レルギー専門医である私にとって、
魚アレルギーは捉えどころがない・・・という印象があります。
以前調べてまとめたのがこちら。
実は魚アレルギーには3種類あって、
1.魚アレルギー
2.アニサキスアレルギー
3.ヒスタミン中毒
それを知らないと患者さんに十分な説明ができません。
珍しく魚アレルギーを扱った記事が目に留まりましたので、
読んでみました。
内容は1の魚アレルギー内の話題で、
①口腔アレルギー症候群:口腔内のイガイガ感中心
②じんましん
③食物依存性運動誘発アナフィラキシー:特定の魚を食べる&運動で症状が出る
と3つに分け、それぞれアレルゲンが異なるのではないか、と言及しています。
魚のアレルゲンはパルブアルブミンとコラーゲンが代表的ですが、
パルブアルブミンは経皮感作、
コラーゲンは経皮感作以外、
の傾向があるとのこと。
経皮感作例では除去&湿疹病変をしっかり治療すると、
治る可能性が高いことも判明。
これは以前から指摘されてきたことで、
記事中に登場する千貫先生は、
「症状は侵入経路を再現するような場所に出る」
とセミナーでよく話されていますね。
<ポイント>
・魚アレルギーでは口腔アレルギー症候群(OAS)を呈することが多いが、蕁麻疹などの即時型アレルギー症状や食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)を呈することもある。
・魚アレルギーの主な抗原としては、筋形質蛋白質であるパルブアルブミンやコラーゲンが知られている。
・Cyp c 1(コイのパルブアルブミン)検出16例では全例にアトピー性皮膚炎や手湿疹などの湿疹病変が認められた。一方、Cyp c 1非検出例では湿疹病変が認められたのは5/8例のみだった。
・パルブアルブミンによる魚アレルギーでは経皮的感作の可能性が高いと考えられた。
・Cyp c 1検出群ではアジ、カレイの粗抗原へのIgE抗体は全例で陽性だった。
→ パルブアルブミンはアジ・カレイ粗抗原特異的IgE抗体で代用できるかもしれない。
・魚コラーゲンを原因抗原としている症例はFDEIA症状を呈し、原因抗原により臨床症状に違いが見られる可能性がある。
▢ 魚アレルギー、原因抗原により臨床症状に違い
(2024年11月:Medical Tribune)より一部抜粋(下線は私が引きました);
島根大学病院皮膚科の越智康之氏らは、同科を受診した魚アレルギー患者を対象に原因抗原同定と臨床症状および予後について検討。その結果、「Cyp c 1検出群では全例に湿疹病変の既往があり、パルブアルブミンが原因の魚アレルギーでは経皮感作が成立している可能性が高い」「原因抗原により臨床症状に違いが見られる可能性がある」ことなどを第122回日本皮膚科学会(6月1~4日)で報告した。
▶ 口腔アレルギー症候群が多い
諸外国と比べ魚介類の摂取量が多く魚を生で摂取する機会も多い日本では、魚アレルギーの頻度が高い。魚アレルギーでは口腔アレルギー症候群(OAS)を呈することが多いが、蕁麻疹などの即時型アレルギー症状や食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)を呈することもある。
魚アレルギーの主な抗原としては、筋形質蛋白質であるパルブアルブミンやコラーゲンが知られているが、感作経路などにより臨床症状に違いが出る可能性がある。
今回、越智氏らは同科を受診した魚アレルギー患者を対象に原因抗原、臨床症状、予後について検討した。
対象は、2009~22年に同科を受診した魚アレルギー患者24例(男性8例、女性16例、平均年齢14.9歳)。各種魚によるプリック-プリックテストを実施し、CAP-FEIA法を用いて原因抗原およびコイのパルブアルブミンであるCyp c 1、魚ゼラチンを検査。臨床症状や患者背景を明らかにするとともに予後を解析した。
▶ 24例中16例でCyp c 1を検出
解析の結果、臨床症状はOASが12例、蕁麻疹が10例、口唇腫脹が2例、FDEIAが1例に認められた。越智氏は「蕁麻疹や口唇腫脹に分類した患者の多くは乳幼児であり、言葉を発せられないためこのように分類したが、実際にはOASから始まって蕁麻疹が出現した可能性が高いと考えられる」と説明した。
基礎疾患としてはアトピー性皮膚炎が18例(75%)、乳児湿疹が2例、手湿疹が1例で、3例には基礎疾患が認められなかった。
Cyp c 1は24例中16例で検出され、8例では検出されなかった。
アトピー性病変および基礎疾患を有する症例ではその治療を行った上で、Cyp c 1が検出された症例に対してはパルブアルブミン含量に基づく食事指導を実施した。基礎疾患がなかった3例では皮膚テストで摂取可能な魚を検索して食事指導を行った。
Cyp c 1検出の有無別に予後(完治:まったく食事制限が必要ない、軽快:食事制限が一部解除できた、不変:食事制限が全く解除できなかった)を検討したところ、Cyp c 1検出例では完治が6例、軽快が5例、不変が2例、不明が3例。Cyp c 1非検出例ではいずれも2例ずつだった。
Cyp c 1検出16例では全例にアトピー性皮膚炎や手湿疹などの湿疹病変が認められた。一方、Cyp c 1非検出例では湿疹病変が認められたのは5例のみだった。同氏は「このことからパルブアルブミンによる魚アレルギーでは経皮的感作の可能性が高いと考えられた」と指摘した。
▶ Cyp c 1検出の7割で症状が改善
Cyp c 1検出例のうち完治または軽快したのは16例中11例(69%)で、多くに臨床症状の改善が認められた。Cyp c 1非検出例のうち完治または軽快したのは8例中4例(50%)で、完治した2例はいずれも湿疹合併例だった。
Cyp c 1検出群と各種魚(アジ、サバ、カレイ、マグロ、サケ、イワシ)特異的IgE抗体の関連についても検討した。その結果、Cyp c 1検出群ではアジ、カレイの粗抗原へのIgE抗体は全例で陽性だった。Cyp c 1 IgE抗体価のクラスとマグロ以外の魚種のIgE抗体価のクラスには統計学的に有意な相関が見られた。越智氏は「各種魚の特異的IgE抗体を測定することで、保険適用外のCyp c 1検査の代替になる可能性がある」と述べた。
以上から、同氏は「今回検討した魚アレルギーの24例では22例に口腔周辺症状が認められ、24例中21例で湿疹病変の既往が認められた。Cyp c 1検出群では16例全例に湿疹病変の既往があり、これはパルブアルブミンが原因の魚アレルギーでは経皮感作が成立している可能性が高いという既報(千貫祐子ほか、Monthly Book Derma 2021: 307: 13)の結果を支持している。魚コラーゲンを原因抗原としている症例はFDEIAの臨床症状を呈しており、原因抗原により臨床症状に違いが見られる可能性がある。湿疹病変の既往がない3例はいずれもパルブアルブミン以外が原因抗原と考えられ、コラーゲンが原因抗原であることが判明している症例以外については今後アレルゲンコンポーネントを解析していく必要がある」とまとめた。