平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「星の王子さま」~友達のつくり方、本当に大切なもの、そして、王子さまはなぜヘビに咬まれて死んだのか?

2015年11月20日 | 小説
 サンテクジュペリの「星の王子さま」は大人が読むべき童話だと思う。

 たとえば、〝友達をつくる方法〟。
 キツネは、王子さまにこのことを尋ねられて、こう答える。
「最初は、こんなふうに、お互いちょっと離れて草の中に座る。
 ぼくは君を目の隅でチラッと見て、君も何も言わない。言葉は誤解のもとだからね。
 でも、毎日すこしずつ近くに座るようにしていけば……」

 他人といっしょにいる時は何かを話さなければならない。
 以前、こんな強迫観念にとらわれていた僕は、この言葉に救われました。
 一気に親しくなっていくのではなく、言葉をひと言、ふた言交わして、すこしずつ親しくなっていく。
 こんな友達関係の方が、長続きするような気がします。

 王子さまとバラのエピソードも「なるほど」と思いました。
 地球に降りた王子さまは、5000本のバラが咲いているのを見て、自分の星のバラが、実はどこにでもある、ありふれたものであったことを知る。
「ぼくは豊かだと思っていたけど、ぼくが持っていたのは普通の花だった。これじゃあ、立派な王子とは言えない」
 しかし、キツネとの会話で、王子さまは自分の星のバラがかけがえのないものであったことに気づく。
 そして、5000本のバラたちに言う。
「君たちは美しい。でも、からっぽだね。
 誰も君たちのために死ねない。
 もちろん、ぼくのバラだって通りすがりの人が見れば、君たちと同じだと思うだろう。
 でも、ぼくにとっては、あのバラだけが、彼女だけが、君たち全部より大切だ。
 ぼくが水をかけたのもあのバラだし、ガラスの覆いをかけてやったのもあのバラだ。
 ついたてで守ってやったのも、毛虫をやっつけてやったのも、愚痴や自慢話や、ときどき黙り込んだりするのに耳をかたむけてやったのも、あのバラ。
 だから彼女はぼくのバラなんだ」

 5000本のバラよりも1本のバラ。
 王子さまのバラはわがままで、気分屋で、いっしょにいてつらいことの方が多かった。
 だが、地球にやって来て、王子さまは彼女を愛していたことに気づく。
 苦労やつらい思いをされられたことこそが、実は絆をつくっていたことに気づき、彼女を自分の星に残してきたことを悔やむ。
 これも真実ですね。
 たとえば、子育てってすごく大変だと思いますけど、その大変さが愛情を育み、自分の子供をかけがえのない存在にしている。
 たとえば、ケンカして、わがままを言い合ったカノジョの方が記憶にくっきり刻まれていたりする。

 さて、「星の王子さま」で僕がずっとわからなかったことがありました。
 それは〝なぜ、王子さまは毒ヘビに咬まれて死ぬことを選んだのか?〟
 でも、やっと気づきました。
 <重力>なんですね。
 肉体を持っていたら、重力に縛られて地球から出られず、かけがえのないバラがいる自分の星に帰れない。
 だから王子さまは肉体から解放されるために、毒ヘビに咬まれて死んだ。
 このことに気づくまで、僕は数年かかりました。
 別にこのテーマをずっと考え続けていたわけではないのですが、脳というのは不思議ですね。
 無意識の世界でいろいろ考えていて、ある時、ふと答えが浮かんでくる。
 僕にとってのエウレカ体験です。


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