平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第5回「栄一、揺れる」~悲憤慷慨の攘夷の時代、栄一は姉の心配をする

2021年03月16日 | 大河ドラマ・時代劇
 幕末。
 巷には「悲憤慷慨」の人たちが溢れていたようである。

 その対象は欧米列強の脅威と弱腰の幕府。
 栄一(吉沢亮)の場合は社会の上層部の理不尽の搾取。

 いずれにしても家康(北大路欣也)が語っていたように、
 問題解決できず、発展の疎外にしかならない徳川幕府がその役割を終えつつあるようである。
 7%の武士が支配する時代は終わり、
 台頭する商人や富農や下級武士が声をあげる時代がやって来たのだ。
 この点では、明治維新はフランス革命と同じ「市民革命」「ブルジョワ革命」ですね。

 で、政府があまり機能せず、汚職が横行し、官僚も劣化して、格差も拡大している世相は2021年の現在に似ている。
 おまけに疫病、「安政江戸地震」のような大地震への不安。
 ほんと似ているな。
 少し先の時代になれば、スペイン風邪の流行、関東大震災。その後の大東亜戦争。
 現在は歴史の大きな転換点にあるのかもしれない。
 ………………

 栄一の問題意識が他と少し違う所が面白い。

 尾高長七郎(満島真之介)らが外国の脅威に「悲憤慷慨」しているのに対し、
 栄一は海外の脅威を書物で読んだが、それには直接反応をせず、搾取する代官に怒っている。
 栄一の関心は「政治」ではなく、「経済」「商売」にあるようだ。
 おまけに栄一が心配しているのは、破談になった姉なか(村川絵梨)のこと。
 夷狄を討つための剣術の稽古を放り出して姉の心配する栄一を長七郎は「軟弱だ」と批判する。
 栄一の関心は、本や噂の世界の異国人よりも目の前の姉のこと、イデオロギーよりは目の前の現実なんですね。

 栄一が近代的な合理主義者であることもうかがえた。
「憑き物」「きつね憑き」
 その口寄せとお祓いに皆が有り難がる中、栄一はそのウソを見破った。
「阿片が人の魂を吸い取る」ということは信じたようだが、
 この時代には封建時代の迷信と近代的な合理主義が共存していたようだ。

 地震の大津波で転覆したロシア船の乗員を助けた描写は新しかった。
 政治的に憎むべき敵であっても人道的な見地で助ける。
 ロシアの乗員にも「祖国に家族や友人がいるのだ」と考えられる想像力を持つ。
 亡くなった藤田東湖(渡辺いっけい)のこの言葉に徳川斉昭(竹中直人)も心を動かされたようだし、忘れてはならないことですね。

 従来の大河ドラマの幕末は「尊皇攘夷」一辺倒だったが、今作はすこし違う幕末が描かれるようだ。


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