米中首脳会談でトランプ大統領は二つの重要発言をしました。
第一に「ファーウェイとの取引続行を容認する」としたこと。第二に対中追加関税は課さないとしたことである。この2つにより、習近平国家主席は国内的にメンツを保たれ、トランプ大統領は米国スマホ巨大企業の利益とインディアナ、オハイオ、アイダホ州など生産農家の大票田を守れました。中国で組み立てているアップルのスマホも、対米輸出ができなくなれば、立ちゆかない。アップルはどっぷりと中国依存の構造となっていたのです。アップルの生産拠点中国移動も、事前に情報が漏れていた結果でしょう。しかし、いずれにしてもトランプ政権だけの問題だけではなく米中・貿易戦争は銃弾を使わない本物の戦争で、長い戦いになりそうです。
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6月29日、大阪で開催された米中首脳会談において「話し合いの再開」が確認されたが、ほかにこれという合意点はなかった。つまり米中貿易戦争になんらの進展はなかった。
ただしトランプ大統領は二つの重要発言をしている。
第一に「ファーウェイとの取引続行を容認する」としたこと。第二に対中追加関税は課さないとしたことである。
この発言の真意は中国ばかりか、むしろ米国側が蒙る被害の甚大さを認識しているからで、第一弾の報復関税から第三次にいたるまで、じつはスマホ、パソコンだけは巧妙に対象から外されていたのである。
ファーウェイのスマホは、インテルなどの半導体供給がなければ製造できないが、逆に中国で組み立てているアップルのスマホも、対米輸出ができなくなれば、立ちゆかない。アップルはどっぷりと中国依存の構造となっている。
ファーウェイは4Gを前提として5Gの開発を進めており、4Gの大半の特許はクアルコムが持つし、OS「アンドロイド」はグーグルである。
トランプ大統領の規制強化によって米国からの技術供与が停まったためファーウェイは独自のOS(鴻蒙)の開発の発表遅延と同時に、5G新型機の発売を延期せざるを得なくなった。
一方、インテルも半導体輸出に暗雲が射し込み、主力工場をイスラエルに移管するとしたが、当面の販売急減は避けられない。
ファーウェイのサプラインチェーンは中国の国内メーカー(大半が米国との合弁)、米国、日本、韓国、台湾のメーカーなど数十社が関与し、すなわち米国とてファーウェイのスマホ、基地局への部品供給が売り上げの相当額を占めていた。
米国も中国のサプライチェーンの一角にあったのである。
トランプは、この構築されたサプライチェーンを破壊してまでもファーウェイの排斥を狙っていたとは考えられず、この点では周囲のナバロ、ライトハイザーらとは見解をことにしたと推察できる。
だが米中会談にのぞんだ面々を見渡すと、ボルトン、ライトハイザー、ナバロが雁首を並べていた。▲米国企業も中国にどっぷりと依存していた
げんに2018年度のファーウェイの部品購入金額は7兆5000億円という途方もない巨額(なにしろ日本の防衛費の1・5倍!)。このうちの2兆2500億円分は米国のインテル、ブロードコム、マイクロテクノロジーなどが出荷した。
それゆえにブロードコム、インテルなどは「取引停止などとんでもない、販売禁止措置は緩和せよ」と米国企業がトランプ政権に求めていたのだ。
両国は、この現実を前に竦んだ。
トランプは「目先の貿易の利益より国家安全保障が大事だ」として、国防権限法をもとに次々と対中制裁、高関税付与をなし、非常事態宣言によって商務省はELを作成し、中国のハイテク企業十数社をブラックリストに入れてきた。
トランプのアキレス腱も露呈した。
中国が報復関税をかけたためにインディアナ、オハイオ、アイダホ州などの農作物、とりわけ大豆などの生産農家が悲鳴を挙げた。
これらの地域こそはトランプを支える大票田であり、いつまでも報復関税を放任しておいては来年に迫った大統領選挙に悪影響が出る。
だからトランプは「ファーウェイとの取引続行」を容認し、第四次の対中追加関税は課さないとしたのである。