平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

松本清張 「凶器」

2005年12月24日 | 短編小説
 松本清張の短編で「凶器」という作品がある。
 この作品は、殺害の凶器は何かということを突き詰めて書いた作品だ。
 (以下、ネタバレです)

 ある田舎の田んぼで藁が野積みされた場所で死体が発見される。
 被害者は猪野六右衛門。死因は「頭部に加わった外力よる脳膜外血腫にもとづく
脳の圧迫」「凶器の推定は攻撃面比較的平らなる鈍体」。
 状況証拠から六右衛門に言い寄られて悩んでいた斎藤島子という女性が容疑者に上がるが、凶器が見当たらない。
 正月、島子と子供たち、そして近所の人たちが餅を食べる中、警察は島子の家を調べ凶器を探すが、見つからない。

 三年後、刑事は正月を家で過ごしていると、凶器についてある考えが思い浮かぶ。
 餅だ。刑事は餅の固まりを足に落としてそのことに気づく。

 「凶器は餅」。このひとつのアイデアを使って、作者はひとつの小説を作り上げている。しかも凶器である餅を犯人は刑事の前で食べているというユーモア。シンプルだが、実に小気味いい作品だ。

★研究ポイント
 「張り込み」はある女の一瞬の心情。
 「凶器」は、「凶器が餅である」という1アイデア。
 これだけでも小説は構成できる。
 短編小説を書く上での定石のひとつとしてとらえておきたい作品。
 

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