小児アレルギー科医の視線

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木の実類アレルギー(アップデート2023年)

2023年02月23日 14時44分19秒 | 食物アレルギー
第23回食物アレルギー研究会(2023年)で「木の実類アレルギー」のレクチャーがありましたので、メモを書き留めておきます。

木の実類アレルギーは近年増加し注目されています。
輸入量・摂取量がそのまま反映されているようです。

よく相談を受けるのが、
「兄弟がクルミでアナフィラキシーを起こして心配だからこの子も調べてほしい」
とか、
「ピーナッツ(※)で症状が出るので、保育園からすべてのナッツ類の検査を受けるよう言われた」
等々。
※ピーナッツ(落花生)は厳密にはナッツ類ではなく豆類です。

さて、これらの要望にどう応えればよいのでしょう、
というテーマを頭に入れつつ、聴講しました。

▢ 木の実類アレルギーの有病率
・アメリカ:(小児)2.3%、(成人)0.4%
・日本:(1歳)0.1%、(6歳)3.3%

▢ 木の実類は食物アレルギーの原因第三位(2020年のデータ)
・過去15年間で約7倍に増加した。
・木の実類の中でも、クルミ(7%)とカシューナッツ(2.9%)の増加が著しい。
・木の実類によるアナフィラキシー報告も増えている。

▢ 木の実類アレルギーの発症年齢
・アメリカ:3.0歳(中央値)
・スペイン:6.5歳(平均値)
・ポルトガル:3.1歳(平均値)
・日本:(クルミ)3.5歳/(カシューナッツ)5.0歳(中央値)
・・・しかし日本では1‐2歳の新規発症食物アレルギーの原因食物において木の実類は第二位。
→卵牛乳小麦より発症年齢は遅く、乳幼児期に新規発症することが多い。

▢ クルミとカシューナッツは経口負荷試験で陽性に出やすく重篤化しやすい。

▢ 年齢とともに複数の木の実類に反応する例が増えてくる。
・二つ以上のナッツにアレルギーのある例は約60%(小児例、2020)。

▢ ピスタチオとカシューナッツの関係
・ピスタチオアレルギーの97%がカシューナッツアレルギー
・カシューナッツアレルギーの83.3%がピスタチオアレルギー

▢ ペカンナッツとクルミの関係
・ペカンアレルギーの97%がくるみアレルギー
・クルミアレルギーの75%がペカンアレルギー

▢ アレルゲンコンポーネントによる診断
・Prolamin内の2S albumin類が有用
(例)Ana o 3(カシューナッツ)、Jug r 1(クルミ)…すでに検査可能
   Cor a 14(ヘーゼルナッツ)…next coming!
・Cupin内のVicilins(7S globulin)類
(例)Mac i 1(マカダミアナッツ)…next coming!
・Cupin内のLegumins(11S globulin)類
(例)Pur du 6(アーモンド)…next coming!

▢ マカダミアナッツ特異的IgEはアナフィラキシーの予測に有用

さて聴講後、最初の疑問は解けるでしょうか?

「兄弟がクルミでアナフィラキシーを起こして心配だからこの子も調べてほしい」
→血液検査でクルミ特異的IgEを検査し、陽性なら Jug r 1 を追加検査して判定可能

「ピーナッツ(※)で症状が出るので、保育園からすべてのナッツ類の検査を受けるよう言われた」
→現在検査フローが確立されているのは、ピーナッツ、カシューナッツ、クルミの3つ。
 それ以外は参考程度で、経口負荷試験(実際に食べて症状が出るかどうか判定)が必要になる。

という答えになります。


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