新型コロナパンデミックの始まりは、
2019年12月の中国武漢。
年末に「中国で重症化しやすい肺炎が流行っている」
という情報が流れて警戒したことを覚えています。
それからの展開は皆さんご存じのとおりです。
中国は「ゼロコロナ政策」をかたくなに継続し、
ロックダウンを繰り返し、
感染者数を抑え込んできました。
しかし経済に与える影響や、
不自由な生活に対する国民の反感・怒りが、
押さえきれないほど高まり、
とうとう2022年12月に「ゼロコロナ政策」を破棄しました。
それがあまりにも唐突に行われたため、
感染が爆発して中国の医療は大混乱。
中国で採用されていたワクチンは自国製の効果が弱いタイプだったので、
多数の死者を出しました。
病院は類を見ない患者数であふれ、
葬儀場に入りきれず、霊柩車の渋滞が発生しました。
ゼロコロナ政策中は患者数や死者数など公表してきた中国政府は、
PCR検査を放棄して感染者数の公表をやめました。
死者数も基礎疾患のある高齢者は算定しない方法をとり、
「健康者が新型コロナに罹って死亡した」数だけ算定しました。
なので、1日当たり一桁というありえない数字になりました。
国際社会は、中国政府の非常識さに呆れました。
彼らは正気で今回の措置をしたのか・・・
もしそうだとしたら、中国人の思考回路を疑うことになります。
中国寄りとうわさされてきたWHOさえも、
「正確な数字を透明性をもって公表するように」
指導しました。
国際社会の反論を受け、
1/16現在、中国政府も少しずつ方向転換しています。
感染爆発は2022年12月中旬に始まり、下旬にはピークアウトした、
とされています。
現在は「もう終わった」という雰囲気らしい。
まあ、今後控えている春節で地方に広がるリスクが残っていますが。
中国が採用した方法は正しいのでしょうか?
ゼロコロナ政策でロックダウンを繰り返したところまでは、
その後世界中で同じことが施行されたので支持する意見もあります。
しかし今回の「突然のゼロコロナ政策破棄」はどうでしょう。
世界各国が恐れて対策をとってきた医療崩壊・死者数抑制を、
まったく参考にしていない暴挙と言わざるを得ないと思われます。
それに、全世界に新型コロナ患者を輸出しようとしているとさえ思える行為。
中国の感染状況が隠蔽されているので、
世界各国は中国からの渡航者の入国に対してハードルを挙げざるを得ません。
それを「中国人に対する差別だ」として報復行為を発しています。
ここまでくると、やはり話の通じる国ではないのでは…とあきらめの気持ちさえ生まれてきます。
今後も中国政府が正確な死者数を公表することは期待できません。
このままのらりくらりと逃げ続け、
「中国の新型コロナ政策は成功した」
と言い続けるのでしょう。
専制国家の怖いところです。
参考記事を紹介します。
■ 感染爆発、中国は世界を巻き込むな
遠藤誉:中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、
コロナ感染者数が9億とされている中国大陸の人の出国を中国政府は解禁したが、それは3年前の春節における武漢でのコロナ発生時の過ちをくり返すことにならないか。人類は3年間も耐えてきた。中国には責任がある。
◆中国国内で感染が落ち着く3月過ぎまで出国させるべきではない
1月8日から実行されることになった<新型コロナウイルス感染症“乙類乙管”実施方案>の【三、主要措置】の(十二)に書いてあるように、中国当局は「1月8日を以て、国際的のコロナ感染の形勢と各方面のサービス保証能力に基づき、中国公民が出国して旅行することを認める」ことになった。
しかし、その時点でも中国国民の35%~80%はコロナに感染していると計算する学者がいたわけだし、今では9億人(約65%)が感染しているという試算さえある。また、コロナ感染関連の専門家は何度も、全国的なコロナ感染は春節休暇期間(1月21日~2月5日)前後にピークを迎えるだろうと予測し、「3月に入ってから落ち着きを見せるだろう」という予見を発信してきた。
中国政府もそれを否定せず、半ば、それは政府見解のような形で動いてきた。
だというのに、今から感染のピークに差し掛かるという春節前の1月8日に、中国大陸内にいる中国公民を世界に向けて開放してしますのは、無責任ではないのか。
中国大陸という国境内で、中国政府がどのようなコロナ政策を実施しているかに関しては、中国大陸の事情もあり、それは一定程度その国の自由だ。
これまでコラムで数多く書いてきたように、中国は武漢のコロナ発生以来ゼロコロナ政策を実施しながら、少なくとも2021年1月からは規制緩和策を打ち出してきた。しかし、それは中国の中央政府と地方政府との関係により、末端の現場では実施されて来なかった。実施しないのなら逮捕するぞと中央が脅しをかけた頃には、すでに中国全土のコロナウイルスは感染力が強いオミクロン株系列のBF.7の類に変わってしまっており、もはや緩和したとしてゼロコロナでは防げない状況に至っていた。
そこで2022年12月26日に、1月8日から実施する「乙類乙管」方案へと移行していったのだ。検査をしても追いつかないし経費も高額になるので、PCR検査も廃止した。
こうして感染爆発を起こし、集団免疫を付けさせてしまう以外に方法はなくなったのである。
それは中国の事情で、仕方のない結果だとは思う。
これはある意味での「大地における壮大な実験」であり、その実験結果が出るまでは大陸の者を海外に出してはならないと思うのである。
3月に入り、本当に感染が落ち着くならば、その落ち着いた状況で、ウイルスの種類なども検査し、これなら大丈夫となってからなら、まだ出国を許してもいいかもしれないが、今は出国させるべきではない。
「大地における壮大な実験」に世界を巻き込むなと言いたいのだ。
◆中国からの入国者に対する水際対策の各国比較
中国の「第一財経」が「2023年1月9日21時までの各国の措置」としてまとめた図表が中国のネットを賑わしている。微妙に実態と異なる表現もなくはないが、それを忠実に日本語に翻訳したものを作成したので、以下に記す。
このように、赤で示した国以外は、「制限なし」か「特殊制限」あるいは「証明書の提出」程度で、割合に水際対策が緩い。
その違いは決して「政治的な友好関係の度合い」を反映しているのではなく、主として「中国人観光客が来ないと経済が成り立たない」という側面の方が強いだろう。あるいは、自国も似たり寄ったりの情況で大差ないという国もあるかもしれない。
結果、受け入れた見返りに中国の「感染爆発」も引き受けるわけで、「大地における壮大な実験」に参加することになるのである。
◆中国のコロナ対策は「科学的」なのか?
中国の外交部報道官は、日本や韓国が水際対策を厳しくしていることに対して「科学的でなく、コロナ感染問題を政治化している」と強い口調で非難したが、中国は「大地における壮大な実験」に際して世界を巻き込んでいることを、「科学的だ」と思っているのだろうか?
ちょうど3年前の春節のときに、武漢で起きたコロナに関して、中国は春節前に大量の感染者を中国全土に、そして世界各国に移動させてしまった。そのことに強い憤りを覚え、数多くのコラムを日夜書き続けたものだ。
たとえば2020年1月24日の<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>や、2020年1月27日の<「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック>あるいは2020年1月29日の<一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰>などである。
3年間で世界各国は、それぞれの方法で免疫を付けたり、一定程度のコロナ防疫制御にそれなりの成功を収めても来ている。
しかし、ワクチンによる免疫取得が少なく、感染爆発している中国大陸から多くの旅行客を迎える各国で、今後、どのような新しい事態が生じないとも限らない。現に上海ではBF.7よりもさらに感染力の強い、アメリカで流行しているXBB.1.5感染者が発見され、中国では緊急体制を取っているという。
「大地における壮大な実験」は中国国境内で行ってほしい。その実験に人類全体を巻き込むべきではない。
3年間、人類は、どれだけ耐え難い苦難に耐え、親しい人たちを失ってきたかしれない。その苦しみと哀しみを軽視すべきではない。「科学的姿勢」は「人類への愛」に満ちていなければならないはずだ。そうでなかったとしたら、人は何のために生きているのか…。
それを振り出しに戻すな。
なお、今年1月12日のコラム<中国、ビザ発給停止の背後にある本音>や、1月13日のコラム<中国、韓国に対するビザ発給停止の舞台裏>で、中国の国際ニュースは「日本と韓国」に集中していると書いたが、案の定、岸田首相が日本に帰国すると、突然のように元に戻った。
本日(1月15日)の国際ニュースの冒頭は、従来通り、ウクライナがトップに来て、次にアメリカ、スペイン、ハンガリー、イギリスの順番になった。日本と韓国は、話題にさえのぼっていない。中国がいかに政治的目的でビザ発給の一時的停止を行ったかが明瞭に見えてくる。