小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

ヒルドイドの功罪

2017年09月03日 09時05分11秒 | アトピー性皮膚炎
 今から20年近く前、当時保湿剤としてアレルギー学会で評価されていたヒルドイドを勤務していた病院に採用しました。
 使用感がよく、世間的にも話題に上るようになり、患者さんから希望されることも少なからず経験しました。

 いい薬だなとずっと使い続けてきたのですが、約12年前に開業し、その値段の高さに気づきました。
 100gで約3000円もするのです(保険が効くので実際に払う金額は3割)。

 「このまま使い続けると“高価な薬を乱用”と非難されるようになる」

 と感じ、ジェネリック医薬品「ヘパリン類似物質」に変更しました。それでも、本家本元の2/3の値段です。
 成分が同じでも添加物が異なるらしく、使用感と患者さんの評判は今ひとつでしたね。

 さらに安価な保湿剤で代用できないか模索して今日に至ります。
 このことが医療経済的な視点から話題に上るようになりました;

■高級美容クリームより処方薬 医療費増、乏しい危機感
2017年8月31日:朝日新聞
 医師や患者のコスト意識が低いことを背景に、医療費が押し上げられている。将来的には、保険適用される医療が制限される可能性も浮上している。
 美容には、何万円もする超高級クリームよりも、医療用医薬品「ヒルドイド」がいい――。
 ここ数年、女性誌やウェブに、こんな特集記事が続々と出る。保湿効果があるヒルドイドは、医師が必要だと判断した場合のみ処方されるが、雑誌には「娘に処方してもらったものを自分に塗ったらしっとり」といった体験談も載る。
 ソフト軟膏(なんこう)タイプの50グラム入りで1185円。保険がきくので、患者負担は現役世代なら3割の350円余り、子どもなら自治体によっては無料になる。東京都内の40代の開業医は「患者に『多めに出して欲しい』と言われれば、出さざるを得ない」と話す。
 販売元のマルホは記事を見つけるたびに出版元に意見書を提出。「社会保障費の増加への対応が課題とされる中、保険適用の医療用医薬品を美容目的に使うのは、医療費の無駄遣いにつながるとの指摘がある」などとして記事の撤回を求めるが、消えては、また出る。
 こんな支出の積み重ねでも医療費が増えるという危機感が浸透していない。


 ちなみに現在私がメインに使用している保湿剤は、プロペト、親水クリーム、ベルツ水など・・・全て安価です(500gで1000円!)。
 使用感に満足できない方には、市販品として資生堂の「2e(ドゥーエ)」をオススメします。
 成分はヘパリン類似物質ではありませんが、この保湿剤はアレルギーのハイリスク赤ちゃんに使用してアトピー性皮膚炎の発症を3割減らしたという医学的実績のあるもの。
 値段もそこそこに抑えられています。
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