「いくさは終わった?
信長様のいくさはまだ終わっておりませぬぞ。
今、摂津殿がここにおられる。叡山の主も無傷でおられる。
よって、いくさは続けなければならぬ。
お分かりか? 古き悪しきものは残っておるのだ。
それを倒さねば新しき都はつくれぬ」
摂津晴門(片岡鶴太郎)を前にして、ずいぶんエグい言葉。
完全な敵対宣言。
この時代、寺社や幕府の旧臣や旧大名は『既得権者』なんですね。
彼らは自分の持っている者を守ろうとする。
自分の持っているものを奪い、壊そうとする者は潰そうとする。
いつの時代も同じだなあ。
持てる者と持たざる者の闘い。
一方、持たざる者が権力を手にすると、腐り、狂い始める。
これが人の歴史。
人間の歴史はこれを繰り返している。
……………………
クセの強い人物がまたひとり登場。
比叡山・天台宗座主・覚恕(春風亭小朝)。
「美しき者が勝ったと思うな!」
「あの都はわしの都じゃ! 返せ、返せ、わしに返せ!」
自らを醜いと思い、美しき者に頭を下げて生きるのを避けるために財力と権力を持とうと考えた男。
美しい兄の正親町天皇(坂東玉三郎)へのコンプレックスもあらわ。
信長(染谷将太)の褒められたい願望といい、この作品には屈折した人が多いなあ。
脚本・池端俊策さんの歴史観は理論じゃないんだな。
経済的要因や旧き者と新しき者の対立という歴史理論はあるんだけど、
人物を動かしているのは多分に『私怨』。
あとは、義昭(滝藤賢一)の「みんな仲良く」というのはダメなんだろうな。
松永久秀(吉田鋼太郎)と筒井順慶(駿河太郎)の同席。
この件は摂津晴門が仕組んだ感じだが、摂津が言ったように、義昭には「みんな仲良く」という考え方が根本にある。
でも、歴史が対立する者どうしのぶつかり合いと止揚である以上、
「どちらにもいい顔」「みんな仲良く」という立場は曖昧で翻弄されてしまう。
平和な時代なら、それでいいんだろうけど。
光秀(長谷川博己)は完全に信長の側。
旧きものを叩きつぶす立場になっている。
問題なのは、旧きものを壊した後にどんな社会を構想するかだが。
信長様のいくさはまだ終わっておりませぬぞ。
今、摂津殿がここにおられる。叡山の主も無傷でおられる。
よって、いくさは続けなければならぬ。
お分かりか? 古き悪しきものは残っておるのだ。
それを倒さねば新しき都はつくれぬ」
摂津晴門(片岡鶴太郎)を前にして、ずいぶんエグい言葉。
完全な敵対宣言。
この時代、寺社や幕府の旧臣や旧大名は『既得権者』なんですね。
彼らは自分の持っている者を守ろうとする。
自分の持っているものを奪い、壊そうとする者は潰そうとする。
いつの時代も同じだなあ。
持てる者と持たざる者の闘い。
一方、持たざる者が権力を手にすると、腐り、狂い始める。
これが人の歴史。
人間の歴史はこれを繰り返している。
……………………
クセの強い人物がまたひとり登場。
比叡山・天台宗座主・覚恕(春風亭小朝)。
「美しき者が勝ったと思うな!」
「あの都はわしの都じゃ! 返せ、返せ、わしに返せ!」
自らを醜いと思い、美しき者に頭を下げて生きるのを避けるために財力と権力を持とうと考えた男。
美しい兄の正親町天皇(坂東玉三郎)へのコンプレックスもあらわ。
信長(染谷将太)の褒められたい願望といい、この作品には屈折した人が多いなあ。
脚本・池端俊策さんの歴史観は理論じゃないんだな。
経済的要因や旧き者と新しき者の対立という歴史理論はあるんだけど、
人物を動かしているのは多分に『私怨』。
あとは、義昭(滝藤賢一)の「みんな仲良く」というのはダメなんだろうな。
松永久秀(吉田鋼太郎)と筒井順慶(駿河太郎)の同席。
この件は摂津晴門が仕組んだ感じだが、摂津が言ったように、義昭には「みんな仲良く」という考え方が根本にある。
でも、歴史が対立する者どうしのぶつかり合いと止揚である以上、
「どちらにもいい顔」「みんな仲良く」という立場は曖昧で翻弄されてしまう。
平和な時代なら、それでいいんだろうけど。
光秀(長谷川博己)は完全に信長の側。
旧きものを叩きつぶす立場になっている。
問題なのは、旧きものを壊した後にどんな社会を構想するかだが。
それにしても、正親町天皇を演じた坂東玉三郎さん、歳を召された今でも美形ですね。
驚いたのは、その「美しい」帝が東庵先生と碁を打っていたこと。
帝自身が東庵との馴れ初めを解説していましたが、ここにも一人「ラッキーシニア」がいました。
「ラッキーウーマン・駒様」は、義昭に光秀が好きだったか、と問われて「はい」。
よく正直に言った、という義昭の反応は、逆に義昭と駒との現在の間柄を暗示しています。
義昭も個人としては「光秀が好き」であり、「死なせとうはない」。
義昭と信長との敵対関係が明らかになりつつある現時点での距離感覚でしょう。
ところで、駒も言い返す言葉を持たなかった「真に困窮した民」の代表者であった「丸薬転売少年」が、あっけなく織田方の兵に斬られてしまいました。
このことが信長・光秀・義昭・駒の関係にどう影響するのでしょうね。
「ダーウィンが来た」のヒゲじいではありませんが「ちょっ~と待ったぁ!」ですよ。
「持たざるものが権力を持つと危険、なので愚民庶民は政治のことなど考えるな、世襲貴族にまかせろ」という意味にもとれますけど?
いつもありがとうございます。
東庵先生と駒ちゃんは神出鬼没。
帝、将軍、関白など、さまざまな人と話ができるんですよね。
いわゆる「便利キャラ」で、帝や義昭らに本音を語らせる役割ですが、あまり便利に使いすぎると、ご都合主義になりますよね。
岡村隆史さんが演じる忍者も「便利キャラ」で、便利に情報収集してきますよね。
まあ、45分で物事を語るにはこういう役割が必要なんでしょうね。
彼らがいることで、物語がスムーズに進行しますし。
義昭と光秀の関係は複雑ですよね。
好きで死なせたくないが、信長側。
直言でウソをつかないことが信頼できる。
駒のことに関しては、すこし嫉妬?
いろいろな感情が入り交じっていて面白いです。
>「丸薬転売少年」が、あっけなく織田方の兵に斬られてしまいました。
これには驚きましたね。
あっけない死でいくさの現実を描こうとしたのか、TEPOさんが考えるように後のエピソードに関係してくるのか。
比叡山に遊郭みたいなものがあったという描写も新しかったですね。
はじめて知りました。
いつもありがとうございます。
すこし言葉足らずでした。
この場合、持たざる者=信長です。
信長は旧勢力を一掃して新しく権力を掌握するわけですが、だんだんとおかしくなり、強権をふるうようになる。
それは他の歴史人物もたどった道で、
・平清盛~平家でなければ人でない。
・薩長~明治に藩閥政治で腐敗
・フランス革命のロベスピエール~反対派の一掃
・ロシア革命のスターリン~反対派の一掃
例をあげれば、こんな感じです。
権力は人を狂わせるんですよね。
権力をもたない者が絶大な権力を持つと狂い始める。
だから「三権分立」など、権力を分散させておく必要があるんですよね。
なるほど、そういう意味ですね、早とちりでした。
ただ、わたしは武即天(則天武后)を思い出しました。
彼女は、中国史上初めての女性皇帝になりましたが、当時は、中国も世襲貴族が幅をきかせる社会でした。
有名な唐王朝ですが、内情を見ると、王朝成立前から続く数百年の歴史を持つ世襲貴族のファミリーたちが、皇帝を陰で操るほどの勢力を誇っていました。そういったファミリーの後ろ盾がない武即天は、即位当初、だれも側近がいませんでした。
そのために、彼女は必死になって庶民出身の優秀な人材を集めました。
この「庶民出身の人材」ですが、武即天が失脚した後も生き残り、世襲貴族を打ち破る勢力に育っていきます。
そして、つぎの宋王朝は科挙制度になります。硬直化した受験社会を招いたわけですが、少なくとも、世襲貴族が支配する時代よりはマシになりました。
毀誉褒貶いろいろありますが、彼女は、世襲貴族を否定する方向性を歴史に刻んだわけです。
まあ、こういった例もあります。
ただ、自分の野心のために動いていただけかもしれませんが、その野心が、本人の意図とは別に、社会を変革したわけです。
教えていただきありがとうございます。
確かに権力を持っても狂わない人間はいますよね。
その基本は「権力を行使することの怖ろしさを知っていて、抑制的に使える聡明さ」を持っていることでしょうか。
あとは、おっしゃるとおり「生き残る」という視点も重要で、権力者は自らが生き残るために権力を行使し、時には反対者を力で排除したりするんですよね。
ほんとドロドロして怖ろしい世界です。
僕は楽に生きたいので、こうした世界からは離れて暮らしたいですね。
>ほんとドロドロして怖ろしい世界です。
おっしゃるとおり、まったくです。
>僕は楽に生きたいので、こうした世界からは離れて暮らしたいですね。
おっしゃるとおりです。
ただ、庶民が楽に生きるには、離れたい「こうした世界」がまっとうに機能していることが不可欠なので、そのあたりが悩ましいです。
放っておいても「こうした世界」が機能するのであれば、それほど楽なことはないんですけど、なかなかそうは行かないんでしょうね。
>離れたい「こうした世界」がまっとうに機能していることが不可欠なので、そのあたりが悩ましいです。
ほんと、そうなんですよね。
声をあげなければ権力者はどんどんつけ上がり、やりたい放題を始める。
それがこちらの生活に影響してくる。
僕は「分断」もイヤなんですが、黙っていれば一方の意見が強くなるので言わざるを得ない。
左右や守旧派・改革派が押したり押し戻したり。
これが人間の歴史なんでしょうね。