平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」第21回「旅立ち」~「越前の地で生まれ変わりたいと思っておりまする」「いつの日もいつの日もそなたのことを」

2024年05月27日 | 大河ドラマ・時代劇
 道長(柄本佑)は多くを語らない。
 伊周(三浦翔平)、定子(高畑充希)の哀しい出来事に対しても弁明しようとせず、
 自分が引き受けようとしている。

 まひろ(吉高由里子)はそれを見抜く。
「お顔を見てわかりました。あなたはそういう人ではない」
 こう言われて道長は堰を切ったように話し始める。
「俺の無力のせいで誰も彼もが不幸になった」
「おまえと交わした約束は何ひとつかなえておらぬ」
「どこに向かっていけばよいのか、それも見えぬ」

 道長はずっと迷い、苦しんでいたんですね。
 伊周や定子のことに対して、ただ流されるだけだった自分の無力を感じていた。
 疫病の対応や減税など、民のためにいろいろやっているのに
「約束は何ひとつかなえておらぬ」と自分を厳しく客観視できる人物でもある。

 自分を厳しく客観視できること──政治家に必須の能力だと思う。
 これを忘れると、権力に飲み込まれ、傲慢になり万能感に囚われる。

「約束は何ひとつかなえておらぬ」と10年前の約束を覚えていたことにまひろは感激したことだろう。
 自分の迷いや弱さを包み隠さず話してくれた道長に対して、まひろも本音を語った。
「この10年、あなたをあきらめたことを後悔しながら生きてきました」
「妾でいいと願っていたのに、おのれの心に従っていなかったことを悔やんでおりました」

 自分の心の中を素直に語ることができるふたり。
 しかし、ふたりは別々の道を歩まねばならない。
 特にまひろは10年前に交わした約束を何もかなえていない。
「今度こそ越前の地で生まれ変わりたいと思っておりまする」
 まひろは、自分を見つめるために越前に旅立っていった。

 強い絆で結ばれたまひろと道長。
 絆で結ばれた関係は他にも。

 清少納言(ファーストサマーウィカ)と定子だ。
「命あるかぎり、わたしは中宮様のおそばを離れません!」
「なりませぬ! お腹の子のために中宮様は生きねばなりませぬ!」
「何をすればいい? 中宮様を元気にするには?」

 清少納言は定子を慰めるために『枕草子』を書き始める。
 それは楽しかった頃の中宮での記憶。
 雅で優美な世界。
 これで定子は慰められたことだろう。
「楽しかった過去」と「優美な世界」はしばし現実を忘れさせてくれる。
 いずれは「昔はあんなことがありましたね」と定子と清少納言が語り合う日が来るかもしれない。
 …………………………………………………………………

 人間関係は他にも。

 まひろと清少納言。
「史記が敷物だから枕詞を書いたらいかがですか」
「帝が司馬遷の史記だからききょう様は春夏秋冬の四季とか」
 言葉遊びで心を通わせるふたり。
 第三者にはこれのどこが面白いのかわからない……。笑

 まひろと宣孝様(佐々木蔵之介)。
「下品に興味を持たぬ者などおらぬ」笑
「国司になれば懐を肥やせる」笑
 俗な宣孝を叱り、ツッコミを入れるまひろ。
 叱られて宣孝は嬉しそう。笑
 宣孝みたいな「俗」な存在って必要ですよね。
 これが人間。おそらく、まひろの文学を強くする。

 伊周と母・貴子(板谷由夏)。
「亡き父に誓ったのだ。わたしはわが家を守ると」
 こう自分を責める伊周に貴子は、そんなことは考えなくていいと諭す。
 貴子と離された伊周は子供のように泣き叫ぶ。
 伊周はまだ「子供」だったのかもしれない。
 まだ成熟していない子供だったのに無理矢理地位を与えられ、家を守ることを強いられた。
 ここに伊周の悲劇があったのかもしれない。

 道長と実資(秋山竜次)。
 めでたく左大臣と中納言に出世した。
 私心のない道長。
 法や前例や慣習を重視する実直な実資。
 名コンビだ。
 道長はいろいろ迷う政治家だから、実資のように「判断の物差し」を与えてくれる存在は
 有り難いのだろう。

 いろいろな人間関係が描かれている今作。
 やはりドラマは「人間関係」なんだ、とつくづく思う。
 それは大河ドラマなら尚更。
 そして、まひろは宋人・周明(松下洸平)と新たな関係を築いていく。


※追記
 前回、呪詛は詮子(吉田羊)の自作自演で、倫子(黒木華)がリークしたと推理したが、
 倫子がリークした、は間違いだった。
 倫子は内々に留めておこうとしたが、詮子がリークしていた。
 すべては詮子の仕業。

※追記
 オウムの声は『葬送のフリーレン』のフリーレン、『SPY×FAMILY』のアーニャ役の種崎敦美さん。
 今回は「你好(ニーハオ)」のひとこと言だけ。

コメント (6)
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