平成エンタメ研究所

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「べらぼう」 第3回「千客万来『一目千本』」~重三郎、出版プロデューサー・プロモーターになる!

2025年01月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 重三郎(横浜流星)は出版プロデューサーでありプロモーターだ。

 本を出版するために資金を募る。
 今で言うと「ファンド」「クラウドファンディング」
 ちなみにこうして出す本を「入銀本」というらしい。
 出資者は花魁の贔屓客。
 推しの花魁を本に載せるためにお金を出す。
 今で言うと「推し活」あるいは「ホストクラブ」「クラブ」のシステム。
 資金に関して重三郎はノーリスクだ。

 それから出版企画。
 絵師を選び、本のコンセプトをつくる。
 重三郎は花魁を花や草木に見立てて紹介した。

「女郎花(おみなえし)」「蒲公英(たんぽぽ)」「山葵(わさび)」「葛(くず)」「鳥兜(とりかぶと)」
 これで花魁の性根を表現した。
 山葵はツンとして愛想がないから←なるほど!
 葛はほんとうにキズだから。笑
 鳥兜は必ず腹上死するから←恐ろしい
 花の井(小芝風花)は女郎花←女郎の代表ってことか。
 こういう本を「粋」「面白い」と考える江戸の人々の感性が素晴しい。

 さて、こうして生まれた本が『一目千本』
 重三郎はこの本を売って儲けようとは考えなかった。
 出資者に本を渡すと、残りの本を見本として男が行きそうな場所に配布した。
 今で言うと「サンプルプロモーション」だ。
 この本を手に入れる方法は「吉原に来て馴染みになること」と宣伝。
 男たちは、見立てられた花魁への興味と本を求めて吉原へ。
 結果、吉原は昔の活気を取り戻した。
 プロモーション成功だ。

 この成功は、重三郎のやることに否定的だった養父の駿河屋市右衛門(高橋克実)を認めさせた。
 重三郎は市右衛門に「これからも吉原のためにしっかりやれ」と励まされた。

 江戸城パートでは、田安賢丸(寺田心)の養子縁組をめぐって
 田沼意次(渡辺謙)と老中・首座の松平武元(石坂浩二)の対立が激化。
 経済重視の意次は秩父の鉄の採掘に乗り出した。
 重三郎の名前も源内(安田顕)が贈った『吉原再見』で思い出した。
 ……………………………………………

 吉原パート。
 ストーリーラインとしてはシンプルなサクセスストーリーでわかりやすい。
「こんな吉原良かないんで」
「親父様の機嫌より河岸(かし)が飯を食える方が大事なんで」
「忘八なら損得で動け」
 みたいな台詞がいい。

 長谷川平蔵宣以(中村隼人)は花の井のために五十両を出資して親の財産を食いつぶした。
 現代から見ると、ホストに入れあげて借金地獄に陥った女性を想起させてイメージが悪いが、
 宵越しのカネは持たない江戸っ子の粋と捉えたい。
 結果として平蔵の五十両が吉原を救ったことになったし、平蔵もサバサバしているだろう。

 ただ、この作品、こういう危うさを持っている。
 前回の源内の序文は「吉原を美化している」「公共放送がこんな描写をしていいのか」という批判がフェミ界隈からあがった。
 でも吉原の悲惨は今回も描かれたし、重三郎はそれを何とかするために戦っているわけだし、
 当時の人にしてみれば岡場所はあって当然の場所だったし、吉原文化も生まれたわけだし、
 現代の価値観で断罪してしまうのはどうなんだろう?
 表現が萎縮して作品がどんどんつまらなくなってしまうと思う。


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4 コメント

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確かに (コウジ)
2025-01-23 08:57:37
2020-08-15 21:49さん

いつもありがとうございます。

「グローバルエディション」を出すんですか。
これが影響しているのかもしれませんね。
「Shogun」を評価した海外ユーザーが今作をどう評価するかはわかりませんが。

横長・極太明朝体のフォントは今までにない新しさと捉えていましたが、文字が自己主張し過ぎな気もします。
意図としては「出版もの=本でよく用いられている明朝体を使おう」といった感じでしょうか。
返信する
少年ジャンプ式 (2020-08-15 21:49)
2025-01-22 22:47:31
>もう少し話に複雑さがあってもいい気もします。

それです。おっしゃるとおり少年ジャンプ式です。今後もツタジューが「当たり前田のクラッカー」と大見得切って走り回ると問題が解決するような路線だったら、受信料返せです(笑)。
その前兆らしきものはもうすでに出ていまして、今作は音楽が浮いてます。スターウォーズ風で、アメリカ式キラキラ金管のジョン・ウィリアム系オーケストレーションで、ひょっとしたら生オケではなくて、EastWestあたりのシンセ音源でも使ってません?という感じなんですね。正直映像と合ってません。
どうもヘンだと思ったら、今作は海外向けに「グローバルエディション」を出す予定があるようです。とはいっても、Hollywoodスタイルのサウンドならグローバル的に受けると単純に思うのは危険だと思います。真田広之のショーグンも、ハリウッド式ではないからこそ受けたわけなので、もう少し考えてみては、といいたくなります。

あと、OPクレジットのフォントが気になって仕方ありません。エヴァンゲリオンみたいな太いウエイトの明朝で、しかも横長幅広にわざと引き延ばしてある感じですね。
日本語のフォントって、正方形かわずかに縦長のデザインが普通で、デザイナーもその状態できれいに見えるようにデザインしているものです。
確かに今どきはイラレでも何でも、ソフト的に文字を変形させるのはお手軽にできますが、あのフォントはいただけません。なんでまたこんな横長おデブなフォントにしたのか、不思議です。

まあ、もうちょっと見てみますけどね…
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敵を倒し仲間が増えていく少年ジャンプ形式? (コウジ)
2025-01-20 22:26:29
TEPOさん

いつもありがとうございます。
重三郎の成功体験回でしたね。
花魁の紹介のシーンなどテンポが良くて楽しい回でした。
養父・駿河屋市右衛門は応援する側になりましたし、次回の敵は鱗形屋孫兵衛。
こんな形で次から次へと現れる敵を懐柔していくという形になるのでしょうか。
となると、強敵を倒していって仲間になっていく少年ジャンプ方式?
もう少し話に複雑さがあってもいい気もします。
そう言えば予告では花の井が「そんなに花魁を利用するな」と釘を刺していましたね。

一年間を通して予想される展開は、重三郎が率いる吉原と江戸の庶民が、さまざまな禁止をして来るお上と戦うという展開?

「忘八」に関するエピソードや台詞は引っかかりがあって面白いですね。
情に流されない生き様としての忘八。
すごく魅力的ですね。

賢丸が白川藩の養子となることは、おっしゃるとおり「左遷」なんでしょうね。
江戸城パートはドロドロで、吉原パートは粋でサッパリみたいな図式なのでしょうか。
返信する
重三郎の初成功体験 (TEPO)
2025-01-20 16:39:27
前回の「吉原細見」は必ずしも吉原の活気に結びつかなかったので、今回が重三郎最初の成功体験と言えるでしょう。
>重三郎は花魁を花や草木に見立てて紹介した。
『一目千本』は実在する本でしょうから、このアイデアは史実の重三郎のものなのでしょうね。
北尾重政が言うとおり、どれほど描き分けが上手な絵師であっても「美人画」は似たり寄ったりになってしまうので、この方が花魁の個性を示せるのでしょう。

ここにいたるまでの重三郎の行動原理は、一貫して「吉原のため」、さらに限定して言えば「河岸見世の人たちのため」ということであり、初回の「朝顔姐さんの悲惨な最期」のインパクトがずっと生きてきています。
印象的なのは重三郎の「何かすげえ楽しかったなあ」という感慨。
河岸見世の人たちとの連帯・全面協力もあったでしょうが、重三郎の「天職開眼」といったところでしょうか。

意地を張る養父駿河屋市右衛門に対する扇屋宇右衛門の言葉は味わい深いと思います。
「忘八なら忘八らしく、ひとつ損得ずくで頼むわ。なあ」
「損得ずくに徹する」という「忘八の行動原理」に照らせば、市右衛門はむしろ「私情にかれられている」との指摘。
たしかに、入銀本の企画を持ち込んだ際の忘八旦那衆の反応は、自分たちの負担なく利益の可能性のみがある企画に乗り気で、反対は市右衛門のみ。
公式HPの人物紹介によれば、扇屋宇右衛門は「和歌、俳句、画に通じた教養人」とのことで、なかなか深みのある人物のよう。

>田安賢丸の養子縁組をめぐって田沼意次と老中・首座の松平武元の対立
賢丸が白川藩の養子となることは「左遷」なのか「栄転」なのか。
「御三卿」は血統を絶やさないための「保険」のような家で、皇室にとっての「宮家」のようなもの。
たしかに意次が言うように「生涯部屋住みで朽ち果てる」可能性もありますが、譜代大名家の養子になることはいわば「臣籍降下」なのでやはり「左遷」でしょう。
「大奥」でも、定信は自分が田沼派に追い落とされたと見ていました。

ところで、今回の「明るい光」に対して「暗い情念」の暗示も。
これまで重三郎がボランティア的な協力者だった限りでは好意的だった鱗形屋孫兵衛。
独立した出版事業で成功した重三郎を面白く思っていない様子。
「競争相手」と認識しはじめたのでしょう。
そして、曲者・一橋治済も暗躍しそうな雰囲気。
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