平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第12回「思いの果て」~わたしはわたしらしく自分の生まれて来た意味を探して参ります。

2024年03月25日 | 大河ドラマ・時代劇
「妾でもいい」
 父と妾なつめ(藤倉みのり)の関係を見て、道長(柄本佑)の所に走るまひろ(吉高由里子)。
 しかし、道長の口から出た言葉は──
「右大臣家のいちの姫に婿入りすることになった」
 選りに選って相手は倫子(黒木華)。
 まひろはこう言うしかない。
「倫子様はおおらかなすばらしい姫様です。おめでとうございます」
 道長に「お前の話は何だ?」と問われると、
「道長様とわたしはやはり辿る道が違うのだと申し上げるつもりでした。
 わたしはわたしらしく自分の生まれて来た意味を探して参ります」

 これで、まひろと道長の恋愛は終わった。
 道長は「まひろの望む世界を作るべく」、政治と権力の世界へ。
 まひろは「自分の生まれて来た意味を探して」、文学の世界へ。

 身分の差とすれ違い、
 これがもたらした結果だった。
 まひろがもう少し素直になっていれば、道長がもう少し言葉が多ければ、
 この結果になっていなかったかもしれない。

 この会合の後、道長は倫子のもとへ。
 姉・詮子(吉田羊)の勧めで、源明子(瀧内公美)とも婚姻を結ぶのであろう。
 今後さまざまな女性との関係を結んでいく道長の姿はまさに「光源氏」。
 でも、光源氏が常に藤壺を求めていたように、道長はずっとまひろを追い求めている。

 脚本・大石静さん、実にお見事!
 大河ドラマで、このような恋愛絵巻を描き、「源氏物語」ともリンクさせた。
 史実としても大きな破綻はない。

 今後たくさんの妻を持つ道長をまひろはどのように考えるのだろうか?
「しょうがない人ね」と思うのだろうか?
 直秀(毎熊克哉)が散楽で藤原氏をからかったように、
 道長を『源氏物語』でからかっていくのだろうか?

 倫子の今後も気になる。
「わたしは道長様をお慕い申し上げております」
「道長様をどうかわたしの婿に。このままでは生涯、猫しか愛でません」
 と、父に直訴した情熱の持ち主。
 それに何とやって来た道長を強引に押し倒した!笑
 でも倫子が道長をまっすぐに見つめた時、道長は目を逸らすんだよな……。
 道長の心の中に倫子はいない。
 権力闘争の道具と考えているのかもしれない。
 聡明な倫子のことだから、いずれこのことに気づくだろう。
 気づいた時、倫子はどう反応するのか?
 ………………………………………………………………………………………

 源明子は藤原家を憎悪する人物として登場した。
 父・源高明を死に追いやった恨みを抱え、
「わたしの心と体などどうなってもいいのです」
「必ずや父上の恨みを晴らしてみせます」
 強烈なキャラの登場だ。
 ちなみに僕は瀧内公美さんのファンだ。
 amazonのCMでおなじみ。
『新空港占拠』は作品的にイマイチだったが、『リバーサルオーケストラ』はよかった。

 なつめの娘さわ(野村麻純)が登場。
 学問はないが、聡明な女性で、まひろの心の機微をすぐに見て取った。
 まひろの良き友人になりそうだ。

 藤原道綱(上地雄輔)、まひろの弟・藤原惟規(高杉真宙)は癒し枠。
 つらい道長やまひろの心を軽くしてくれる存在になりそう。
 今回、惟規は、道長と別れて戻って来たまひろに「飲みなよ」と酒を勧めた。

 倫子の父・源雅信(益岡徹)はともかく娘に甘い。
 道長との結婚に前向きではなかったが、「泣くほど好きなら仕方がないのう」

 藤原実資(秋山竜次)はクソ真面目キャラだと思ったが、実はスケベ!
「おおっ、見えておる」
 権力欲や嫉妬もあって、実に人間的な人物だ。

 藤原宣孝(佐々木蔵之介)はまひろの婿捜しに躍起。
「いいことを思いついたぞ!」と婿として実資にアプローチ。
 裸が透けて見える天女の絵も送るような世故に長けた人物。

 陰謀パートや道長・まひろパートが重い分、上記の人々が作品を明るくしている。


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4 コメント

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芸術的な「すれ違い」ストーリー構成 (TEPO)
2024-03-25 14:00:12
道長が兼家に何を言うのか、先週の私の予想は見事に大外れでした。
さすがに玉砕が目に見えている暴挙に出るほど「坊や」ではなかった。笑

>まひろがもう少し素直になっていれば、道長がもう少し言葉が多ければ、
それにしても、芸術的な「すれ違い」のストーリー構成でした。
まひろは、父為時の優しさのために結構幸せな最期を迎えたなつめを見て、相手の男性次第で「妾」も必ずしも悪いことばかりではないことを知る。
他方道長は、母や自分自身の体験から「妾」の現実を知悉している道綱を通して、「妾」の立場の辛さについての理解を深める。
こうして、先週「ならば、どうすればいいのか!? どうすればいいのか、言ってみろ!」で弾きあってしまった二人の心が再び歩み取る。
まひろは「妾でもいい」と言うつもりで、また道長も内心そう言って欲しいと思っていて、二人の心が再びつながる寸前まできていた。しかし、
>選りに選って相手は倫子。
相手が他の姫君だったら、まひろは「妾でもいい」と言えたでしょうね。
倫子はまひろに優しく、今回もまひろの不遇を揶揄しかけていたギャル姫たちからまひろを庇っていました。
倫子はまひろにとって今や心通った大切な人。

史実を前提に見てしまう立場からは、どうせ結ばれない道長との恋よりも倫子様との関係の方が気になってしまいます。
まひろの発言、ちょっと残念ですが、やはりまひろも「大人の対応」でした。
ともかく、流石に今回で「まひろと道長の恋」は本当に終わりなのでしょうね。

>今回、惟規は、道長と別れて戻って来たまひろに「飲みなよ」と酒を勧めた。
惟規は道長からの「文」を勝手に読むなど、茶化しにかかるのかと思っていましたが、優しい弟でした。
「なつめの娘さわ」、父親は為時以前の別れた夫ということなので、まひろ・惟規の「異母妹」ではないのですね。
だとすると、惟規とさわとは結構お似合いな感じがしました。
直秀亡き今、惟規とさわはまひろの理解者として貴重な存在。
たしかに本作では、「優秀ではないが癒やし系」の人物が結構重要な役割を演じて行きそうですね。
返信する
省略の妙 (コウジ)
2024-03-26 08:34:32
TEPOさん

いつもありがとうございます。

道長が大きな行動をとる時って、全部まひろがきっかけなんですよね。
倫子との縁談の話を兼家にした時はまひろに「妾では嫌だ」と言われた後でしたし、今回倫子の所に行ったのも、まひろと別れた後でした。
現在の道長は優柔不断で、きっかけがないと大きな決断ができないタイプなんでしょうね。

>道綱を通して、「妾」の立場の辛さについての理解を深める。
こういう所、芸が細かいですよね。
ここで道綱に語らせるとは絶妙な人物配置です。

倫子は今後どういう対応をするんでしょうね。
予告を見ると、疑う描写が出ていました。
次回は4年後くらいに時間が飛ぶようですが、これで三角関係の生々しさが薄まりますよね。
道長と倫子の新婚生活を描いたりしたら、まひろが辛すぎますし、視聴者もどこに感情移入したらいいかわからなくなってしまいます。
時間は心の痛みを和らげてくれます。

惟規の対応はいい感じで裏切りましたよね。
普通なら、おっしゃるとおり「どうだった~?」「帰って来るの、早くない~?」とからかう所。
ところが、すべてを理解して「飲みなよ」。
惟規がこの理解に至る過程は描かれませんでしたが、いろいろ想像させますよね。
姉の表情を見て察したのか、さわが推測したのか、帰って来るのが早かったので察したのか、定かではありませんが、省略の妙ですよね。
次回を4年後にしたのも省略の妙と言えるかもしれません。
返信する
捜神記 (2020-08-15 21:07:49)
2024-03-27 07:23:50
ロバート秋山ですが、去年かおととしあたりに雑誌で連載していた企画を思い出します。
これは「架空のスゴい人」になりきって、ポートレート写真を撮られるというもので、たとえば架空のカリスマ美容師、架空の売れっ子脚本家、架空のユーチューバー、といった感じで、それらしい服装と表情をして演出てんこ盛りのポートレートを撮られると、本当にこんな人がいそうな気がしてきて、ウソと本当の境目がにじんでしまいそうな危ない感覚もあり、変身魔女っ子アニメのコスプレをオッサンがやっているようなヘンタイ的な(笑)気持ち悪さもありました。

さて、今回の実資さんですが、がっちりつかみました。架空の平安貴族?でしょうか(笑)
また、あの絵姿がはさまれていた本のタイトルが捜神記のように見えたのですが、それもまたなかなか攻めてますね。
中国の妖怪話や不思議話を集めた短編集ですが、天女仙女の話も入っていたはずです。
エロ話的な仙女話はなかったと思うのですが、そこにあの絵をはさんで贈るおかしさもあります。あの絵の天女?の服も、日本のものではなくて、中国の唐代くらいの感じですしね。
それにしても「見えておる」のあの顔…(笑)
返信する
マニアックに語れる作品 (コウジ)
2024-03-27 08:32:55
2024-03-27 07:23:50さん

いつもありがとうございます。

ロバート秋山さん、そんなこともなさっているんですね。
検索してみます!

二次元絵に萌える実資さま。
完全に現代の二次元オタクですね。笑
まひろは文学オタクで同人誌作家。
清少納言はインスタグラマー。
登場人物の描き方、とらえ方が上手いですよね。

>本のタイトルが捜神記のように見えた
>中国の唐代くらいの感じですしね
さすが中国通の2020さん!
こんなふうにマニアックに考察してしまう所が本作の魅力なんですよね。
漢詩や和歌の好きな人、平安の風俗・文化に詳しい人、「源氏物語」の好きな人、それぞれがマニアックにディティルを語っています。

ちなみに、この天女絵を描いたのは日本画家の諫山恵実(宝樹)さんだそうです。
https://twitter.com/IsayamaEmi/status/1772103778864632103
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