平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

アメリカにも中国にも与さないASEANのしたたかな外交姿勢~Don’t make us choose(わたしたちに選択させるな)

2024年05月10日 | 事件・出来事
 Don’t make us choose(わたしたちに選択させるな)

 米中対立におけるASEAN(東南アジア諸国連合)の姿勢である。
 つまり
「米国か、中国か、の選択させるな」
「われわれは米国・中国のどちらにも与しない」
「米中の争いにわれわれを巻き込むな」
 という姿勢である。

 たとえばシンガポール リー・シェンロン首相
「アジア諸国は、アメリカはアジア地域に死活的に重要な利害を有する『レジデントパワー』だと
 考えている。
 だが、中国は目の前に位置する大国だ。
 アジア諸国は、米中のいずれか一つを選ぶという選択を迫られることを望んでいない」

 一方、日本の姿勢はどうか?

 岸田首相はアメリカの議会で演説して、
「『自由と民主主義』という名の宇宙船で、日本は米国の仲間の船員であることを誇りに思います。
 共にデッキに立ち、任務に従事し、そして、成すべきことをする、その準備はできています。
 世界中の民主主義国は、総力を挙げて取り組まなければなりません。
 皆様、日本は既に、米国と肩を組んで共に立ち上がっています。
 米国は独りではありません。日本は米国と共にあります』

 アメリカについていきますよ!
 アメリカと共に戦いますよ!

 岸田首相はさらに『地政学的な条件を越えたパートナーシップ』を雄弁に語る。
「日本はこれからもウクライナと共にあります」
「日本は、地球の裏側にあるNATOとも協力しているのです」
「日本はかつて米国の地域パートナーでしたが、今やグローバルなパートナーとなったのです」
「今日、両国のパートナーシップは二国間にとどまりません。
 例えば、米国、日本、韓国、豪州、インド、フィリピンによる三か国間や四か国間の協力、
 さらにはG7を通じた協力や、ASEAN(東南アジア諸国連合)との協力が挙げられます。
 このような様々な取組から、多層的な地域枠組みが生まれ、
 日米同盟はその力を増強させる役割を果たしています。
 そして、同志国と共に『自由で開かれたインド太平洋』の実現を目指しています」

 前のめりだな~。
 危ういな~。
 先程書いたが、ASEANやインドはアメリカ側にはいないぞ。あくまで中立だ。
 韓国も中国との経済的な関係は切れないと言っている。それは日本も同じ。
 NATOのフランスも先日習近平がやって来て大歓迎した。岸田首相も訪仏したが、待遇は下。 

 つーか、日本はすでに少子高齢化、国際競争力低下など、さまざまな問題を抱えた衰退国だ。
『地政学的な条件を越えたパートナーシップ』なんかをやっている余裕はないと思うのだが…。
 この点、岸田文雄って人はわかっていないんだよな。
 はやく辞めてほしい。

 Don’t make us choose(わたしたちに選択させるな)

 今こそ、ASEAN諸国のこの姿勢から学ぶべきではないのか?
 アメリカと中国、あるいはロシアを天秤にかけて利益を得る、したたかな外交をやったらどうか?
 ていうか、他の国はそれをやっているんだけど…。


※関連サイト
 米国連邦議会上下両院合同会議における岸田内閣総理大臣演説(首相官邸HP)

※参考
 その他のASEAN首脳の言葉。
 
 マレーシアのマハティール元首相
「ASEAN各国は、アメリカと中国の対立で、どちらかにつくことはしない。
 両国とも良い関係を維持したい」

 フィリピン ドゥテルテ元大統領
「我々は中国を打ち負かすことはできない」→だから中国と交渉を続ける方が賢明。

 フィリピン ロレンザーナ国防相
「私が心配しているのは、(アメリカの)保証がないことではない。
 我々が求めても欲してもいない戦争に巻き込まれることだ」


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6 コメント

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わたしたちに選択を迫るな! (2020-08-15 21:07:49)
2024-05-11 22:03:40
おっしゃるとおり、ASEANの外交姿勢は大したものだと思います。経済的な伸長とともに存在感を増しています。

ASEANを見ていてスゴいと思うのは、それぞれの国々の歴史や文化の背景が異なっているのに、適度にまとまっていて、続いていることです。
だいたい、歴史の上では「隣国どうしは仲が悪い」という法則があるわけですが、最近は変わっています。
EUは「フランスとドイツ」という、けっこう仲が悪い国が主軸になっているわけですが、続いています。ASEANも「もと共産国」であるベトナムやカンボジアを迎え入れて、もとから資本主義国だったその他の加盟国とそれなりに続いています。しかもベトナム共産党とカンボジア共産党(クメール・ルージュ)は仲が悪く、戦争になったこともありました。
そういった「隣国は仲が悪い」の法則を乗り越える例が、このところ見られるようになっています。
大げさな言い方かもしれませんが「人類の進化の新たなステージ?」かもしれません。

それを考えると、日本の自称愛国的な皆さんが、「韓国ガ~悪い~、中国ガ~悪い~」と隣近所の悪口ばかり叫んでいるのは、もう時代遅れなのかもしれません。
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経済>戦争 (コウジ)
2024-05-12 08:20:58
2020-08-15 21:07:49さん

いつもありがとうございます。

ASEAN諸国は、争って領土や資源の奪い合いをするより「経済発展」の方が重要なんですよね。
「戦争」をしてもマイナスでしかない。
それよりも中国を含めて投資をしてもらい、自国を富ませた方がはるかに意味がある。

とはいえ、昨日のTBS『報道特集』に拠ると、フィリピンの現大統領は、中国の南沙諸島進出で反中国の人物であるようですが……。

ウクライナ、中東、これらに続いてアジアまで紛争が起これば、世界は大変なことになりますね。
まあ、大きな痛みを経験しなければ、人類は「人類の進化の新たなステージ」に進めないのかもしれませんが……。
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エンタメさん (象が転んだ)
2024-05-12 14:01:37
岸田首相はこんな事を真顔で言ってたんですね。これじゃ、国家の主、いや日本人として情けないし、悲しすぎる。
こういうのを”先鋭化”と呼ぶのかもですが、戦時の旧日本軍と同じですよね。

ロシアーウクライナ戦争がどんな結果になるか不透明ですが、ウクライナが西側を選択した事が間違いであった事が証明されれば、”Don’t make us choose”は現実のものとなりますね。
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どちらかを選ぶということ (コウジ)
2024-05-13 09:28:10
象が転んださん

いつもありがとうございます。

前のめりですよね。
いくら集団的自衛権が一部認められたとはいえ、現状では憲法の制約があってアメリカと共に戦うのは難しいのに、こんな発言をしたら「嘘つき」と言われてしまいそうです。

>ウクライナが西側を選択
どちらかの陣営に入るというのはリスクを伴うんですよね。
おそらくロシアからは仮想敵と見なされているでしょう。
いざとなれば「アイヌ民族の解放」という大義名分で北海道に攻め込まれるかもしれません。

一方、どっちつかずの八方美人はどこからも信用されないというリスクがある。
そこで大切なのは、そのさじ加減。
政治や外交に正解はありませんが、したたかさは持ってほしいですよね。
フランスは習近平を歓待し、プーチンの大統領就任式に参加しましたね。
したたかな外交だと思います。
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Unknown (2020-08-15 21:07:49)
2024-05-13 19:34:25
>>ウクライナが西側を選択
>どちらかの陣営に入るというのはリスクを伴うんですよね。
>おそらくロシアからは仮想敵と見なされているでしょう。

ロシアとウクライナの戦争は、西側対東側といった冷戦の枠組みで考えると、見えなくなるものがあります。

意外に思えるかもしれませんが、歴史的にロシアの源流はウクライナです。
キーウ(キエフ)の歴史はモスクワよりも古く、キエフ・ルーシー(キエフ大公国)がまずウクライナ地域にできて、その分家的な存在がモスクワ公国という形でした。
そしてその後キエフ大公国はモンゴル帝国に滅ぼされますが、滅亡を免れたモスクワ公国は、モンゴル帝国崩壊後にロシア帝国に発展し、ウクライナはそのロシア帝国に飲み込まれます。本家と分家の逆転が起きるんですね。

ロシア帝国の支配は続き、ウクライナ民族やキエフ大公国の歴史は、ロシアの中では徐々に軽い扱いになっていきます。昔からロシア帝国内部の一地方(小ロシア)だったかのようになったわけです。
日本に例えればどうでしょうか。東京人が「京都が日本の首都だった歴史」をうやむやにしたとしたら、京都民はおそらく東京人を恨むでしょう。

ただ、ロシア中心の大ロシア主義からすれば、ウクライナなどロシアの一地方でしかありません。
となると、ロシアの怒りも見えてきます。独立国ですらない小ロシアの連中を焚きつける憎き西側連中という見方です。
ただ、こういったロシア独特の正義は、対外的には通用しません。

ここで思うんです。
大東亜共栄圏を唱えながら、西洋の植民地主義のマネをした「大日本帝国」の正義が、外には通用しなかったことと、形としてはかなり似ています。
そして、今回はおそらく軍事的にはロシアが勝利するでしょう。
そうなると、大日本帝国に郷愁を覚える愛国的な皆さんは、同じように「国内でしか通用しない正義」を貫いたロシアに共感して接近するのではないかと…

あ、すみません、また日露同盟の話になっちゃいますね(笑)。
返信する
歴史的な視点と現在の視点 (コウジ)
2024-05-14 08:29:28
2020-08-15 21:07:49さん

この件は以前も話をしましたよね。
おっしゃるとおり、大ロシア主義という「歴史的な背景」もあれば、西側からの圧迫という「現在の政治的な背景」もあるということではないでしょうか?

日本の太平洋戦争も「大東亜共栄圏」という理由と共に、「資源の確保」「満州の権益を認められなかった」という昭和16年の政治的・経済的な背景がありました。
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