投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 6月15日(月)10時48分40秒
石川健治氏のエッセイ、「あえて霞を喰らう」(『法律時報』2013年7月号)冒頭に次のような記述があります。
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毎日新聞でコラム「風知草」を連載されている山田孝男編集委員の話では、この5月10日に取材をした折、自民党の石破茂幹事長の机上には、清宮四郎『国家作用の理論』(有斐閣、1968)が置かれていたそうである。もっと早く読んでおいて欲しかったとは思うが、そういう心がけをもって事にあたる有力政治家が存在するという事実は、このご時世では救いであり、久々に清々しい気分になった。
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2013年ですから、憲法96条改正論が云々されていた時期ですね。
当時、幹事長として世にときめいていた石破茂氏も、今は地方創生担当大臣という割と暇そうな役職に押しやられてマスコミに登場する回数も減ってしまいましたが、私は防衛大臣が石破氏だったら集団的自衛権に関する議論がもっと充実したろうに、と残念に思っています。
中谷元氏は防衛大卒ですから防衛問題全般に詳しいのでしょうが、今はガチガチの法律論になってしまっているので、中谷氏ではちょっと、というかかなり物足りないですね。
石川氏のエッセイには清宮四郎による蓑田胸喜と京城大学教員との会見記が引用されていますが、私も原理日本社に少し関心があるので、参考までにメモしておきます。
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(前略)清宮が「憲法改正作用」を執筆していた頃、「学術維新ということを唱え、原理日本という雑誌にたてこもって、美濃部先生をはじめ、自由主義的学者を片はしから攻撃していた蓑田胸喜という気狂いじみた学者が京城に来て、城大の教授に会いたいといってきた。城大側では数名の教授がそれに応ずることにし、私も憲法の担当者として避けるのはいさぎよくないし、憲法の話が出たら意見を述べあってみようと思って加わることにした。朝鮮ホテルで会ってみたら異常な目付きの人間で、何をいいだすのかと思っていたら、同席していた西洋美術史担当の上野直昭教授が岩波からドイツのヴントに関する本を出しているのを知っていて、蓑田氏はヴントを高く評価するといい、上野教授に敬意を表していた。結局ヴントの話で終始し、憲法の話は出なかった」(清宮四郎「天皇機関説事件のころ」紺碧49号〔京城帝国大学同窓会、1973年〕1頁以下)。
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ま、ただこれだけの拍子抜け感の漂う話ですが。
国会図書館で検索すると上野直昭には『精神科学の基本問題』(岩波書店、大正5)という著書があるそうなので、「岩波からドイツのヴントに関する本を出している」とはこのことでしょうね。
上野直昭(なおてる、1882-1973)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E9%87%8E%E7%9B%B4%E6%98%AD
石川健治氏のエッセイ、「あえて霞を喰らう」(『法律時報』2013年7月号)冒頭に次のような記述があります。
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毎日新聞でコラム「風知草」を連載されている山田孝男編集委員の話では、この5月10日に取材をした折、自民党の石破茂幹事長の机上には、清宮四郎『国家作用の理論』(有斐閣、1968)が置かれていたそうである。もっと早く読んでおいて欲しかったとは思うが、そういう心がけをもって事にあたる有力政治家が存在するという事実は、このご時世では救いであり、久々に清々しい気分になった。
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2013年ですから、憲法96条改正論が云々されていた時期ですね。
当時、幹事長として世にときめいていた石破茂氏も、今は地方創生担当大臣という割と暇そうな役職に押しやられてマスコミに登場する回数も減ってしまいましたが、私は防衛大臣が石破氏だったら集団的自衛権に関する議論がもっと充実したろうに、と残念に思っています。
中谷元氏は防衛大卒ですから防衛問題全般に詳しいのでしょうが、今はガチガチの法律論になってしまっているので、中谷氏ではちょっと、というかかなり物足りないですね。
石川氏のエッセイには清宮四郎による蓑田胸喜と京城大学教員との会見記が引用されていますが、私も原理日本社に少し関心があるので、参考までにメモしておきます。
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(前略)清宮が「憲法改正作用」を執筆していた頃、「学術維新ということを唱え、原理日本という雑誌にたてこもって、美濃部先生をはじめ、自由主義的学者を片はしから攻撃していた蓑田胸喜という気狂いじみた学者が京城に来て、城大の教授に会いたいといってきた。城大側では数名の教授がそれに応ずることにし、私も憲法の担当者として避けるのはいさぎよくないし、憲法の話が出たら意見を述べあってみようと思って加わることにした。朝鮮ホテルで会ってみたら異常な目付きの人間で、何をいいだすのかと思っていたら、同席していた西洋美術史担当の上野直昭教授が岩波からドイツのヴントに関する本を出しているのを知っていて、蓑田氏はヴントを高く評価するといい、上野教授に敬意を表していた。結局ヴントの話で終始し、憲法の話は出なかった」(清宮四郎「天皇機関説事件のころ」紺碧49号〔京城帝国大学同窓会、1973年〕1頁以下)。
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ま、ただこれだけの拍子抜け感の漂う話ですが。
国会図書館で検索すると上野直昭には『精神科学の基本問題』(岩波書店、大正5)という著書があるそうなので、「岩波からドイツのヴントに関する本を出している」とはこのことでしょうね。
上野直昭(なおてる、1882-1973)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E9%87%8E%E7%9B%B4%E6%98%AD
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