ゴルディアスの結び目。
古代フリギアの王ゴルディアスが、
「この結び目を解くことができたものこそ、このアジアの王になるであろう」と予言し、
何人もの人間が失敗したが、
遠征中のマケドニアのアレキサンドロス大王が刀で断ち切って解いた、という逸話だ。
…………………………………………
さて小松左京の『ゴルディアスの結び目』。
マリア.Kは男たちに凌辱され、麻薬漬けにされ、財産を奪われた女性だ。
マリアは超心理学研究所のベッドで眠っている。
彼女の心は「ゴルディアスの結び目」のように、怒りと憎しみで硬く縛られ解けることがない。
あまりにきつく縛られているので、その心は圧縮され、高密度・高温度の物体になっている。
そして、その圧縮された高密度の心がポルターガイスト現象などの超常現象を起こしている。
超心理学の科学者たちは、マリアを研究することで、超常現象や超能力を解明できると考えている。
その理論の根本は「圧縮された高密度の物体には重力が発生すること」だ。
それは宇宙の始まりと終わりのモデルに似ている。
現在、われわれの住んでいる宇宙は拡大しているが、いずれは収縮すると言われている。
拡大した宇宙は冷え切って、万有引力で収縮し、高温・高密度の物体になる。
つまりビッグバンが始まる前の状態に戻るのだ。
小松左京のすごい所は、「人間の心」と「宇宙」をリンクさせた所だ。
「ギリギリと締めつけられた心」と「解放された心」
「高温・高密度の宇宙の卵」と「拡大・拡散する宇宙」
これは仏教的・東洋的世界観でもある。
仏教は「自分を縛っているさまざまなものから解放されよ」と教える。
怒り、憎しみ、欲望、保身──これらに囚われている人の心は硬い結び目だ。
この結び目を解けば、人は悟りの境地にたどり着けると教える。
悟りの境地、すなわち「空」だ。
「空」は拡大・拡散した宇宙の果てに似ている。
さまざまなことに囚われた心は「個」であり、個が最終的に行き着く所は「死」「空」だ。
生物は死んで宇宙の塵となる。
小松左京は、この東洋的世界観を説明した後、西洋的世界観について語る。
西洋的世界観は二元論だ。
「神」と「悪魔」
「善」と「悪」
「光」と「闇」
超心理学研究所にやって来た主人公は、西洋的二元論では人や世界は説明できないと考える。
しかし、宇宙には拡大と収縮だけではない現象が存在する。
「ブラックホール」だ。
光さえも飲み込み、出ることができないブラックホールとは何なのか?
小松左京は、このブラックホールから「多次元多孔空間」という理論を紹介する。
そもそもマリアが起こす超常現象のエネルギーは膨大で、重力と質量の法則を超えている。
では、そのエネルギーはどこから来るのか?
「多次元多孔空間」から来ているのではないか?
ページ数にして80ページくらいだが、実に読み応えのある作品だ。
人間や宇宙について完全に説明しているわけではないし、そんなことは不可能だが、
考えるきっかけにはなる。
そして、秀逸なのが主人公がマリアの心の中にダイブして見た情景。
フロイトの心理学書を読んでいるようで実に面白い。
これについては文学的な面白さがあるので、後日書きます。
古代フリギアの王ゴルディアスが、
「この結び目を解くことができたものこそ、このアジアの王になるであろう」と予言し、
何人もの人間が失敗したが、
遠征中のマケドニアのアレキサンドロス大王が刀で断ち切って解いた、という逸話だ。
…………………………………………
さて小松左京の『ゴルディアスの結び目』。
マリア.Kは男たちに凌辱され、麻薬漬けにされ、財産を奪われた女性だ。
マリアは超心理学研究所のベッドで眠っている。
彼女の心は「ゴルディアスの結び目」のように、怒りと憎しみで硬く縛られ解けることがない。
あまりにきつく縛られているので、その心は圧縮され、高密度・高温度の物体になっている。
そして、その圧縮された高密度の心がポルターガイスト現象などの超常現象を起こしている。
超心理学の科学者たちは、マリアを研究することで、超常現象や超能力を解明できると考えている。
その理論の根本は「圧縮された高密度の物体には重力が発生すること」だ。
それは宇宙の始まりと終わりのモデルに似ている。
現在、われわれの住んでいる宇宙は拡大しているが、いずれは収縮すると言われている。
拡大した宇宙は冷え切って、万有引力で収縮し、高温・高密度の物体になる。
つまりビッグバンが始まる前の状態に戻るのだ。
小松左京のすごい所は、「人間の心」と「宇宙」をリンクさせた所だ。
「ギリギリと締めつけられた心」と「解放された心」
「高温・高密度の宇宙の卵」と「拡大・拡散する宇宙」
これは仏教的・東洋的世界観でもある。
仏教は「自分を縛っているさまざまなものから解放されよ」と教える。
怒り、憎しみ、欲望、保身──これらに囚われている人の心は硬い結び目だ。
この結び目を解けば、人は悟りの境地にたどり着けると教える。
悟りの境地、すなわち「空」だ。
「空」は拡大・拡散した宇宙の果てに似ている。
さまざまなことに囚われた心は「個」であり、個が最終的に行き着く所は「死」「空」だ。
生物は死んで宇宙の塵となる。
小松左京は、この東洋的世界観を説明した後、西洋的世界観について語る。
西洋的世界観は二元論だ。
「神」と「悪魔」
「善」と「悪」
「光」と「闇」
超心理学研究所にやって来た主人公は、西洋的二元論では人や世界は説明できないと考える。
しかし、宇宙には拡大と収縮だけではない現象が存在する。
「ブラックホール」だ。
光さえも飲み込み、出ることができないブラックホールとは何なのか?
小松左京は、このブラックホールから「多次元多孔空間」という理論を紹介する。
そもそもマリアが起こす超常現象のエネルギーは膨大で、重力と質量の法則を超えている。
では、そのエネルギーはどこから来るのか?
「多次元多孔空間」から来ているのではないか?
ページ数にして80ページくらいだが、実に読み応えのある作品だ。
人間や宇宙について完全に説明しているわけではないし、そんなことは不可能だが、
考えるきっかけにはなる。
そして、秀逸なのが主人公がマリアの心の中にダイブして見た情景。
フロイトの心理学書を読んでいるようで実に面白い。
これについては文学的な面白さがあるので、後日書きます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます