日本企業は不況期、4か月分ある賞与の1か月から4か月分の削減、賃金のゼロ%上昇や切り下げ、経費の削減などで一定期間を耐え忍びます。その結果、1990年のバブル崩壊のあとは、賃金が下がり始め何と20年間で20%も世帯所得が減少してしまったのです。その間に中国では世帯所得が10倍近く上がったのではないでしょうか?いずれにしても、世界に取り残されてしまった。失われた20年のきっかけは政治の停滞です。『河野洋平氏が述べられているように、今日の日本の政治の劣化や信用低下の背景には、明らかに小選挙区制の問題が大きく横たわっています。選挙制度が変わって小選挙区制が導入されなければ、日本の政治はこれほどに劣化せず、信用を失うこともなかった。』政治家が小選挙区導入により、国民生活向上を考えず、自分たちが生き残ることを優先した結果、日本国民の所得は20年で大きく減少してしまった。憲法改正の前に小選挙区廃止が先かもしれません。
以下抜粋コピー
わが国の世帯所得(子供あり世帯)では、1995年が781万円、2015年が707万円です。20年間で119万円減(9%)という、世界でも例を見ない異常事態を示しています。
子供のいる世帯、いない家庭、高齢者、単身を含む全世帯(5,300万世帯)では、同期間の平均所得は20%も減っています。賃金を含む賃金の低下と、非正規雇用率の増加を示すのが、この世帯所得です。
失業率を見ても日本の経済状況はわからない
米国では、「失業率」が直接に景気を反映します。しかし、日本ではそうではありません。日本の失業率はむしろ、産業が賃金あたりの生産性を高める策を取っていること、海外投資の増加、非正規雇用への切り替えなどを示すことが多いです。
つまり、日本の経済状況を把握したい場合、世帯所得の増減を見なければならないのです。
ここに示した、「雇用文化の違い」「正規雇用と非正規雇用の時間当たり賃金の違い(賞与を入れると、1/2から1/3)」という前提を無視したエコノミストやリフレ派の「単純な失業率比較」は困ったものです。
正規雇用の減少、非正規雇用の増加を見るべき
日本では、正規雇用の減少および非正規雇用の増加(振り替わり)が、世帯所得の面で米国の失業率の増加に相当するものです。
失業率が下がって、景気回復の実感があるかないかという抽象的な論議になるのは、厚労省がこの2つの要素を景気指標に入れていないからです。
リストラと復職がある米国では、「失業率の増加=不況と世帯所得の減少」であり、「失業率の低下=好況と世帯所得の増加」です。
日本では、この「=」に長い猶予の時間があって、長期で平準化されています。
<日本の正規雇用と非正規雇用 ※個人事業は除く>
1994年 2017年 増減数 増減率
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・正規雇用 3808万人 3473万人 -335万人 -9%
・非正規雇用 974万人 2034万人 +1060万人 +109%
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4782万人 5505万人 725万人 +15%
(1)上場の大手企業(約3,000社)で2%弱/年のベースアップがある正規雇用は、23年間で335万人減っています。
(2)他方、勤務の年数や技術の習熟による加算給はほとんどなく、低い時間給が続く非正規雇用(50代でも1,270円/1時間)は、974万人から2,034万人へと倍増しています。
以上が、世帯所得平均(夫婦2人)を減らしたのです。世帯所得こそが、景気を左右するものです。
なぜ、好況なのに「景気回復の実感がない」は起こる?
「景気回復の実感がない」と言われてすれ違いの議論が起こる理由は、
- 50%の円安(50%のドル高)により、輸出と海外生産の企業利益が増えたにもかかわらず
- 平均的な世帯所得が減った
ためです。
日本で両者に(米国では少ない)乖離が起こるのは、雇用文化の面で、正規雇用と非正規が「同一労働・同一賃金(=時間給)」ではないからです。特に賞与を含むと、時間換算給の差は、2倍から3倍に拡大します。
米国の雇用文化と雇用契約の中では、同一労働の場合、非正規と正規雇用の時間換算給による差はごく少なくなっています。季節的な短期雇用のパートの時間賃金が低いだけです。このため、米欧での非正規・正規の全体での時間換算給の格差は、10%以下しかないのです。これは欧州でも同じです(※その代わりに、経営者層と一般労働階級には、大きな報酬格差があります。とりわけ、1990年からの経済の金融化で増えた金融業では「病的」と言える100倍以上の格差です)。
今国会では、「働き方改革法」の中の「同一労働・同一賃金」を義務付ける法は、成立する予定です。パート労働比率が80%と高くて正社員がとても少ない「小売り・サービス業」にとっては、これから5年の経営の根幹を左右する問題になっていくでしょう。吉田繁治 氏