平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

八重の桜 第1回「ならぬことはならぬ」~忠義・教育・頑固……これぞ会津人気質!

2013年01月07日 | 大河ドラマ・時代劇
 前半で描かれたのは、会津藩の人たち。
・徹底した忠義
・教育熱心
・「ならぬことはならぬ」の『什の掟』を貫く頑固者(反面、臨機応変・柔軟性に欠ける)
 いいですね、県民性というか、その土地の特徴から物語が始まったこと。
 この会津藩の特徴が後の悲劇に繋がってくる。
 ただ、この前半は<説明>であって、<ドラマ>ではない。
 <説明>というのは「はあ、そうですか」と見ているだけで、実はつまらない。
 <ドラマ>が始まるのは、5歳の八重(鈴木梨央)が西郷頼母(西田敏行)に激怒されるところだ。
 ここで視聴者はやっと作品に感情移入できる。
「松平容保って、なかなか聡明な若殿様じゃん」とか「頼母は無骨で厳しい頑固者だけど、柔軟なところもあるじゃん」とか。

 後半は、そんな会津の人間が<外の世界>に触れる物語。
 外の世界を実体験するのは、八重の兄・覚馬(西島秀俊)。
 ここで、吉田寅次郎(小栗旬)、宮部鼎蔵(宮内敦士)、佐久間象山(奥田瑛二)、勝麟太郎(生瀬勝久)といった幕末の人物たちが登場する。

 覚馬が入門を許される佐久間象山とのやりとりは面白かった。
「この国を守るためには、どうしたらいい?」と象山に訊かれて、覚馬は「砲台を造ることだ」と答える。
 藩命で砲術を習いに来た覚馬だから、そう答えるのが当然だ。
 しかし、「まわりが海なのに、日本中に砲台を造るつもりかい?」と簡単に論破されてしまう。
「では、どうしたらいいのか?」と覚馬が尋ねると、象山は「海軍を造ることだ」と答える。
 これは会津という狭い世界に生きてきた覚馬にとっては、衝撃であっただろう。
 象山は広い視野で物事を見ている。
 だが、頑固者の会津人である覚馬は、藩命にこだわり、「それでも砲術を教えてほしい」と主張する。
 しかし、象山はそんな<頭のかたい人間>は自分の門弟には不向きだと考えている。
 ナポレオンの話などを聞いた覚馬が「心得違いをしておりました」と考えを変えると、やっと入門を許す。
 このやりとりは、どこかで見たような感じがありますね。
 幕末の名場面である、勝海舟と坂本龍馬のやりとり。
 勝を斬りに来た龍馬が、勝の「海軍を造る」という話を聞いて「弟子にして下さい!」というエピソード。
 龍馬は「海軍を造る」という話を聞いて、すぐ理解し感動したが、覚馬は考えを改めるのに少し時間がかかったようだ。
 何しろ覚馬は、藩命が絶対の<頑固な会津人>ですから。
 龍馬と覚馬の違いが出ていて、なかなか面白い。
 しかし覚馬も、時間はかかったが、「海防には海軍が必要」ということを理解した点で龍馬と同じ資質の人間であるようだ。
 ちなみに佐久間象山と勝麟太郎は確か親戚でしたよね。

 さて主人公の八重。
 好奇心にあふれ、女性の境遇に甘んじることができない女の子。
 ありがちなヒロイン像で、新しさはない。
 ただ唯一、違うのは<学ぶ>ことに熱心だということ。
 作品では、覚馬が書物に向かうシーンと八重が銃を勉強するシーンがカットバックで描かれたが、八重は覚馬と同じように<学ぶこと>が大好きな<教育の藩・会津>の人間なのだ。
 これが後の同志社設立に繋がっていくのかな。

 会津という土地柄にこだわったこの作品。
 ぼくは薩摩・長州よりも会津が好きなので、これからが楽しみです。



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10 コメント

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しばらくは 様子見です (megumi)
2013-01-07 10:07:26
おはようございます。

昨夜 リアルタイム視聴しました。
初回のせいか 気負った作りでしたね。

> 会津という土地柄にこだわったこの作品。
 ぼくは薩摩・長州よりも会津が好きなので、これからが楽しみです。

そこのところ なんとなく分ります。
会津人視点の幕末って悲壮感もあってドラマチックですよね。
(違っていたら ごめんなさい)


私は エンタメを研究したり分析したりする知識も洞察力もなく 
ましてや気の利いた文章も書けません。
ドラマに流れる雰囲気や世界観を楽しむだけです。
そんなわけで 単なる感想しか頭に浮かびません。
こちらで アホな感想をコメントするのも気が引けます。

大河ドラマに関しては
自分のブログのエンタメのカテゴリーに 
気が向いたときだけ 
お気楽に感想を書いてみようと思いました。
返信する
感想 (コウジ)
2013-01-07 14:58:14
megumiさん

いつもありがとうございます。

作品や物事の見方って、人それぞれに自由でいいと思いますし、おっしゃる形でいいと思います。
ぼくも今書いているふうにしか書けないですし、まして自分の日々の生活のことを書けと言われたら、まったく書けない。

『八重の桜』は今回はプロローグみたいなものですから、次回以降、綾瀬はるかさんが本格的に動き始めてからがポイントですね。
返信する
会津弁の橘咲? (TEPO)
2013-01-07 19:35:18
「武家娘」に「女だてら(医術、鉄砲)」。
山本八重は橘咲のイメージそのままのように思います。
咲と八重とほぼ同年齢で、微禄の直参旗本橘家と地方のやや上級藩士山本家とは家格もほぼ似たようなもの。
両者の違いは会津弁くらいかと思います。
ちなみに、「JIN」続編は明日8日から連日2~3話づつ再放送されるそうです。正月の第一部と言い、TBSが密かにNHKと手を結んで協力しているのではないかとさえ思ました。
しかし、私は100%「橘咲」を通じての綾瀬はるかファン-彼女にはコウジさんもコメントされている「ホタルノヒカリ」のような別のイメージもあるようですが-なので、この「コラボ戦略」に素直に乗ることとしたいと思います。
どうしても子役を用いざるを得ない今初回も、戊辰戦争で奮戦する綾瀬さんの勇姿を見ることができましたし。

>さて主人公の八重。 ありがちなヒロイン像で、新しさはない。

「絵に描いたようなお転婆ぶり」-木登り、親に冷や汗をかかせるような粗相、そんな中での殿様との出会いなど-には私もほとんど「定型的」とさえ感じましたが、要点は「優しい殿様と鉄砲への思い」と理解しました。
そしてご指摘の勉強熱心。親に禁じられてでも学ぼうとする根性-強い内的動機づけ-は今時の若者や子供たちに見習ってほしいと思いましたが、そこが八重の非凡なところなのでしょう。

>前半は<説明>であって、<ドラマ>ではない。

しかし、その拝読にあたっては藩主さえも座を降りて聴く「御家訓」が私には印象的でした。
容保は養子なるがゆえに徳川将軍家への忠誠を要求するこの「御家訓」に殊更忠実であろうとしたことが「会津藩の悲劇」につながったことが暗示されているように思いました。
また西郷頼母の容保に対する「我ら藩士がお支え申し上げまする」との言葉は、主君に真っ向から諫言しつつも最後まで支える忠臣の生き様を暗示していました。

>覚馬が入門を許される佐久間象山とのやりとりは面白かった。

私もこの場面が気に入りました。
私の場合、ひたすら相手に駄目だしを続け、相手が砕かれ切ったところで入門を許した象山に「痺れる教育者」像を見ました。
勝海舟や吉田松陰など、志士世代に「先生」と呼ばれる、しかも正反対の立場に立つことになる人々が象山の門下で学んでおり、覚馬もそうした人々と共に学んだということは重要な意味を持ってくるのだろうと思います。

綾瀬さんの魅力だけでも見られるとは思いますが、ストーリーも結構伏線が張られていそうで期待しています。
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法に対する敬意 (コウジ)
2013-01-08 08:43:02
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>TBSが密かにNHKと手を結んで協力しているのではないかとさえ思ました。

ぼくも同じことを思いました(笑)
初回視聴率は、21%だったらしいですが、明らかにTBSとの協力?が功を奏していますよね。
会津弁の咲さん。
この作品で、綾瀬はるかさんとスタッフが、咲との違いをどのように出してくるんだろうと思って見ていましたが、まずは会津弁でしたね。
これでかなり違った印象を受ける。
今後もどのような違いを出してくるのか楽しみです。

>拝読にあたっては藩主さえも座を降りて聴く「御家訓」

ぼくはすっかりスルーしていましたが、TEPOさんのように、こういうディティールを楽しめると、作品をより豊かに楽しめるんですよね。
確かにすごいシーンです。
これがそのまま<会津の侍>が何たるかを描いている。
『ご家訓』は現代で言えば、『憲法』みたいなものだと思いますが、憲法改正を主張する政治家も、このくらい敬意を払ってほしいもの。
アメリカの大統領も就任するときに、『米国憲法』に敬意を払い、その前で宣誓しますし、自ら拠って立つ法に対しては、かくあるべしですよね。

象山の描かれ方もよかったですよね。
子母澤寛『勝海舟』などを読むと、変人で嫌なヤツといった感じで描かれていますが、その雰囲気がよく出ている。

全体としては、ライト大河ではなさそうですね。
ライトとヘヴィの中間くらいの感じになりそう。
人物もしっかり当時の人間の価値観・視点で描かれていますし、今後が楽しみです。
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ならぬことはならぬのです (よしぼう)
2013-01-08 20:59:57
お久しぶりです。
少し気になったので、コメントします。
実は途中から裏番組を見たので、コメントする資格があるかどうか微妙ですが、分かる範囲でコメントします。(見損ねた後半は再放送を録画して見ることにします)
>好奇心にあふれ、女性の境遇に甘んじることができない女の子。
> ありがちなヒロイン像で、新しさはない。
確かに木登りは「おてんば」のテンプレですが、それだけではないです。
冒頭の会津戦争の中で八重は、「お城は渡ださぬ。ならぬことは・・・ならぬのです」と言っているように、子供たちが繰り返し劇中で言っていた「什」の考え方、「ならぬことはならぬ」が行動原理になっています。軍事演習を邪魔してしまい怒られたあと、そこを容保に救われた八重は「早く大きくなってお殿様に忠勤を務めるために、鉄砲を習いたい」と兄に言います。女性の境遇に満足できないというより、自分を助けてくれた容保への忠義がここで彼女の行動原理となり、兄のあとを追いかけるという展開になっているように見受けられました。
大河ドラマでも女主人公の場合、男性と張り合ってとか、それこそ女性の境遇に反発してとなりがちですが、殿様への忠義が行動原理となるヒロインは珍しいような気がします。
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修行が足りません…… (コウジ)
2013-01-09 08:39:14
よしぼうさん

お久しぶりです。
確かに、什や殿様への忠義など、八重らしさが付加されていますね。
ご指摘の<女性の境遇に甘んじることができない女の子>という表現も、的確でない。
ありがとうございます。
まだまだ修行が足りませんね。

それと、よしぼうさんのご意見とは少し離れてしまうのですが、冒頭で八重が銃で敵兵士を撃った時、「ついに人を殺す女主人公が登場したのか」と驚きました。
そこを掘り下げるのか、アクションシーンのひとつとしてスルーしてしまうのかは、今後の注目ポイントのひとつですね。

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Unknown (よしぼう)
2013-01-09 11:06:21
こんにちは。
たびたびすいません。
>「ついに人を殺す女主人公が登場したのか」と驚きました。
これは驚くに値しません。什や殿様への忠義で養われた八重の考え方では、薩長なんてお殿様の敵なんだから、打倒して当たり前の存在なんでしょう。
アクションシーンか掘り下げるかよりも、後半になって明治時代新島襄と結婚してハンサムウーマンとして、八重がどのように変わっていくかが楽しみです。敵であるはずの薩長を中心とした明治の社交界に入っていくんですから。ここらへんの夫婦の機微を描くために「ゲゲゲ」の山本むつみさんに脚本をお願いしたんでしょうから
返信する
人を殺すヒロイン (コウジ)
2013-01-09 17:48:36
よしぼうさん

これも言葉足らずだったかもしれませんが、<みずから人を殺すヒロインの登場は大河史上初めてではないか>という意味です。
大河ドラマで女性が主人公だった場合、戦争を嫌う平和主義者が多いですよね。
たとえば、おそらく江が何かのきっかけで人を殺めたら、絶対悩んだりするんだと思うんです。
でも、この八重さんには1話を見る限りですが、そんな悩みや葛藤などない感じ。

僕は個人的には、八重さんに悩んでほしいと思うんです。
人を殺したらハンサムウーマンになっちゃいけないとも思いますし。
でも、それは僕が現代視点で見ているからなんでしょうね。
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八重が撃った相手 (TEPO)
2013-01-09 20:54:55
公式HPの人物紹介を見ていて気づいたことを一つ。
先取りされた戊辰戦争での綾瀬八重の戦闘場面ですが、彼女が優秀な射撃手であるならば当然敵を殺傷することになります。
ところで問題のシーンで八重に撃たれた(大腿部に被弾、死んではいない)薩摩の砲兵隊長はただの隊長ではなく、大山弥助(反町隆史)-後の陸軍元帥大山巌-だったようです。
この名が初回のキャストにありましたのでまず間違いないと思います。
「坂の上の雲」にも登場した大山は無論歴史上(特に日露戦争時)の重要人物ですが-今詳細は書きませんが-会津の人々とも深く関わることになるようです。
ここで坂本龍馬が斬った長州の刺客は東修介の兄だったというドラマ「JIN」が想起されます。
主役、準主役に敢えて人を殺傷させて見せる場面、単なるアクションシーンではなくより重要な伏線を込めているらしいという点で、本作もドラマ「JIN」と同様の期待が持てそうな気がしました。
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ありがとうございます (コウジ)
2013-01-10 08:46:21
TEPOさん

八重が撃ったのは、大山巌だったんですか。
さすが細かく見ていらっしゃいますね。
だとすると、おっしゃるとおり、八重と大山には何かドラマがありそうですね。
そうなんです、ヒロインが人を撃つことに何か理由があるのなら全然問題はないんです。
どのようなドラマが待ち受けているのか楽しみです。

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