小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎(相原雄幸Dr.)

2019年03月11日 06時47分29秒 | アトピー性皮膚炎
 前項と同じく、「小児科」2019年2月号(Vol.60 No.2)特集「クリニックで診る小児アトピー性皮膚炎のプライマリ・ケア」より。
6.食物アレルギーとアトピー性皮膚炎(相原雄幸Dr.)

 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎・・・長らく皮膚科医と小児科医で意見が食い違い、患者のみならず医師も混乱してきた問題ですが、この10年でデータが揃い、皮膚科医・小児科医共に納得できる結論が出ました。
 それは「アトピー性皮膚炎は食物アレルギーの原因になり得る」ということ。
 食べ物は消化管から吸収されると栄養分になりますが、皮膚(湿疹病変)から微量でも体に入り込むことにより、アレルギー体質を作ってしまうことがわかったのです。

 そして、食物アレルギー診療も変わってきました。
 まず湿疹があればその治療をしっかりして、皮膚から食物アレルゲンが侵入することを阻止すること。
 さらに、食物アレルゲンになりやすい食材を、症状が出ないレベルで早期から少量はじめること。
 この2つの方法を導入することにより、もしかしたら食物アレルギー発症を予防できるのではないか、というところまで来ました。
 ただし、食物アレルギー患者さんの1/3は湿疹とは無縁の乳児期を過ごしており、これですべて解決するわけではありません。

 相原先生はアトピー性皮膚炎に対する軟膏治療の反応が悪い例にはアレルギー検査を行い、低年齢では6ヶ月間隔で、3歳以上では1年毎に再検査を繰り返しているようです。
 私も昔は乳児湿疹が改善を悪化を繰り返す例には、離乳食開始頃にアレルギー検査を行ってきました。しかしプロアクティブ療法を導入してからその頻度が激減しました。なぜかというと、湿疹がみんなよくなってしまうからです。もし、ステロイド外用薬を2週間しっかり塗布しても改善しない湿疹は、アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患がかくれている可能性がありますので、食物アレルギーのチェックより皮膚科専門医の診察を優先しています。食物アレルギーに関しては、経過中に即時型食物アレルギー症状(〇〇を食べると蕁麻疹が出る等)を経験してはじめてアレルギー検査を行っています。
 この辺は、どちらが正しいかという問題ではなく、小児科医/アレルギー科医のスタンスや、診療対象の重症度により異なる点ですね。


<メモ>

湿疹患者の問診
・発症時期
・症状の詳細:部位、皮膚所見、その他
・これまでの経過:他院での治療状況
・栄養法:母乳/人工乳、離乳食
・発育状況
・家族のアレルギー歴:食物アレルギー、気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、口腔アレルギー症候群など
・動物飼育歴

湿疹患者に食物アレルギー合併を疑うとき
(軽症)スキンケア/軟膏塗布が適切であっても皮疹の改善が不十分な場合には血液検査を実施し、抗アレルギー薬内服を追加して1週間後に再診。
(中等症/重症)初診時に血液検査を実施し抗アレルギー薬内服を開始し1週間後に再診。
(最重症)病院小児科に紹介入院

アレルギー血液検査
・内容:末梢血、白血球分画(好酸球数)、総IgE、特異的IgE抗体3大抗原(卵白、ミルク、小麦)/ペット
・結果判定:
(好酸球増加)+(特異的IgE抗体陽性)→ アレルギー検査陽性
(好酸球増加)+(特異的IgE抗体陰性)→ アレルギー検査陽性(好酸球性炎症あり)→ 治療への反応が良好なら正常化、反応不良で皮疹の改善が不十分で好酸球数が低下しない場合は再検査で特異的IgE抗体が陽性になることがある。
(好酸球正常)+(特異的IgE抗体陰性)→ 食物アレルギーの関与は否定的
(特異的IgE抗体弱陽性)→ アレルギーありと判断して対応
・検査間隔;
(3歳まで)6ヶ月間隔
(3歳以降)1年間隔
・検査項目;2回目以降は1回目の検査で陽性項目の経過判定と、利用可能なアレルギーコンポーネントを追加。生後6ヶ月以降ではダニ、1歳以降であればスギも追加。ただし、食物アレルギーの症例で食物制限が解除された場合には、抗体が陽性であってもそれ以降の検査は必ずしも必要ではない

原因食物除去
・特異的IgE抗体陽性で単品であれば除去試験(母親も完全除去)を行い判定する。陽性例では除去を段階的に解除していく(母親→ 患児)。
・複数項目陽性では、抗体高値の食物を完全除去とし、その後単品ずつ負荷をしていく。この場合、皮疹の改善した状況で食品解除を実施しなければ判定は難しい

アトピー性皮膚炎治療の問題点
・小児科医の使用するステロイド外用薬は不十分で、低ランクのものを長期に漫然と使用する傾向があり、薬剤の選択が適切とは言えない状況も多い。
・皮膚科医によっては乳児の顔面にはステロイド外用薬を控えるなど、統一されていない状況もある。
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