小児アレルギー科医の視線

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Long-COVID(新型コロナ後遺症)と POTS(体位性頻脈症候群)

2024年07月21日 15時16分31秒 | 新型コロナ
先日、Long-COVID(新型コロナ後遺症あるいは新型コロナ後症状)に関するWEBセミナーを聴いていたとき、
「POTSを訴える患者さんが増えている」
という話が出ました。
私の知識の中になかったので、検索したところ、
以下の記事が目に留まりました。

意外だったのは、
・POTSには運動療法が推奨される。
一方で、
・POTS+ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)では運動は推奨されない。
というジレンマが存在すること、
つまり新型コロナ後遺症患者さんには運動が改善につながる例と運動すると症状が悪化する例が存在する・・・
鑑別診断をしっかりしないと患者さんがつらい思いをするリスクがあるということ。

<ポイント>
・「体位性頻脈症候群POTSポッツ):自律神経障害の一種であり、たとえば座っている状態から立ち上がったときなど、体勢を変えた後に心拍数が異常に上がることを特徴とする。POTSの患者が訴える症状は、めまい、疲労感、ブレインフォグ(脳に霧がかかったようにぼんやりする状態)、胃腸障害など多岐にわたる。
・POTSの患者数は、新型コロナの流行が始まって以来、倍増した。この病気の発症要因としては、妊娠、手術、そして新型コロナのようなウイルス性疾患などが知られている。
・POTS患者のうち一部の人々は「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と呼ばれる疾患を併発している。これは運動後に症状が悪化する「労作後倦怠感(PEM)」を特徴とする。
・PEMがある患者が無理を押して体を動かせば、症状の大幅な悪化につながりかねないが、POTSからの回復に向けた運動プログラムにおいては、まさにそれが推奨される場合が多い。その結果、POTSとME/CFSを併発している患者の多くから、運動に関する不適切な指導を受けたとの声が上がっている。
・米国の成人の6%が新型コロナ後遺症の症状を抱えている。新型コロナ後遺症患者の79%がPOTSの基準を満たしていたという研究もある。
・運動は現在、POTSの治療で第一の選択肢とされているが、新型コロナ後遺症患者では、身体活動や運動などを主なきっかけとして85.9%が後遺症の症状の再発を報告した。

■ 立ち上がると動悸、めまい…コロナ後に増えた病POTSの「誤謬」
体位性頻脈症候群、推奨される運動療法で悪化するケースが続出

 ボート競技の英国代表チームに所属するウーナ・カズンズさんは、1年半にわたって新型コロナウイルス感染症の後遺症に悩まされた。新型コロナに感染したのは2020年の前半であり、初期症状は軽かったものの、それからは単なる疲れとは到底言えないほどの疲労感に苦しんだ。
「まるでひどく深刻な病気にかかったかのようでした」とカズンズさんは言う。それは「ドロドロとした深い脱力感」で、軽く体を動かすだけで症状は急激に悪化した。
 そして2021年末、ようやくトレーニングを再開できるところまでこぎつけた。長い回復期を耐えたカズンズさんに最後まで残った症状は、ごく軽度の「体位性頻脈症候群POTSポッツ)」だった。
 これは自律神経障害の一種であり、たとえば座っている状態から立ち上がったときなど、体勢を変えた後に心拍数が異常に上がることを特徴とする。POTSの患者が訴える症状は、めまい、疲労感、ブレインフォグ(脳に霧がかかったようにぼんやりする状態)、胃腸障害など多岐にわたる
 カズンズさんはPOTSとともに生きる数百万人の患者のひとりだ。米啓発団体ディスオートノミア・インターナショナル(国際自律神経障害の会)によれば、POTSの患者数は、新型コロナの流行が始まって以来、倍増したと推測されている。この病気の発症要因としては、妊娠、手術、そして新型コロナのようなウイルス性疾患などが知られている。
 POTS患者のうち一部の人々は、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と呼ばれる疾患を併発している。これは運動後に症状が悪化する「労作後倦怠感(PEM)」を特徴とする。(参考記事:「コロナで注目の「慢性疲労症候群」、関連する腸内細菌を特定か」)
 PEMがある患者が無理を押して体を動かせば、症状の大幅な悪化につながりかねないが、POTSからの回復に向けた運動プログラムにおいては、まさにそれが推奨される場合が多い。その結果、POTSとME/CFSを併発している患者の多くから、運動に関する不適切な指導を受けたとの声が上がっている。
・・・
▶ 運動とPOTS
 トレーニングを再開する準備ができたと感じたカズンズさんは、主治医に相談したところ、自律神経障害を改善するための治療法は運動だと助言された。医師の賛成を得て、カズンズさんは週3回の運動から徐々にトレーニングに復帰した。
 トレーニングを続けて1年がたったころ、症状が大きくぶり返し、自律神経障害は軽度から重度へ悪化した。原因はトレーニングのし過ぎだとカズンズさんは言う。「要するに、自律神経障害とPEMが蓄積された結果だったのです」。カズンズさんをはじめ、多くのPOTS患者が実感しているのは、運動と自律神経障害の関係は、研究で示唆されている以上に複雑だということだ。
 米疾病対策センター(CDC)の最近の推計によると、現在、米国の成人の6%が新型コロナ後遺症の症状を抱えているという。新型コロナ後遺症患者の79%がPOTSの基準を満たしていたという研究もあり、患者や医療従事者は、症状の管理に運動をどのように取り入れるかについて、再評価が必要だと感じている。
 運動は現在、POTSの治療で第一の選択肢とされているが、新型コロナ後遺症患者を対象とした調査では、身体活動や運動などを主なきっかけとして85.9%が後遺症の症状の再発を報告した。また、患者からは、運動プログラムの一部は従うのが困難だったとの意見が出ている。
 これを受け、英国立医療技術評価機構(NICE)は、新型コロナ感染後の倦怠感の治療で段階的運動療法を用いるのは適切ではないかもしれないと注意を促している。新型コロナ以外のきっかけでPOTSを発症した人々にとっては、運動が有益な場合もあるが、多くの患者は、運動は症状を改善させる治療法として第一の選択肢になり得ないと気付いている。
 にもかかわらず、運動だけでは症状が良くならないことを身をもって証明しない限り、医師は薬の処方を検討してくれないと訴える声は少なくない。
「多くの医師が、必要な治療法は塩分、水分、運動だけだと考えています」と語るのは、2010年にPOTSを発症し、ディスオートノミア・インターナショナルを設立した、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の神経学者ローレン・スタイルズ氏だ。「そうした考えは非常に時代遅れです」(参考記事:「コロナ後遺症に抗うつ薬が効く? 腸の炎症と脳の関係を解明」)

▶ 運動が悪影響をもたらす場合
 多くの研究で示されている通り、運動は心臓を効率よく動かし、体により多くの血液を作るよう促すことによって、POTSの症状を軽くする場合がある。
 POTSの運動プログラムでは、患者はまずボート漕ぎ、水泳、リカンベントバイク(背もたれに寄りかかってペダルを漕ぐ運動器具)といった、仰向けの姿勢で行う有酸素運動に取り組む。このやり方であれば、直立の姿勢をとることによる症状の悪化を防げるからだ。加えて患者は、血液をより効率的に心臓に戻すのを助ける筋力トレーニングも行う。
 しかし、どんな薬もそうであるように、運動にも注意点はある。たとえば、適切な量と強度を見極めなければならないことや、POTSと併発することの多い、運動してはならない疾患の有無を確かめることなどだ。ME/CFSのような疾患の場合、運動が体調の大幅な悪化をもたらすことがある。(参考記事:「コロナ後遺症の「倦怠感」、運動していい人とダメな人の違いとは」)

 POTSの症状に対する運動の効果を調査した主要な研究のひとつでは、3カ月間の運動プログラムを終了した患者のうち、71%がすでにPOTSの基準を満たさなくなっていた。ただし、この研究では、登録した参加者251人のうちプログラムを完了したのは103人のみと、脱落者の割合が約6割にのぼった。同研究ではまた、POTS患者に多く見られる自己免疫疾患など、ほかの病気を持つ患者が除外されていた。
・・・
▶ 個々のニーズを探る
 POTSの運動プログラムを有用と感じる患者も一部にはいるものの、それは推奨されているよりもはるかにゆっくりとしたペースで行い、投薬も併せて取り入れた場合に限られる。
 POTSを発症する前は競技スノーボードの選手だったスタイルズ氏の場合、運動は症状の緩和にはつながらなかった。しかし、自己免疫疾患との診断を受け、定期的な免疫グロブリンの静脈内点滴などの治療を受けるようになると、「寝たきりの状態からアイススケートができるまでに回復しました」と氏は言う。「薬物療法のおかげで、少しずつアスリートとしての自分に戻ることができたのです」
 POTS患者の多くは、同時にME/CFSの基準も満たしており、その中には新型コロナ後遺症の患者も少なくない。ME/CFSの代表的な症状はPEM(労作後倦怠感)であり、体を動かし過ぎてから数時間から数日間、リンパ節の腫れ、関節や筋肉の痛み、微熱といったインフルエンザのような症状が現れることも多い。
「臨床医としての私の仕事は、患者がPEMを持っているのか、いないのかによって大きく異なります」と、米パシフィック大学の理学療法研究者トッド・ダベンポート氏は言う。「そこが非常に重要な臨床上の判断ポイントとなります」
 アラバマ州の研修医レディさんの場合、最初の数カ月はただ我慢しながら過ごし、その間、症状は徐々に悪化していった。やがて医師や家族の勧めで理学療法を始めたものの、あるとき一気に体調が悪くなり、光や音などのわずかな刺激にも耐えられず、1カ月間ベッドに寝たきりになった。
 カズンズさんもまた、症状の再発により、何カ月も家から出られない状態が続いた。だが、投薬を含む治療を受けた後は、水泳や散歩といったちょっとした運動を取り入れつつ、より普段の暮らしに近い日々が送れるようになった。
「私は自分の体の声に耳を傾け、体が求めることをするよう努めています」とカズンズさんは言う。「私が求めるのは、運動との幸せで健康的な関係を築く方法を見つけて、気持ちよく過ごすことだけです」

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