小児アレルギー科医の視線

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アトピー性皮膚炎外用薬、アップデート2023

2023年05月21日 20時13分51秒 | アトピー性皮膚炎
近年、ステロイド外用薬以外の外用薬がいくつも登場しました。
それらにはいわゆる“ステロイドの副作用”はありません。
つまり“ステロイド忌避患者”にも受け入れられそう。
今まで“脱ステロイド治療”を選択して皮膚がボロボロになった患者さんは、
怪しい民間療法に走る必要がなくなり、
保険診療で“脱ステロイド”ができるようになったのです。

私は小児科医で、乳幼児のアトピー性皮膚炎中心に診療してきました。
新しい外用薬は総じて「2歳未満には使えない」ため、
治療の選択肢に入りにくかったのですが、
2023年1月にコレクチム®軟膏が「生後6ヶ月から使用可能」となったため、
俄然興味が湧いてきました。

ここで一度、整理しておきたいと思います。

モイゼルト®のWEBレクチャーを何回か視聴しました。
その特徴のポイントは、
・タクロリムスのような刺激性(ヒリヒリ)はない。
塗布量・塗布範囲の制限がない
・1%製剤と0.3%製剤があるが、小児でも1%を選択してよい。
・2歳未満には使用できない。
・抗炎症作用の強さは、ステロイド外用薬のクラスIII(strong)程度。

コレクチム®のWEBセミナーも視聴しました。
その特徴のポイントは、
生後6ヶ月から使用可能(2023年1月から)。
・使用量制限あり。
・抗炎症作用の強さは、ステロイド外用薬のクラスIII(strong)程度。

「軟膏の強さ」に関しては、
質問しても演者は(メーカーお抱えセミナーのため)ゴニョゴニョと答えにくそうで、
使ってみないとわかりません。

ただ、初期の寛解導入にはオススメしていないので、
強さはそこそこのようです。

実際の使い方として、
・適切な強さのステロイド外用薬で寛解導入
・プロアクティブ療法(ゆっくり減量する維持療法)でステロイド外用薬離脱を図る
・減量過程で再燃を繰り返す例にはモイゼルトあるいはコレクチムを導入
・寛解導入はステロイド外用薬で行い、その減量過程でモイゼルトあるいはコレクチムへ変更していく。
・モイゼルトあるいはコレクチムはステロイド外用薬の副作用(皮膚萎縮、皮膚菲薄化、毛細血管拡張)がないので、それ以外の副作用に注意しながら長期使用が可能。

・・・といったところ。

モイゼルト®の「使用量制限なし」
コレクチム®の「生後6ヶ月から使用可能」
が魅力的です。

欠点は「薬価が高いこと」でしょうか。

私はとりあえず、乳児にも使えるコレクチム軟膏を導入しています。
生後6ヶ月以降で再燃を反復する例に、
ステロイド外用薬減量過程でコレクチム軟膏に置き換える手法、
つまり寛解導入ではなく維持療法に使用しています。

<参考>
アトピー第4の外用薬、PDE4阻害薬の位置付けは?

ジファミラスト】(商品名:モイゼルト®
[概要]
・安全性が高く、皮膚の透過も良いことから、部位を選ばず全身に使用できる。
[作用機序]
・PDE4阻害薬:PDE4の酵素活性を選択的に阻害することで抗炎症作用を示す。
・PDE4は多くの免疫細胞に存在し、サイトカインの産生を負に調節するcAMPを特異的に分解する酵素で、アトピー性皮膚炎ではこのPDE4活性が上昇する。
・ジファミラストはPDE4の働きを阻害し、炎症細胞や上皮細胞のcAMP濃度を高め、サイトカインやケモカインの産生を制御することでアトピー性皮膚炎の症状を改善する。
[製剤]
・1%製剤(152.1円/g)と0.3%製剤(142円/g)があり、成人には1%製剤を、小児には0.3%製剤を1日2回、患部に適量塗布する。 
・小児では症状に応じて1%製剤を使用することもできる。
・タクロリムスやデルゴシチニブと異なり、1回当たりの塗布量や塗布範囲の制限がないのが特徴。
※ PDE4阻害薬は、先に経口薬であるアブレミラスト(商品名:オテズラ®)が
認可され尋常性乾癬などの治療に用いられている。
[副作用]
・色素沈着(1.1%)、掻痒症(0.5%以上)、毛包炎(0.5%以上)、ざ瘡(0.5%未満)
・タクロリムスのような塗布部位への刺激性(ひりつきやほてり)は報告されていない。

タクロリムス】(商品名:プロトピック®
・分子量が比較的大きく(MW:822.03)、正常な皮膚からは吸収されにくい。
・初期に塗布部位の刺激感が表れることを十分説明する必要がある。
・皮膚の厚い体幹や四肢では治療効果が得られにくい。
・皮膚の薄い顔面・頚部にタクロリムス(1回5gまで)、それ以外はステロイド外用薬という部位別塗り分けが行われている。

デルゴシチニブ】(商品名:コレクチム®
・刺激感が少なく使いやすい。
・分子量が小さく(310.35)、過剰に塗布すると経皮吸収が増加し、全身性副作用が生じる可能性があるため、1回当たりの塗布量は上限5g、塗布面積は体表面積の30%までという制限が設けられている。


<参考>


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