平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第11回「とまどう心」~白居易の『長恨歌』に込めたまひろの想い。そして『源氏物語』へ。

2024年03月18日 | 大河ドラマ・時代劇
「ならば、どうすればいいのか!? どうすればいいのか、言ってみろ!
 勝手なことばかり言うな!」

 確かにな。
「遠い国」へ行くのもダメ。
「妾(しょう)」もダメ。
 道長(柄本佑)が怒るのも仕方がない。
 道長はまひろ(吉高由里子)といっしょになるために模索している。

 だが、これは身分が上の男側の論理。
 まひろは「北の方(正妻)」を望んでいる。
 道長に正妻がいるのを見ているのがつらい。
 今ふうに言えば「わたしが一番でなきゃイヤだ」という感じだろう。
 でも現実的には不可能なのだ。
 まひろもそれはわかっている。
 でも割り切れない。
 
 このふたりの恋はどこに行くのだろう?

 道長はこれでまひろを見限ってしまうのか?
 今回のラストで「父上、お願いがあります」と言ったが、兼家(段田安則)に何を頼むのか?
「藤原為時の姫、まひろと結婚させてください」と頼むのか?
 ドラマとしては、その方が盛り上がる。
 でも兼家はまひろのことを「虫けら」と呼ぶ男だからなあ……。

 一方、まひろ。
 まひろは家計のために『長恨歌』を筆写していた。
『長恨歌』~唐の玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋の詩だ。

「詞中有誓両心知」~言葉の中にふたりだけに分かる言葉があった
「七月七日長生殿」~七月七日、長生殿
「夜半無人私語時」~誰もいない夜中、親しく語った時の言葉である
「在天願作比翼鳥」~天にあっては、願わくは比翼の鳥となり
「在地願為連理枝」~地にあっては、願わくは連理の枝となりたい

 玄宗と楊貴妃は結局、添い遂げることができなかった。
 まひろは「長生殿で愛を語り合った玄宗と楊貴妃」を「廃屋で愛を語り合った自分と道長」に
 重ね合わせていたのだろう。
 そして、おそらくまひろは気づく。
・物語の世界は慰めを与えてくれる。
・物語の世界なら男女は自由に恋愛できる。

『源氏物語』の桐壺帝と桐壺更衣のエピソードは、道長とまひろの関係に似ている。
 桐壺帝は身分の低い桐壺更衣を愛した。
 だが、桐壺更衣は他の妃たちの嫉妬や嫌がらせで死んでしまう。
 その桐壺更衣が産んだのが、光源氏だ。
 やがて光源氏は母とそっくりの藤壺に熱愛する。
 しかし藤壺は帝の寵愛を受けていて手を出すことができない。
 光源氏は藤壺を求めて、女性遍歴を重ねていく。

・桐壺帝 =道長
・桐壺更衣=まひろ
・光源氏 =道長
・藤壺  =まひろ

 ドラマと『源氏物語』がリンクして来ましたね。
 道長とまひろの悲恋は、桐壺帝が桐壺更衣を愛した悲恋と同じ。
 道長がまひろを求めて追いかける姿は、光源氏が藤壺を求める姿と同じ。

 光源氏に藤壺を追いかけさせる設定を作ったまひろは少し意地悪だ。笑
 ………………………………………………………

 その他のことでは──

・一条天皇、七歳で即位
・高御座に生首
・花山院の呪詛
 外れた数珠が北斗七星の形、一条天皇の即位のお召し物にも北斗七星。
・兼家、摂政に。道隆(井浦新)、道兼(玉置玲央)も出世
・詮子(吉田羊)国母に
・欲のない、かわいい道綱(上地雄輔)
・道隆の子、伊周(三浦翔平)登場~公の場で父の悪口
・道兼を上手く丸め込む兼家の腹黒
・まひろの父、為時(岸谷五朗)の式部丞・失職
・まひろ、摂政・兼家に直談判←「お前、すごいな」by宣孝(佐々木蔵之介)
・宣孝、まひろの結婚相手を探す宣言。「容姿もまあまあ」と、まひろをさりげなくdisる。
・いざとなると、京風を捨ててはっきり物を言う倫子さま(黒木華)
「それはむずかしいわ」「おやめなさい!」
・倫子さま、想い人がいる宣言。欲しいものは勝ち取る宣言←実は肉食系!

 実に内容が濃い。


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始まった「不遇の雌伏期」 (TEPO)
2024-03-18 23:58:04
やはりやってきた「不遇の雌伏期」。
まひろは無論のこと、道長も不遇とまでは言わぬものの栄華は父と兄たちのもので、精々「高御座生首事件」の処理で少し認められるくらいのところ。

>「藤原為時の姫、まひろと結婚させてください」と頼むのか?
私はそうだと予想します。
無論「虫けら」が相手と聞いた兼家に「何を血迷ったか」と一喝されて瞬殺でしょう。
>倫子さま、想い人がいる宣言
この段階で相手の名前は言わぬものの爆弾の予感。
まひろにとって唯一頼れる人―今回もまひろのことをそれなりに親身になって心配してくれている―との間の三角関係が露呈したときにはどうなるのか。

「辛い場面」嫌いの息子の父親である私―こう言うと因果関係が逆だと娘にツッコまれましたが―としては、目の前の回も辛い上に、さらに辛い展開への暗示だらけとなると少し気が萎えてしまいます。
せめて何か明るい材料―「希望」―が欲しいところです。

>そして、おそらくまひろは気づく。物語の世界は慰めを与えてくれる。
やはりそこなのでしょうね。
辛い現在の状況は「芸の肥やし」ならぬ「物語の肥やし」ということなのでしょうね。
コウジさんによる「長恨歌」についての掘り下げ、そして「源氏物語」とまひろ・道長の関係についてのリンクについてのご指摘、流石です!
「源氏物語」には貴族としてほぼ理想的な生涯を送った「光源氏」に代表される「光」の部分と対比される形での「影」の部分があることでしょう。
その「影」については当然紫式部(まひろ)の実体験によって裏打ちされている部分が多々ある筈。

ところで「写本制作」は教養ある人間にはうってつけの内職ですね。
またまた韓流史劇ですが、「百日の朗君様」という作品では庶民として暮らしていた記憶喪失の世子(ヒーロー)がこの仕事で稼いでいました。
まひろと道長が駆け落ちしたとしても、この仕事があれば「魚を捕り、木を切り、畑を耕す」のでなくてもなんとかやって行けたのではないか、と思ってしまいました。
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爆弾を仕込むのが上手い (コウジ)
2024-03-19 08:48:54
TEPOさん

いつもありがとうございます。

この作品、爆弾を仕込むのが上手いですよね。
倫子さまの件、しかり。
道兼の不満しかり。
詮子はいつ牙を剥くかわかりませんし、兼家は呪詛されそう。
これらの爆弾はいつ破裂するのでしょう。

TEPOさんの予想では、道長は兼家にまひろのことを告げるんですね。
結果、兼家はまひろのことをより認知する。
それがどんな反応となって現われるのか?
「遊びにしておけ」くらいで留めるのか?
まひろを遠ざけようと画策するのか?

>「影」の部分があることでしょう。
今作がきっかけで『源氏物語』のことを少し学びましたが、『源氏物語』には影の部分が結構あるんですよね。
>実体験によって裏打ちされている部分
おっしゃるとおり、まひろが見聞きしたことがそのまま『源氏物語』に反映されそうです。
今後は『源氏物語』との関係の考察をする視聴者が出て来ることでしょうね。

希望の部分。
乙丸と百舌彦、実資、道綱、弟の惟規あたりの、ワンポイント・コメディシーンでしょうか。
宣孝様もいい味を出していますよね。

>なんとかやって行けたのではないか、と思ってしまいました。
確かにこのふたり、生活力がありそうですね。
まひろは畑仕事も厭わないようですし、道長が弓の名手のようなので狩りで食べていけそうです。
あの時、遠い国へ逃げていたら……。
そんな思いをまひろは時々、抱くのかもしれません。
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