小児アレルギー科医の視線

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アトピー性皮膚炎の全身療法、アップデート2023

2023年05月21日 21時04分35秒 | アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の全身療法と言えば、
従来は抗アレルギー薬内服しか選択肢がありませんでした。
あ、一部では“ステロイド注射”という禁断の一手もありました。

しかし近年、注射薬・内服薬とも新薬が続々と登場し、
重症アトピー性皮膚炎の治療が激変しています。

残念ながら小児適応がある薬剤は少ない(※)ため、
乳幼児中心に診療している小児科開業医では導入しにくいのですが、
ここで一度、整理しておきたいと思います。

(※)小児適応のある新薬;
リンヴォック®:12歳以上かつ体重30kg以上
サイバインコ®:12歳以上
ミチーガ®:13歳以上

2018年以降に登場したアトピー性皮膚炎の全身療法薬は以下の通り、
(2018年1月)デュピルマブ(デュピクセント®)シリンジ
(2020年9月)デュピルマブ(デュピクセント®)ペン(自己注射)
(2020年12月)バリシチニブ(オルミエント®)
(2021年8月)ウパダシチニブ(リンヴォック®)
(2021年9月)アブロシチニブ(サイバインコ®)
(2022年3月)ネモリズマブ(ミチーガ®)



ただ、これらの薬剤は医者なら誰でも使用できるわけではなく、
許可制(施設基準を満たす必要あり)になっています。
そのため、使用経験は病院医師>開業医師、が現状です。

実際の使用に当たっては、
重症度や症状の強さを判定するスコアの点数、
体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合、
などのデータを集める必要があります。

使用経験のある医師からは、以下のような声が聞こえてきます;

「これまでの外用療法ではコントロールできなかった重症例でも、全身療法導入により寛解状態に持って行けることがある」

「重症例だけでなく、中等症患者でも、毎日外用薬を塗るのが負担になっており、夜にかゆみで起きてしまう、見た目を過剰に気にして引きこもり状態になるなど、症状によりQOLが大きく低下している患者さんには、全身療法を提案し、アトピー性皮膚炎の悩みから解放される生活を一度経験させてあげても良いのではないか」

そして学会でよく質問されることは、
・どのくらい続ければいいのか
・いつやめるべきか
という「やめ時がわからない」という医師の迷いです。
全身療法は有効ですが、中止すると再燃することがあり、
また現時点では、一生続ける治療とは考えられていません。

これからも手探りしつつ、
一番効果的な使用法を確立していく必要がありそうです。

これらの薬剤の欠点の一つは、
新規外用薬の項目でも書きましたが、
「高価であること」(1日4000〜5000円)ですね。


<参考>
▢ 選択肢広がるアトピー性皮膚炎の全身療法「患者に伝えておきたいアトピー治療の選択肢
(2022/10/06:日経メディカル)

▢ 抗IL-31受容体抗体ネモリズマブが登場「アトピーの“かゆみ”を抗体医薬で狙い撃ち
(2022/10/05:日経メディカル)

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