より西ではスギよりもヒノキによる花粉症が多いところが増えています 。