平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ビブリア古書堂の事件手帖 第10話~怖くていかがわしい乱歩作品の魅力

2013年03月19日 | 推理・サスペンスドラマ
 江戸川乱歩の怖くていかがわしい世界。
 死、残虐、孤独、異常心理……。
 探偵、怪盗、怪人、サーカス、人形……。
 リンゴの頬をした小林少年は、少年愛の対象……。

 人はなぜかこうした乱歩世界に魅了される。郷愁を感じる。
 実は人は、いかがわしいものが大好きなのだ。
 世間体、社会のルール、常識、がんじがらめの現実に生きて悲鳴をあげている人の心は、出口を求める。
 その出口のひとつが、乱歩作品。
 鹿山明(須永慶)もそのひとり。
 地位も名誉もある学者で、健全な社会生活を送っている彼にも、いかがわしさを求める陰がある。
 自分の心の中の陰を満足させるために、乱歩を読む。

 そんな鹿山の乱歩への傾倒ぶりは徹底している。
 乱歩コレクションを保管しておくための別宅。
 二重生活は、乱歩作品の『陰獣』のよう。
 革のソファの中に本の隠しスペースを作ったのは、『人間椅子』。

 だが、鹿山は決して異常者ではない。
 娘・直美(横山めぐみ)に乱歩を読ませるために策略を練ったり、直美と井上(佐野史郎)との結婚を願ったり、ごく普通の娘を思う父親の心情。
 その表現の仕方は、ひじょうに屈折していますけどね。
 本当は娘の幸せのために現実とたたかうべきだったのでしょうが、彼にはそれが出来なかった様子。

 というわけで、人間の心理というのは、複雑怪奇。
 大好きな物を保管するための別宅を作ったり、<二重生活>や<特注の椅子>で、小説世界を現実のものにして愉しんだり、娘の結婚を思いながらも少年探偵手帳に「井上直美」と書くことしか出来なかったり。
 オモテの顔、裏の顔、屈折して歪んだ心……。
 でも、人間はそれだからこそ面白い。
 だからこそ乱歩は読まれる。
 もしかしたら百年後も読み継がれている作家は、江戸川乱歩なのかもしれませんね。


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4 コメント

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Unknown (よしぼう)
2013-03-19 17:29:33
私の場合、小学校はシャーロッキアンで、ホームズ以外は受け付けなかったんですが、中学に入ると土曜ワイド劇場の天知茂の江戸川乱歩美女シリーズにはまってしまって、少年探偵団以外の乱歩作品を読みあさりました。そして「Kー20」の公開時になって初めて少年探偵団シリーズを読んだ口です。子供の頃に読んでおけばなあ、と少し後悔しました。

鍵の隠し場所は、乱歩を読んだことがある人ならば、すぐ気がつく場所(by「人間椅子」ほか)なので、栞子はもっと早く気づくべきだと思うのに、クローゼットに隠れて直美を見守るなんて搦め手を使うから智恵子に先を越されるんだよ、と歯ぎしりしながら見てました。

智恵子については、予告で乱歩の原稿があると見ているようなので、自分の「本を読みたい」という自分の欲望のためなら「盗み」ぐらいやるでしょう。

義彦がどうするかは次回の帰結を確認してからじゃないと分からないと思います。ただ、智恵子が指摘したように、金庫の中が「贈り物」とは限らないことはヤバイと思うので、義侠心だけで、金庫の暗号解読に向かう栞子には危ういものを感じてしまいます。
(智恵子は義彦のことも計算に入れてそうな気がするので・・・)

返信する
金庫の中身 (コウジ)
2013-03-19 18:13:57
よしぼうさん

いつもありがとうございます。
やはり読書体験というのは、さまざまなんですね。
僕は逆にルパンで、『奇厳城』(ポプラ社版)でホームズがルパンの恋人を殺したことで、ホームズが嫌いになりました(笑)
少年探偵団も読みましたが、あの表紙の絵に惹きつけられたのは何でしょうね。
今回のドラマで改めて見て、そんなことを思いました。

栞子の危うさ。おっしゃるとおりですね。
やはり母親のこともあって、いつもの栞子とは違うんでしょうか?
金庫の中身も気になります。
何だかすごいドラマが隠されていそうですね。
栞子が母親とのことをどう決着つけるのか、ということを含めて、次回が楽しみです。
返信する
剛力栞子 (hopper)
2013-03-20 00:08:53

ご存じかもしれませんが、
原作者の三上延さんは、第3巻の「あとがき」で、
 「四巻で取り上げる作家はもう決まっており、三巻の執筆と並行して資料も
   読んでいました。調べれば調べるほど興味深い話ばかりで、知り得たことを
   全部盛りこめないのが残念です。」
と書いておられました。

そして、先日、店頭に平積みにされた最新の第4巻。
取り上げた作家とは、「江戸川乱歩」でした。しかも短編連作ではなく、
シリーズ初の長編物。第一話、第二話…ではなく、
   第一章   「孤島の鬼」
   第二章   「少年探偵団」
   第三章   「押絵と旅する男」
と章立てになっています。

実は、買ってはみたものの、未読です。
今回、ドラマ化するにあたって、最新巻のストーリーも盛り込む、
というアナウンスがあったので、
原作の先入観、予備知識なしに視る、いい機会だと思い、
まだ、読んでいないのです。(本当はウズウズしてるんだけど…)
ドラマの展開、面白いですね。著者のことば通りなら、
創作の中に、実際のエピソードも交えている様子。

剛力・栞子の母、余裕綽々の不敵な笑みを浮かべる
篠川智恵子(安田成美。ナイス・キャスティング!)
と対峙する来週の最終回、どんなクライマックスを迎えるのか、楽しみです。

まあ、続けて視ていくうちに、剛力・栞子も「あり」に
なってしまった、ってことかな。
でも、原作の“栞子さん”、好きですよ、やっぱり。
ドラマが終わったら、さっそく読むことにしようっと。

最後にもう一度、三上延さんの第4巻の「あとがき」から。
「この物語もそろそろ後半です。最後までお付き合いいただければ幸せです。」

まだまだ続くのか。。。
返信する
「あり」ですね (コウジ)
2013-03-20 17:50:28
hopperさん

いつもありがとうございます。
僕は今月号の「ダ・ヴィンチ」に三上さんのインタビューが載っていて、4巻の作家が乱歩であることを知りました。
ドラマで、いきなり最新刊をやってしまって、原作を読んでから見たかったな、とも思っています。

僕も<剛力栞子>は「あり」になりました。
穏やかで気品があっていい感じですよね。
志田さんとか周囲の人間をコミカルに描いているので、逆に栞子が引き立つ。
映像も作り込まれていますし、登場する稀少な本も実際に目にすることが出来て、いい感じの目の保養になっています。
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