https://www.msn.com/ja-jp/news/money/業績好調スズキがはまった落とし穴、製造現場の手痛い不正/ar-BBMlHLx?li=BBfTvMA&ocid=spartanntp#page=2 MSN 佃 義夫 2018/08/24
スズキ、マツダ、ヤマ発3社が異例の謝罪会見
お盆休み直前の8月9日、スズキ、マツダ、ヤマハ発動機の3社が緊急の記者会見を行う異例の事態があった。3社は新車の出荷前の燃費・排ガス検査で不適切な事例が判明し、謝罪のための会見を行ったのだ。
これは、日産自動車やSUBARU(スバル)が完成検査で不正が相次いだことを受けて行われた調査で、新たに発覚したもの。
会見した3社は、いずれも燃費や排ガスなどの検査で無効な測定値を有効にしていた。スズキは2012年6月以降、抜き取りデータ1万2819台の49.9%にあたる6401台で無効を有効として処理されていた。マツダは14年年以降1875台のうち3.8%の72台、ヤマ発は2輪車で16年以降の335台のうち2.1%の7台の無効が有効として処理されていたのである。
3社の中でも、スズキの不正は抜き取り検査データの約半数と、他の2社よりも突出している。リコール等にはつながらないというものの、事態を重く見たスズキは、鈴木俊宏社長自ら会見に出席し謝罪した(マツダとヤマ発は品質・製造担当役員による謝罪会見)。
鈴木社長は「検査の判定基準の不十分な理解、不備があった。非常に残念なことで工場任せであったことを反省している。チェック体制を整えて検査員の教育強化などコンプライアンス(法令順守)機能を徹底していく」と沈痛な表情で反省の弁を述べた。
同社は2016年にも燃費不正が発覚し「法令違反への認識が甘かった」と鈴木修会長自ら記者会見で謝罪していた。それから日をおかずして、再び今回の問題が発覚してしまった格好だ。
折しもスズキは、この緊急謝罪会見にさかのぼる8月2日に18年4〜6月期決算を発表し、純利益が859億円と過去最高を示したばかり。インドでの販売が伸び、日本国内も好調で、日印の両輪で大幅増益となった。2030年にはインドでの大幅な増産を主体にグローバル700万台という壮大な構想に向けて快調なスタートを切ったばかり。その矢先での手痛い蹉跌(さてつ)である。
スズキの経営陣は危機感を強めている
再び今回の問題が発生したことに、スズキの経営陣は危機感を強めている。
スズキは改めて襟を正し、再発防止を徹底していくしか、真のグローバル企業へと脱却する道はないであろう。
そもそも、これらの検査は日本の道路運送車両法に基づき、新車の出荷前に抜き取りで検査を実施しているもの。排ガス測定は一部の検査で済ませることを国(国交省)が認め、抜き取りの量や頻度もメーカーが判断している。
検査は、車を検査装置上で規定の速度で走らせ、基準から逸脱してもよい時間や回数が定められている。今回のスズキ、マツダ、ヤマ発のケースは、逸脱した時間や回数が基準を超えた無効な試験を「有効」として処理していたのが判明した、ということだ。
今回のケースは、3社とも残されたデータを再判定したところ、諸元値を満たしていたことを確認し、量産車の排ガスや燃費への影響はないとしてリコールは行わないとしている。
つまり、データを改ざんしたという不正ではないが、それでもルールを逸脱したのは不適切だったということだ。これは表現上の問題ともいえるが、「法令を順守していなかったんだから不正は不正」との厳しい見方もある。
一方で、「道路運送車両法に基づく完成検査自体の制度設計を見直す必要がある」との意見もあり、グローバル化・デジタル化が進む中で“日本固有の制度”ということならば、国として新たな方向付けも求められる。
だが、こうした完成検査を含む型式認証での燃費不正問題など、2016年以来、これだけ自動車メーカーの製造現場で不祥事が続出すると、日本車全体の品質管理、モノづくりへの信頼が失われかねない。
特にスズキは、先述したように2016年に三菱自動車の燃費試験データ改ざん発覚に続いて、法令で決められた手法とは異なる燃費測定が明らかになり、鈴木修会長が会見を行って「データ改ざんではないが、法令に違反する意識が薄かった。徹底させる」と謝罪。工場のコンプライアンス強化とともに、販売店への説明と謝罪の全国行脚をしたいきさつがある。
グローバルメーカーとして生き抜くためにやるべきこと
今回、これに続く不祥事発覚で、スズキ社内でも「不正は不正」として改めて製造現場のコンプライアンス徹底と対策を図るとともに、販売店・ユーザーへの信頼感を積み上げていく、としている。すでに国内各工場に担当管理職を配置するとともに、今月中に完成検査の測定値に書き換えができない装置を展開するという。
繰り返しとなるが、スズキは先の今第1四半期決算発表でも売上高・各利益とも第1四半期として過去最高を示す好調な業績動向となった。四輪車の世界販売は、前年同期比16%増の86万台。インドでは、主力のスイフトが伸び、26%増の46万台と大幅な伸びを示した。
また、日本国内も9%増の17万台。スペーシアやクロスビーなどの新型車が貢献して、軽自動車に加え小型車が順調な伸びを示した。さらに7月上旬には20年ぶりにフルモデルチェンジしたジムニー、ジムニーシエラが爆発的な人気を集めている。
インドと日本の両輪が順調で、売り上げ、利益に貢献し、課題であった2輪車事業の黒字化もメドがついてきた。特に、今後のグローバル市場で最も成長が高いと予測されているインドで圧倒的な販売シェアを持ち、これをキープしていくための生産・販売強化を積極的に展開していく方針だ。
2030年のインド新車市場規模は、現状に比べ3倍の1000万台とスズキでは予測し、シェア5割を維持するため、年間500万台販売を目指す。これに日本や他の地域を加えると、スズキの2030年時点でのグローバル販売は年間700万台規模となる。
スズキのグローバル戦略は、インドへの早期進出による圧倒的な市場シェアの維持、旧東欧ハンガリーへの生産進出で欧州基地を確保する一方で、北米市場からは撤退する独自路線を走ってきた。
トランプ政権の自国保護主義的な貿易政策に翻弄される自動車各社を横目に、米国販売がないだけに堅調な業績動向を示している。さらにインドでのトヨタとの連携でアフリカ市場も視野に入れた戦略も進めようとしている。
スズキがグローバルメーカーとして生き抜いていくためにも、一連の国内製造現場での問題発生に対するコンプライアンスの徹底に向けて、社員教育や人事政策が大きなテーマになってきている。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
感想;
なぜ、現場で不正が起きたのか?
この背景にまで原因究明をしないと繰り返すでしょう。
それと、チェック体制にも不備があるようです。
医薬品製造ではGMPで仕組みを性悪説で構築しています。
悪いことをしようと思ってもできない仕組みを取り入れるようにしています。
また、チェック体制もいれているので、不正がしにくい仕組みになっています。
現場が不正ではなく、現場が不正をしなければならなかった、トップのマネイジメント姿勢に問題があったと、トップが考えることができると良くなるでしょう。
それがないとまたいつか繰り返すでしょう。
日本電産の創業者永守氏の言葉を借りると、現場で不正がでるのは、トップの心が病んでいるからだとのことです。
コンプライアンス、品質第一と言いながら、結局、コストの納期を優先させたトップの考え方の結果が今回の不正のように思います。
スズキ、マツダ、ヤマ発3社が異例の謝罪会見
お盆休み直前の8月9日、スズキ、マツダ、ヤマハ発動機の3社が緊急の記者会見を行う異例の事態があった。3社は新車の出荷前の燃費・排ガス検査で不適切な事例が判明し、謝罪のための会見を行ったのだ。
これは、日産自動車やSUBARU(スバル)が完成検査で不正が相次いだことを受けて行われた調査で、新たに発覚したもの。
会見した3社は、いずれも燃費や排ガスなどの検査で無効な測定値を有効にしていた。スズキは2012年6月以降、抜き取りデータ1万2819台の49.9%にあたる6401台で無効を有効として処理されていた。マツダは14年年以降1875台のうち3.8%の72台、ヤマ発は2輪車で16年以降の335台のうち2.1%の7台の無効が有効として処理されていたのである。
3社の中でも、スズキの不正は抜き取り検査データの約半数と、他の2社よりも突出している。リコール等にはつながらないというものの、事態を重く見たスズキは、鈴木俊宏社長自ら会見に出席し謝罪した(マツダとヤマ発は品質・製造担当役員による謝罪会見)。
鈴木社長は「検査の判定基準の不十分な理解、不備があった。非常に残念なことで工場任せであったことを反省している。チェック体制を整えて検査員の教育強化などコンプライアンス(法令順守)機能を徹底していく」と沈痛な表情で反省の弁を述べた。
同社は2016年にも燃費不正が発覚し「法令違反への認識が甘かった」と鈴木修会長自ら記者会見で謝罪していた。それから日をおかずして、再び今回の問題が発覚してしまった格好だ。
折しもスズキは、この緊急謝罪会見にさかのぼる8月2日に18年4〜6月期決算を発表し、純利益が859億円と過去最高を示したばかり。インドでの販売が伸び、日本国内も好調で、日印の両輪で大幅増益となった。2030年にはインドでの大幅な増産を主体にグローバル700万台という壮大な構想に向けて快調なスタートを切ったばかり。その矢先での手痛い蹉跌(さてつ)である。
スズキの経営陣は危機感を強めている
再び今回の問題が発生したことに、スズキの経営陣は危機感を強めている。
スズキは改めて襟を正し、再発防止を徹底していくしか、真のグローバル企業へと脱却する道はないであろう。
そもそも、これらの検査は日本の道路運送車両法に基づき、新車の出荷前に抜き取りで検査を実施しているもの。排ガス測定は一部の検査で済ませることを国(国交省)が認め、抜き取りの量や頻度もメーカーが判断している。
検査は、車を検査装置上で規定の速度で走らせ、基準から逸脱してもよい時間や回数が定められている。今回のスズキ、マツダ、ヤマ発のケースは、逸脱した時間や回数が基準を超えた無効な試験を「有効」として処理していたのが判明した、ということだ。
今回のケースは、3社とも残されたデータを再判定したところ、諸元値を満たしていたことを確認し、量産車の排ガスや燃費への影響はないとしてリコールは行わないとしている。
つまり、データを改ざんしたという不正ではないが、それでもルールを逸脱したのは不適切だったということだ。これは表現上の問題ともいえるが、「法令を順守していなかったんだから不正は不正」との厳しい見方もある。
一方で、「道路運送車両法に基づく完成検査自体の制度設計を見直す必要がある」との意見もあり、グローバル化・デジタル化が進む中で“日本固有の制度”ということならば、国として新たな方向付けも求められる。
だが、こうした完成検査を含む型式認証での燃費不正問題など、2016年以来、これだけ自動車メーカーの製造現場で不祥事が続出すると、日本車全体の品質管理、モノづくりへの信頼が失われかねない。
特にスズキは、先述したように2016年に三菱自動車の燃費試験データ改ざん発覚に続いて、法令で決められた手法とは異なる燃費測定が明らかになり、鈴木修会長が会見を行って「データ改ざんではないが、法令に違反する意識が薄かった。徹底させる」と謝罪。工場のコンプライアンス強化とともに、販売店への説明と謝罪の全国行脚をしたいきさつがある。
グローバルメーカーとして生き抜くためにやるべきこと
今回、これに続く不祥事発覚で、スズキ社内でも「不正は不正」として改めて製造現場のコンプライアンス徹底と対策を図るとともに、販売店・ユーザーへの信頼感を積み上げていく、としている。すでに国内各工場に担当管理職を配置するとともに、今月中に完成検査の測定値に書き換えができない装置を展開するという。
繰り返しとなるが、スズキは先の今第1四半期決算発表でも売上高・各利益とも第1四半期として過去最高を示す好調な業績動向となった。四輪車の世界販売は、前年同期比16%増の86万台。インドでは、主力のスイフトが伸び、26%増の46万台と大幅な伸びを示した。
また、日本国内も9%増の17万台。スペーシアやクロスビーなどの新型車が貢献して、軽自動車に加え小型車が順調な伸びを示した。さらに7月上旬には20年ぶりにフルモデルチェンジしたジムニー、ジムニーシエラが爆発的な人気を集めている。
インドと日本の両輪が順調で、売り上げ、利益に貢献し、課題であった2輪車事業の黒字化もメドがついてきた。特に、今後のグローバル市場で最も成長が高いと予測されているインドで圧倒的な販売シェアを持ち、これをキープしていくための生産・販売強化を積極的に展開していく方針だ。
2030年のインド新車市場規模は、現状に比べ3倍の1000万台とスズキでは予測し、シェア5割を維持するため、年間500万台販売を目指す。これに日本や他の地域を加えると、スズキの2030年時点でのグローバル販売は年間700万台規模となる。
スズキのグローバル戦略は、インドへの早期進出による圧倒的な市場シェアの維持、旧東欧ハンガリーへの生産進出で欧州基地を確保する一方で、北米市場からは撤退する独自路線を走ってきた。
トランプ政権の自国保護主義的な貿易政策に翻弄される自動車各社を横目に、米国販売がないだけに堅調な業績動向を示している。さらにインドでのトヨタとの連携でアフリカ市場も視野に入れた戦略も進めようとしている。
スズキがグローバルメーカーとして生き抜いていくためにも、一連の国内製造現場での問題発生に対するコンプライアンスの徹底に向けて、社員教育や人事政策が大きなテーマになってきている。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
感想;
なぜ、現場で不正が起きたのか?
この背景にまで原因究明をしないと繰り返すでしょう。
それと、チェック体制にも不備があるようです。
医薬品製造ではGMPで仕組みを性悪説で構築しています。
悪いことをしようと思ってもできない仕組みを取り入れるようにしています。
また、チェック体制もいれているので、不正がしにくい仕組みになっています。
現場が不正ではなく、現場が不正をしなければならなかった、トップのマネイジメント姿勢に問題があったと、トップが考えることができると良くなるでしょう。
それがないとまたいつか繰り返すでしょう。
日本電産の創業者永守氏の言葉を借りると、現場で不正がでるのは、トップの心が病んでいるからだとのことです。
コンプライアンス、品質第一と言いながら、結局、コストの納期を優先させたトップの考え方の結果が今回の不正のように思います。