平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

鎌倉殿の13人 第23回「狩りと獲物」~わしのなすべきことは、もうこの世に残っていないのか?

2022年06月13日 | 大河ドラマ・時代劇
「今までは天の導きが届いた。声が聞こえた。
 だが昨日は何も聞こえなかった。次はもうない。
 小四郎、わしのなすべきことはもうこの世に残っていないのか?」

 運命論者・頼朝(大泉洋)の言葉である。
 目標を失った者の嘆きでもある。
「天の導き」云々は別として、人間、苦労して坂道をのぼっている時が楽しい。
 ……………………

 曽我事件。

 義時(小栗旬)は「敵討ち」という形で何とか収めた。
 頼朝にしてみれば
「わしが治める板東で謀反など起こるはずがない」
 謀反が世に伝われば、頼朝の政権基盤が脆弱であることが世間にわかってしまうのだ。
 義時としては「北条が謀反に荷担」となると困るのだ。
 その両者の思惑が一致して、今回の決着となった。
 もっとも義時は悩んでいる。
 比奈(堀田真由)にはこんな言葉。
「わたしはあなたが思っているよりずっと汚い」
 政治に関わるというのは汚れることなのだ。
 生きるということもそうなのかもしれない。
 とはいえ、そんな義時を理解し、支えようと思う比奈が登場。
 八重(新垣結衣)亡き後のドラマ展開としていい感じ。

 成長した金剛(坂口健太郎)は武芸に秀でた者として描きながら、ちょっと空気の読めない男として登場。
 これまたいい感じのキャラクター描写ですね。
 SNSでは早速、#泰時 がトレンドに。
 これに加えて、万寿(金子大地)のパートはギャグパート♪
 動かない鹿ーー!
 矢が外れるーー!
 代わりに矢を放って、ひもで鹿が倒れるーー!
 もっとも万寿はこれをやらせだと理解しているようで、おバカキャラとして描くつもりはない様子。
 現に曽我事件では、鎌倉に防衛の兵を派遣するなど名采配を披露した。
 金剛と万寿、いいコンビになりそうだ。

 一方、ドラマは頼朝亡き後のドラマにシフトチェンジしている様子。
 前述の頼朝の言葉がそうだし、万寿の描写もそう。
 実衣(宮澤エマ)も千幡(土橋蓮)擁立を考え始めた。
 そして次回は──
 範頼(迫田孝也)、ギラギラしていなくて、すごくいい人なんだけどなあ……。

 そして大姫(南紗良)。
 悲劇の姫君として描かれると思ったが、お笑いパートのオチ担当として描かれた。
「鵺(ぬえ)を射て来て下さいね」
「祟りを運んで来なければいいのですが」
 前々回おかしな呪文を唱えた大姫を笑っていいものか迷ったが、今回は完全にお笑い担当。
 政子(小池栄子)とのボケ・ツッコミも板について来た。
 一方でオカルトに走る闇や悲しさを秘めていて、これまた面白いキャラ描写だ。
 ちなみに演じている南紗良さん、『ドラゴン桜』でも思ったが、すこしメンヘラな雰囲気を持っているんですよね。
 南紗良さんには抑圧されたキャラがよく似合う。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「マイファミリー」真犯人を... | トップ | 円安加速で135円! 物価上昇... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
虚実の逆転と比奈 (TEPO)
2022-06-13 18:26:51
三谷さんは私のようなWikiずれした視聴者をも唸らせてくれます。
普通、「曾我事件」はあくまでも「敵討ち」が本質であり、その機に乗じて頼朝暗殺の陰謀もあったとする議論が学者たちの間にある、といったところが相場。しかし

>両者の思惑が一致して、今回の決着となった。

本作では、曾我兄弟の眼中に工藤祐経はなく、頼朝暗殺計画こそが事件の本質だったところを、「思惑が一致」した頼朝と義時が「敵討ち」物語を仕立て上げたとのこと。
今日「史実」とされているものが完全な「虚構」であったとする「大虚構」であり、「八重=泰時の母」の設定に匹敵するくらいの「大からくり」でした。
頼朝は浮気のために寝所を脱出していたために助かり、偶々脱出のための影武者役をつとめて討たれた祐経は曾我兄弟が北条を巻き込む口実としていた「仇」だったという展開は、やや「都合良すぎ」ですが、頼朝の「浮気(未遂)エピソード」を義時と比奈とが接近する機会としても活用したところが心憎い。

>「わたしはあなたが思っているよりずっと汚い」
これに続く台詞は「一族を守るためなら手立てを選ばぬ男です」

言うまでも無く、これは将来の比企一族討滅を予め宣言している伏線。
Wikiでは比奈(=「姫の前」)に対しては義時の方が積極的だったとされていますが、本作では真逆で「八重←義時」=「義時←比奈」。
問題の台詞の直後に、かつて義時が八重の心を掴んだ時とまったく同じ台詞を、義時に向けて比奈に言わせています。
たしかに「主役特権」ではあるのですが、「八重ロス」のさなかにある義時が比奈を受け入れてゆく上では不可欠の設定でしょう。
他方、比奈の側からすれば、こうしたやりとりは比企一族の娘である彼女の「悲劇性」―それがおそらく彼女のキャラとしての魅力となる―を暗示する伏線となります。
今回すでに「実直な範頼」を焚き付けているところから見ても、今後は比企能員が「諸悪の根源」として描かれてゆくことでしょう。

加えて今回は、動物の生態に精通しているなど、彼女の「賢さ」を示す描写もなされています。
「八重ロス」は、義時のみならず多くの視聴者にも言えることで、徐々にであってもこれを埋めるだけの魅力が比奈には求められますが、「いい感じ」のスタートかと思います。
返信する
深いですね (コウジ)
2022-06-14 09:10:58
TEPOさん

いつもありがとうございます。

「曽我事件」の三谷流解釈、上手いですね。
それがドラマになっているのもすごいです。
昔の歴史書って結構あっさりと書かれているんですよね。
だから行間をいかようにも読める。

>「一族を守るためなら手立てを選ばぬ男です」
この台詞には「後に北条は比企と戦う。その際に比奈は苦しむ」という意味も含まれていたんですね。
気がつきませんでした。
深いですね。
「政争の中で父を失う」という点で、比奈は八重とも重なって来ます。
これまた「大きなからくり」ですね。

今作の三谷幸喜さんの筆は冴えまくっていますよね。
返信する

コメントを投稿

大河ドラマ・時代劇」カテゴリの最新記事