年金の繰り下げ申請をすれば、額面では42%(年間約89万円)割増しされ、70歳から安泰。年金額は65歳で受給していれば年間211万円(月額約17万5000円)の計算だったが、5年間受給を遅らせたため約300万円(月額約25万円)に増える。そんな甘い老後設計に警笛です。現実は厳しい❝65歳から年金(211万円)を受給していた場合、住民税と所得税はいずれもゼロ。そのうえ、年金から天引きされる社会保険料(国民健康保険税と介護保険料)もはるかに少なくて済んでいたのだ。繰り下げ受給を選んだことで、なんと税金と保険料を合わせて年間約52万円も徴収され、負担が33万円も増えていたのである。❞額面42%の繰り下げ支給は実際の手取りは26%(年間約50万円)しか増えていないという驚愕の事実。年金アドバイザーや生活評論家の口車に乗らず、65歳以降も正規で働ける人以外は、死亡リスクも加味すれば早めに貰った方がお得なのです。
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これから定年を迎える人、年金生活に入る人は、年金や資産を「貯めて残す」か、「使って減らす」かの岐路に立たされている。
〈人生100年時代、65歳はもはや老後ではない〉
政府は今年2月に閣議決定した『高齢社会対策大綱』でそう宣言した。それとセットで年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を奨励している。65歳からの年金受給を70歳からにすれば42%の“割り増し年金”をもらえる制度だ。さらに受給開始を75歳まで延長して「年金約2倍」にすることも検討している。
“定年後も働き続けて、年金受給を遅らせればリッチな老後になる”という「年金我慢の奨励」である。
しかし、口車に乗ってはいけない。それでは生涯、税金を搾り取られる暗い老後への一本道を進むことになる。
年金の「繰り下げ受給」を選んだAさんは65歳で再雇用の職場を退職した後、5年間、コンビニの夜間アルバイトで月に約20万円を稼いで生活費をまかなってきた。70歳を迎えた今年、ようやく念願の年金受給が始まった。
年金額は65歳で受給していれば年間211万円(月額約17万5000円)の計算だったが、5年間受給を遅らせたため約300万円(月額約25万円)に増える。
「体力的にキツくなってきたバイトも卒業できる」
期待を込めて妻とそんな話もした。ところが初めて送られてきた年金通知を見ると、手取りは月20万円ほど。想定より5万円も少ない。税金や社会保険料をドーンと天引きされていた。
「5年間我慢してこの仕打ちか」
だが、次の事実を知ればもっと衝撃を受けるはずだ。もし、Aさんが65歳から年金(211万円)を受給していた場合、住民税と所得税はいずれもゼロ。そのうえ、年金から天引きされる社会保険料(国民健康保険税と介護保険料)もはるかに少なくて済んでいたのだ。繰り下げ受給を選んだことで、なんと税金と保険料を合わせて年間約52万円も徴収され、負担が33万円も増えていたのである。
年金の受給を5年間我慢して額面では42%(年間約89万円)割増しされたように見えても、実際の手取りは26%(年間約50万円)しか増えていない。受け取らなかった5年分の年金の元を取るには、現在の平均余命を上回る91歳まで長生きしなければならない。
取られるのは所得税・住民税だけではない。
Aさん夫婦が子供に少しでも資産を残そうと繰り下げ受給を選択し、年金からコツコツ貯金をすれば、最後は相続税でごっそり持って行かれる。そのために政府は相続税法を改正(2015年施行)し、課税の対象を大幅に広げて、“財産をたっぷり残してください”と口を開けて待ち構えている。