小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

重症度の構図は「COVID-19>インフルエンザ・RSV」で変わらず

2025年02月20日 06時24分24秒 | 予防接種
「新型コロナ」がいつの間にか「コロナ」と呼ばれるようになり、
「パンデミックの脅威は去った」という世論に落ちついたかのように見えます。
皆さんの周囲ではどうですか?

しかし科学データはその認識に「待った」をかけています。
そんな論文を扱った記事を紹介します。

論文著者の結論は、
「新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやRSウイルスよりもはるかに多くの感染者を出し、短期入院リスクや死亡リスクの上昇など、より重篤な転帰をもたらした」
とのことです。

▢ 米国ではCOVID-19が依然として健康上の大きな脅威
HealthDay News:2025/02/20:Care Net)より一部抜粋(下線は私が引きました);
  
 新型コロナウイルスは依然として米国人の健康に対する脅威であり、インフルエンザウイルスやRSウイルスよりも多くの感染と死亡を引き起こしていることが、新たな研究で示唆された。米国退役軍人省(VA)ポートランド医療システムのKristina Bajema氏らが「JAMA Internal Medicine」に1月27日報告したこの研究によると、2023/2024年の風邪・インフルエンザシーズン中に米国退役軍人保健局(VHA)で治療を受けた呼吸器感染症患者の5人中3人(60.3%)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患していたという。
 この研究でBajema氏らは、呼吸器感染症の2022/2023年シーズンと2023/2024年シーズンのVHAの医療記録を後ろ向きに解析し、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の重症度を比較した。対象は、2022年8月1日から2023年3月31日、または2023年8月1日から2024年3月31日の間に、COVID-19、インフルエンザ、RSウイルス感染症の検査を同日に受け、いずれかの診断を受けたが入院はしなかった退役軍人とした。
 その結果、2022/2023年コホート(6万8,581人)の66.2%、2023/2024年コホート(7万2,939人)の60.3%がCOVID-19の診断を受けていたことが明らかになった。一方、インフルエンザとRSウイルス感染症の診断を受けた割合は、2022/2023年コホートでそれぞれ24.7%と9.1%、2023/2024年コホートで26.4%と13.4%であった。2023/2024年シーズンにおける診断から30日間での入院リスクは、COVID-19で16.2%、インフルエンザで16.3%と同程度であった(RSウイルス感染症では14.3%)。
 2022/2023年シーズンにおける診断から30日間の死亡率は、COVID-19で1.0%、インフルエンザで0.7%、RSウイルス感染症で0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症をわずかに上回った。しかし、2023/2024年シーズンでの同死亡率は、それぞれ0.9%、0.7%、0.7%であり、COVID-19の死亡率はインフルエンザやRSウイルス感染症と類似していた。
 一方、180日間の累積死亡率は、両シーズンともCOVID-19で最も高く、2022/2023年シーズンでは3.1%、2023/2024年シーズンでは2.9%に達した。2022/2023年シーズンでは、COVID-19とインフルエンザの180日間の死亡リスク差(RD)は1.1%(95%信頼区間0.6〜1.5)、COVID-19とRSウイルス感染症のRDも1.1%(同0.6〜1.4)、2023/2024年シーズンでは、それぞれ0.8%(同0.3〜1.2)、0.6%(同0.1〜1.1)と推定された。これに対し、インフルエンザとRSウイルス感染症の180日間の死亡リスクに有意な差は見られなかった。
 このほか、両シーズンとも、COVID-19ワクチンの未接種者は、インフルエンザワクチンの未接種者よりも死亡リスクが高い傾向にあったことも示された。一方、ワクチン接種者の間では、COVID-19とインフルエンザの死亡リスクに有意な差は認められなかった。
 Bajema氏は、「新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやRSウイルスよりもはるかに多くの感染者を出し、短期入院リスクや死亡リスクの上昇など、より重篤な転帰をもたらした」と話す。研究グループは、「ワクチン接種は今も、ウイルス性の呼吸器疾患、特に新型コロナウイルスのオミクロン株の影響を最小限に抑えるための重要な戦略である」と結論付けている。

<原著論文>
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大人の食物アレルギーその3「GRPアレルギー」

2025年02月15日 14時37分01秒 | 食物アレルギー
大人の食物アレルギーその3は「GRPアレルギー」です。
一般の方には馴染みのない単語ですね。
いや医師の中でもアレルギー専門医以外はおそらく知らないと思われます。

GRPはアレルゲンコンポーネントの一つです。
前項目のPFASは基本的に口腔内にとどまる軽い症状ですが、
中には果物や野菜を食べると激しい全身症状で発症する患者さんがいます。
その原因を探求して見つけられたのがGRPです。

ポイントは「モモやウメで全身じんま疹が出る人は危険」です。


▢ ジベレリン制御蛋白(GRP)アレルギーNSAIDs服用で症状悪化? 一般的なIgE抗体検査をすり抜ける全身性アレルギー
2025/02/13:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);


図1 ジベレリン制御蛋白(GRP)アレルギーの特徴

 20歳代男性のA男は、ある日、モモを食べると蕁麻疹が出ることに気が付いた。先日も同じことがあったため、食物アレルギーを疑い近医を受診。キットを用いた特異的IgE抗体検査でモモは陰性だったため、直接の原因は分からなかったが、それ以降A男はモモを口にするのを何となく控えていた。しかし、その後も原因が分からぬまま、蕁麻疹や顔面潮紅が現れることがあり、次第に「体調の問題で、疲れがあると蕁麻疹が出やすいのかもしれない」などと思うようになった。
 ある朝、A男は朝食に梅干しとお茶漬けを食べた。また頭痛があり、前日から続けて市販の頭痛薬(NSAIDs)を服用した。仕事に遅刻しそうだったため、A男は走って駅まで向かった。すると、食後1時間を経過したあたりで蕁麻疹が現れ、顔のほてりを自覚した。A男は「いつもの症状か」と楽観視していたが、症状はみるみる悪化。眼瞼浮腫や鼻閉、呼吸困難も現れ、救急搬送された。救急外来では、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックが疑われ、治療が行われた。
 後日、A男は専門医に紹介され、上記のエピソードからモモの特異的IgE抗体検査、ウメとモモの粗抽出液を用いたプリックテストを実施した。特異的IgE抗体検査は陰性だったものの、プリックテストではウメとモモが陽性に。さらに詳細な検査により、ウメとモモのジベレリン制御蛋白(GRP)アレルギーと診断された。専門医は、これらの原因食物について、加工品も含めた除去指導を実施。誤って口にしたときに備えて、抗ヒスタミン薬とエピペンを処方し、携帯するよう伝えた。
「モモを食べると蕁麻疹が出るが、キットを用いた特異的IgE抗体検査は陰性」
「加熱・加工した果物でも蕁麻疹が出る」
「運動やNSAIDsの服用を契機に症状が悪化し、アナフィラキシーに至った」
──もし、原因不明のアレルギー患者からこういったエピソードを聞いたら、GRPアレルギーを疑ってほしい。
 GRPアレルギーは、約10年前に原因物質が同定された比較的新規のアレルギー疾患だ。植物ホルモンのジベレリンにより誘導される、抗菌ペプチドの一つであるGRPを原因とする。日本では、ウメやモモを原因とするGRPアレルギー患者が多い。一般的に、果物や野菜の主要アレルゲンはPR-10やプロフィリンといった蛋白質だが、GRPアレルギー患者の多くは、これらのアレルゲンに対する特異的IgE抗体検査で陰性となるため、長らく原因アレルゲンが不明だった。
 本邦のGRPアレルギー研究をリードしてきた、昭和大学医学部皮膚科教授の猪又直子氏によると、「自験例では、果物アレルギーの患者100人のうち、PR-10やプロフィリンの特異的IgE抗体検査が陰性の患者が20人おり、そのうちGRP陽性の患者が13人(65%)いた。原因不明の果物アレルギー患者の多くに、GRPアレルギーが潜んでいる可能性がある」という(図2)。


図2 日本人の果物アレルギー患者に占めるGRPアレルギー患者の割合
(Inomata N, et al. 2020を基に編集部作成)

▶ NSAIDsの服用や運動といったCo-factorに注意
 モモのアレルギーと言えば、カバノキ科花粉症との交差反応で生じる花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)が比較的よく知られている(関連記事:特定の季節に起こる頭痛や倦怠感、原因判明の契機となった食物アレルギー)。PFASは、主に口や喉に痒みやしびれが生じる口腔内アレルギー症候群(OAS)が主な病態で、アナフィラキシーまで進展するケースは少ない(表1)。上述の通り、PR-10やプロフィリンが原因アレルゲンで、これらは消化酵素で分解されるからだ。同様にこれらのアレルゲンは熱にも弱いため、加熱したものであれば口にすることができる。
 PR-10やプロフィリンに比べ、GRPは消化酵素や熱に耐性だ。そのため、GRPアレルギーの患者は、蕁麻疹や眼瞼浮腫のほかアナフィラキシーやショックなど、全身性かつ重大な症状に発展しやすい治療法は原因食物の除去指導だが、GRPアレルギーの場合は缶詰なども含めた、加工された原因食物も含めて避けるよう指導する必要がある
 「特にうっかり口にしてしまいやすいのがウメの加工品。日本では、市販のお弁当や総菜などにウメの加工品が入っていることが多い。また、梅ジュースと梅酒は飲料として加工されているため、患者はウメを喫食しているという意識が薄くなる」と猪又氏は指導の際の注意点を述べる。万が一、原因食物を喫食したときに備え、抗ヒスタミン薬や
エピペンを処方し、携帯するよう指導するのもポイントになる。


表1 異なるアレルゲンが誘導するモモアレルギーの違い

 昭和大学の猪又直子氏は「原因不明のアナフィラキシーを発症した患者では、GRPアレルギーを疑ってほしい」と語る。
 猪又氏は「GRPアレルギーは重篤な症状に発展するにもかかわらず、一般的な検査では見逃されやすいのが課題だ」と語る。その理由として、
(1)標準的な特異的IgE抗体検査キットで使用されているリコンビナント抗原に、GRPが含まれておらず陰性になる、
(2)粗抽出液を用いた検査を行っても、粗抽出液に抗原が十分含まれておらず陰性になることがある
──ことが挙げられる。
 さらに、GRPアレルギーに加え、PR-10やプロフィリンを原因アレルゲンとするPFASも持つ患者では、標準的な特異的IgE抗体検査で陽性になる。その結果、GRPアレルギーの可能性に触れられないまま、「生の果物を避ければよい」など、PFASに対する療養指導だけをされてしまう懸念があるという。
 「モモを原因とする食物アレルギーを疑う患者で、特に蕁麻疹や顔面・眼瞼浮腫、喉頭絞扼感や呼吸困難感、意識障害といった全身症状の既往を認めたら、GRPアレルギーも疑ってほしい」と猪又氏。GRPアレルギーの診断にはプリックテストが必要だが、「検査によりアナフィラキシーやショックを発症する可能性もあるため、GRPアレルギーを疑ったら専門医に紹介するのが望ましいだろう」と続ける。
 加えて、GRPアレルギーの患者では、
運動NSAIDs服用といったCo-factorにより、重大な症状が引き起こされることが分かっている。コムギや甲殻類アレルギーの患者に特徴的な、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)の病態も備えているというわけだ。特に注意したいのがNSAIDsの服用だ。FDEIAはCo-factorによって腸管バリア機能障害が生じ、抗原の吸収が促進されることが、症状誘発や増悪を引き起こす一つの原因だとされている。猪又氏によれば、「運動後に比べて、NSAIDs服用後の方がより抗原を吸収しやすい傾向があることが分かりつつある」という。
 GRPアレルギーは成人の報告が多いものの、近年は小児でも報告が増えてきている。特に、中高生では部活動の最中にアナフィラキシーを発症するケースもある。GRPアレルギーは発見されにくい上、症状によっては命を脅かすような疾患にもなる。原因不明だったり、口腔内にとどまらない全身性のアレルギー症状を訴える患者がいたら、食事歴と症状からGRPアレルギーを疑い、専門医へ精査を依頼することが重要になる。

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大人の食物アレルギーその2「PFAS」(花粉-食物アレルギー症候群)

2025年02月15日 14時34分59秒 | 食物アレルギー
大人の食物アレルギーその2は「PFAS」(“ピーファス”と読みます)、
花粉-食物アレルギー症候群の略称です。

この病名の患者さんはたくさんいます。
なぜかというと花粉症とリンクしているから。

スギ花粉症では少ないのですが、
カバノキ科(ハンノキやシラカバ)花粉症の人に合併しやすい病態です。

実際の症状は、
「果物や野菜を食べると口の中が痒くなる」
「でも全身じんま疹などの激しい症状は出ない」
「生で食べると症状が出るけど、加工品やジュースでは出ない」
というもので、
「あっ、わたしも!」
という方、結構多いと思われます。

ではPFASを扱った記事を紹介します。

<ポイント>
・特定の食物の蛋白質が花粉抗原と類似した構造を持っているため、交差反応によって食物の蛋白質も抗原として認識され、アレルギー症状が誘導される。
・PFASの症状は、口腔や咽頭の痒みやしびれといった症状が主であり、これは口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる。
・抗原のPR-10やプロフィリンは体内の酵素で分解されるため、多くの場合は全身性アレルギーには至らず症状が口腔内にとどまる。
・「カバノキ科花粉関連大豆アレルギー」の患者には特に注意がいる。
✓ 抗原のPR-10やプロフィリンは熱にも不安定なため、例えば、加工した上で十分に火を通す味噌の場合、喫食しても症状はほとんどない。
✓ 湯豆腐も、加工したものに火を通しているため、人によっては症状が出ることなく食べることが可能。
✓ だが、豆乳については液体のため咀嚼の必要がなく、原因アレルゲンが十分に分解されず直接体内に取り込まれるためか、アナフィラキシーなどの全身症状に発展しやすい。
✓ 加熱しない冷ややっこや、もやしの炒め物といった加熱しているものの生に近い状態の大豆を喫食すると、症状が重くなりやすい。
・普段喫食して症状が軽くても、花粉の暴露期間が蓄積するシーズンの後半では症状が重くなることもある。
・くしゃみや目の痒みといった典型的な花粉症の症状以外に、頭痛や消化器症状、皮膚症状、熱・だるさといった呼吸器外症状を抱えている重篤な花粉症患者に、PFASが高頻度に合併している。その一つが過敏性腸症候群(IBS)様症状で、原因食物を食べることで症状が誘発される患者もいれば、花粉を吸入して嚥下することより症状が増悪する患者もいる。10~20歳代の女性で特定の時期に「だるい」「朝が起きられない」「動悸がある」といった訴えがあり、起立性調節障害や精神疾患が疑われていた患者に、PFASを合併する重症な花粉症が隠れていることがある。

大人の花粉症患者さんの中には、鼻と目の症状だけではなく全身症状(だるい、熱っぽい、ボーッとする)を訴える方もいますが、そのような人には合併しやすいとのこと。


▢ 特定の季節に起こる頭痛や倦怠感、原因判明の契機となった食物アレルギー


図1 花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の特徴

 20歳代女性のA子は、毎年、3月中旬から4月末ごろまで咳や咽頭痛、頭痛、倦怠感といった症状がある。特に春先は新年度の準備で忙しく、体調を崩しがちだ。A子は「精神的に疲れているのだろう」と思ったが、長引く咳が気になり近医の内科を受診した。器質的疾患は見られず、上気道炎と診断されたが、症状はあまり改善しない。「疲れているから、かぜもよくなりにくいのかな」とA子は考えた。
 5月に入り大型連休を迎え、A子は気晴らしに人気のカフェに行くことにした。カフェでは豆乳で作ったバナナジュースとパンケーキを食べ、1時間ほどが経過したところで顔面の紅潮、瞼の腫れ、ひどい鼻づまり、両手掌の発赤やかゆみが現れた。普段、食後にこのような症状が出たことはなく、A子は違和感を覚えた。歩いて帰宅中、急に呼吸が苦しくなり意識が朦朧としていたところ、通りすがりの人が異変に気付き救急搬送された。救急外来では、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックが疑われ、治療が行われた。
 後日、A子は専門医に紹介され、複数のアレルゲン候補の特異的IgE抗体検査を実施したところ、大豆のアレルゲンであるGly m 4が陽性だった。さらに詳細な問診により、もやしや冷ややっこを食べた際に口が痒くなることも判明し、豆乳がアナフィラキシーの原因であったと診断された。専門医は加熱や加工処理が十分に加えられていない大豆製品(豆乳、豆腐、もやし、枝豆)の除去指導を実施し、特に豆乳が入った食品は厳格に避けるように指導した。誤って口にしたときに備えて、抗ヒスタミン薬とエピペンを処方し、携帯するよう伝えた。
 A子はこれまで「アレルギーとは無縁の人生だ」と思っていたが、特異的IgE抗体検査ではカバノキ科花粉も陽性だった。そのため、カバノキ科花粉の感作で生じる、カバノキ科花粉関連大豆アレルギーと診断された。以降、毎年カバノキ科花粉の飛散時期である3~4月は花粉回避策、体調管理(疲れをためないこと)、抗ヒスタミン薬に加えてその他の抗アレルギー薬などを使用するようにしたところ、咳、咽頭痛、頭痛や倦怠感などの上気道炎のような症状がなくなりQOLが改善した。

▶ 豆乳はアナフィラキシーに至る可能性も
 日本の国民病とも言える花粉症において、よく知られている合併症が花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)だ。特定の食物の蛋白質が花粉抗原と類似した構造を持っているため、交差反応によって食物の蛋白質も抗原として認識され、アレルギー症状が誘導される。交差反応の例は表1の通り(関連記事:花粉-食物アレルギー症候群もアレルギーマーチの1つ)。


表1 花粉-食物アレルギー症候群に関与する花粉と植物性食品(「食物アレルギー診療ガイドライン2021」を一部改変)

 相模原病院臨床研究センターの福冨友馬氏は「豆乳は液体で即座に体内に取り込まれるためか、アナフィラキシーなどに発展しやすい」と語る。
 PFASの症状は、口腔や咽頭の痒みやしびれといった症状が主であり、これは口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれる抗原のPR-10やプロフィリンは体内の酵素で分解されるため、多くの場合は全身性アレルギーには至らず症状が口腔内にとどまるからだ。
 しかし、「カバノキ科花粉関連大豆アレルギーの患者には特に注意がいる」と話すのは、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの福冨友馬氏。通常、カバノキ科花粉関連大豆アレルギー患者が大豆食品を喫食しても、他のPFASと同様に症状は口腔内にとどまる。だが、豆乳については「液体のため咀嚼の必要がなく、原因アレルゲンが十分に分解されず直接体内に取り込まれるためか、アナフィラキシーなどの全身症状に発展しやすい」と福冨氏は注意を促す。
 もっとも、豆乳に注意する点以外は他のPFAS患者と対応は変わらず、「患者の生活の質を損なわないために、除去は最小限にとどめる」のが指導の基本だ。抗原のPR-10やプロフィリンは熱にも不安定なため、例えば、加工した上で十分に火を通す味噌の場合、喫食しても症状はほとんどない。また、湯豆腐も、加工したものに火を通しているため、人によっては症状が出ることなく食べることが可能だという。
・・・
 一方、加熱しない冷ややっこや、もやしの炒め物といった加熱しているものの生に近い状態の大豆を喫食すると、症状が重くなりやすい。あいち小児保健医療総合センターセンター長の伊藤浩明氏は、「成人のPFAS患者は、原因食物の加工度合いによって喫食後の症状に違いが出ることを経験的に分かっていることが多い。患者の経験値に合わせて除去の程度も変えることで、患者のヘルスリテラシーを高めつつ、患者の負担が減りQOLが向上する」と述べる。
 その上で、患者によっては体調や花粉の飛散時期によって、症状の出方が異なる可能性を伝えたい。伊藤氏によると、「普段喫食して症状が軽くても、花粉の暴露期間が蓄積するシーズンの後半では症状が重くなることもある。必要に応じて抗ヒスタミン薬を服用するよう、指導することもポイントだ」という。
 例えば、カバノキ科花粉症(シラカンバとハンノキ属)では咽頭症状を来しやすく、花粉の飛散時期は3~4月がピークとなる。「豆乳によるアナフィラキシーを発症する患者は、花粉の飛散ピーク後の5~6月に多い印象だ」と福冨氏は述べる。

▶ だるさや消化器症状の背景にPFASを合併する重症花粉症の可能性
 「花粉症は、一般的に考えられているよりも症状が多様な疾患であるため、しばしば他疾患だと誤診されていることがある」と福冨氏は言う。同氏らの研究では、くしゃみや目の痒みといった典型的な花粉症の症状以外に、頭痛や消化器症状、皮膚症状、熱・だるさといった呼吸器外症状を抱えている重篤な花粉症患者に、PFASが高頻度に合併していることが明らかになっている(Fukutomi Y, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2024;12:1495-1506.e7.)。その一つが過敏性腸症候群(IBS)様症状で、原因食物を食べることで症状が誘発される患者もいれば、花粉を吸入して嚥下することより症状が増悪する患者もいる
 さらに福冨氏によると、10~20歳代の女性で特定の時期に「だるい」「朝が起きられない」「動悸がある」といった訴えがあり、起立性調節障害や精神疾患が疑われていた患者に、PFASを合併する重症な花粉症が隠れていることがあるという。実際に、花粉飛散時期に花粉症治療を強化するだけで、起立性調節障害や精神疾患を想起させる症状がある程度改善した症例も同氏は経験したとのことだ。
 「夏から秋にかけて飛散する花粉もあるため、一年の大半において全身性の体調不良を感じている花粉症患者も少なくない。特にPFAS合併例では、不定愁訴にも耳を傾けて花粉症による全身症状の可能性を疑ってほしい」と福冨氏は話している。



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大人の食物アレルギーその1「FPIES」(食物蛋白誘発胃腸炎)

2025年02月15日 14時32分37秒 | 食物アレルギー
「食物アレルギー」と聞くと、子どもの病気というイメージがあります。
しかし近年、大人の食物アレルギーが話題になるようになってきました。

食物アレルギーには診療ガイドラインが作成されているのですが、
当初は「小児の食物アレルギー診療ガイドライン」という名称だったものが、
ある時期から“小児”をはずして「食物アレルギー診療ガイドライン」に変更され、
時代の流れを感じたものです。

さて、大人の食物アレルギーは子どもと比べると、ちょっと複雑なメカニズムが背景にあります。

アレルゲン研究が進むとともに、
一つの食材には複数のアレルゲン成分が存在することがわかり、
それを「アレルゲンコンポーネント」と呼ぶようになりました。

そして「アレルゲンコンポーネント」はいろいろな食材に共通して存在し、
「交差反応性」を表現していることも判明しました。

さらに「アレルゲンコンポーネント」は花粉アレルゲンと三次構造が似ていることがあり、
ある花粉アレルゲンに反応する人は、
ある食材のアレルゲンコンポーネントを花粉と勘違いして反応し、
症状が出てしまうというカラクリもわかってきました。

これらのことを頭の中で整理するのは大変です。
それを扱った記事を3回に分けて紹介します;

最初に取りあげるのは食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)・・・「エフパイス」と読みます。
これはアレルゲンとなる食材を食べてから数時間後にお腹の症状が出るタイプ。
ふつう食物アレルギーは食べるとすぐにじんま疹などの皮膚症状が出るのが典型的ですが、
食べてから発症するまでに時間がかかり、皮膚症状はないのが特徴です。
そしてこのタイプはアレルギー血液検査では陽性に出ないことも大きなポイント。

このタイプ、小児アレルギー領域では「卵黄アレルギー」で注目されています。
卵アレルギーと聞くと「卵白がメイン、食べるとじんま疹」というイメージです。
でも、卵白は食べても無症状、しかし卵黄を食べると数時間後に繰り返し嘔吐する、
という例が多く報告され、この疾患概念が生まれました。

記事ではカキアレルギーを取りあげています。

<ポイント>
・FPIESは、皮膚や呼吸器症状を伴う即時型アレルギーとは異なり、嘔吐や下痢といった消化器症状が中心で、原因食物の喫食から発症まで1~6時間と時間がかかる。
・乳幼児や小児のFPIESでは、原因食物として卵や牛乳、小麦、貝など、多くの食物が挙げられている。
・成人のFPIESでは、貝、甲殻類、魚と比較的限られるのが特徴。
・成人の魚介類アレルギー患者の中にもFPIESの人が潜在的に存在する可能性がある。成人のFPIESの原因食物としては、本邦では特にカキの頻度が高い。
・20~40歳代の女性で発症することが多く、その症状は腹部の張りや腹痛、嘔吐、下痢といった消化器症状が中心。
・FPIESはIgE抗体を介さない「非IgE依存性食物アレルギー」のため、IgEを検出するふつうのアレルギー血液検査では診断できない。診断には経口負荷試験(直接その食材を食べて症状が出るかどうか確認する)が必要。
・そのため診断までに時間がかかりがちで、成人のFPIESは診断されるまで平均10年かかり、その間に6~8回、原因食物の喫食に伴うエピソードを経験しているという報告もある。
・急性期の治療は輸液などの循環血液量の回復が主で、長期的な管理は原因食物の除去指導が基本。
・幼児や小児ではFPIESの発症後、成長とともに完治することが多いが、成人では一度発症すると完治することはない。


▢ 運悪くカキに“あたり”続ける若年女性は、非IgE依存性アレルギーかも
2025/02/10:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 広島県出身で30歳代女性のA子・・・夕食にカキフライを食べた深夜、ひどい腹痛と下痢、吐き気が生じた。フライに火があまり通っていなかったことによる食中毒を疑い、翌日は自宅で安静にしていた。後日、A子は実家に帰省し、生カキを食べたところ、数時間後、またもひどい腹痛と下痢を起こした。感染性胃腸炎を疑い、近医を受診したが原因は分からず、一緒に食べた家族には何の症状もない。「最近、私は運悪くカキに“あたる”」とA子は感じた。
 その後もA子は、カキでおなかを壊すことが何回か続いた。その度にひどい腹痛を伴うため、主治医に相談したところ、「カキのアレルギーかもしれないが、うちではカキのIgE抗体検査はできない」と言われ、専門医に紹介された。紹介先では、
(1)これまで問題なくカキを喫食できていたが突然発症した、
(2)カキ喫食時に毎回発症する、
(3)喫食後、数時間たって発症する、
(4)ひどい腹痛、下痢、吐き気の症状を呈する
──といったエピソードから「食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)」が疑われた。
 カキの経口負荷試験を実施したところ、摂取数時間後に腹痛と下痢症状を認めたため、カキを原因とするFPIESと診断。加熱したものやオイスターソースなども含め、今後、カキを除去するよう指導した。なお、カキの特異的IgE抗体検査は陰性だった。


図1 食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)の特徴(取材を基に編集部作成)

 「カキに“あたりやすい”」
 「居酒屋で刺し身を食べるとおなかをよく壊す」
 「子どもの頃からカニが大好きだったのに、最近、食べると体調を崩す」
──これらは、成人のFPIESを疑うきっかけになる特徴的なエピソードだ。
 近年、小児の食物アレルギーとして認知度が高まりつつあるFPIES。皮膚や呼吸器症状を伴う即時型アレルギーとは異なり、嘔吐や下痢といった消化器症状が中心で、原因食物の喫食から発症まで1~6時間と時間がかかることから、「見つかりにくい食物アレルギー」の一つとされている(関連記事:卵黄が原因の食物蛋白誘発胃腸炎患者、卵白は食べてもいい?)。
 しかし研究が進むにつれ、どうやら成人にも一定数、FPIES患者が存在することが分かってきた。米国の研究では、18歳未満におけるFPIESの推定有症率は0.5%程度だが、18歳以上の成人でも0.22%存在すると報告されている(Nowak-Wegrzyn A, et al. J Allergy Clin Immunol. 2019;144:1128-30.)。
 国立成育医療センターの森田英明氏によると、「本邦ではまだ、成人FPIES患者の大規模な疫学調査は行われていないが、魚介類アレルギーがあると申告した成人117人のうち、約2割がFPIESと考えられる特徴を有していたという報告があるWatanabe S, et al. Allergol Int. 2024;73:275-81.)。成人の魚介類アレルギー患者の中に、FPIESの人が潜在的に存在する可能性が示された」と述べる。
 FPIESはIgE抗体を介さない「非IgE依存性食物アレルギー」だ。詳細な発症メカニズムは明らかになっていないが、現時点では、原因食物の蛋白質を消化管で吸収することで発症し、セロトニンが病態形成に関与している可能性が示唆されている。急性期の治療は輸液などの循環血液量の回復が主で、長期的な管理は原因食物の除去指導が基本となる(関連記事:アドレナリン無効の食物アレルギー、どう対処する?)。
 なお、一般的には、食物アレルギーと言えば「IgE依存性アレルギー」を指すことが多く、IgE非依存性のFPIESは食物アレルギーの特殊型とされている。日本小児アレルギー学会の「食物アレルギー診療ガイドライン2021」では、食物アレルギーを「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義しており、「近年、明らかになりつつある非IgE依存性の食物アレルギーもその中に記載されている」と森田氏は話す。

▶ 消化器症状を訴える患者をFPIESと疑うには?
 乳幼児や小児のFPIESでは、原因食物として卵や牛乳、小麦、貝など、多くの食物が挙げられている。それに対し、成人のFPIESでは、貝、甲殻類、魚と比較的限られるのが特徴だ(表1)。成人では、20~40歳代の女性で発症することが多く、その症状は腹部の張りや腹痛、嘔吐、下痢といった消化器症状が中心となる。乳幼児や小児ではFPIESの発症後、成長とともに完治することが多いが、成人では一度発症すると完治することはないとされている。


表1 乳幼児・小児と成人におけるFPIESの特徴の比較(取材を基に編集部作成)

 では、プライマリ・ケアの現場では、成人のFPIESをどのように疑えばよいのか。森田氏によると、成人のFPIESの原因食物としては、本邦では特にカキの頻度が高いという。カキの喫食による消化器症状では、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎が最も多いと考えられ、「1回の消化器症状のみでFPIESを鑑別することは正直難しい」(同氏)。それでも、「患者から『カキによく“あたる”』『私だけ運悪く“あたる”』といったエピソードを聞いたら、FPIESを想起してほしい」と続ける。現在の本邦の衛生環境を考えると、喫食したカキが毎回ノロウイルスなどに汚染されているとは考えにくい上、食事を共にした人の集団感染がなければ、食中毒の可能性が下がるためだ。
 「それまで問題なくカキを食べられていたのにもかかわらず、成人になって突然発症することもFPIESを疑うポイントになる」と森田氏。「一般的に食物アレルギーと言えば、蕁麻疹や呼吸器症状を認めるIgE依存型アレルギーが想起されることが多い。蕁麻疹や呼吸器症状がなくても、喫食後数時間で生じる消化器症状が食物アレルギーによる可能性もあると考えて、症状が苦しそうであれば専門医に紹介してほしい」(同氏)。
 とはいえ、成人のFPIESは、乳幼児や小児以上に発見しにくい疾患であるのも事実。海外では、成人のFPIESは診断されるまで平均10年かかり、その間に6~8回、原因食物の喫食に伴うエピソードを経験しているという報告もあるHua A, et al. J Allergy Clin Immunol Glob. 2024;3:100304)。FPIESはひどい痛みを伴う消化器症状を引き起こすことが多く、診断が遅れるほど患者は理由が分からない苦しみを受けることになる。・・・

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8歳児の6割がスギ花粉症(山梨県)。

2025年02月15日 14時04分15秒 | 花粉症
2月中旬となり、スギ花粉症患者さんの受診が増えてきました。
今年は例年より多く花粉が飛ぶと予想されており、
早め早めの治療をお勧めしています。

近年、子どもの花粉症も増えてきていることを実感しています。

もう20年ほど前でしょうか。
「小学1年生にアレルギー検査を行うと、5割の生徒がスギとダニに陽性」
と聞いて驚いたことがありました。

そして今回、花粉症のメッカ、山梨県の調査によると、
「8歳児の6割がスギ花粉症」
という衝撃の事実が判明!

恐ろしい時代になってしまいました。

▢ 8歳児「陽性」68% スギ花粉アレルギー抗体、成人並み 山梨大
 山梨大学は、山梨県内に住む8歳の子どもの3人に2人がスギ花粉のアレルギー抗体を持っているとの調査結果を発表した。抗体があると必ず花粉症になるわけではないが、全国的にも高い割合だといい、同大は「気になる症状があれば耳鼻科に相談してほしい」としている。
 山梨大は2019~22年、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)に参加した8歳児1531人に採血検査をした。血液を調べたところ、スギ花粉のアレルギー抗体が陽性となった割合は68・6%に上り、成人と同程度だった。女児(64・1%)に比べ、男児(73・1%)の割合が高かった。
 さらに、採血した8歳児を対象にアンケート調査も実施。回答した1196人の62・8%が医師から花粉症と診断を受けていた。このうち、勉強や睡眠、外出に「少し支障がある」「かなり支障がある」と答えたのは約6割に上った。
 山梨は、県民全体の花粉症患者の割合も全国で最も高いとされる。スギ花粉症の有病率について、日本耳鼻咽喉(いんこう)科頭頸(とうけい)部外科学会が19年に全国の約2万人を対象に行った調査で、都道府県で最も高い65・0%だった。全国平均は38・8%。同大によると、県周辺はスギの人工林が多く、乾燥しやすい盆地に花粉が飛散することや、遺伝的要因の影響が考えられるという。

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成人におけるRSV感染症の重症度

2025年02月14日 06時05分10秒 | 予防接種
RSウイルスによる呼吸器感染症は、乳児が重症化(細気管支炎)して入院してしまう、と認識されてきました。
ところが近年、高齢者にも悪さをすることが分かってきました。
そしてワクチンまで開発されています。

しかしピンとこない方も多いのではないでしょうか?
皆さんご存知のインフルエンザとRSウイルスを比較した記事が目に留まりましたので紹介します。

この解析では、60歳以上でインフルエンザよりハイリスクという結果でした。

<ポイント>
・RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威がある。
・RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高い。
・院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等。
・60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高い。

▢ RSV感染症vs.インフル、重症度と転帰を比較~日本の成人5万7千例
2025/02/14:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。
 本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。
 主な結果は以下のとおり。

RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高かった(9.7% vs.7.0%、リスク比[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.08~1.67)。
院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等であった(7.5% vs.6.6%、RR:1.05、95%CI:0.82~1.34)。
・RSV群はインフルエンザ群と比較して、生存者の退院後1年以内の再入院リスク(34.0% vs.28.9%、RR:1.19、95%CI:1.07~1.32)および入院後1年以内の全死亡リスク(12.9% vs.10.3%、RR:1.17、95%CI:1.02~1.36)が高かった。
・年齢層別解析では、60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高かった
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昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性へ〜風疹ワクチンクーポンは2025年2月末まで〜

2025年02月09日 16時29分09秒 | 予防接種
締め切りまであと2週間。

▢ 記者絶句…「まさか自分が」 じゅうぶんな風しん抗体無くワクチン接種対象… 風しん抗体検査とワクチン接種原則無料のクーポン券有効期限は2025年2月末
2025/2/8:感染症・予防接種ナビ)より一部抜粋(下線は私が引きました);

◆ クーポン使用期限は2月末まで
 厚生労働省は、風しんワクチンの定期接種の機会がなかった 昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性を対象に、風しんの抗体検査と予防接種を原則無料で実施しています。対象者には、お住まいの自治体からクーポン券が配布されています。風しんは、成人がかかると症状が重くなることがある他、妊娠初期の妊婦さんに感染させてしまうと、生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が起きることがあります。対象年代の男性は、過去に公的なワクチン接種を受けていないため、風しんに対し、じゅうぶんな抗体を持っていない可能性があります。

◆ 風しんとは
 風しんは、感染者の飛まつ(唾液のしぶき)などによって他の人にうつる、・・・風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。感染すると、約2〜3週間後に発熱や発しん、リンパ節の腫れなどの症状が現れます。子どもは比較的症状が軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000〜5,000人に1人位の割合で発生することがあります。妊娠早期の妊婦が風しんに感染すると、出生児が先天性風しん症候群(眼や耳、心臓に障害が出ること)になる可能性があります。大人になって感染すると無症状~軽症のことが多いですが、まれに重篤な合併症を併発することがあります。また、無症状でも他人に風しんをうつすことがあるので、感染を拡大させないためには、社会全体が免疫を持つこと(=抗体保有率が高いこと)が重要です。 

◆ “先天性風しん症候群”を防ぐために 
 2024年10月、本メディア記者が、大阪府済生会中津病院の安井良則医師と共に訪れた名古屋で、風疹をなくそうの会 『hand in hand』共同代表の可児佳代さんから、風しんについて、お話を伺う機会がありました。可児さんは、自身が妊娠初期に感染したことで、お子さんが“先天性風しん症候群”を発症した経験を講演会などを通じ、広く訴え続けています。 “先天性風しん症候群”は、先天性心疾患・難聴・白内障などと言った障害を引き起こす可能性があります。風しんは、新型コロナウイルス感染症の流行以後、大きな流行を見せていませんが、2012年から2013年には大きな流行を見せ、2012年10月~2014年10月に、45人の先天性風しん症候群の患者が報告されています。 可児さんは「“先天性風しん症候群”をはじめ、風しんに対し、ある程度の知識をお持ちの方は、妊娠機会のある女性が多い印象ですが、男性は、風しんに関して、知識が少ないケースも見受けられます。妊婦さんが注意していても、ワクチンを接種していなかったり、免疫の無い男性が家庭にウイルスを持ち込んでしまう恐れもあります。“先天性風しん症候群”を防ぐため、男性にも、知って頂きたい感染症です」と話します。 
 厚生労働省はHPで、「現在、配布中のクーポンは、昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの“男性”が対象で、この年代の男性の皆様がこれから抗体検査を受け、必要な予防接種を受けると、免疫を持っている人が増え、風しんの流行はなくなると言われている」として、クーポンを使用しての検査を呼び掛けています。 

◆ 記者が検査「まさか自分が…」
 可児さんのお話を伺った、記者は、昭和54年1月生まれのクーポン対象者。記者自身、母親から、「“三日はしか(風しん)”の様な症状が出たことが、小さい頃にあった。医師にも、“三日はしか(風しん)”だろう」と言われて育っていたので、クーポンの存在は認識しながらも、検査は受けていませんでした。しかし、可児さんのお話を受けて、念のため、2024年の年末休みを利用し、検査を受けることに。その後、1週間ほどで出た検査結果は、“抗体価4.6”。ワクチン接種対象と言うことが判明(※6.0未満が接種対象)。
 検査結果に絶句しました。現在、風しん含有ワクチンの供給が円滑とは言えない状況にあるため、クリニックにワクチンの在庫状況を確認。クリニックからは、『在庫に、ある程度の余裕がある。ワクチン自体の有効期限もあるため、接種した方が良い』との回答で、年明けの1月中旬にワクチンを接種しました。検査結果には「まさか自分が…」と驚きました。過去に感染したことがあると思い込み、検査が遅れたことに反省しています。私のように、クーポンが配布された年代の方で、私同様の方も、いらっしゃると思います。ぜひ、検査を受けて頂ければと考えています。 

◆ 感染症に詳しい医師は…
 感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「対象年代の男性は、勤務時間の関係などから、なかなか検査ができないとの声も聴きます。しかし、医療に携わる方は、特に意識を高く持って頂きたいものです。40年以上前に、“三日はしか(風しん)”疑いの罹患歴があったとのことですが、当時は、症状で、何となく診断されてしまったケースもあったと思います。現在は、抗体検査をすれば、すぐに結果は分かります。“抗体価4.6”と言う数値は、抗体が無いことも無いと言ったラインですが、接種が必要なラインではあります。風しん含有ワクチンのMRワクチンについては、定期接種のお子さんが優先との考えは変わりませんが、対象年代の男性が、抗体検査を受け、必要なワクチン接種を受けると、免疫を持っている人が増え、風しんの流行はなくなると言われています。
 間もなく、クーポン券の使用期限を迎えます。お子さんと社会を守るためにも、抗体検査と必要な方がワクチンを接種することを勧めます」としています。 

◆ 国の風しん対策制度“
 風しん第5期定期接種” 2019年から、国は、風しんワクチンの定期接種の機会がなかった 昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの“男性”を対象に、風しんの抗体検査と予防接種を原則無料で実施しています。この事業は、“風しん第5期定期接種”と呼ばれています。対象者は、自治体から配布されたクーポン(原則無料)を使用し、医療機関で、まず抗体検査を行います。検査の結果、じゅうぶんな抗体がないと判断された場合は、無料でワクチンを接種できます。 

◆ まとめ
 風しんワクチンの定期接種の機会がなかった昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性には、お住いの市区町村からクーポン券が送付されています。抗体検査は、医療機関で行いますが、勤務先の健康診断や人間ドックで受けられる場合もありますので、気になる方は、勤務先や医療機関に問い合わせてみてください。
 検査の結果、じゅうぶんな抗体量が無いと判断された方は、ワクチンが原則無料で接種できます。クーポンの期限は、2025年2月末となっています。分からないことがある方は、お住いの自治体に問い合わせてみてください。 

引用 厚生労働省:風しんの追加的対策について 取材 大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏
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生後1ヶ月未満の赤ちゃんの風邪〜重症肝炎を起こすエコーウイルス感染症〜

2025年02月09日 16時23分02秒 | 予防接種
“エコーウイルス”という名前は、小児科医にとって夏風邪であるヘルパンギーナの原因の一つ、くらいの認識です。
しかし近年、新生児に重症肝炎を起こす原因として注目されてきました。
それを扱った記事を紹介します。

重症化するのは新生児(生後1ヶ月までの赤ちゃん)のようです。
生後1ヶ月未満の赤ちゃんが風邪を引く場合、たいていは家族からです。
外出を控え、風邪を引いている兄弟姉妹を近づけないことくらいしかできませんね。

もし、風邪症状がでて、あるいは熱が出てつらそうなら小児科(小児科専門医)を受診してください。
小児科医は生後1ヶ月未満の発熱患者さんを診たとき、
「ただの風邪ですね」
とは言いません。
他の病気の可能性がないかどうか、疑います。
哺乳量が落ちたり、グズリが目立つ場合は病院へ紹介し、
スクリーニング検査を受けてもらいます。

同じ小児科でも“小児科標榜医”(専門は小児科以外だけど小児も診ますよというスタンス)を受診すると、
「風邪かな〜」
と(意味のない)抗生物質を処方されて様子観察、になりがちです。
これは赤ちゃんにとって危険な診療です。


▢ 赤ちゃん3人死亡「エコーウイルス11型」検出 国が調査へ
2025年1月25日:NHK)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
 国立感染症研究所などによりますと、去年8月以降、関東地方で、生まれて1か月以内の赤ちゃんが急性肝不全などを発症して入院し、亡くなるケースが3人報告されたということです。
 医療機関などで調べたところ、3人から「エコーウイルス11型」と呼ばれるウイルスが検出されました。かぜの原因となるウイルスの一種で、新生児が感染するとまれに髄膜炎や心筋炎など重い症状を起こし、最悪の場合亡くなることもあります。
 国内の感染状況は法律で国への報告対象になっていないため詳しくは分かっていませんが、国立感染症研究所によりますと、髄膜炎の検査で見つかったケースなど去年は軽症を含めて90例以上報告されています。
 ただ、過去7年間で死亡例が複数報告されたのは去年だけだということで、国はほかにも重症や死亡のケースがないか、全国的な調査を実施するとしています。
 このウイルスをめぐっては、ヨーロッパを中心に感染した新生児が急性肝不全などを発症して亡くなるケースが3年前から相次いで報告されていました。
 国立感染症研究所感染症疫学センターの神垣太郎サーベイランス総括研究官は「ウイルスの性質が変化し、感染したときの症状が重くなっているかどうか現時点のデータでは分からない。今後の調査で重症化する子どもの割合や原因などが明らかになれば、必要な対策を検討できると思う」と話しています。

▶ 小児科医「せっけん使った手洗い徹底を」
 エコーウイルス11型の家庭での注意点について、神戸市立西神戸医療センター小児科の松原康策部長に聞きました。
 関東地方で急性肝不全などを発症して亡くなる患者が相次いだ去年8月以降、松原部長らのグループはこのウイルスに感染した生後7日から50日までの4人の赤ちゃんを診療したということです。
 4人とも髄膜炎など重い症状を起こして入院しましたが、治療の結果、全員が後遺症なく回復したということです。
 松原部長は「いわゆる夏かぜの原因として以前から知られているウイルスで、感染しても通常は発熱が2、3日続いて治ることが多い。国内の詳しい感染状況が分からないので、このウイルスに注意を払わなければならない状況かどうか現時点ではっきりしたことを言うのは難しい。国内外の報告を見ると生まれて1か月を過ぎた場合重症化するケースは多くはないので過度に警戒する必要はないと思う。一方、重症化のリスクが高いとされる生まれてまもない赤ちゃんや早産の赤ちゃんについてはできるだけ感染を避けるよう対策することが大切だ。患者との接触や便などを通じて感染するが、アルコール消毒だけではだめなので、せっけんを使った手洗いを徹底するよう心がけてほしい」と話していました。

<参考>
概要
ヨーロッパでは 2022 年から新生児のエコーウイルス 11(Echovirus 11、以下 E11)に
よる重症感染症が複数報告され、急性肝不全を伴うことが特徴的で死亡例も複数報告され ている 1)。
日本においても 2024 年夏以降東京などで、E11 による新生児重症肝炎やそれに伴う死 亡例の情報があるため、特に小児科ならびに新生児科診療に関わる医療従事者に対して注 意喚起を行う。
エコーウイルス 11(E11)について
E11 はピコルナウイルス科エンテロウイルス属に属する(+)鎖の一本鎖 RNA をゲノ
ムにもつウイルスである。コクサッキーウイルスなど他のエンテロウイルス属と同様に、 普通感冒、ヘルパンギーナなどの自然軽快する軽症感染症や、時に無菌性髄膜炎、脳炎、 心筋炎などの重症感染症の原因となる。一方で、E11 を含む非ポリオ型エンテロウイルス の特徴として、感染しても多くの場合は無症状である。糞口感染および接触感染、飛沫感 染を起こす。エンベロープを有さないため、消毒用エタノールによる消毒では効果が不十 分である。潜伏期間は通常 3~6 日である。
新生児の重症 E11 感染症について
新生児が E11 に感染すると、敗血症、心筋炎、髄膜炎などの重篤な疾患を発症すること
がある。新生児の重症 E11 感染症の特徴的な臨床像は、黄疸、肝腫大、腹水、および出血 傾向を示す劇症肝炎である 2)。また、髄膜炎や心筋炎の報告もある 2)。国内でも過去に報 告がある 3)。
過去に報告された新生児の E11 感染症では、垂直感染(出生前の経胎盤感染や出産時感 染)、出生後の水平感染、保育所での水平感染 4)や医療従事者による新生児集中治療室での アウトブレイク 5)が報告されている。授乳による感染の可能性も報告されている 2)。
疫学情報
2022 年 7 月から 2023 年にかけてフランスでは肝不全と高い致命率の新生児重症 E11 感
染症が増加していることが 2023 年 6 月に欧州連合/欧州経済領域加盟国に報告されると、
他の加盟国からも同様の報告が相次いだ 2)。重症例に関連する E11 の配列は、2022 年に 出現した新しい変異系統株(以下、新系統 1)にクラスター化していた 1)。同時期(2023 年)にイタリアで同じ新系統1に関連する重症肝炎の 2 症例が報告され 6)、 全ゲノム解析 により、重症で致死的な症例はすべて組換え E11 に関連していることが示された 6)。 2023 年 7 月、欧州疾病予防管理センターは、フランスで初めて検出された新系統1がより重篤 な疾患と関連しているかどうかを評価するため、新生児重症 E11 感染症に関するサーベイ ランスを強化した 2)。スペインでは新系統1による新生児における重症化との関連は認め られていない 7)。
一方、中国湖北省、広東省では 2019 年に、新系統1ではない E11 による新生児の出血
8) 性肝炎症候群の複数例の報告がある 。
今後日本においても E11 感染症流行の動向に注意を払う必要があるが、2024 年 11 月 24 日現在、国立感染症研究所が全国の都道府県市の地方衛生研究所等から報告された病原 体検出情報をまとめた病原微生物検出情報によると、2024 年第 34 週以降に、複数の無菌 性髄膜炎患者から E11 が検出されている 9)。
医療従事者の皆様へ 国内でも、活気不良・哺乳不良を主訴に来院し、凝固障害、血球減少、黄疸・急性肝不
全、腎障害を含む多臓器不全や高フェリチン血症(血球貪食性リンパ組織球症)などの重 篤な症候を呈し、鼻咽頭ぬぐい液を用いた Multiplex PCR にてライノウイルス/エンテロウ イルス、髄液でエンテロウイルスが検出されている重症の新生児症例が経験されている 10)。 有症状者との接触歴が明確でないこともある。新生児の重症肝不全や心筋炎、無菌性髄膜 炎などの重症患者を診療した場合、可及的に急性期の血漿(血清)、咽頭ぬぐい液、尿、便、 髄液、全血等の検体を小分けで凍結保存しておくことで病原体検索に繋がる可能性がある。 検査が可能な機関にすぐに臨床検体を搬送できる場合は、凍結せずに冷蔵で搬送する方が 望ましい。原因不明の肝機能障害(AST 又は ALT が 500 U/L を超える)を認める児につ いては、日本小児科学会を窓口とした病原体の検索が可能な場合がある。詳細は、日本小 児科学会ホームページ(各種活動>予防接種・感染症情報> 原因不明の小児の急性肝炎につ いて)をご参照いただきたい。また、エンテロウイルスであった場合、アルコール消毒で は効果が不十分であることに留意し、特におむつ交換や沐浴に際し石鹸と流水による手指 衛生、環境整備を行う必要がある。

<参考文献>
  1. 1)  Grapin M, Mirand A, Pinquier D,et.al. Severe and fatal neonatal infections linked to a new
    variant of echovirus 11, France, July 2022 to April 2023. Euro Surveill 2023; 28 :2300253.
  2. 2)  Enropean Center for Disease Prevention and Control (ECDC). "Epidemiological update: Echovirus 11 infections in neonates". https://www.ecdc.europa.eu/en/news-
    events/epidemiological-update-echovirus-11-infections-neonates(参照 2024-11-21)
  3. 3)  Hirade T, Abe Y, Ito S, et.al. Congenital Echovirus 11 Infection in a Neonate. Pediatr
    Infect Dis J 2023; 42: 1002-1006.
  4. 4)  Bina Rai S, Wan Mansor H, Vasantha T, et.al. An outbreak of echovirus 11 amongst
    neonates in a confinement home in Penang, Malaysia. Med J Malaysia 2007; 62: 223-226.
  5. 5)  Ho S Y, Chiu C H, Huang Y C, et.al. Investigation and successful control of an echovirus
    11 outbreak in neonatal intensive care units. Pediatr Neonatol 2020; 61: 180-187.
  6. 6)  Piralla A, Borghesi A, Di Comite A, et.al. Fulminant echovirus 11 hepatitis in male non-
    identical twins in northern Italy, April 2023. Euro Surveill 2023; 28 :2300289.
  7. 7)  Fernandez-Garcia M D, Garcia-Ibanez N, Camacho J, et.al. Enhanced echovirus 11 genomic surveillance in neonatal infections in Spain following a European alert reveals new recombinant forms linked to severe cases, 2019 to 2023. Euro Surveill 2024;
    29 :2400221.
  8. 8)  Wang P, Xu Y, Liu M, et.al. Risk factors and early markers for echovirus type 11 associated
    haemorrhage-hepatitis syndrome in neonates, a retrospective cohort study. Front Pediatr
    2023; 11: 1063558.
  9. 9)  病原微生物検出情報(IASR). "週別無菌性髄膜炎患者からの主なウイルス分離・検出
報 告 数 、2020~2024 年". https://kansen-
levelmap.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data16j.pdf(参照 2024-11-21)
10) 松井俊大、幾瀬樹、庄司健介、他:エンテロウイルスによる新生児重症感染症. 病原微
生 物 検 出 情 報 (IASR). https://www.niid.go.jp/niid/ja/entero/entero-iasrs/13018- 539p01.html (参照 2024-12-06)
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“風邪シロップ”には砂糖がいっぱい入ってます!

2025年02月09日 15時56分18秒 | 予防接種
薬嫌いのこども用に「単シロップ」という液体が用意されています。
シロップのかぜ薬に混ぜたり、粉薬を溶かす際に使ったり・・・。

でもある時期から私は「単シロップ」を使わなくなりました。
その成分が「50%砂糖水」であることを知ったからです。

子どものシロップ剤は「苦い薬を強引に甘くする」ために入っています。
やはり昔のことですが、某県立小児医療センターに勤務していた当時、
当直医師が自分で薬を調合していました。
薬剤師さんの数が少なくて、当直人員がいなかったのですね。

自分で調合するので、“味見”ができました。
ふだん何気なく処方しているかぜ薬の数々、
「フ〜ン、こんな味なんだ」
「これ、甘過ぎ!」
などと深夜の薬剤室で1人で盛り上がっていました。

さて、子どもの薬にどれだけ砂糖が入っているか、
興味深い内容を扱った記事が目に留まりましたので、紹介します。

あれ? 単シロップ1ml中には0.85gの白糖が入っていると書かれてます。
私の記憶より多い!


▢ 意外と知らない子どもの薬の〝砂糖の量〟どのくらい?虫歯の可能性も
朽木誠一郎:朝日新聞デジタル企画報道部
 「おくすり飲めて偉いね」そんな言葉を2歳になる我が子にかけている時、ふと感じた「なぜ飲めるのか」という疑問。その答えが「シロップで甘いから」だとしたら、あれ、子ども用の薬には砂糖がたくさん入っている?虫歯の可能性もある? 取材すると、かねてから注意喚起されているテーマであることがわかりました。

▶ おくすり飲めたのなんで?
 保育園に通う2歳半の我が子は、接する人が増えたためか、かぜとまではいかないものの、よく鼻をぐずぐずさせるようになりました。子どもが鼻をかめるようになるのは一般的に2~3歳と言われ、うちでも練習を始めましたが、まだ上手にできません。
 鼻水をティッシュを使って(体になるべく負担のないように)しぼるように出したり、鼻吸い機を使って出したりしていますが、対症療法感は否めません。気になる時はかかりつけ医を受診し、鼻の通りをよくするシロップの飲み薬を処方してもらうこともあります。
 最初はイヤがっていた我が子ですが、なだめすかし、飲めたら「おくすり飲めて偉いね」とほめそやし……という親の努力により、薬を飲めるようになりました。よかったよかった――とホッとしたところでふと疑問に思ったのが、「なぜ飲めるのか」ということ。
 好き嫌いがあり、例えば果物などもちょっとでも酸っぱいと食べない、このアンコントローラブルな生き物が、すんなり薬を飲むのはおそらく「シロップで甘いから」でしょう。
 あれ、ということは、子ども用の薬には砂糖がたくさん入っている? 飲んだら歯磨きしなきゃいけない?
 薬の成分表をチェックしてみると、そこにはやはり「白糖」「カラメル」といった文言が並んでいました。ちなみに、このような砂糖類は薬の有効成分以外に当たるため、医薬品添加剤として記されます。ただし、添加物であるため、この砂糖類が何g含まれるか、何kcalかなどは、添付文書にも明記されていません。
  
▶ 「就寝前の服用」とあるが…
 そのままでは飲みづらい薬の味を整えるために、調剤に用いられる「単シロップ」という製品(これは医療用医薬品に該当します)には、1ml中白糖0.85gが含まれます。カロリーにすると、1mlあたり約3.4kcalになります。
 薬にもよりますが、仮にうちの2歳の子どもが飲むシロップの量を5mlとすると、白糖約4.3g、17kcalということに。もちろん、実際には希釈されたり他の成分を添加されたりして、シロップをそのまま飲むわけではないので、これはあくまで最大量の目安ということになるでしょう。
 実際の薬にはどのくらいの砂糖類が含まれているかについては、1996年と古い報告(※)ですが、シロップ液状総合感冒薬10社12種類を調査したところ、9社10種類は23%から48%のスクロースを含有しており、1社で製造されている2種類にはスクロースもグルコースも含まれていなかったということです。

※日本で市販されている小児用シロップ液状総合感冒剤の歯垢内酸産生性 - 東北大学歯学雑 Vol.15,No.2,1996

 このような薬を、処方によっては1日数回服用し、「就寝前の服用」が指示される場合もあります。白糖のような砂糖類は、もちろん、虫歯の原因になります。子どもが「寝る前にスティックシュガー1本分の砂糖を口にする」と考えた場合、親としては当然「虫歯になりそう」「歯磨きをさせなければ」という発想になるはずです。
 少なくとも、小児用の薬の「甘味」のもととなる物質が何なのか、保護者による添付文書の確認が必要であると言えるでしょう。
 また、前述の研究では、摂取後に水で7回うがいしても、虫歯の歯垢pHは低下したままだったということです。このように、「うがいだけでは効果が乏しい」という落とし穴もあるため、複数の歯科医師に話を聞くと、歯科領域ではかねてから注意喚起されているテーマであるようでした。
  
▶ うがいのみでは予防できない
 虫歯(う蝕)が起きるメカニズムは、まず、う蝕原性細菌である「ミュータンスレンサ球菌」が砂糖(スクロース)を基にグルカンという物質を産生し、このグルカンを利用してバイオフィルム(細菌が身を守るために形成する膜)を作ります。
 さらにこれを基に他のさまざまな細菌や物質を取り入れて歯垢(デンタルプラーク)が作られます。ミュータンス菌は歯垢の中で食物中などの糖類を代謝して酸を産生し、この酸により歯の表面が脱灰(カルシウムが溶出する現象)され、う蝕を発症します。
 なお、デンタルプラークは、その中で産生される酸が唾液により希釈されたり、拡散されたりすることを妨げるので、デンタルプラークの直下でう蝕が発症するのは、そのためだということです。
 星野さんは「薬に入っているからといって、砂糖などがう蝕の原因にならないという根拠がありません」「糖類は多くの細菌のエネルギー源であり、これを代謝してエネルギー源としており、その結果として酸を産生してしまうので、う蝕の原因となる可能性があると考えるのが自然です」と説明します。
 「大人は錠剤で飲むので、糖衣錠だったとしても口腔内に留まる時間が短く、食後などに服用したとしてもその後に歯磨きをするので、ほぼ影響はないと思います。
 一方で、子どもは粉だったり、シロップだったりで口腔内にとどまる時間が錠剤・カプセルに比べると長く、発熱してぐったりしているときに飲ませる場合は歯磨きができないなどの問題があり、大人に比べるとう蝕になるリスクは高くなると思われます」
 前述の研究では、「摂取後に水で7回うがいしても、虫歯の歯垢pHは低下したままだった」とされています。これはつまり、歯垢の中のミュータンス菌がスクロースを材料に盛んに酸を作っていること、うがい程度では簡単に虫歯を予防できないことを意味しています。
 また、この研究では、うがいで口の中のスクロースを洗い流しても、菌の中に取り込まれたスクロースにより酸が作られ続けることが示唆されています。
 星野さんは「該当するような服用薬がある場合は、服用後必ず歯磨きをしてもらうことが虫歯予防のためには重要になります」と指摘します。
 「低年齢の子どもの場合は食後すぐに眠くなってしまうことも多いので、食事から薬の服用、歯磨きまでの流れを一連にしてしまうのが良いでしょう。また、錠剤やカプセルでの服用が可能な子どもの場合には、シロップや粉薬からの変更が可能な場合には変更してもらうのも一つの手段と思われます」
 このように、飲ませた後にはしっかり歯磨きをする必要がありそうですが、うちの子は歯磨きが苦手で毎回、大騒ぎ。うっかり飲ませ忘れて2回、歯磨きをさせる惨事が引き起こされないように、親も注意しなければ、と気を引き締めた次第です。



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先天性風疹症候群を減らすラストチャンス!

2025年02月09日 15時55分59秒 | 感染症
妊婦さんが風疹に罹ると、お腹の赤ちゃんに感染して「先天性風疹症候群」という名前の多臓器に渡る障害を抱えた生まれてくる可能性があります。

妊婦さん世代のお母さん達は、風疹ワクチンあるいは麻疹・風疹ワクチンを接種しているため、守られています。
しかし、何科の理由でワクチン接種しなかった女性、あるいはワクチンを接種したけど1回だけ、という女性は感染する可能性があります。
そして感染源は「中年男性」(昭和37年4月~54年3月生まれの男性)です。

現在の子どもたちはMRワクチンを接種しているのでほぼ、罹りません。
中年男性に関しては、何年も前から「抗体価をチェックしましょう」「ワクチンを接種しましょう」と呼びかけていますが、世間では関心が乏しく、会社を休んで検査やワクチン接種する人は増えません。

そんな中、数年に一度、風疹流行が発生し、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれることが繰り返されています。
そして前述の中年男性への検査・接種のクーポン券が締め切りを迎えます(昭和37年4月2日〜昭和54年4月1日生まれの男性を対象にした無料の追加接種クーポン)。
体験談の記事が目に留まりましたので紹介します。


▢ 妊娠7週で風疹に感染「80%の確率で、赤ちゃんの目・耳・心臓に大きな障害が出ます」、産むか産まないか選択を迫られて【前編】

▶ 先天性風疹症候群体験談
 2月4日は風疹の日です。妊娠初期に風疹にかかると、どんなリスクがあるか知っていますか?  12年前、第2子の妊娠7週目に風疹にかかり、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断された経験を持つ西村麻依子さんは、現在「風疹をなくそうの会『hand in hand』」で活動をしています。「『あの人みたいになりたくない』と思われてもいいから、自分の経験を知ってもらって、風疹をなくしたい」。そう語る西村さんに、風疹感染が判明したときのことや妊娠中の悩み、生まれた赤ちゃんの症状、活動のきっかけなどについて聞きました。

▶ 妊娠7週で風疹に感染。ことの重大さをよくわかっていなかった
 2007年、24歳で結婚した西村麻依子さんは、2009年、第1子となる男の子を出産しました。そして、この妊娠中にあることが判明したのです。 「妊婦健診で『風疹の抗体価が低い』と言われたんです。ただ、妊娠中は風疹の予防接種を打てないので『出産したら、予防接種を打ってね』と言われていました。 そのとき言われたことはずっと頭の片隅に残ってはいたのですが、産後入院中や退院時にも何も言われなかったし、『完全母乳のうちは、ワクチンはダメなのかな』と勝手に思い込んでしまっていて(※)。2歳ごろまで長男が母乳を飲んでいたこともあり、風疹の予防接種を受けないまま、第2子を妊娠したんです」(西村さん) 
※ 授乳中でも風疹の予防接種は可能です。 
 西村さんが第2子を妊娠したのは2012年。このとき、西村さんはまだ風疹の予防接種を受けていませんでした。このころ日本では、2003~2004年の風疹の小流行のあと、2010年まで落ち着きつつあった風疹患者数が、海外での集団感染をきっかけに2011年に再び増加して全国的な流行となり、2013年に流行のピークを迎える、その最中のことでした。 「ある日、首の後ろにしこりができていることに気づいたんです。そのあとに、顔に肌荒れしたようなブツブツが出てきて。かゆみはなかったんですが、顔から首、腕とどんどん広がっていって、これはおかしいと思ったんです。その時点で夕方遅くになっていたので、救急病院を受診しました。 ただ、救急には風疹を調べるキットがないとのことで、翌日に皮膚科や産婦人科がある総合病院に行ったほうがいいと言われ、そのまま帰宅することに。『本当に風疹だったら、起き上がれないくらいもっと熱が出るけどね』とも言われ、そのとき私は熱がなかったので、風疹ではないのかなと思いながら帰宅しました。でも、翌朝に発熱し、『ああ、やっぱり風疹かもしれない』と…。 私は第2子妊娠でかかっていた個人産院に電話をし、症状を伝えて受診しました。個人産院では、小さな隔離部屋で血液検査をしたのですが、検査が早すぎて1度目は陰性。その後、2回目の血液検査をして、風疹にかかっていると判明。確定診断まで少し時間がかかりましたが、感染したのは妊娠7週目のことでした」(西村さん) 
 妊娠12週までの妊娠初期に風疹ウィルスに感染すると、おなかの赤ちゃんは、胎内で風疹ウイルスに感染し、目、耳、心臓の障害や、体・心の発達に遅れが出る「先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)」という病気になる可能性が高くなります。西村さんの場合、風疹にかかったのは妊娠7週。赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になる可能性が高い時期の感染でした。 「風疹に感染していることが確定したとき、産院では、医学書を見せられながら『妊娠7週目くらいで風疹にかかると、赤ちゃんの目と耳と心臓に約80%の確率で大きな障害が出る』と言われました。 そのとき、私はまだ先天性風疹症候群がどんなものかよくわかっていなくて、その産院はハイリスクになると転院しなければならなかったこともあり、『これって、ハイリスクになるんですか? 』と聞いたんです。 すると、先生はものすごく声を荒げて、『これはハイリスク以外の何者でもない!80%という確率はほぼ100%だ。目と耳と心臓にこれだけの確率で大きな障害が出るっていうのに!』って…。私はびっくりしつつも、産むか産まないかの選択は1度持ち帰ることになりました」(西村さん) 
 自宅に戻り、夫と両親、義理の両親に事情を伝えた西村さん。ただ、西村さんと夫には、最初から中絶をするという選択肢はありませんでした。保育士でもある義理の母は2人の気持ちを尊重してくれましたが、実の母は当初「今回は諦めたら…」と産むことに反対をしていたそうです。しかし、夫婦の決心はかたいものでした。 「実は私、長男を産む前、妊娠初期で流産をしたことがあるんです。産みたくても産んであげられなかった命。そのときに、十分、命の重みを感じたんです。 風疹のワクチンを打っていなくて、赤ちゃんを守ってあげられなかったのは私。それなのに、障害が出るかもしれないという可能性だけで、この命をなかったことにはできない、どうして諦めなくちゃいけないの? どんな障害があったとしても、私たちでこの子を絶対に幸せにしたい!と思いました。 だから、最初から中絶することは考えていませんでしたし、夫も同じ気持ちでいてくれました。話し合いでこの気持ちをしっかりと家族に伝え、母にはしぶしぶ了解をもらいました。 産院に産むことを決断したと伝える日には、夫も一緒について来てくれて、2人で先生と話しました。先生には『この産院では産ませることはできない。産むなら、別の病院へ行ってくれ』と言われたので、妊娠11週くらいから、長男を産んだ総合病院に転院することになったんです」(西村さん)

▶ どんな障害があっても産むと決めた命。でも、不安は尽きず…
 夫婦で「どんな障害があったとしても、この命を産む」と決め、お互いの両親にもそう伝えた西村さん夫婦。ですが、もちろん不安や葛藤もありました。 「最初の産院で、産む!と決め、その後もその気持ちはゆるぎませんでしたが、先天性風疹症候群について調べるうちに、改めて大変なことが起こっていることを実感したんです。 妊娠中には赤ちゃんがどの程度の障害を持っているか詳しいことはわからず、転院した病院の産科の先生にも『生まれてみないとわからない』と言われて…。産むことは強く決断してはいましたが、どんな状態で生まれてくるんだろうと考えると、すごく不安にもなりました。 自分でもあのときの気持ちがよくわからないのですが、私、娘の妊娠中はマタニティマークをつけられなかったんですよね。おなかの中に赤ちゃんはいるんだけど、普通の状態じゃないことで、ずっと自分を責めていました。自分は普通の妊婦さんとは違う、みたいな気持ちになってしまっていたんです。傍から見たら私も普通の妊婦さんでマタニティマークをつけてもよかったと思うのですけど、ほかの妊婦さんがマタニティマークをつけているのを見て、いいなぁって思っていました」(西村さん) 
 西村さんがひとまず転院したのは、長男を産んだ総合病院の産婦人科。ただ、この総合病院に小児科はありましたが、NICU(新生児集中治療室)がありませんでした。おそらく先天性風疹症候群で生まれてくる赤ちゃんにどんな処置が必要になるのかわからないため、転院してすぐに、西村さんはNICUのある病院での出産をすすめられました。そして、病院間の話し合いで、妊婦健診は総合病院で行い、出産はこども病院でするということになったそうです。 「総合病院には妊娠29週まで通院しました。その総合病院では、赤ちゃんは小さいけれど、小さいなりに成長しているから大丈夫と言われ、少しホッとしていたんですね。でも、こども病院に転院してエコーで詳しく診てもらったら、赤ちゃんがすごく小さくて、発育不良があるだけでも心配だから入院して様子を見ましょう、と言われ、即入院になりました。 とはいえ、経過観察なのでとくに何か治療や検査をするわけでもなかったため、妊娠33週ごろ、1度退院しますか? という話もあったんです。でも、どういう状態で生まれてくるかわからないとずっと言われていたので、私としては、退院してもし急に生まれてしまったら…と、怖いことしか考えられませんでした。なので、申し訳ないけれどもう少し入院させてくださいとお願いし、入院を継続することになったんですが…。 その約1週間後に、胎動がなくなってしまったんです。その日の午前中に、NST(ノンストレステスト)の機械で診ているときに動いている様子がない。赤ちゃんが寝ているだけかもしれないからとそのときは様子見になったのですが、午後にも胎動がなくて。大きな音を出しても、エコー検査で見ても動いている様子がなかったんです。 いくつか検査をしたあと、先生に『赤ちゃんは貧血などでしんどい状態になっている可能性があります。赤ちゃんの体は小さいけれど、臓器としては出来上がっているので、外に出しても生きていける。外に出てから治療してあげたほうがいいと思う』と言われ、緊急帝王切開で出産することになりました。それを聞いて、あのとき退院しないで本当によかったと思いました」(西村さん) 
 こうして2012年秋、西村さんは出産予定日よりも約1カ月半早く出産しました。体重1500gの小さな赤ちゃんは、葉七(はな)ちゃんと名づけられ、検査の結果「先天性風疹症候群」と診断されるのです。
 妊娠初期に風疹に感染し、不安な妊娠生活を送った西村さん。感染経路ははっきりとはわかっていないそうです。ただ、予防接種をしていた長男は風疹にかからなかったものの、夫婦がほぼ同時に感染し、お互いの職場にも周囲にも風疹に感染した人はいなかったため、外出したときにどこかで感染したと考えられるそうです。大切な命を宿している女性に、知らないうちに感染させてしまう恐れがあると考えると、とても怖いことです。 後編では、先天性風疹症候群と診断された葉七ちゃんのその後や、風疹をなくすために西村さんが行っている活動などについて聞きます。 ・・・


▢ 「元気に生まれてくるはずだったのに、私のせいで娘に障害が…」後悔は一生消えない【後編】
2025/02/02:たまひよONLINE)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ 生まれた娘は1500g。「先天性風疹症候群」と診断されて…
 妊娠初期に風疹に感染し、妊娠34週に緊急帝王切開で出産した西村さん。妊娠12週までの妊娠初期に風疹ウイルスに感染すると、おなかの赤ちゃんは胎内で風疹ウイルスに感染し、目、耳、心臓の障害や、体・心の発達に遅れが出る「先天性風疹症候群(せんてんせいふうしんしょうこうぐん)」という病気になる可能性が高くなります。西村さんの場合、風疹にかかったのは妊娠7週。赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になる可能性が高い時期の感染でした。
 「生まれた長女・葉七(はな)は出生体重が1500gと小さく、すぐにNICUへ。そして検査の結果、右目の角膜がにごっていて白内障の疑いがあり、さらに出生後は閉じるはずの動脈管が閉じない動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)があり、先天性風疹症候群と診断されました。医師からは、成長するにつれて、耳にも障害が出る可能性もあると言われました。
 本当だったら元気に生まれてくるはずだったのに、私が予防接種をしていなかったために、娘に障害を持たせてしまったと思うと娘に申し訳なかったですし、私自身もつらかったです。後悔は一生続くと思います」(西村さん)
 退院後は、定期的にこども病院で診察を受けてはいたものの、葉七ちゃんはすくすくと成長。みんなに見守られながら育ち、今はもう12歳。小学6年生になり、まもなく小学校卒業を迎えます。
 「心臓の動脈管開存症は、経過観察をしていましたが、赤ちゃんのうちにふさがりました。耳は6歳まで病院の診察でフォローしてもらっていましたが、おかげさまで難聴の可能性はなくなりました。
 白内障の疑いがあった右目ですが、経過観察の結果、白内障も緑内障もありませんでした。でも乱視がひどく、弱視で、斜視があり、小さいころはアイパッチをつけて過ごしていたこともあります。今でも眼鏡をかけていて、経過観察をしていましたが、今年病院での診察フォローも終了しました。
 ただ、出生後、脳室が拡大していて、一部石灰化をしていました。1歳までにそれもなくなったのですが、脳室拡大の影響はあって、軽度の発達障害・学習障害があり、小学校は支援学級に通っています。
 会話をする分には問題ないのですが、感情のコントロールがうまくできないことがあるので、人間関係が難しいですね。学習面については、小学校6年生ですが、今ようやくかけ算やわり算を頑張っているところ。時計を読むのはなかなか難しいようです。
 発達障害について大変なところはありますが、最近は普通の子育てになってきたなぁと感じることもありますね。理解のある人たちに囲まれて、とてもかわいがってもらえて、できないことがあってもフォローのための対策を考えてくれたりして、前向きないい環境で過ごさせてもらっています。
 葉七は現在、保育園と連携のあるデイサービスに通っているんですが、そこでの園児さんたちとの交流も刺激になっているようです。葉七は絵を描くのが大好きなので、今年度は全員の顔を描く!と張りきっていて、描いた絵は園児さんや保育士さんはもちろん、親御さんにも見てもらえているそうです。
 これからも大変なことや困難はあるかもしれないけれど、自分でやりたいことを、自分の手で見つけてほしいなと思いますね」(西村さん)

▶ 「あの人みたいになりたくない」そう思われてもいいから風疹をなくしたい
 現在、西村さんは保育士として働きながら、「風疹をなくそうの会『hand in hand』」で共同代表を務めています。この会の主旨は、風疹になった女性や家族への情報提供や、お子さんの交流の場の提供、そして、風疹をなくすために国や自治体、企業などへ風疹対策の提言を行う活動。その活動のきっかけはどんなことだったのでしょうか。
 「2012年の風疹がはやり始めていたころに、NHKの記者の方がこども病院に取材の申し入れをしてくださいました。先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれたことについて話を聞きたいと。断ってもいいけどどうする?っていう話を主治医の先生からもらったんです。
 そのころ、私も先天性風疹症候群についてもっと知ってもらいたいと思って、妊娠中に風疹に感染した体験をブログに書いていたんですが、全然閲覧数が伸びなくて。どうすれば自分の経験をいろんな人に聞いてもらえるだろうと思っていたので、その取材を受けました。それを見た現共同代表の可児さんから連絡をもらったのが、この活動を始めたきっかけです」(西村さん)
 時期的に、風疹が流行していて、先天性風疹症候群の赤ちゃんもどんどん生まれていました。なんとか風疹の流行を止めたいと、当事者同士がつながって始まった活動は、医師も協力して緊急会議を開いたり、厚生労働省に要望書を出したりと、広まっていきました。
 「ワクチンを打っても抗体がつかない女性もいる中でどうやって女性を守っていけばいいんだろうと考えたとき、子どものころに風疹のワクチンを打っていない世代(昭和37年4月~54年3月生まれの男性)がかかることで、風疹が流行してしまうというところにたどり着きました。
 その世代にどうやって予防接種を受けてもらうかがカギだったので、厚生労働省に話をしに行ったり、対策会議にも参加させてもらったりしてできたのが、昭和37年4月2日〜昭和54年4月1日生まれの男性を対象にした、無料の追加接種クーポンです。
 ただ、わざわざそのために医療機関へ行くのは面倒ということもあってかクーポンの利用率は約3割(2024年5月時点)と低く、そのうえ並行してコロナがはやったり、ワクチンの不備があったりで、風疹ワクチンが品薄になってしまい、子どもの定期接種を優先させる関係で、打ちたくても打てない人も出てきたりしている状態で、接種率はなかなか上がっていません
 まもなく、このクーポン配布は終わり、無料で抗体検査などができる期間も終了してしまうのですが、このまま終わってしまったら、この日本から風疹をなくすことにはつながらないので、国にはぜひ次の策を考えてほしいと思っています。今後、万博などもあり、海外からたくさんの人が日本に来ますしね。
 私もそうでしたが、危険性はわかっていても、まさか自分が風疹にかかるとは思っていなくて、どこか他人事なんですよね。自分が妊娠するわけでもない独身の男性なら、なおさらだと思います。そんな他人事の人にとって、抗体価を調べるために病院を予約して、低かったらまた別の日に予約してワクチンを打ってという現在のクーポンのシステムは、私が考えても面倒くさいなって思うんですよね。
 だから、この手間をどうやって省くかが重要だと思うんです。以前、Jリーグの会場で、特設ブースを開設してもらって無料で風疹の抗体価を調べるイベントを行ったりしたこともありましたし、企業の健康診断の項目の中に入れてもらうとか、企業内接種を実施してもらうとかをお願いしたこともありました。ただ、大企業ではやってくださった会社もあるんですが、小さいところだとなかなかできないですよね。
 どうにか手間をなくして、クーポンがなくても抗体価を調べたり、予防接種を受けたりできるしくみがあったらなと思っています」(西村さん)
 風疹はワクチン接種で予防できる病気です。みんなが風疹の予防接種を打っていれば、風疹の流行を抑えられるし、悲しい思いをする女性や子どもも少なくなります。西村さんのように、せっかく宿った命に対して中絶をすすめられることもなくなるでしょう。
 「私がこの活動を始めたいちばんのきっかけは、私が失敗してしまった経験を知ってほしい、私みたいになってほしくないっていう思いからでした。私が予防接種をしてなかったから、子どもに迷惑をかけてしまったんです。ぜひ私の失敗を知ってもらって『あの人みたいになりたくないよね』と思ってほしい。そして、じゃあどうしたらいいかを考えてほしいんです。
 ただ、私が葉七を出産したことは『失敗』ではありませんし、後悔したことは1度もありません。でも、妊娠中に風疹にかかってしまったら、もしかしたら私のようにつらい選択を迫られることがあるかもしれません。だからと言って、すぐに赤ちゃんをあきらめることはないとも思って欲しいんです。おなかの赤ちゃんの様子をしっかり診てもらったり、先天性風疹症候群で生まれてきたけれど楽しく過ごせている子もいるということを知ってもらったりしたうえで、妊娠を継続するかどうかの選択をしてほしいと思っています。
 そのためにも私の経験をまずは知ってほしいし、この記事を読んでくださった方にも、ぜひまわりの人に話をしてほしいです。そして、自分が予防接種を打っていない世代に該当していたり、身近な人が該当していたりしたら、ぜひ抗体検査をしてみてほしいし、ワクチンを打ってほしいです。ワクチン1本で風疹から小さな命を守ることができるので、1歩踏み出して、行動してもらえたらなと思います」(西村さん)

★ 風疹のワクチンが含まれているMRワクチンは、2回接種すると効果的と言われます。定期接種の1回目は1歳代、2回目は5歳以上小学校入学前。公費で受けることのできるこの2回の接種は必ず打つこと、そして抗体を持っているかどうかがわからない場合は検査を受ける、妊娠中に抗体価が低いことが判明したら産後入院中に風疹の予防接種を受ける――。私たち1人1人が確実にこなすことが、未来の小さな命を守ることになるのだと強く感じました。

<参考>
■ 風疹をなくそうの会『hand in hand』のWEBサイト 
■ 風疹をなくそうの会『hand in hand』のInstagram  
■ 参考文献 先天性風疹症候群に関するQ&A (2013年9月)(国立感染研究所)


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