平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

西郷どん 第7話 「背中の母」~たくましくて、やさしい息子の背中で、満足して息を引き取る母・満佐

2018年02月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 吉之助(鈴木亮平)に背負われ、桜島を見ながら息を引き取る母・満佐(松坂慶子)。
 満佐は、吉之助が〝たくましくて、やさしい人間〟に育ってくれたことがうれしくてしょうがないようだ。
 満足し、喜びの中で亡くなる。

 死は怖くて孤独なものだけど、満佐の場合はそんなこと全然なかったんだろうなぁ。
 何しろ息子の大きくて温かい背中で死ねたのだから。

 一方、こんなことも考えてしまった。
 このシーンの中に、満佐と吉兵衛夫婦が生まれたばかりの吉之助を抱いて桜島を見る回想シーンがある。
 ここで吉之助を抱いているのは、吉兵衛でなくて満佐の方が良かった気がする。
・生まれたばかりの息子を抱く母親
・死にゆく母親を抱く息子
 今まで母親に抱かれていた子供が成長して母親を背負うようになる。
 この立場の逆転の方が、もっと胸に迫るものがある。
 ………………

 作劇は相変わらずの安定ですね。
 さすがベテラン脚本家の中園ミホさん。

・祖父・龍右衛門(大村崑)の死は、ほとんど〝ナレ死〟で、あっさり。
・父・吉兵衛(風間杜夫)の死は突然死でびっくり。
・母・満佐はじっくり。

 しっかりメリハリをつけている。

 吉兵衛の死は心憎い捻り方ですね。
 満佐の死は、血を吐く前振りなどがあるので、視聴者はしっかり予想している。
 だが吉兵衛の突然死は──
 完全に意表を突かれた感じだ。
 おまけに、死の前日、吉兵衛は嫁いだ嫁・須賀(橋本愛)に「夫婦とは何か」を説く。
 これが満佐への間接的な愛情表現、感謝の言葉になっている。
 上手いですね。
 これを満佐に直接語っていたらストレート過ぎて少々興ざめになってしまう。

 吉之助が〝江戸行きをしなかった理由〟も〝母親の死〟とリンクしていて、作劇がスムーズ。

 巧みなストーリーテラーですね、中園ミホさんは。

 逆に破綻がない分、面白みがイマイチという面もあるのですが……。
 物語に〝破綻〟や〝言葉足らず〟があれば、その行間を埋めるべく、視聴者はいろいろ考える。
 だが、この作品はそれをする必要がない。
 ………………

 そんな中、須賀は面白いキャラですね。

・笑わない愛想のない嫁
・満佐のウナギを平気で食べてしまう嫁
・吉之助が味噌をつくるのが上手いのなら吉之助がつくればいいと語る嫁
・呪いを解くために人形を埋めろ、と主張する嫁。

 予定調和の物語の中に紛れ込んだ異分子。

 さて次回、中園ミホさんはこの異分子をどう料理するのか?


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 内閣府が作成した「クールジ... | トップ | データねつ造?~裁量労働制... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
幸福な死 (TEPO)
2018-02-19 15:42:17
キャラとしての吉之助にとっては、今回の話は短期間に大切な肉親を立て続け三人も失うという「辛い」回の筈なのですが、視聴者にとってはさほど暗くなっていません。
それはおそらく三人の死が―特に我々現代人から見て―羨ましいような「幸福な死」だったからだと思います。

母・満佐についてはコウジさんがお書きになっているとおり。

父・吉兵衛については、現代人の念願と言われる「ピンピンコロリ」。
しかも、おっしゃるとおり須賀にこと寄せて江戸時代の武士がここまで言うかと思うほどに満佐への愛情を語って最高の機嫌になった上での死。

祖父・龍右衛門については「天寿を全うしての大往生」という定型理解があるので、「〝ナレ死〟で、あっさり」で十分と見たのでしょう。

またおっしゃるとおり、素人でも予想できる「ベタ」な部分だけではなく、前回の「入牢=万次郎の真意を探る密命」や今回の「吉兵衛が先」のような「捻り」があるので結構楽しめます。

>さて次回、中園ミホさんはこの異分子をどう料理するのか?

公式HPによれば須賀(おそらく史実で)は
>西郷との夫婦生活は大変短く、やがて離縁することとなる。
>なぜ離縁することになったのか、その真相は良く分からない。
とのことですが、本作はその彼女との経緯を「愛の物語」として描くそうです。

吉之助は、今後斉彬(と篤姫)による抜擢によって一時順風が吹くのですが、やがて客観的には逆境と言うべき時期がおとずれます。
しかし、本作の雰囲気から見ると「逆境」の時も基調は明るく、見るのが辛くはならないような気がします。
おそらく、吉之助は順境にあっても逆境にあっても常に周囲に優しい男であり続け、ひたすら「もてまくる」というコンセプトではないかと想像します。
返信する
Unknown (ロギー)
2018-02-19 19:09:35
祖父と両親の病没は吉之助たち家族には辛い一年でしたけれど。
同時に西郷吉之助にとって貧しいですが、穏やかな時代が終わり暗示されてるんでしょうね。
母上を背負って桜島をみせてるシーンは吉之助が巣立つ瞬間だったと思います。

不謹慎かもしれませんが、吉之助の両親は良い時期にあの世に行けた気がします。
この後の幕末から西南戦争まで薩摩が受ける難局は途方もない物ですからね(もしも、西南戦争前までに西郷の父上と母上が生きてたら、息子の苦悩はみてられないはずです)

返信する
マイナスの情念 (コウジ)
2018-02-20 09:21:25
TEPOさん

いつもありがとうございます。

吉兵衛は「愛情を語って最高の機嫌になった上での死」
龍右衛門は「天寿を全うしての大往生」
確かに現代人からすれば、幸福な死ですよね。
・孤独死
・薬漬けで、管をつけられての延命→死
現代の死はつらい……。

毎回、仕掛けられている〝捻り〟は作品の単調さにスパイスを与えていますよね。
これがなければ、本当に定石どおりのストーリー展開になってしまう。

凡庸な作家なら、吉兵衛の死も描き込みたい衝動に駆られる所ですが、この作品ではサプライズというスパイスを加えて簡単に。
中園ミホさんは何を描くべきなのかがはっきりわかっているんでしょうね。

須賀との離婚は「愛の物語」として描かれるんですね。
となると、おっしゃるとおり、逆境と言うべき時期(=「篤姫」の時のうろ覚えですが、島流し?)も明るく描かれそうですね。

これは、最近の幕末物『花燃ゆ』『八重の桜』に対するアンチを意図しているのかもしれません。
両作品とも本当に暗かった。
作品としては『篤姫』寄り。
今の時代に、マイナスの情念はあまり見たくないので、この方向性は正解なのかもしれません。
返信する
明るい人物 (コウジ)
2018-02-20 09:34:41
ロギーさん

いつもありがとうございます。

これから始まる激動と苦難の時代。

TEPOさんへのレスでも書きましたが、今作は〝明るさ〟〝前向き〟を志向しているようなので、これらがどう描かれるか、楽しみです。
あるいは、史実をなぞって暗い作品になってしまうのか?

吉兵衛は、風間杜夫さんの演技もあって、作品に明るさを与えていましたが、その死で明るい人物がひとり退場してしまいました。
さて、吉兵衛に代わる明るい人物は出てくるのか?
妻の須賀さんは、天然ボケキャラでそうなる可能性が高そうですが……。
返信する

コメントを投稿

大河ドラマ・時代劇」カテゴリの最新記事