Long-COVID(コロナ後遺症)に対する有効な治療はあるのか?
医療分野では日夜この分析が進んでいます。
その可能性をほのめかす報告を扱った記事を紹介します;
▢ Long COVIDは5タイプに分類できる―国内患者のクラスター分析
(HealthDay News:2023/06/07:ケアネット)より一部抜粋;
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期を過ぎた後に何らかの症状が遷延する、いわゆる「long COVID」は、5タイプに分類可能であるとする論文が「Clinical and Experimental Medicine」に4月7日掲載された。聖マリアンナ医科大学総合診療内科の土田知也氏らによる研究によるもので、就労に影響が生じやすいタイプも特定された。
…まずlong COVIDをいくつかのタイプに分類して、それぞれのタイプを特徴付けるという試みが始まっており、海外発のそのような研究報告も存在する。ただし、QOL低下につながりやすい就労への影響という点を勘案した分類は、まだ提案されていない。
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2021年1月18日~2022年5月30日に同院のCOVID-19後外来を受診した患者のうち、PCR検査陽性の記録があり、感染後に症状が2カ月以上続いている15歳以上の患者497人(平均年齢41.6歳、男性43.1%)を解析対象とした。
…まずlong COVIDをいくつかのタイプに分類して、それぞれのタイプを特徴付けるという試みが始まっており、海外発のそのような研究報告も存在する。ただし、QOL低下につながりやすい就労への影響という点を勘案した分類は、まだ提案されていない。
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2021年1月18日~2022年5月30日に同院のCOVID-19後外来を受診した患者のうち、PCR検査陽性の記録があり、感染後に症状が2カ月以上続いている15歳以上の患者497人(平均年齢41.6歳、男性43.1%)を解析対象とした。
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対象者には、23項目から成る自覚症状のアンケート(該当するものを○、強く該当するものを◎で回答する)と、慢性疲労症候群の評価に使われている9項目から成るパフォーマンスステータス(PS)質問票に答えてもらった。就労状況については、罹患前と同様に勤務継続、職務内容の変更、休職、退職という四つに分類した。
結果について、まず自覚症状に着目すると、
対象者には、23項目から成る自覚症状のアンケート(該当するものを○、強く該当するものを◎で回答する)と、慢性疲労症候群の評価に使われている9項目から成るパフォーマンスステータス(PS)質問票に答えてもらった。就労状況については、罹患前と同様に勤務継続、職務内容の変更、休職、退職という四つに分類した。
結果について、まず自覚症状に着目すると、
<○または◎のいずれかが最も多かった症状>
倦怠感(59.8%)
不安(42.3%)
嗅覚障害(41.9%)、
抑うつ(40.2%)、
頭痛(38.6%)
などだった。
<◎が最も多かった症状>
倦怠感(40.2%)
嗅覚障害(26.6%)
味覚障害(18.1%)、
脱毛(14.9%)、
呼吸困難(13.7%)、
頭痛(11.1%)
などだった。
次に、特徴の似ているデータをグループ化するクラスター分析という手法により、long COVIDのタイプ分類を行った結果、以下の5タイプに分けられることが分かった。
(タイプ1)倦怠感が強いことが特徴で全体の21.8%が該当。
次に、特徴の似ているデータをグループ化するクラスター分析という手法により、long COVIDのタイプ分類を行った結果、以下の5タイプに分けられることが分かった。
(タイプ1)倦怠感が強いことが特徴で全体の21.8%が該当。
(タイプ2)倦怠感のほかにも呼吸困難、胸痛、動悸、物忘れを訴える群で14.9%が該当。
(タイプ3)倦怠感、物忘れ、頭痛、不安、抑うつ、不眠症、モチベーション低下を訴える群で20.8%が該当。
(タイプ4)倦怠感が少なく脱毛を主症状とする群で19.8%が該当。
(タイプ5)倦怠感が少なく味覚障害や嗅覚障害が主体の群で22.8%が該当。
これらの群を比較すると、タイプ4は他群より高齢で、タイプ2や4は女性が多く、タイプ2はCOVID-19急性期に肺炎合併症を来していた割合が高いといった有意差が認められた。
これらの群を比較すると、タイプ4は他群より高齢で、タイプ2や4は女性が多く、タイプ2はCOVID-19急性期に肺炎合併症を来していた割合が高いといった有意差が認められた。
外来初診時のPSスコア(点数が高いほど生活の支障が強い)は、タイプ2が最も高く中央値4点(四分位範囲2~6)、続いてタイプ3が3点(同2~5)、タイプ1が2点(1~5)であり、タイプ4と5は0点(0~1)だった。症状発現から受診までの期間はタイプ5が最も長く、BMIについてはタイプによる有意差がなかった。
就労状況に関しては、
就労状況に関しては、
発症以前と変更なしの割合がタイプ1から順番に50.0%、41.9%、43.7%、77.6%、84.1%、
職務内容の変更を要した割合は、24.1%、13.5%、9.7%、2.0%、7.1%、
休職中は20.4%、36.5%、39.8%、16.3%、7.1%、
退職に至った割合は5.6%、8.1%、6.8%、4.1%、1.8%であり、
タイプ2や3で休職中の割合が高く、タイプ4や5はその割合が低いという差が認められた。
このほか、自律神経機能検査によって体位性起立性頻拍症候群〔POTS(立ち上がると脈拍が大きく変化する)〕と診断された割合が、自覚症状に倦怠感が含まれているタイプ1~3で高く、特にタイプ2では33.8%と3人に1人が該当することが分かった。
以上を基に著者らは、「long COVIDはその臨床症状から5タイプに分類可能」と結論付け、また倦怠感を訴えるタイプにはPOTSが多く、POTSは治療により改善も認められるケースがあることから、「タイプ1~3に該当する患者では自律神経機能の評価が重要ではないか」と付け加えている。
このほか、自律神経機能検査によって体位性起立性頻拍症候群〔POTS(立ち上がると脈拍が大きく変化する)〕と診断された割合が、自覚症状に倦怠感が含まれているタイプ1~3で高く、特にタイプ2では33.8%と3人に1人が該当することが分かった。
以上を基に著者らは、「long COVIDはその臨床症状から5タイプに分類可能」と結論付け、また倦怠感を訴えるタイプにはPOTSが多く、POTSは治療により改善も認められるケースがあることから、「タイプ1~3に該当する患者では自律神経機能の評価が重要ではないか」と付け加えている。
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<原著論文>
・Tsuchida T, et al. Clin Exp Med. 2023 Apr 7. [Epub ahead of print]
体位性起立性頻拍症候群(POTS)は小児では起立性調節障害のひとつに分類されている病名です。
難治性の起立性調節障害の1/3には心身症傾向が存在することが指摘されており、専門家でも治療に難渋します。