新型コロナウイルスに感染し、
急性期症状が治まった後も体調不良が続くことを、
「新型コロナ後遺症」とか「long-covid」、公的には「罹患後症状」
などと呼んできましたが、
その概念・定義は国により微妙に異なることが指摘されていました。
今回、日本ではそのあやふやな状況を打破すべく、
「定義」が提案されました。
▢ コロナ後遺症の新たな定義
(ケアネット:2023/06/01)より一部抜粋;
◆ 定義を明確にすべきという論調
日本ではCOVID-19後に持続的に起こる医学的な影響のことを「罹患後症状」と定めています。手引きでは「COVID-19罹患後に、感染性は消失したにもかかわらず、他に明らかな原因がなく、急性期から持続する症状や、あるいは経過の途中から新たに、または再び生じて持続する症状全般」と定義されています。
英語論文では、PASC(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection)、Long COVIDなどと呼ばれています。そもそもこの病態を明らかにするためには、コンセンサスある定義が必要なのですが、いまだにナラティブな位置付けになっています。信頼性の高いデータセットを用いてこれを提唱した報告がJAMAに掲載されました。
◆ 12症状をスコアリング
85施設において、SARS-CoV-2感染30日以内の2,248例、30日以降の6,398例、そして非感染の1,118例の合計9,764例が登録されました。年齢中央値は47歳(IQR 35~60歳)でした。頻度が2.5%以上だった37の症状について解析されました。
PASCスコアに寄与する症状を抽出し、LASSO回帰により1~8の範囲で重み付けを行い、対応スコアを有する12の症状を表のように定めました。脱毛は有意なスコア因子には含まれませんでした。
表. PASCスコア(参考資料2より引用)
感染から30日を超えた場合のPASCの割合は、オミクロン株流行期ではそれ以前よりも低いという結果でした(17%[95%信頼区間[CI]:15~18]vs.35%[95%CI:34~37])。また、オミクロン株によるPASCは、ワクチン接種を受けていない参加者よりもワクチン接種を完了した参加者のほうが低頻度でした(16% vs.22%)。
・・・
とにもかくにも、長引く体調不良に悩んで受診された患者さんが、
PASCの可能性が高いのかどうか、判断する材料が登場したわけです。
当院は小児科ながら「コロナ後遺症相談窓口」となっています。
なぜか当地域ではここ1件だけです。
つまり内科系医院は誰も手を挙げていません。
なぜかというと「診断しても治療法がない」からです。
新型コロナ禍では漢方医学が注目されています。
漢方医学は、患者さんが悩んでいる体調不良を、
「健康な状態からどんな要素がどれくらい偏っているか」
と複数の物差しで評価し、その歪みを漢方薬で健康な状態(中庸)に戻す医療です。
一方の西洋医学では「正体不明の感染症」に対して治療法はありません。
原因ウイルスがわかって初めて対策がとれるようになり、
そこにはどうしてもタイムラグが発生します。
さらに現時点ではPASCの病態解明が進んでおらず、
つまり西洋医学では手の出しようがないのです。
私は小児科医には珍しく漢方薬のメリットに気づいて使用してきたので、
患者さんの体調不良に沿った漢方治療を提案できます。