小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

新型コロナの「罹患後症状」〜その2.呼吸器症状

2024年06月23日 10時46分42秒 | 予防接種
前項目で新型コロナ罹患後症状の概要を記しました。
これからは各症状に対する医療側のアプローチについて、
診療ガイドライン「罹患後症状のマネジメント
を参考にポイントを列挙します。

ガイドラインの「呼吸器症状」の項目を読んでみての感想ですが・・・
当たり前のことしか書いてありません。
・原因はわからない。
・治療薬もない。
・・・という悲しい現実が浮かび上がりました。


■ 呼吸器系の罹患後症状
・呼吸困難感・息苦しさ、咳嗽、喀痰、咽頭痛などが多い(⇩)。
・酸素飽和度(SpO2)低下を伴う場合も、伴わない場合もある。
・問診・診察で鑑別診断が絞り込む(除外診断)
・必要に応じて検査を行う;
(例)胸部X-ray、心電図、血液検査(CBC、BNP、CPK、Dダイマーを含む)、酸素飽和度測定など
・以上を行っても原因がわからない場合や、3〜6ヶ月症状が持続する場合は専門医に紹介する。


■ 呼吸器症状の推定されるメカニズム
・呼吸困難感の機序は多様であり、肺実質障害や心血管障害、筋力低下、基礎疾患の悪化などが含まれる。しかし、心肺機能に異常を認めない例も多い。
・咳嗽も遷延することがあるが頻度は低い。迷走神経を介した、あるいは脳内の神経炎症による可能性が指摘されている。気管支喘息や咳喘息の鑑別が必要であり、過換気症候群の報告もあり、心理的なトラウマの関与が指摘されている。
・肺機能検査異常の頻度は急性期の重症度に依存し、特に肺拡散能が障害されやすい。
・中等症以上のCOVID-19患者では、罹患12〜24ヶ月後であっても、およそ1/3の例でCT画像の異常が認められる。
・肺病変が生じる機序は明確ではないが、SARS-CoV-2特異的なメモリーT細胞とB細胞が血液よりも肺の局所に多く、CD8陽性T細胞が高齢者の遷延する肺機能異常と関連しているとの報告がある。また、肺血管の微小血栓や炎症性の微小血管障害が生じる。

■ 呼吸器症状へのアプローチ

■ フォローアップ
・呼吸器系の罹患後症状は、呼吸困難感・息苦しさ、咳嗽などが主である。
・これらが遷延することが多い一方、明らかな呼吸器・循環器疾患が認められない場合も少なくない。
・基礎疾患(特発性肺線維症など)のある患者では、既存疾患が増悪し重症化することがあるので要注意。
・遷延する労作性の呼吸困難感で,通常のCT検査や肺機能検査で異常がない場合、肺血栓塞栓症を念頭に検査を行う。
・対症療法を行っても3〜6ヶ月異常症状が持続する場合は、呼吸器専門医への紹介を検討する。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小児の新型コロナ「罹患後症状」 | トップ | 新型コロナの「罹患後症状」... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

予防接種」カテゴリの最新記事