平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

いだてん 第34回 「226」~やれるとかやりたいとかじゃないんだよ。やるんだよ! どんな時代でも思いを貫く嘉納治五郎と仲間たち!

2019年09月09日 | 大河ドラマ・時代劇
 2.26事件勃発。
『天誅! 昭和維新断行!』『尊皇斬奸!』
 志ん生(ビートたけし)が「この時代の話はだめだな、笑いにならねえ」と語った時代のクーデター未遂事件である。

 そんな軍人が力を持ち、国家主義が台頭する時代でも、自分を生きる人たちがいる。

 嘉納治五郎(役所広司)は東京オリンピック招致を諦めず、
「やれるとかやりたいとかじゃないんだよ。やるんだよ!
 そのためなら、いかなる努力も惜しまん!」
 治五郎先生、腹が据わってるな。
 田畑政治(阿部サダヲ)はこの点イマイチ。動揺しフラフラしている。
 もっとも腹を決めたら突っ走る男だが。

 田畑の妻・菊枝(麻生久美子)も強かった。
 動揺する夫に対し、新聞社も体協の理事も辞めればいいと言い、
「辞めれば夫婦の時間が増える。
 新婚旅行に行ける。煙草の本数が減る。
 わたしには良いことばかりです」
 プラス思考ですね。
 どんな暗い時代でもめげない。

 車屋の清さん(峯田和伸)も変わらない。
 いつの時代も陽気に車を走らせている。

 IOC会長ラトゥール(ヤッペ・クラース)もブレない信念の人だね。
 路地で遊びながら競う子供たちを見て、市井にある『オリンピック精神』を感じ、
 ドイツのスタジアムに規模で劣る東京のメインスタジアムを見て、
「大きさは重要じゃない。市民のためのもの(ピープル・ファースト)ならば」
 2020年の新国立競技場に関わった連中、この言葉を聞いて何を思う?
 現在のオリンピックに関わってる連中って、オリンピック精神がすっぽり抜けてるよな。
 ただの運動会に『国家』や『政治』や『利権』を持ち込むな。

 路地で遊びながら競う子供たち=ただの巨大な運動会。
 これがオリンピックなのだ。
 だからオープニングのあの映像になる。
『お母さんが子供を抱き上げる』のと『重量挙げ』は同じ。

 嘉納治五郎、ラトゥール。
 僕は国家や政治や常識など関係なく、『個人』の思いを貫ける人が好きだ。
 田畑政治は不安になると弱いし、金栗四三(中村勘九郎)はスヤ(綾瀬はるか)や幾江(大竹しのぶ)の顔色をうかがうが、ふたりとも走り出したら止まらない。
 暴走機関車のように走り続ける。
 菊枝さんや清さんは庶民のたくましさを持ってるなあ。

 なお、今回のエピソードの底流にある落語は『目黒のさんま』でした。
 サゲは、
「オリンピックは東京に限る」(笑)

 落語『目黒のさんま』
 これは家臣たちが「殿様にあんな脂っこくて小骨のあるさんまを食べさせるわけにはいかない」と忖度し、殿様に脂抜き・小骨抜きのさんまを食べさせるが、そんなさんまより目黒の庶民が食べていたさんまの方がはるかに美味しく、殿様が「さんまは目黒に限る」と言う噺。
 ここで言う殿様ってラトゥールのことですよね。
 ラトゥールも豪華な接待よりも庶民の日の丸弁当を美味しいと言った。
 落語と物語がうまくリンクしている。
 

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4 コメント

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愛情表現 (TEPO)
2019-09-09 17:47:18
菊枝さんが魅力的でした。
ベルギー国旗を作ったり、「あれ」だけで通じたり、粗忽な政治がたばこを逆に咥えないようさりげなく向きをかえたり……これはこれまでどおりの「献身的な彼女」。
しかし、「無口で地味な」女性だった彼女が政治のことを「まーちゃん」と呼んだり、新婚旅行の話をしたりと、これまで見せなかった可愛い顔を披露していました。
他方、政治の「たとえ君でも」という言葉、「暴走機関車」の不器用な愛情表現だと思いました。

愛情表現と言えば、幾江さんもああした形で四三への愛情を表現していましたね。
これに応えて押し倒した四三もまた不器用な暴走機関車。(笑)

また、「金栗さんですよね」という予告編の声、杉咲花さんだったように思います。
どうやら私の期待どおり、成長した増野りくを彼女が演じるのでしょうか。
返信する
おかしな夫婦の物語 (コウジ)
2019-09-09 20:31:27
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>ベルギー国旗を作ったり、
>粗忽な政治がたばこを逆に咥えないようさりげなく向きをかえたり
>「金栗さんですよね」という予告編の声、杉咲花さんだったように思います。

おおっ、
これらのディティル完全に見逃していました!
やはり視点が違うと見えてくるものが違ってくるんですね。

それと、菊枝さんが「まーちゃん」と呼んだことや「たとえ君でも」のせりふは掘り下げるのを忘れていました。
何でしょう? この距離感は?
新婚旅行を言い出したことも唐突。
「人前でまーちゃんと呼ぶな」みたいなせりふもありましたが、家でふたりきりの時は「まーちゃん」と呼んでいるんでしょうか?
答え合わせは後日出て来るのでしょうが、面白い夫婦ですね。

この作品には、さまざまな夫婦が登場しますが、どれもどこかおかしな夫婦ですよね。
そして総じて女性が強い……。
返信する
会長が下町で垣間見た光景はオリンピックのあるべき姿ですな。 (ロギー)
2019-09-09 21:53:26
今晩はコウジ様。

226事件の事は非常に話が長くなるので、今回は割愛させておきます。

ラトゥールIOⅭ会長は日本を気に入って良かったです。
途中でラトゥール会長は路地でオリンピックごっこをしている子供達と接したり。
ラトゥール会長は腹を空かせてしみ。
清さんの日の丸弁当を食したりと様々なアクシデントがありました。
でも、こられの出来事でラトゥール会長は日本という国と人々を知ることが出来、治五郎先生が何で日本でオリンピックを開きたい事をありのままに語りラトゥール会長は認めたのは秀逸です。

ただ、惜しむのはランニング中の四三とラトゥール会長を会わせても良かった気がします。
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精神的貴族 (コウジ)
2019-09-10 08:56:04
ロギーさん

いつもありがとうございます。

226事件、確かに語れば長くなりますよね。
これひとつだけでも壮大なドラマ!

ラトゥールは確か伯爵だったと思いますが、ふんぞり返っていない所がいいですね。
彼が見ているのは、庶民の生活であり、体現しているのはオリンピック精神。
現在のIOC委員のようにカネで票を売るようなことをしない。
やはりラトゥールは貴族なんですね。
身分だけでなく精神的な貴族。
こういう品のある人は現在いるのかなあ。

>惜しむのはランニング中の四三とラトゥール会長を会わせても良かった気がします。
尺の問題もあったと思いますが、こういうふうに敢えてドラマになる部分を避けるのは宮藤官九郎らしいですよね。
今回は、治五郎とラトゥール、四三と幾江など、ドラマ的には結構お腹いっぱいでしたし。
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